雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第14話 体育祭(3)

「予選通過は上位42名。落ちちゃった子も安心なさい。まだ魅せ場は用意されているわ」

 

 舌なめずりしないでください。

 何というか、この場を一番楽しんでいるのはミッドナイト先生ではないだろうか。

 

「そして次からが本選よ!ここからは取材陣も白熱してくるわ!気張りなさい!!さぁ、第2種目よ」

 

 第2種目は騎馬戦。チームは2名からOKと言うのは、体格次第で1人で騎馬をやれる人もいるからだろう。と言うか、4名で割れない人数と言うのが意地が悪い。

 第1種目の結果をポイントとして、組んだチームによりスタート時の持ち点が異なる。理想を言えば、電気と組んだうえで格闘戦に強い人を騎手に、と思うがこんなところでセットになるのはなぁ

 視線を向けると、肩をすくめている。協力はしても組まない、と言うところだろう。私としてもそれは同意。

 

「そして1位に与えられるポイントは……一千万!!」

 

 あ、緑谷君が真っ白になった。

 そして冷や汗がものすごいことに。まぁ、そうだろうなぁ

 

「そう、上位の奴ほど狙われちゃう、下剋上のサバイバルバトルよ!!競技中は個性発動ありの残虐ファイト!でもあくまで騎馬戦。悪質な崩し目的での攻撃はレッドカード!一発退場とします」

 

 何をもって悪質か、と言うのがネックだなぁ

 審判であるミッドナイト先生の主観、ってことになるだろうから気にしないでおこう。

 

「それじゃ、これより15分!チーム決めの交渉スタートよ!!」

 

 当然、組みやすいのはクラスメイト。ある程度、互いの個性も把握しているから戦術を組みやすい。格闘戦という意味では一佳が欲しいが、彼女もB組での立場があるし諦めよう。

 まず上位かつ個性も強い轟君、爆豪君には人が集まっている。逆に制御に難がある緑谷君は組むより倒して自分のアピールにつなげたい人が多いのか、孤立している。私としても同感だ。それに戦闘訓練での動きを考えたら、自分で勝ち筋を考えて動くだろうし、必要なら向こうからくるだろう。私には来ないと思うけど。

 

 轟君は早速、決めたみたい。八百万さんに飯田君、電気か。判り易くて結構。八百万さんが何か言いたげにこっちを見てるが、後で交渉に行くので待っててください。

 爆豪君には……私の個性では売り込む価値はないな。

 売り込み審査のように三奈ちゃんが酸を出している、あの様子だと切島君は確定。障子君は戦力外……能力よりも騎馬の組みやすさか、環境的に索敵能力を重視しないかどちらかだろう。峰田が障子君に売り込んでいるからあちらは無視しよう。

 もうそうなってくると、選択肢が限られるな。

 

「口田君、ちょっといいかな?」

「う、うん。よ、よかったら、僕とまた組んで欲しい」

 

 個性的には戦力外だし、本人も奥手で人と話のが苦手だから言い方は悪いが売れ残っていた。

 ただ予選通過組の異形型の中では背も低くメンバーとの融通がつけやすい。

 後は、と思ったら、響香と目が合った。

 

「あ、茉芭(まつは)はまだチームに空きある?ウチはどう?」

「あー、ずっこい、わたしも組んで―ーー」

 

 響香はともかく、葉隠さんより格闘に強い尾白君は、と思ったらどうやらもう組んでいたか。ちょっと残念……だけど、ちょっと様子がおかしいな、あのチーム。

 

「茉芭?」

「あぁ、うん、ごめん。いいよ、組もうか」

 

 正直、火力不足も極まっているチームなんだけど、やりようはある。

 

「ポジションだけど、その前に。響香、ソレ(・・)はどれくらい伸ばせる?」

「大体、6mぐらい……なるほど、任せて」

 

 ニヤリと笑う響香。なにをしたいか察してくれたらしい。話が早くてありがたい。

 

「なら響香が騎馬の先頭、私と口田君で後ろを固めよう。葉隠さんはハチマキを取りに行かなくてもいいから守ることだけに専念して」

「任せて!でも取りに行かないと勝てないよー」

「だから、ウチが先頭なんでしょ。マッ……と、茉芭、いい性格してるわ」

「言いやすいならマッハでいいよ」

「でもいいの?守備専念にしても格闘はマッハのほうが得意じゃない」

 

 悪質ではない範囲で妨害をするには馬のほうがいいんだよね。

 

「考えてることがあるからいいの。代わりに、ちょくちょく手を放すから、口田君は騎手を支えるのを頑張ってほしい」

 

「が、頑張るよ」

 

 疑問符を浮かべている口田君と葉隠さん。どうかそのまま純粋でいてくださいな。でも「よーし、本気出すよ―!」って、脱ごうとするのはやめなさい。見えないからって女の子が人前で何してるの、もう。

 

「ぶー、あ、そうだ!私も、透でー!」

「おっけー。よろしく響香、透ちゃん、口田君」

 

 そして再度周りを軽く見渡し、疑念はほぼ確信に変わったので、皆を連れて轟チームとの同盟交渉を試みることにした。

 

「轟君、ちょっといいかな?」

「上鳴妹か。チームはもう組んだぞ」

 

 少し申し訳なさそうな八百万さん。電気ですら気にしてないのに。

 

「いや、チームとして組まないか、って交渉に来たの」

「そんなことをするメリットがどにある?」

 

 八百万さんと電気に聞いてないのかな?それもと言わなかった?まぁ、いいけど。

 

「そっちのメリットは3つ。まず、電気の電撃を私なら適切に(ヴィラン)に当てられる。八百万さんはUSJで見たでしょ?」

 

「えぇ、確かに素晴らしい連携攻撃でした」

「なるほど。嘘じゃねぇってか、で?」

 

「2つ目、八百万さんに創造させるだろう絶縁体にかかるコスト(カロリー)の節約。それは戦術の広がりになるでしょ。3つ目、緑谷チーム(1,000万)を狙うライバルが減る」

 

「トップを狙わねぇのか?」

「チームメンバーの個性を加味しても、ステージ生き残りに賭けた方がいいのよね」

「悔しいけどマッハの言うとおりね」

「ねー」

 

 口田君はしきりに頷いている。顔ぶれを見ればわかるでしょう。

 ものすごく悪く言えば、このメンバーは響香を除けばあぶれ者だ。

 騎馬からハチマキを狙える響香が最大戦力で、フィジカルはよくて並み、しかもこの状況では個性を活かせない透ちゃん。そもそも火力要員(どうぶつ)がいない口田君。とどめはバッテリーがなければちょっとピリッとする程度の電気を起こすのが精いっぱいの私だ。

 もちろん各々の得意分野では力を発揮できるが、その得意分野がこの競技を生き残るには向いていない。私たちは色々なものが足らない。だから工夫する。だから考える。だから、安易な道を行ったアレに心底イライラする。

 

「組まないデメリットはその逆。敵になれば電気がどんなに頑張ってもその個性による攻撃は無効化され私が奪う。他のものを創造している間に轟君に返ってくる。電気をただの馬にとどめるなら話は別だけど」

 

「なぁ、轟、受けて損はないと思うぞ。ってか、マッハ。お前なんかすげえキレてね?」

 

「……終わったら話す。そのために電気の開幕ぶっぱ、30、いや20%ぐらいでもいいから絶対欲しい。だからお願い。私たちと組んで欲しい」

 

「お前……それで、そっちの狙いは何だ?」

 

「開幕ぶっぱをやってほしい。初手で潰しておきたいチームがある。

 多分、洗脳かそれに類する個性。初見殺し過ぎて野放しにできない。30%くれれば、緑谷チームには少なくとも機動力にダメージを与えると約束する。

 後はB組の上位陣かな。私たちは開幕以降は轟君達と緑谷チームは狙わない。電撃補助が欲しかったら都度声をかけて。

 ラスト1分で目的達成していたら相互に防御で協力、余裕があったら余剰ポイントを譲渡してほしいぐらいかな。この辺は努力目標。あぁ、あと、開始後に合流する機会があったら八百万さんに両面テープ、片面ができるだけ強い奴作ってほしいかな」

 

 

「今すぐ創ることも出来ますよ?」

「開始前に個性を使って小細工するのは、ちょっと拙いんじゃないかな」

「まぁ、いい。提案を受け入れる。守れよ」

「ヒーローがチームを組んだヒーロー(なかま)を信じられなくなったら、終わりだよー」

 

 故に許しがたい。必ず潰す。

 

 

『よぉーし!組み終わったなぁ!準備はいいか(Are you ready?)、なんて聞かねぇぞ!!』

 

 カウントダウンからのスタート、各チームが飛び出した瞬間を狙って轟君はしっかり約束を守ってくれた。

 

『さぁ、残虐バトルロイヤルスッタートォ!!』

 

「持ってけ、マッハ!出力30!サンダァァァァ!」

「「ブレイカァァ!!」」

 

 各チームの騎手めがけて雷撃が降り注ぐ。

 緑谷チームのサポートアイテムを全壊させるほどでは無いが、おそらくしばらくは使えないし、誤作動の一つも起こすだろう。

 

「あぁ、私のベイビー―!!」

 

『おーっと!開幕一番、轟チーム、大規模電撃で回りの足を止めたぁ!』

『上鳴の電撃は強力だが制御が難しい。開幕大技は、アリだろ』

 

 ただし緑谷チームに対してのみ、騎手ではなくサポート科の子が提供したアイテムを狙った。

 

「あんの、ビリビリがぁ!舐めた真似してんじゃねぇぞ!」

 

 こっちが叫んだ瞬間、爆豪君が上空に飛びあがって逃げたのは予想外だけど、あぁホント、戦闘センスではかなう気がしない。

 

『おっと、爆豪!馬を離れて葉隠チームに襲い掛かるって、アレいいのかぁ?』

『テクニカルだからいいのよ。地面に足をついてたらダメだったけどね』

 

 審判のミッドナイト先生が割り込んでいる。

 そうでなければ飛べる個性持ちが不利すぎる。

 

「退避!響香!今のうちに!!」

 

 目当てのチームのほうに向かってもらいながら、電撃の痛みと痺れに騎手の意識がそれている間にハチマキを奪い取っていく。数枚は防がれたり、引き戻す途中で落ちたりしたが、かえって場を乱すことができた。順位の確認は後回し。

 

「尾白君」

「あ、え、あれ?上鳴、さん。俺、どうしてた?」

 

 騎手が意識を失い、騎馬が崩れた衝撃で洗脳が解けたのかもしれない。頭を振りながら立ち上がった尾白君に話しかける。

 とりあえず正気のようだ。

 

「細かい事情はそこの心操(ソレ)に聞くといい。話してくれれば、だけど。悪いけど多分、競技中に意識は戻らないと思う。もし、途中で目を覚ましたら伝言をお願い」

「……何かな?」

「復帰するな。復帰しても必ず潰す、って。じゃ、行こうみんな!暫く逃げの一手だよ!」

「「「おー!」」」

 

 尾白君の返事は聞かない。

 電気のフルパワーなら全員を一気に気絶させることもできたかもしれないが、過信は禁物。

 爆豪君みたいに、電撃対策もないのに予兆だけで逃げられたら、泣くしかないよ。

 

「洗脳だっけ?そーゆーの嫌いだったの?」

 

「好き嫌い、というより、相手を間違ってることだね。後は終わったら、アレにも話すから興味があれば一緒に来て。正直、冷静に話すには誰かいてほしいし……あんな強個性持ちの癖に、活かし方も何もかも半端でさ、僻みもあるから、あまりいい動機じゃないけど」

 

 思わず響香の肩を握る手に力が入った。独りよがりの正義かもしれないけど、許せなかったんだ。

 

「そっか。けど、とりあえず後にしよ」

「……うん」

「よくわかんないけど、気を取り直して勝ち上がろー!」

「「「おー!」」」

 

 響香と透ちゃんの言葉がありがたい。何にしてもまずは勝ち上がらないと。

 話しながらも逃げ回る足は止めていない。

 近寄ってきたチームの騎手には静電気のちょっと強いくらいの電気をお見舞いしている。これくらいなら、ジャージから生まれる静電気でどうにかできる。

 体育祭が冬ならもうちょっとやり易かったのだけど。

 

 さて、主戦場はどんな様子かな。

 見ると機動力が落ちている緑谷チームは逃げ回るのに苦労している。

 一瞬、狙いがこっちに来た爆豪チームだけど、いい塩梅に物間チームが介入に入ってくれた。ポジショニングと人の隙をつくのが上手いね、彼。

 

 さあ、逃げ続けながら、チャンスを伺おう。

 このチームのポイントゲッターは騎手ではなく馬。

 透ちゃんには守ることに特化して頑張ってもらおう。

 

『さぁ、開始2分足らずで派手にハチマキの奪い合いー!』

『葉隠チームはどうやら2位から4位狙いだな。開始直後の轟チームが大規模攻撃をやった隙に、手ごろなチームのハチマキを奪っているが、緑谷を狙う気配がない。あのメンバーなら合理的戦略だろう』

『生き残るためには2位から4位狙いも悪くないってことだな』

『おそらくな。後は轟チームをかなり警戒、いや、組んでいるのかもな。常に轟チームが見れる位置取りを心がけてる』

 

 そー言うのは、バラさないでください、相澤先生!

 それと位置取りはそこまで考えてないです。取引の対価に両面テープ取りに行きたいだけなんです。思いのほかイヤホンジャックが器用だから、不要になってるけど。

 そろそろ弱電圧で攻撃したチームは復帰しはじめた。心操チームは、外か。どうやらチームメイトも介護しようとすら思わないらしい。

 

「透ちゃん!ポイントの低い1枚は奪われてもいいから!」

「わかった!」

 

 今あるハチマキは心操(295)、大小(165)と自チームで850点。まだあと10分以上あるから、逃げ回りつつ、できればあと500点前後は稼ぎたい。

 もっとも思ったより1,000万ポイントは美味しい餌のようで、復帰したチームは大体が緑谷チームを狙っていく。

 

「響香!アレ!!」

「任せて!」

 

 物間チームと連携するというより、多分、爆豪君への憤りをぶつけようって感じの鉄哲チームの1人が、背後から峰田チームを狙ってる。

 やってることは私たちと同じだ。だた、位置取りの妙で私たちのほうが一瞬早く峰田チームの鉢巻きを盗み取ることが出来た。

 

「あぁ、なんという事でしょう。背後からなどと卑怯な行いを考えた私への罰でしょうか?」

 

 いや、ただの偶然だから。何かゴメン

 

「とにかく退避―!」

 

 後はもう、皆で必至逃げ回る。

 

『おーっと、時間切れ寸前、一発逆転を諦めたチームが葉隠チームに襲い掛かるぅ!』

『まだ緑谷狙いを諦めてない轟と爆豪は強敵。弱いところから狙うのは合理的だろ』

 

 

「2枚投棄!!」

「あいさーー!」

 

『正気か葉隠チーム!ハチマキを投げ捨てたー!!』

『トカゲのしっぽ切りだ。生き残りの知恵だろ』

 

 目先の餌に釣られたチームが、騎馬を崩しかねない奪い合いの間に時間終了となった。

 

『じゃあ、さっそく上位4チーム!見てみよっかー!!』

 

 1位:轟チーム(10,000,325)、2位:爆豪チーム(1,675)3位:葉隠チーム(810)、4位:緑谷チーム(685)となり、なんとか最終種目に駒を進める事が出来た。

 

『以上4組が最終種目に進出!勝者は全員A組!まさかのB組全員敗退だぁ!!』

 

 無事に勝ち上がりを決めて、4人でのハイタッチは最高の気分だった。

 




騎馬戦でした。
心操チームのポジションを掠め取った上、話の流れで轟チームのポイントがちょっと減りました。
なお、当然ですが、誰も辞退しません。

心操に関しては、次回SEKKYOですw
アニメでは特に触れられていませんが、彼がクラス対抗戦に参加した時に、どうにも違和感というか不快感を感じまして。
ぶっちゃけ、彼に感じた不快感が本作を書くきっかけでした。あ、もちろんその先も続けますよ。


以下、本作における上位4チームの取得ポイント

騎手、最終ポイント(獲得ハチマキ)
轟チーム :10,000,325 (緑谷チーム)
爆豪チーム:1,675(爆豪チーム、鉄哲チーム、物間チーム)
葉隠チーム:810(葉隠チーム、峰田チーム)
緑谷チーム:685(轟チーム、角取チーム)
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