『さぁー!昼休憩も終わって最終種目発表ぉ!!……とその前に、予選落ちの皆に朗報だ!集まれ体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさぁ!!』
そのアナウンスに従って、B組や他の科の生徒たちがグランドに集まっている。
ただし、電気と峰田は八百万さん謹製、チアガールのコスチュームで参加しているが。
『本場アメリカからチアリーディングのチームも呼んで、一層の盛り……って、何やってんだ!A組ぃ?峰田実と上鳴電気ぃ。誰得だよぉチアボーイズ!』
『何やってんだあの馬鹿ども』
『ジェンダーを超えて
「いい気味ですわ!」
「新しい扉開いちゃぅぅぅ」
「ちっくしょー!マッハの薄情者―」
食べ損ねたお昼の代わりにゼリー飲料を吸い込みながら、双子の片割れの痴態を通路から眺める。
いやぁ、エクトプラズム先生がいる場で、ありえない予定を捏造とか。
まだまだ沈み込んでた心操君が、ほとんど普段通りに戻ったので、結果オーライってことで。変態の兄を持つ双子の妹って、嫌なレッテルはしーらーない。
『さぁ、みんな楽しくレクリエーション!それが終われば全4チーム、16名によるトーナメント形式ぃ!!1対1のガチバトルだぁぁ!!』
「最終種目は
「去年、トーナメントだっけ?」
「形式は違ったりするけど例年、サシで競っているよ。去年はスポーツチャンバラしてたはず」
学年によって違う年もあるから、要注意なんだよね。
どちらにしても、対戦形式は当日発表だから何も出来ないけど。
『それじゃあ、組み合わせ決めのクジ引きよ!組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります。レクに関しては参加者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も温存したい人もいるしね』
私は休憩かな。一旦スイッチを切って、切り替えたい。
『じゃあ、1位のチームからクジ引きよ!』
試合順に、私、上鳴
「うわぁ、これはきっつ」
「緑谷に勝っても、順当に進めば轟かぁ、マッハ、ついてないね」
「そーゆー響香は電気とか。頑張って」
正直、1対1なら電気はこのメンバーを見渡しても上位に進むポテンシャルがある。
響香との戦い、どちらが先に初撃を取れるかで決まるだろうな。
とりあえず控室に戻っておこう。
「レクリエーションは出ないんだ?」
「うん。10分でも寝て、気分をリセットすることにする」
「この状況で寝れるのは大物すぎでしょ」
休めるときにしっかり休むのも、大事な資質と思うんですよー
対戦者同士がなにやら互いに話をしているのを見ながら、私は控室へと戻っていった。
「あ、あの、上鳴さん、えっと、その」
「んー?あぁ、緑谷君か。1回戦、お手柔らかにー」
私としてはそこで分かれて終わりにするつもりだったのだが、ついてきそうだったので外に出て、隣接している森に入る。
「えっと、あ、きゅ、休憩だ、よね?」
「うん、ちょと気疲れすることあってね。30分ぐらい寝るから、んじゃ」
いい感じの木陰に寝ころび、ジャージをかぶって目をつぶる。
緑谷君が何かまだ何か言っている気がしたけれど、思いのほか疲れていたのだろう。すぐに眠りに落ちていた。
セットしておいた携帯のアラームで目を覚ます。
意外なほどによく眠れた。屋台も手持無沙汰らしく、ジュースで少し目を覚ますついでの水分補給をしてスタジアムに戻る。
正直、緑谷君が体育祭までの間に個性の出力調整にどの程度、熟練したかが勝敗のカギだろう。フルパワーで来られたら、正直勝てる気がしない。
「パワー差は歴然。骨の1本ぐらいは覚悟しておくか」
なにせ、早くもクラス最強ともいわれる轟君が注視するほどの存在だ。
『Hey! Girl!! Are You Ready!?』
ボーイズアンドガールズでなくていいのか。ぼちぼち出番なのだろう。
体調はほぼ万全。気合も十分。
「マッハ」
「行ってくる」
わざわざ探しに来てくれたのか、入り口にいた電気とハイタッチを交わし通路に足を踏み入れる。
『色々やってきましたが!結局これだぜガチンコ勝ぉ負!!ヒーローでなくっても、結局そんな場面ばっかりだ!わっかるよなぁ!!心・技・体!知恵、知識!すべてを駆使して駆け上がれぇぇぇ!』
プレゼントマイク先生の教訓じみたアナウンス。
テンションだけは異常に高いけど、普通に説教好きオジサンなのがちょっと笑える。
会場に近づくにつれて、集中力を上げていく。今日ばかりはキモチワルイとか言って、彼から逃げられない。会場へあとちょっとのところで話し声が聞こえてきた。
「いいかい。怖いとき、不安なときこそ笑っちまって臨むんだ。ここまで来たんだ。ハッタリでもいい。胸は張っとけ。私が見込んだってこと忘れるな!」
「ぁ、おお……オールマイトォ!!」
何かと思えばオールマイト先生と緑谷君。で、やっぱりオールマイトのお弟子さんで確定か。
「なんだね、緑谷少年。そこはもっと力強くだな……」
「教師が特定の生徒に堂々と肩入れするのは、いかに自由が売りでもちょっと自重してほしいです。あと、もう時間なので私の対戦相手を解放してください」
「ま、
狼狽えまくってるね。別に気配を殺すなんて真似してなかったので、気付かないほうが悪いんですけど。そも、聞かれたくなかったら内緒話は場所を選んでください。
「あー、外で寝てたんで」
とりあえず誰が誰の弟子だろうと、戦いの場では関係ない。
ただ、私に向けての言葉ではないが、1つ、オールマイト先生はいい言葉を言っていた。
「ちょっ、ちょっと待って、今の話、どこまで――」
「無粋ですよ。オールマイト先生?今は大事な本番の前です。お話はまた後ほど」
怖いとき、不安なときこそ笑え、か。いいことを言う。
もしかしたら、あの人もそんな気持ちだったのだろうか。オールマイトですら、ヴィランと戦うときは恐怖を感じるのだろうか。だとすれば、不遜なことだけど、ちょっと親近感がわくな。
「か、上鳴、さん。その……」
「話は全て終わってから。お互い、全力を尽くしましょう」
意識して笑って見せて、少し全身のこわばりが解けた気がした。
まだまだ情けない。
『オーディエンスども!待ちに待った最・終・種・目がついに始まるぜ!第1回戦!成績の割にはなんだその顔!ヒーロー科緑谷出久ぅ!!』
先に呼ばれたのは緑谷君。多少硬いが足取りはしっかりしている。
『ヴァーサス!騎馬戦では立ち回りのうまさで生き残ったクレヴァ―ガール!!同じくヒーロー科!カミナリマッハ―!!』
『茉芭だ。間違えるな山田』
『山田いうな!マイク!えー、カミナリマッハって格好よくねえ?』
『大昔のバイクだろ、それ』
それが名前の由来なんですよー、正しくはカミナリマッパらしいけど。女の子の名前のネタ元としてはどうかと思うけどー。
とりあえず観客の声援に笑顔で手を振りながら、緑谷君の反対側に向かう。「マッハちゃーん!」とか「かわいー」なんてコールが観客席から上がっているのは、喜んでいいだろう。
『ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする!後は「まいった」とか言わせてもOKのガチンコだぁ!!怪我上等!こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから、道徳倫理はいったん捨て置け!だがまぁ勿論、命にかかわるようなのはクソだぜ!アウト!!』
主審のミッドナイト先生に加えて、セメントス先生が椅子を作って副審として控える。
『Ready!? Start!!』
パワー負けしている相手へ取れる手段は少ない。
パワーを出す前に一方的に押し切る。装備がないから格闘一択!
こちらが駆けだしたのを見て、緑谷君は待ち構えてカウンターの構え。”見る”限り個性はまだ使ってない。舐めてかかっているというよりも、制御がまだ不安定か、時間制限があるのだろう。あるいは、怪我をさせたくないとか、個性なしでも勝てると、甘く見られているか。
『飛び出したのはカミナリマッハ!対する緑谷はカウンター狙いか!』
お互いの距離はスタート位置で10メートルほど。ひと飛びで接触と言うタイミングでギアを上げ、速度を増す。
「はやっ!っ!!」
思ったよりも意表を付けたので、おでこにデコピン一発。ほんのり静電気。
猫だましより弱い攻撃で混乱させて、一瞬の弛緩。そこをついて、ガードにあげていた右手を取ってそのまま投げる。そのままコンクリートの地面にたたきつける寸前に加えたわずかな捻りと腕に乗せた体重が、緑谷君の右腕をへし折った。
「ぐぎゃぁぁぁ!!」
『折れたな』
『躊躇ないぞカミナリマッハ!あっという間にダメージを与えると、お次はぁ、ジャ・イ・ア・ン・ト・スゥゥイングゥゥゥ!!投げたー!!』
先輩方に散々叩きこまれましたよ。自分の有利を押し付けろって!
緑谷君が個性を使って何かする前に、勝ちを掠め取るしか望みはないんですって!
『流れるように追撃!容赦なしの回転蹴りぃ!!』
『緑谷がパワーでごり押しする前に、一気に決めたいんだろ。合理的戦略だな』
その通りです!相澤先生!
なけなしの電子を集めて背骨を狙って蹴りを叩き込んだ。
どういう特異体質か知らないけど、彼の個性発動は特徴がありすぎる。少なからず血流に依存するようだけどその分、発動の予兆は他の人よりもわかりやすい。ならばそれを動かす前に、体躯を動かす神経系の根幹である脊椎を流れる神経を麻痺させる。そうすれば、
『場外!勝者!上鳴茉芭!!』
「はぁっ!勝てたか~」
短期決戦で済んだけど疲れた。
ともあれ、まずはこの大歓声に応えなければと、大歓声を受けながら観客席に手を振りつつ控室へと戻っていった。
『第1試合からガチもガチ!あの子、可愛いうえに強ぇとか最強じゃね?』
『1回戦は相手の未熟さを突いて何もさせずに押し切れたが、正直、次はきついだろ』
正しい分析ありがとうございます。嬉しくないですけど。
控室に戻ると出番待ちの人は誰もいないので、軽く水分だけ取ってスタジアムのクラス席に行くことにした。何だかんだ、1試合ごとの間が開いてるから、ウォームアップまでは見学してたほうがいいだろう。
クラス席ではみんなが迎えてくれた。
「やるじゃん!マッハ!」
「おめでとー!イェッー!!」
「サンキュー、響香、三奈ちゃん」
出るときの気合を入れるハイタッチもいいけど、お祝いのそれはもっと気持ちいい。
「しっかし、上鳴さん。容赦なくやったよなぁ」
「緑谷君のパワーだと一発逆転されるからね。速攻で決めるしかなかったよ」
「ケッ!デクは所詮デクってこった」
容赦も何も、切島君が個性で体を固めて殴ったらあんなもんじゃすまないと思う。私はあの環境下ではあれが限界だけど。
自分で叩きのめしたい爆豪君的には面白くないだろうけど、これも組み合わせの妙と諦めてもらおう。
「おい、デクに勝った程度で調子くれてんじゃねぇぞ」
「そうだね。次はあの2人のどっちかだし、正直、どっちともやり辛い」
「……わぁーってんじゃねぇか、モブチビの割に」
それ以上は言うつもりがないのか、出てきた二人に集中する爆豪君。
そして始まった第2試合。初手で場外狙いの瀬呂君は戦術として正しい。が、あっという間にそれを覆した轟君がスタジアムを超える規模で瀬呂君を氷漬けにして
「アレとやるとか、ないわ~」
ドンマイコールを聞き流し、眼前に迫っている轟君が生み出した氷に触れる。
長く触れていたら霜焼けどころか凍傷になりそうなほどの低温。これを個人の資質だけで生み出せるというのだから凄い個性だ。さて、どうしたものやら。
緑谷君には負けてもらいました。原作2回戦の展開は痛々しくも熱いですが、潰しました。
そんでもって、間接的ではありますが、志村菜奈さんの教えはオリ主に届きました。
てゆーか、作中で爆豪も指摘してますが、所かまわず秘密を話しすぎでしょ、彼らw
お約束展開でそういう時には人はあまり来ないんですけど。