―――Side:心操人使
時間は少し巻き戻り、第1試合の開始前。
エクトプラズムに介添えを願い、A組、B組の席を回って己の勝手でアピールの機会を逃した3人に頭を下げて回ったあと、心操人使はクラスの席に戻っていた。
多少のやせ我慢というか見栄の部分もあるのだろうが、3人ともに「油断していた自分も悪い」と謝罪を受け入れた。もちろん、チームアップの場でやることではないということで、二度とやるなとも言われたが。
「這い上がってこい、か。そうだよな……何を焦ってたんだ、俺」
そのやり方こそ苛烈と言うべきだが、そのまま進むことは危険だと止めてくれた、
「おい、心操。遅かったじゃないか。席とっといたぜ」
「惜しかったよなぁ、やっぱ出る杭は打たれるってことなのかな?ヒーロー科、余裕なさすぎだろ」
そう言ってくれるクラスメイトに謝意を告げるが、訂正しておきたい言葉もあった。
「負けたのは俺の増長、思い違いが原因だよ。それを気づかせてもらった。今回は、やられて、良かったと思ってる」
それでもやはり悔しいものは悔しい。
目元ににじむ涙を乱暴に拭い、ちょうど間に合った第1試合、そして2回戦の轟戦を見て、人間、驚きすぎると声も出ない、ということを実感した。
「アレで、電源がないと何もできない?はぁ?うっそだろ……」
追いつくにはもっと鍛えなければ。そう決意し、はるか先を行く連中の活躍を目に焼き付けようと試合に集中した。
―――Side:医務室
第1試合が終わって数分後、救護室に運び込まれた緑谷出久は無事な腕に栄養剤の点滴を受けながら、右腕にリカバリーガールの治療を受けていた。
そして心配そうに覗き込むトゥルーフォームのオールマイトの顔が見えた。
「気づいたね。相手に礼を言うんだね。ずいぶんと綺麗に折ってくれてるから、すぐに治ったよ」
そんな慰めにもならないセリフに、自身は負けたのだと、涙がこぼれる。
「すいません……果たせ、ませんでした。僕が来たって……いえな、かった……オールマイト、に、託された、のに……」
「仕方ないさ。勝負は時の運。相手にだって譲れないものはある。
そう言ってため息をつくオールマイト。
残念そうではあるが、緑谷出久にワン・フォー・オールを譲渡したことを悔やむ様子はない。
「はぁ、可哀想に……またアンタ、変にプレッシャーかけたろ!?」
「ぐぼはぁっ!ちょ、その、必要なことだったのです!」
悶絶するオールマイト。かなりの高齢であるはずのリカバリーガールだが、患者を抱きかかえたりと筋力は相応に維持されている。
「そうだ!オールマイト!僕、幻覚を見たんです!」
「うん?」
「人数は定かじゃないんですけど、上鳴さんの攻撃で全身動かなくて、意識も朦朧としてた時に、一瞬だけ。それで体を動かそうとしたんですけど、ワン・フォー・オールが反応した感じはあったのに、体は全く動いてくれなくて」
「何それ、こわっ!」
そこにオールマイトのようなシルエットも確かに見たという。
オールマイトは自身の経験と照らし合わせ、ワン・フォー・オールの習得度合いが一定のレベルに達したからだと告げる。
「そこで体が動かなかったのは、やっぱり受けたダメージのせいでしょうか?」
「多分ね。かなり人体の壊し方を知ってるよ。脊椎に自分の個性で弱い電流を流して、一時的に神経伝達を阻害したんだろ。後遺症を出さず動きはしっかり止める威力の調整。まったく、末恐ろしい子だね」
体の外からではなく、中を壊す。電気系にはそんな使い方もあるのかと、自らがやれたことも忘れて感心する。
「できれば医療にも興味を持ってもらいたいもんだ。劇的な治癒は無理でも、リハビリにはああいう使い方ができる個性はかなり重宝されるんだ」
自分の伝手も使って、職場体験の推薦を打診してみようかとも考えるリカバリーガールだった。
「さて、もういいだろ。悔やむのは後にして、今日は先を行っている連中の戦いを目に焼き付けな」
「はい!」
そう言って緑谷を追い出した救護室には、リカバリーガールとオールマイトだけが残された。
「アンタも……居たってね」
「……良いことです」
言葉の割にどこか悲痛な決意がこもっていると感じたが、リカバリーガールはそれを指摘しなかった。
―――Side:スタジアム
時は戻り現在、轟が凍らせた大量の氷の撤去も終わり、試合再開となった。
『さぁ、お待たせしたぜ!第2試合で水浸しになったステージもようやく乾いて第3試合!そのイヤホンでどんなサウンドを響かせる!?ヒーロー科、耳郎響香!』
先の2試合が一瞬で勝負が決まり、かつ、撤去でだいぶ待たされたため、待ち焦がれた観客の期待感は高い。最高のアリーナライブじゃないかと、耳郎はこの場に立てたことに感謝する。
『VSスパークリングキリングボーイ!ヒーロー科、上鳴電気ぃ!ちなみに1回戦のカミナリマッハの双子の兄だ!妹が勝ってんのに負けてらんないぜ!チアボーイ!!』
その言葉に会場が笑いに満ちる。見れば審判のミッドナイトは腹を抱えて大笑いしているし、対戦相手の耳郎にしても口元を押さえて笑いをこらえてる。
「ちくしょー!ヤケだ!やってやんよ!無差別放電!!180万ボルトぉ!」
「しっ!やらせないよ!」
上鳴電気の必殺技ともいうべき全力放電は一瞬の溜めがいる。
一方で耳郎響香は補助アイテムなしでの攻撃技は、相手にプラグをさして心音を大音量で流し込む技。
結果として、双方の技が同時に命中。
『両者ダウン!引き分け!!引き分けの場合は時間をおいて、腕相撲などの簡単な勝負で決着をつけてもらいます』
2回戦の前に行われた再試合では、個性なしでのスポーツチャンバラ1本勝負となり、入学前から兄妹で格闘訓練を積んで、わずかに経験で勝る上鳴電気が2回戦に進出を決めた。
続く第4試合は雄英教師陣を以てしてなお、「自由と言っても限度がある」と思わせる内容だった。
対戦相手である発目明提供のサポートアイテムを装着した飯田天哉。
飯田の熱意溢れる懇願と、双方の合意ならいいかと許可を出してみれば、始まったのは発目明による自作サポートアイテムのプレゼンテーション。
『ナニコレ、深夜の通販番組?』
『売り込み根性逞しいな』
放送席のプレゼントマイクとイレイザーヘッドが思わず匙を投げるぐらいに、真剣勝負、ガチバトルという言葉に唾を吐く蛮行。
もちろん、発目明にとっては『ガチ勝負』のサポート会社への売り込みの機会。
たっぷり10分間。
次から次へとアイテムを繰り出し観客を飽きさせることなく、たっぷりじっくりねっとりと、納得いくまで自作アイテムの説明をやり切った発目明が、満足感あふれるイイ笑顔を浮かべて場外へ向かい終了。
『続いては第5試合!その角からナニか出んの?ねぇ、出るの?ヒーロー科、芦戸三奈!!ヴァーザス!気は優しくて力持ち、小声がネックだヒーロー科、口田 甲司!って、犬連れってけどいいのか!?アレ』
『届は出てる。口田の個性は生物を操れるが、操る相手がいなければ、正直、弱い。そこを補うにはいい選択だ』
『てかなんでコーギーィ!?かわいいじゃねぇか!』
『元々牧畜犬でスタミナもある。見た目も警戒心を解く、悪くねぇだろ』
入学直後の戦闘訓練で指摘されていた己の弱点。
その直後に起きたUSJ事件でも常闇に守られっぱなしで役に立てず、口田は己の無力さを学んだ。
本人とすれば、他に選択肢がないとはいえ動物に怪我をさせる真似は避けたい。しかし折角つかんだ場なのだ。何もできずに敗退などできないと、USJ事件後に保護施設から譲り受けて飼い始めた自らの
「グルルルルル」
「ひぇぇ、なんか怒ってるぅ」
「その、あまり強く噛まないようにするから。我が友よ。私の敵をこの場から追い出すのです」
「ワウッ!」
「うきゃー!こっちくんなーっ!」
ちなみにコーギーと言う犬種は運動が大好きで良く走る。開始直後から全力のコーギーに追われる。悲鳴を上げつつもその表情には笑顔があり、何気に楽しんでいることがうかがえる。
ともあれ、スタミナでは流石にかなうはずもなく、噛まれそうになった当たりで仕方なく放った酸が命中。コーギーが悲鳴を上げて飛びのいたことで、それ以上の怪我を嫌った口田がリタイヤを宣言した。
第6試合は推薦入学者の1人、八百万百と常闇踏陰の対決。
対戦相手が決まってから、ステージに立つまでの間に十分な対策を考えられなかった八百万は手堅く、初手を凌いでから武器を創造しようという得意の戦術を選択。
実際はパワーで押し切られて場外と言う、本人にとって不甲斐ない結果となった。
『続いての第7試合!え、ちょっと待ってホントにその格好いいの!?ヒーロー科、
『良くねーな。対策考えてやらないと。てか、年頃の娘なんだから恥じらいを持て!服着ろ!』
それを聞いたA組クラスメイトは「「「相澤先生、オカンだ」」」と心が一つになったという。
なにしろ、手足が見えないでせいで宙に浮いてる体操服がポンポン放り出されているのだ。何をやっているか、と言うのはすぐわかる。
「うわ、やりづれー」
切島は相手の方をできるだけ見ないようにする。見えないとわかっていてもちらちら視線が行くのは男のサガだろう。
ざわめく観客席だが、何しろ相手は個性の影響で姿が見えない透明人間。
テレビ局などではさすがに放送倫理上拙いと、昨年の2年生ステージに続いて「ただいま音声のみでの中継となります。しばらくお待ちください」のテロップを出して音声のみの中継に切り替えた。
『ええっと、さすがにカメラはノーセンキューだ!マスメディア!!ってことでスタート!!』
見えない相手にガードを取り、両腕を硬化させる。
だが、相手のガードを抜ける攻撃力を持たない葉隠は、足音と気配を殺して背後に回り、渾身の攻撃を繰り出した。
『OH!それは、えっぐい』
『まぁ、やるとは思ったよ』
「あいったぁぁぁぁっ!」
「ちょ、ちょっと、そこは……ぅぉい」
切島の硬化は全身に及ぶ。相手が相手だから緩めの硬化にしていたのが仇となった。まさか本当に金的攻撃をやるとは思っていなかったらしい。
『……ホンっと、お前、生徒にナニ教えてるの、イレイザーヘッド』
『知るか』
最初のダメージから復帰した後は、お互い千日手。
葉隠は切島の硬化を通る攻撃が出来ず、切島は全裸の相手を捕まえるという字面だけなら性犯罪みたいな行為は流石にできず、かといってどこに居るかわからない相手を殴る事が出来ない。
だらだら間延びした試合に飽きたミッドナイトにより再びの引き分け判定。
『キリがないし飽きたわ!審判権限により引き分け!いいから服着なさい!服!!』
なお、最終的な勝敗はなんとじゃんけん三連戦。めでたく、切島が2回戦へ進出した。
『1回戦、最後の第8試合!中学の頃からちょっとした有名人!カタギのツラじゃねぇぞ!ヒーロー科、爆豪勝己!!ヴァーザス!俺こっちの子応援したーい、ヒーロー科、麗日お茶子!!』
第1試合と同じように全速で距離を詰める麗日に対し、迎撃するのは爆豪。
個性「爆破」は掌に出るニトロのような性質を持つ物質を爆発させる個性だが、その爆発は大量の噴煙をまき散らす。
その噴煙に紛れて浮かせたジャージを囮に何とか、相手を浮かせようと回り込む麗日。
だがその突進は、爆豪のけた外れの反射神経と格闘センスにより迎撃され、破壊されたステージと共に吹き飛ばされる。
『麗日は休むことなく突撃を続けるが、これは……』
油断なく迎撃する爆豪に、次第に観客席から非難の声が上がる。
「そんだけ実力差あったらさっさと場外に放り出して決着つけろ!女の子、甚振って遊んでんじゃねぇ!」
「そうだそうだ!」
『一部からブーイングがぁ、しかし正直俺もぶへぇ!』
プレゼントマイクが解説役のイレイザーヘッドからギブスでぶん殴られ、マイクを奪われる。
『遊んでるって言ったのプロか!何年目だ!シラフで言ってんなら、もう見る意味ないから帰れ!帰って転職サイトでも見てろ!!』
挑発と言うよりも侮辱にまみれた発言に会場が静まり返る。
『爆豪はここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してるんだろ!本気で勝とうとしてるんだから、油断も手加減も出来ねぇんだろうが!』
そこまで言ったところで、ちょうど頃合いであったのだろう。
麗日が己の個性「無重力」で浮かせた無数の瓦礫への干渉を解除する。
『流星群!?』
『気づけよ』
無数の瓦礫が重力に引かれ加速する。その隙に爆豪を浮かせて場外、が狙いだったが爆豪渾身の迎撃により失敗。そして最後は限界を超えてあがいた麗日が行動不能によりTKO。
爆豪が2回戦に駒をすすめた。
原作ママの部分をわざわざ書くのは作業になって微妙ですね。
今後は文字数との相談ですが改変箇所だけにしようかな。
緑谷vsオリ主は体育祭を書き始めた時点から決めていて、他の3人の対戦相手をだれにするかは書きながら適当に決めました。
全試合を細かく描写するつもりもなかったので、勝敗は上鳴電気が勝ち上がった以外は原作通りです。
微妙に強化入ってるのが上鳴電気と口田。
電気は全力放電の電圧が上がってます(130万Vー>180万V)
口田のほうは動物がいないと何もできないなら、特例使って持ち込めばいいじゃない、とw
辞退させるのも考えましたが「動物がいないから」は流石にどうよ、と思ったので。許可は下りましたが「最終種目のみ、1匹のみ。という条件が付いています」。きっと彼には自然保護系ヒーローからスカウトが来るでしょう。
葉隠については、全国放送で問題なったから、きっと雄英が威信にかけて次から服(ただし見えるとは言ってない)を着させます。