なお現実科学に即した突込みはご容赦願います。色々ガバ理論です。
『さぁ、そろそろ始めようかー!』
プレゼントマイク先生の声が響き渡る。轟君との戦闘と言うのは普通に考えたら速攻で決まる。
多分、観客の興味は轟君が何秒で勝つか。
それを覆すというのは中々骨が折れるが、成しえたら楽しそうだ。
『さぁ、2回戦第1試合、片や、1回戦の圧勝で観客席を文字通り凍り付かせた男!ヒーロー科!轟焦凍!!片や、1回戦はその身体能力の高さでの瞬・殺・劇。今度はどうだぁ、ヒーロー科、カミナリマッハァ!』
「テメエが緑谷を倒すとは思わなかったよ」
「世の中、予想外にあふれてるから面白いって思わない?」
「言ってろ」
あぁ、本当に怖い。怖いけど、笑えているなら戦える。
相手は氷と炎の対極的な属性を操る強個性持ちのサラブレッド。
対する私は電子操作と、字面だけなら強そうだけど、電気のような大放電能力もない。
けれど、無いなら無いで、あるもの全部使って足掻くしかない。
今までもそうしてきた。
作戦はないわけではない。ただそれには、他ならぬ轟君の
『今!スタァァァァァァトォォォ!』
轟君の必勝パターンは、凍結を使っての相手の拘束と無力化。
氷を生み出すことはできても、生み出した氷を自在に操れるわけではない。
正直、初手で炎を使われたら詰みだが、どうやら炎を使うことに忌避感があるらしい。おかげで、一発逆転を引き寄せるための
『轟ぃ!開幕一番、氷結でカミナリマッハを閉じ込めたぁ!コイツぁ一撃かぁ?』
しかし次の瞬間、飛来した氷塊に轟君は回避を余儀なくされる。
「なんだ!!」
『終わってねぇぇぇ!氷と霧でなにも見えない!氷の塊が轟に飛んでくるぅ!?』
『上鳴の仕業だろうな。どうやってあの攻撃を防いだ?』
ネタ晴らしはもうすぐできると思う。だだとりあえず、ひたすら寒いので私は「道を作る」ために面倒で処理しにくい塊を投げつけてるに過ぎない。
まあ、時速20~30kmは出てるだろうから、当たり所が悪ければ、骨の二つ三つは折れると思うけど。てか折れろ。そしてそのまま負けてほしい。
「あー、寒かった~、お汁粉食べたいー、お風呂入りたいー」
割と本気で言いながら、震えてる手足をさすりつつ、視線は手ごろな氷のかけらを物色する。
半分は芝居。半分は本当。せっせと服をこすっては、少しでも静電気を作っては
「テメェ!何をした!!」
「さぁ?答える訳ないじゃない。次行くよっ!」
『無事だったぁ!!轟の氷壁がマッハを避けて割れているぅ!』
『おそらく、電子、電気の壁、バリアのようなもので冷気を流して防御したんだ。器用だとは思っていたが、ここまで出来るか』
残念ながら、「壁」なんて良いものではないんです。ほとんど「線」。それが奇跡的に「刃」として機能した。極低温のおかげで、あちこち痛いし寒い。
けれど意外に状況は悪くない。寒くて電子が動きやすいおかげで、まるで電気がフルチャージした時のように私の周りに派手な電気の流れができている。
これはこれで、ちょと派手で気分がいい。パチパチ言ってる
氷漬けになる前に、予兆としての冷気に便乗してギリギリ集めた静電気を防御に回す。
寒さのおかげで自由電子は動きやすくなり、そこらの物質と勝手に衝突しては崩壊した原子核から飛び出した電子が私の制御化に入る。
原子が崩壊して生じる熱は、轟君が生んだ氷がすぐ冷やし、未掌握の電子に捕まったり融合したりして物質として安定する。あとは無限ループだ。
環境から電子を取り出すループの収支がプラスを維持できる限り、私が勝ちを拾う可能性が残り続ける。
大雑把にいえば、
そうして集めた電子を束ねて磁場に変え、適当に氷塊を成形して”弾丸”にする。
個性は己の一部。理論も大事だが、割と「こうありたい」と言う意思が一番大事だったりする。脳筋理論だが気合で多少は理論を凌駕できるのだ。その分、反動がきついけど。
と言っても、いくら願っても電気みたいな大容量、と言うのは身につかなかったけどさ。
おっと、余計な妬みは後回し。電気にもできない精密制御。それが私の武器だ。
「名付けるなら、
命名がダサい?わかってますよ。ぶっちゃけただの思い付き、上手く行ったのは宝くじみたいなもん。けれど成功したからには簡単にはやられない。
「氷はまだまだあるからね!ガンガンお返ししてくよっ!」
「黙ってさせるわけないだろっ!」
再び迫る氷の壁。これの直撃は避けたいな。
ただ、近くに氷が増えるのは戦力という点ではありがたい。
『轟、逃げるぅ!しかし攻撃はそのままカミナリマッハが有効活用!これは詰んだかぁ!?』
『さぁな。お互い我慢比べだろう』
的確過ぎて泣いていいですか?相澤先生。轟君が炎を使ったらそこで終わり。そうでないなら我慢比べで、それは私の方が体格的に不利なんですよぉ!
「補充ありがとねー、轟君」
虚勢を張りながら、入試の時のようにイオノクラフト効果で上空に退避。
長くやってると、
「ちょこまか、よく逃げるなっ!」
「止まってたらやられるでしょうがっ!」
状況はやはり不利。
単独で逃げれば攻撃手段がない。
というわけで、氷漬けにならないように気を使いながら、時々攻撃という感じで戦闘が膠着し始める。
『すっげぇ、氷使いじゃねーんだよな?』
『違うな。周りが冷えてるのをいいことに、集めた電子で超電導現象、要はレールガンにしているんだろ』
『それ、当たったら拙いんじゃね?』
『本物に比べれば、弾速は遅い。それに遅くなってきてる。轟もそうだが限界は近いだろ』
あーもー、外から見てるとそんなダメなレベルか。
しかも明らかに限界だとわかるわけですね、わかりたくないです。
……駄々をこねても仕方ない。そろそろ、このままだと負け確の戦闘に幕を引こう。
「半分野郎、か。爆豪君もいいこと言うよね」
「あん?何を言いたい?」
「持ってるもん全部使わないのに、必死ぶってる舐めプ野郎ってさ、死ぬほどダッサイって思わない?」
低温で自身も凍えていて、だいぶ身体能力や判断力が落ちているのだろう。
キレたのか近接戦を挑んでこようとするが、それは悪手。
「こんだけ寒いのに頭冷えてないとか終わってない?あぁ、図星だった?ダサいって自覚あるんだねー、意外ー」
「うる……せえ!」
だいぶいいダメージが入ったようだ。
私も近接戦は苦手ではないが、寒さで体が動かないし体格的にも不利。わざわざ不利な格闘戦に付き合う必要はない。
寒さに対する耐久限度という点では、正直、圧倒的不利だけど。とはいえ、轟君も限界は見えているのだろう。体に氷を纏わりつかせながら話に乗ってきた。
「……テメェに、何がわかる!」
「判らないよ。聞いてもいない他人の事情なんてさ。けどねぇ、轟焦凍。アンタさ、半分しか使わなくて、ヴィランや災害から人を守れなかったとき、「俺は半分の力しか使わないから、あなたのご家族を助けられませんでした」って胸張って言うんだ?それが轟焦凍の求めるヒーローの姿か!」
「そんな……わけ、あるか!」
色々絡まれてた緑谷君とかは、もうちょっと事情を知っているのかもしれない。
半分野郎って爆豪君のセリフは、多分ただの直感の類だ。だからこそきっと正鵠を得ている。
その手抜きの轟君の力を間借りして、やっと指先が届く程度の自分では説得力に欠けるかもだけどね。全力も見ずに負けるってのは、気に入らない。精々、拗ねてる子供の癇癪ぐらいは引き出してやる。
「だったら!ちゃんと夢を見ろ!笑顔で進め!!
「好き勝手……いい、やがって……」
咄嗟に飛びのけたのは我ながら上出来かもしれない。
予想以上の轟君の炎。あっという間に氷弾は溶けて消えた。
元々便乗商法みたいな武器だった。残った電子を圧縮にかけて本命に切り替える。正直、余波であったまったので体は動くが、血流が戻った指先がピリピリと痒いのがつらい。集中が乱れそう。
けど、もうちょっとだけ頑張って、笑え、私。とっておきの1発は満足な威力が出せそうなんだから。
「敵に塩を送りやがって……俺だって、ヒーローに!」
右半身に氷、左半身に炎を纏う轟君に、感極まったらしい
「焦凍ぉぉぉ!!やっと己を受け入れたか!!そうだ!それでいい!それこそがお前の真の姿!今こそお前の始まり!俺の血を以て俺を超えて、俺の野望をお前が果たせぇぇ!」
『エンデヴァーさん、急に激励か?親バカ?なのね』
「うわ、だっさぁ。今時、子供が親の所有物ぅ?野望??ないわー。
おお、なんか会場が凍り付いた。「でも気温は下がってないね。不思議ー」とか波動先輩なら言うかもしれない。あの人ならきっと、何も考えずエンデヴァーを翻弄する。
多分、観客席で電気が頭抱えてるだろうなぁ
けれど知ったことか。私の夢は私のものだ。轟君の夢も自身のものだ。親の夢も希望も諦観も、子供には関係がない。望むように進めるかは別の問題だけども。
「苦労してるね、轟君」
「親父に啖呵切ったのはスゲェが、頼みの氷はもうねぇぞ。この状況で何笑ってやがる」
「とっておきはお披露目したいじゃない。それと―――」
必死に集め利用した電子の塊が右手の掌の上で浮いている。多分、もう一度やれと言われても困難なエネルギーの塊。
轟君が炎を使ってくれたことで、高温の空気を含ませて完成したプラズマ弾……のようなもの。正直、命の危険があるレベルと判断されてもおかしくないけど、どうやら最後までやらせてくれるらしい。
「―――オールマイトが言っていた。怖いとき、不安なときこそ笑えって。
「―――――――――っ!!」
後はもう、言葉は要らない。
右掌に浮かぶスパークを上げるエネルギー弾。これを押し出した今、私のトーナメントは終わった。迎え撃つは轟君が生み出した極冷温と超高熱で爆発した空気の衝撃波。あー、これ、押し返されたら死ぬかなー
それぞれがセメントス先生が出したコンクリ壁を粉々にした瞬間、甘い香りと共に私の意識は途切れていた。
「起きたかい。随分と無茶したね」
目覚めは決して快適とは言い難く、これがダメな大人が味わう二日酔いと言うやつか、ってくらいに頭がガンガンする。
「ホレ、お食べ」
「あ、シンリンカムイ。渋いですね。頂きます」
タブレットのお菓子を奥歯でかみ砕く。舌の上に広がる甘味がいくらか頭痛を和らげてくれる。
「操作にカロリーを使うタイプかい?」
「いえ、頭痛はキャパオーバーの反動ですね」
「ならいいが。あまり無茶はするんじゃないよ」
「はい。ありがとうございます」
軽い注意をもらった上で、怪我の状況説明。
とはいっても粗方は治癒済み。脚や指先は凍傷がだいぶヤバかったらしいけど。
「その辺は轟と、さっさと止めなかった審判も後でお説教だね」
「いやまぁ、あの状況、ヒーローであればあるほど、浪漫で止められない気がしますよ?」
実際、攻撃を放つまで止めてこなかったし。
結局、ヒーローって、努力・友情・熱血大好き人間じゃないですか。
「はぁ……それで、なんであそこまで無茶したんだい?言っちゃなんだが、轟とそこまでの関係ないだろ。惚れたかい?」
お年寄りはすぐにそういう事を。
「色恋じゃないですよ。持ってるもの全部使って、それでも足らないで足掻いてる身からすると、持ってるもの全部使って勝負しないのはムカつくなーって」
「で、全力を引き出すようにたきつけた、と」
「実際、そこまで良いものでもないです。正直、半分は才能への嫉妬とかただの八つ当たりとか同族嫌悪がグチャグチャですね」
「なら残りの半分はどうなんだ?」
「んー?どうせ負けるなら、全力を、高みを見たいじゃない。てか、居たのね、轟君」
気が付かなかった。隣のベッドにいたよ。どんだけ気が抜けてたんだろう。
今更だが、結果は双方失神行動不能。ただ爆風で私が場外となり決着がついたのだとか。
「まぁ、その、なんだ。悪かった」
「謝ってもらう要素は何もないと思うけど。何にしてもグッドゲーム。おめでとう、轟君」
「あぁ、ありがとう」
こつんと拳をぶつけ合って、互いの健闘を称えあう。
ボロボロのジャージは気を失っている間に脱がされていて、新しいものを支給された。本格的なお説教は、体育祭が終わった後のお楽しみだそう。楽しみじゃないです。
対轟戦でした。
先のこともありますし、多少の違いはあれど、左も使ってもらいました。
緑谷にやらせなかったのは、粉砕骨折の回数減らしが一つと、もともと覚悟ガンギマリ君なので、戦闘経験を多少減らしても補填は可能と思っているから。というか、補填します。主にグラントリノと猫さん達がw
オリ主特権チート技