雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

2 / 115
第2話 入学試験(2)

「電気―、マッハ―、郵便よー」

 

 ロボットヴィラン相手の大立ち回りという実技試験から1週間。

 雄英からの郵便物が届いた。

 

「おー、来たかー」

「どうなってるかねー?なんか厚みあるけど封筒小さいからダメだったかな?」

 

 昨今、様々な手続きは電子化されている。

 それでも学校とかお役所は紙の書類がまだ多いと聞くけど、と思いながら封筒を見る。

 権威付けだろうか、古めかしい蝋で封印された封筒。

 

「よ、よし。開けてみようぜ」

「うん」

 

 中身は折り畳んだ紙が1枚と何かしらのデバイス。

 なんだこれ?と思うより先に電気が手にしたデバイスから映像が現れる。

 

『わーたしーがー!投影された―』

「「オールマイト!?」」

 

 ナンバー1ヒーロー、オールマイト。

 確かに雄英OBではあるが、これは嬉しいサプライズ。

 

『HAHAHA

 なんで私が投影されたかって?来年度から私は雄英の教師となるんだ。

 まだ秘密だからね?

 さて、上鳴少年、上鳴少女……うん、ちょっとややこしいから名前で呼ぶね。

 電気少年、茉芭(まつは)少女、すまないが少々巻きが入っていてね。二人とも同じ内容なんだ。

 ご、ゴメンネ?手抜きじゃないんだよ?』

 

「ぷっ」

 

 筋骨隆々とした大男が縮こまっているのはなんかカワイイ。

 できれば今のところだけリピートしたいが、操作ボタンの類がなく映像は流れ続ける。

 

『ゴホン!

 気を取り直して、電気少年、茉芭少女。2人とも合格だ。

 電気少年は筆記はギリギリ合格ラインだ。けど長文問題を途中で諦めたりしてるから、もうちょっと勉強頑張ろうね?実技は仮想ヴィラン撃破によるヴィランポイントが59!これは今年の合格者でもトップランクだ。

 凄いネ。

 一方でレスキューポイント!これは同じ受験生や街の被害をどう抑えるかで評価するポイント、しかも審査制!こちらが残念ながらマイナス15ポイント!

 君に助けられた子もいるけどね、もーちょっと大規模攻撃は控えようね?』

 

 思わずため息が出る。

 どうせ調子に乗ってぶっぱしたに決まってるんだ。

 

「……何やってるの、受かったからいいけど」

「いや、だって、囲まれててかわいそうだったし。いい所見せたいじゃんか」

「試験中にナンパぁ?余裕だねアホ電気」

「してねーし。アドレスも聞けてねえよ。アホ落ちしてないからいいだろ?」

 

 会話が途切れたタイミングで投影されたオールマイトが話始める。

 どうやって収録したか知らないが、こちらの反応を読み切った個性の持ち主が向こうにいる、というのはちょっと怖さも感じる。

 

『さて、そろそろいいかな。

 茉芭少女は筆記は文句なし。校長が褒めてたよ。趣味問題解いてくれてありがとうって。

 実技のほうはヴィランポイント25、レスキューポイント40!

 あの大型仮想ヴィランを止めるとは驚いたよ。

 レスキューポイントはもうちょっと高ポイントでもいいと思うんだが、ログを精査すると停止タイミングがほんのミリ秒、終了後でね。ただ足止めは出来てたから評価はされたんだ。ちょっと割り引かれてしまったけどね。

 だがそれに挑んだ勇気!まさにプルスウルトラ!

 歓迎しよう!電気少年!そして茉芭少女!

 ここが君たちのヒーローアカデミアだ!!』

 

 念のため、私の方のデバイスも投影してみると確かに同じ内容だった。

 ついでに携帯で録画してみたけど、結果は謎技術により砂嵐。先端技術の無駄遣いしすぎじゃない?

 

「なに、マッハ―?お前、アレとやりあったん?」

「んー、成り行きというか、ちょっとテンションがブチ切れてて」

「俺よりよっぽど無茶してるじゃねーか」

 

 何はともあれ、春から雄英生。しかもヒーロー科。

 おめでたい気分なのだから、つまらない説教はお互い止めておこう。

 

 

 

「まずは2人ともおめでとう」

 

 仕事を早上がりしてきた父さんの音頭で合格祝いの宴会が始まる。

 

「雄英のヒーロー科に電気はともかく(・・・・)マッハまで受かるなんてな」

「あのな親父。成績はマッハのほうがいいっつーの」

 その電気のフォローに父はやや顔をしかめる。

 今は男尊女卑なんて死語の世界なんだけどなぁ

「純粋な討伐数ではダブルスコア以上の差がついたけどね」

「それでレスキューポイントがマイナスは、ヒーロー失格だよなぁ」

「まぁ、そこはこれから学べいい」

 

 上機嫌の父はもっともらしく言うが、正気だろうか?

 その被害を自分が受ける立場になっても「次は気を付けて」と言えるなら本物だろう。

 

「それにしても、これからが大変ね。パート増やそうかしら」

「あぁ、心配しないでいいよ。受験前に言ったでしょ?自分の学費、生活費は自分で出すから」

 

 その一言におめでたムードが凍り付く。そりゃそうか。

 寿司桶から中トロを摘まむ。うん、おいしい。

 

「『お前の弱個性では雄英なんて受かるはずない。受けるならすべて自分でどうにかしろ』だったよね?その通りにするから安心して。ただ、法律だけはどうにもできないんで、食後に保護者の署名が必要な分は署名お願い」

 

 ガリで口をさっぱりさせて、唐揚げで再び油まみれにするこの背徳感。

 明日のトレーニング少し増やさないとなー、と思いながら脂を炭酸レモン水で洗い流す。

 あぁ、これまたお寿司が美味しく頂けるのは幸せだ。

 大人ならここでビールなんだろうか。

 先ほどまでご機嫌でビールと寿司、唐揚げのコンボを決めていた父は苦々しいものを含んだような顔をしている。

 

「すまなかった。父さんが言い過ぎた」

「うん」

 

 表情から本心かどうかは疑わしいが、謝罪は受け入れる。受かった以上どうでもいいし。

 

「その、ね?茉芭、それでその、向こうでの住まいはどうするつもり?」

 

 雄英高校は静岡県垢離里に存在する。埼玉にあるこの家から通えるような距離ではない。

 当然、家を出て生活をすることになる。

 

「雄英OGが経営する女子専用アパートに入るつもり。いくつか仮押さえはしてあるから、予定通り、明日、見に行く。良ければそこで決まりかなぁ」

 

 困ったことに、雄英ヒーロー科に寮はない。

 正確に言えば、雄英高校の寮は存在自体はしている。

 ただし、普通科、サポート科、経営科が優先でヒーロー科が入居できる可能性はほぼない。と言うより非推奨。

 これは過去の生臭い事情がある、らしい。

 言うまでもなく、雄英においてヒーロー科はエリートだ。

 倍率300倍を潜り抜けたトップエリート、と世間ではみなされる。

 そして一番問題なのが普通科。

 普通科にはヒーロー科に落ちたが、入学後の転科に賭けて入学した人材が一定数いる。

 他校のヒーロー科を目指すのではなく、あくまで雄英、と言う人はそういう進路を選ぶ。

 つまり、ヒーロー科は普通科にとって憧れであると同時に、妬み、やっかみの対象となる。

 ヒーロー科から見れば普通科は追い上げて来る得体の知れない存在、よくてライバル。悪く見れば落伍者の群れに見える。

 そんなもの同士がひとつ屋根の下で仲よく切磋琢磨、なんて上手くいくか?

 もちろん普通なら相互不干渉か、うまく回れば互いに高めあうようなこともある。

 が、悪くなる年のほうが圧倒的に多かった。

 どちらかが一方的に、というわけではなく、ある年はヒーロー科の生徒が執拗な嫌がらせを受け心を病んだり、またある年はヒーロー科の生徒がその鍛えた体と個性により暴君として寮に君臨したり、普通科生徒に「トレーニング」と称した行為で死亡事故を引き起こしたりと、あくまで都市伝説の域を出ない生臭い話の範疇だが「ヒーローたるもの自覚をもって自活すべし」という不文律が出来上がり、遠方からのヒーロー科入学生は半ば自活強制となっている。

 

 雄英生女子専用アパートというのは、そうしたヒーロー科生徒の需要に応えるものとして存在する。

 私が選んだ物件は基本的に食事は自前だけど、朝食は希望すれば管理人が経営する1階のお店で食べられるし、小さいながらもトレーニング機器がそろったジムもある。

 その分、家賃はお高いが、進路で親と揉めてから投資で稼いだ資金は卒業までの学費と生活費を賄って余りある。

 

「あぁ、もちろん家賃も自前で出すから安心して。電気の分はどうするの?一緒に見に行くなら不動産屋、紹介するけど?」

 

「だってさ?どうする、親父、母さん」

 私ほどでないしても、少し冷たい目で両親を見る。

 もっとも全面的に私の味方、と言うわけではないが、同じ日に生まれた双子で男女差以上の差があるとわかっていたらいい気はしないらしい。

 自分が常に優先されるのを当然と思わない、双子の片割れが青少年らしい潔癖さを持ちあわせていた事を嬉しく思うと同時に、私のヒーローにこんな目をさせたらいけないなぁ、とは思った。

 

「真面目な話、雄英に2人も通わせるのは厳しいでしょ?だから本当に気にしてないから。でも、真面目に自分の分しかお金確保できてないんで、積立は電気に使って?」

 

 金額自体は嘘だけど。

 電気には言っていないが、自分のこれまでの養育費だって返してあるんだ。お金がない、と言うのはあり得ないので、言外の意図は通じていると思う。運もあったけど、よく稼げたと思う。

 これが普通科なら、学外でアルバイトして生活費の補填もできるだろう。

 サポート科なら、ギャンブル要素はあれど、使えるサポートアイテムを生み出せば在学中でも栄達の道が開ける。

 経営科は言わずもがな。彼らはお金のプロになる人材だ。私がやったつたない運頼みの投資など鼻で笑うだろう。

 

 そしてヒーロー科。

 わずか3年、たった3年でプロヒーロー、少なくともプロヒーローの相棒(サイドキック)として活動できるレベルにまで身体と個性を鍛え上げ、ヒーロー免許を取得しなければならない。

 バイトなどしてる余裕はほとんどないだろう。

 奨学金に頼ったヒーローが返済に追われ、実力はあるのに独立もままならないなんて、ヒーロー飽和社会の闇としていくらでも聞く話だ。

 

 

「……なら、お願いしようかしら。あっちには知り合いもいないし」

 

「わかった。後で予算を教えて。

 前からお願いしてたから、明日と明後日はパートないよね?契約関係はさすがに大人がいないとダメだから、悪いけど付き合って。足代は出すから。

 あとは電気。一緒に行く?一応、宿は確保してあるけど」

 

「おう、俺も行くわ」

 

 卒業生が退去してるだろうから、部屋はそれなりにあるだろう。

 良い物件は合格を疑わない自信家たちがすでに抑えているだろうし、後は早い者勝ち。

 不動産屋のWebサイトを開いて、良さげな物件を適当にマークして、後は仲介の不動産屋にメールをしておくことにした。

 






レスキューポイントは審査制なんだから、マイナス評価があってもいいじゃない(暴論)
周辺被害を出さず、ひたすら戦いながらもポイントゼロで抑えた爆豪少年は戦い方が上手い、ということで。

割と良くあるオリ主お金持ち説w
一応、現実でも未成年であっても保護者の承認があれば投資に手を付けることはできますので、後は運で荒稼ぎしたということで。

言うまでもない気がしますが、寮云々は捏造設定です。
寮がないはずがないんですよ、全国から受験生が集まる学校なんだし。
にもかかわらず、他地方出身の麗日お茶子が電車通学らしいセリフがありました。寮暮らしかもしれませんが、日常生活の描写がかなり偏ってて良くわからない、と言うのが正直なところ。

公式設定で定まっているかもしれませんが、アニメを見てわからなかったものは捏造していくスタイルですw

全寮制への移行は保護と内通者洗い出しもありますが、過去の寮で起きた事件を繰り返さないためクラス別、というのが本作の設定となります。
まぁ、この設定だと、全寮制で客(雄英生)が消えた不動産会社と地主が大損害受けるんですけどw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。