雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第21話 名は願い

 体育祭のあと2日間は代休、休校となっている。

 初日は流石に普段よりも遅めに起きた後、柔軟だけをこなして同じ女子専用アパート内の先輩方の部屋へお礼に回っていた。

 私の結果については、おおむねお褒めの言葉を頂いた。

 いやまぁ、最後の大爆発に関してはドン引きされたけれど。

 

 波動先輩からは「職場体験楽しみだねー、リューキュウも注目してたよ。来る?」と言っていただいた。

 現時点では無理に選択肢を狭める必要はない。

 とりあえずスカウトが来たら考えることにして、あとは2,3年の体育祭のビデオ鑑賞と、自身の反省点を纏めて今後のトレーニング方針をまとめることに時間を費やした。

 一佳とはビデオ通話をつかっての反省戦をやった。要は状況の動きが激しすぎて、狙いが定まらなかったのが原因だった。他のB組メンバーへの遠慮もあったみたいだけど。

 

「……今回は綱渡りだったけど見せ場は作れた。ただやっぱり外に出せる電子が少ないとやれることが限られるのが辛いなぁ」

 

 幸いなのは、今回の経験で多少は成長できたのだろう。

 自由電子を制御に置くのは以前より楽な気がする。装備無しでどうするかは……静電気を起こしやすい素材の下着にでも変えようか?でも肌触りとか悪いのも嫌だし、後回しでいいか。基本は装備アリだから、体育祭に特化した対策でしかないし。

 

 休み明け、通学中に体育祭を見たと声をかけられることが多かった。流石に雄英体育祭の持つインパクトは大きい。

 クラスでもその話題で持ちきりだった。

 

「やっぱテレビで中継されると違うねー!超声かけられたよ」

「あ、俺も!」

「私もなんかじろじろ見られて、恥ずかしかった~」

「葉隠さんは、いつものことじゃあ……」

 

 うん、何も知らない人には服だけ宙に浮いているようなものだし。そしてみられてたのは今回はソレじゃない気がするなぁ。気づいてないみたいだし言わないでおこう。

 

「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ」

「「ドンマイ」」

 

 アレは仕方ない。相性が悪すぎたよ。

 まだまだ興奮収まらぬと言った感じだが、廊下に人の気配がすると、即座に静まり返る。

 

「おはよう」

「「おはようございます!!」」

「ケロ、相澤先生、包帯取れたのね」

 

「婆さんの処置が大げさなんだよ。ンなもんより、今日のヒーロー情報学。ちょっと特別だぞ」

 

 クラス中に緊張が走る。

 先輩方にネタバレされている身としては、なんとなく申し訳ない気分になる。

 

「コードネーム。ヒーローネームの考案だ」

「「胸膨らむやつキター!!」」

 

 次の瞬間、相澤先生のひと睨みで静まり返る教室内。

 

「と言うのも、先日話したプロヒーローからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力と判断される2、3年生から。つまり、今回、1年のお前らに来た指名は将来性に対する興味に近い。卒業までにその興味がそがれたら一方的にキャンセルなんてこともよくある」

 

 

「大人は勝手だ!」

「頂いた指名が、そのまま自身へのハードルになるんですね!」

 

 どちらもごもっとも。価値を落とさないよう、頑張りなさいと言う事だね。

 

「そう。それでその集計結果がこうだ」

 

 電子黒板に表示された指名件数に皆の視線が集まる。

 

A組指名件数

轟    :4,023

爆豪   :3,456

常闇   :  360

飯田   :  301

上鳴(デ):  272

上鳴(マ):  190

八百万  :  108

切島   :   68

麗日   :   20

瀬呂   :   14

耳郎   :    5

口田   :    5

 

「例年はもっとバラけるんだが、今年は2人に注目が集まった」

 

「はぁーっ!白黒付いたー」

「3ケタ指名は十分多いんだから、まずはアピールできたと喜びなよ」

 

 それにしても私に190かぁ、あの詐欺まがいの戦闘結果に対して物好きもいるものだ。その辺の工夫込みでの評価としてなら嬉しいけど、どうだろう?

 

「1位轟、2位爆豪って、両者優勝な割に結構な差が」

「言動の差じゃね?」

「人気商売の面もあるしな。評判を落とされたら、って思ったらビビッて呼べないか」

「ビビってんじゃねーよ!プロがぁぁ!!」

 

 そう言うところだぞ。爆豪君。

 一方で八百万さんは、同じ推薦入学の轟君との差に気が重い様子だ。

 

「流石ですわ、轟さん」

「ほとんど親の話題ありきだろ」

 

 それでもあの戦闘能力は、ダメ元で手を付ける価値はあると思うな。

 

「指名来てるぅ~~」

「緑谷、お前、指名無いなぁ」

「うん、仕方ないよ。いいところ何もなかったし」

 

 飯田君を前後に揺さぶりまくってるお茶子ちゃんは、しっかり見せ場を作ったし、むしろ少ないくらいだと思う。

 緑谷君は録画を見た限り、障害物競走と騎馬戦では十分に見せ場を作れてたけどね。個性を発揮した場がおそらくない。温存したのが仇になったのだろう。私との対戦は、何もさせなかったし。

 ともあれ、数字の傾向を見るに、この時期の指名は本当に興味本位、トーナメントの結果だけ見た戦闘能力優先なんだろうな。

 

「この結果を踏まえ、指名の有る無しにかかわらず職場体験に行ってもらう。お前らはUSJで一足先に実戦を経験してしまったが、プロの現場を体験し、より実りある訓練にしようってことさ」

 

 そして現場に出る以上、本名ではなくてヒーローとしての名前が必要になる、と。

 

「それでヒーロー名ですか」

「俄然楽しみになってきたー!」

 

「その通りだ。だがそのヒーロー名はあくまで仮の物だが、適当なモンは―――」

 

「つけたら地獄を見ちゃうよぉ!学生時代につけたヒーロー名が一般に定着して、そのままって人多いからねぇ」

 

 相澤先生のセリフを引き取って表れたのはミッドナイト先生。

 なんでわざわざ、胸を強調するポーズをとって現れるのだろうか。ホント不思議ー、って言いたくなる。

 

「その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのはできん」

 

 そう言って寝袋にくるまった相澤先生。いやまぁ、いいですけど。

 

「将来自分がどうなるのか、名前を付けることでイメージが固まり、そこに近づいていく。それが名を体を表すってことだ。オールマイトとかな」

 

 オールマイト?考えてみたことなかったけど、almighty(全能)からALL MIGHT(オールマイト)かな?もっとシンプルに「すべて力(all might)」なら、脳筋万歳(オールマイト)のほうが近いと思うけどまぁ、それはそれ。

 わざわざフリップボードが回されたということは発表形式かぁ

 まぁ、その名で呼ばれるようになるんだし、問題ないか。

 けど、ヒーローになりたい、と思ってても、今になってみれば受かると思ってなかったんだろうなぁ。

 全く考えてなかった。ヤバイ、どーしよう。

 

 

「さぁ、そろそろ出来た人から発表してね」

 

 実際のところ、ネーミングセンスはウチの家系は壊滅的だ。

 私なんてカミナリマッパって、昔のバイクの異名だからねぇ、名前の由来。

 真っ白いボードを前に悩んでいると、青山君が教壇に立った。

 

「じゃあ行くよ。輝きヒーロー「I can not stop twinkling.(キラキラが止められないよ☆)」!」

「「「まさかの短文!?」」」

「ここは、Iを取って、Can'tにしたほうが呼びやすい」

「うぃ、マドモワゼル!」

 

 どちらにしても長いが、「Can't stop twinkling.(キラキラが止められないよ☆)」が青山君のヒーロー名に決定した。

 

「じゃあ、次ワタシー、エイリアンクイーン!」

「ツー!?血が強酸性のアレを目指してるの?権利で揉めるし、やめときなさい!」

 

 即答でのダメだし。似合ってはいる気がするけども。惜しい。

 微妙な空気になったのを破壊してくれたのは、梅雨ちゃんだった。

 

「小学生の頃から考えていたの。梅雨入りヒーロー・FROPPY(フロッピー)

「可愛い!親しみやすく、言いやすい!みんなから愛されるお手本のようなネーミングね」

 

 RがLになると古い情報媒体になります、と言うのは野暮だから言わないでおこう。

 空気を換えてくれたおかげか、フロッピーコールが巻き起こったけど、相澤先生が起きなくてよかった。

 次に続くは切島君。

 

「じゃあ、俺も。剛健ヒーロー・烈怒頼雄斗(レッドライオット)!」

 

 あ、当て字が。コスチューム、特攻服に変えるのかな?

 

「赤の狂騒!漢気ヒーロー・紅頼雄斗(クリムゾンライオット)のリスペクトね?」

「そうっす。ちっと古いけど、俺の目指すヒーロー像はクリムゾンそのものなんです」

「憧れの名を背負うのは、相応の重圧がついて回るわよ」

「覚悟の上っス」

 

 目指すものがはっきりしているのは羨ましい。

 さて、私の憧れたヒーロー……と言っても、今になっても名前もわからないからなぁ

 切島君が席に戻ったところで、私も教卓に向かった。

 

 

「では、次は私が。レディオノイズで」

 

 「欠陥電気(レディオノイズ)」。元ネタは古い小説でたまたま図書館で見かけて知った名。意味合いは違うが、電気に劣ると言われ続けた自分にそっくりだと思った。

 いまでも電気には劣る、という意識はある。実際、スカウト数が世間からの評価もそうだと言っている。なら、紛い物とされた少女達を示すその名は、自分にちょうどいいかと思ったのだ。だが、ミッドナイト先生は険しい顔をしている。

 

「んー、響きは悪くないんだけどね……これも権利関係揉めそうだから却下。それと上鳴さん、貴女、この名前にどんな願いとか意味を込めた?て言うかまた古い作品知ってるわね……もう……げふげふ」

 

 流石にこの場でネガティブなことを言うのは憚られる。

 と言いますか、先生知っていましたか。それは、まぁ、言われるかなぁ

 

「と・も・か・く!どうしてもソレがいいなら止めません。でも、その名の意味を知る人が、心からその名で貴女を応援できる名前かしら?助けた人からその名前で感謝を告げられて、自分自身、本当にそれを喜んで受け取れるかしら?そも、超電磁砲(レールガン)使っておいてその名はないわー」

 

 概略だけはなくて、実はきっちり読んでるんですね。

 

「えっと……はい。考え、直します」

「よろしい。皆も、胸を張って名乗れる名前にしなさいよ」

「「はい!」」

 

 もの言いたげな電気と、目を合わせることはできなかった。

 

「はぁ……まぁ、そりゃ、ダメだよね」

 

 音がしない程度に頬を数度たたいて気合を入れる。

 自分が誇れるもの、譲れないモノ、願い。自分を示し、象徴するモノ。

 今までいろいろ意地を張って来た気がするが、どれもこれも譲れないモノってことではない気がする。

 本当に許せない、譲れないことだったら、雄英に受かった時にあんな軽い謝罪で済ませていない。

 

 じゃあ、轟君との戦いはどうだったろう。アレは我ながら死力を尽くしたと思う。

 死んでも譲れない、譲りたくなかったものはあっただろうか。

 ふと、あの時に腕を引かれた感触がよみがえる。いや、それこそナイナイ。

 困った。思っていた以上に私の中は空っぽらしい。

 とりあえずどうあっても譲れないものはこの命、個性。ならそれでいいかと、辞書ツールと検索サイトを開いて関連しそうな単語を検索しまくることにした。

 

 そうこうしている間に、響香がヒアヒーロー・イヤホン=ジャック、障子君が触手ヒーロー・テンタコル、瀬呂君がテーピンヒーロー・セロファンと次々を名前を決めていく。

 尾白君は武闘ヒーロー・テイルマン。名が体を表していると高評価だった。

 仕切り直しの三奈ちゃんはピンキー。これも判りやすくてよい。

 

「俺は帯電(チャージ)とイナズマでスタンガンヒーロー・チャージズマ!」

「キャー、シ・ビ・レ・ルー♪」

 

 ミッドナイト先生にも好評で、どうよ、というドヤ顔にイラっとした。

 透ちゃんはステルスヒーロー・インビジブルガール、まんまだ。体育祭でプレゼントマイク先生がそんな風に呼んでいたけど、偶然だろうしどちらにしても判りやすい。

 八百万さんが万物ヒーロー・クリエティ。

 轟君はまさかのショート。本名まんまだけど、本人がいいならいいのだろう。

 常闇君が漆黒ヒーロー・ツクヨミ、峰田がグレープジュース……今後は飲むのは控えるか。

 口田君のふれあいヒーロー・アニマも目指すところがわかりやすくてよいのだろう。

 

「爆殺王」

「そういうのはやめた方がいいわね」

「なんでだよ!」

 

 うわあ、私の時以上に声が重い。まぁ、殺すとか、ヒーローが言っちゃいけないよね。

 電子の他言語読みを探していて、イタリア語のelettrone(エレトローネ)でいいかと思ったが、どうも男性名詞のようだからさすがにちょっと。そういえば、electron(でんし)の語源ってなんだろ?

 

「考えてありました。ウラビティ」

「お洒落!」

 

 ゼログラビティと本名を組み合わせた名前。センスいいなぁ、ちょっと……いや、かなり羨ましい。

 語源が微妙ならそういう方向性もいいかと思いつつ、検索サイトでワードをさらに突っ込んでいく。残念ながら、electronとあだ名のmach(マッハ)の組み合わせは企業名と被ったり、音の響きが微妙に感じるからやめておこう。

 語源のほうはそのままでもいいけど、なんか物足りない……あ、これでいいか。

 

「ヒーロー名、思ったよりずっとスムーズに決まってるじゃない。残っているのは再考の上鳴さん、爆豪君と飯田君。それと緑谷君ね」

 

 

「はい。査定お願いします」

 

 正直、割と安易な気はするが。願いを込めるなら、これが一番だと思った。

 

「色々考えてみましたが、ブルーアンバー」

「ふぅん、意味は?」

「宝石です。私が扱う電子(electron)の語源となった琥珀(アンバー)。その変種で青琥珀(ブルーアンバー)と言うのがありました。好きな色だし、パワーストーンとしての意味合いが、その……願いとしての名なら、こうありたい、と思う言葉がいっぱいあったので、これにしたいと思いました」

「うん、よろしい」

「ありがとうございます。ミッドナイト先生」

 

 

 次に決まったのは飯田君だった。そういえばずいぶんと悩んでいる様子だったけど、ヒーロー名は「天哉」と本名そのまま。ニュースにあったお兄さん、インゲニウムの事件とも関係しているのだろうか。

 

 未だペンを一生懸命動かす爆豪君は時間がかかるとみて、ミッドナイト先生は緑谷君を指名した。

 緑谷君が決めたヒーロー名は「デク」。蔑称をプラスの意味に変えて背負う姿はとても眩しく見えた。

 

 そして爆豪君は「爆殺卿」。うん、心底疲れた様子のミッドナイト先生、ご迷惑をおかけしました。

 




オリ主、SEKKYOをされる回。
ヒーロー名は私自身のネーミングセンスが壊滅的なのでだいぶ悩みましたw

気付いた方も多いと思いますが轟、爆豪の指名件数は原作より減っています。
トーナメントの戦績や掲示板回での評価なども踏まえ、オリ主の指名数は上鳴電気と八百万のちょうど中間ということで190とし、耳郎、口田分となる各5、計10を加えた200をそれぞれ100ずつ轟、爆豪から引いています。
つまり騎馬戦のオリ主組による被害を2人に受けてもらってますw
葉隠がないのは……「服を着ろ。まずはそれからだ」となって、能力は魅力的でも全力で避けられました。
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