ひとまず、爆豪君のヒーロー名は未確定と言うか、本名のまま。
もう、ボンバーマンとか
「さて全員のヒーロー名が決まったところで、話を職場体験に戻す。
期間は1週間。指名のあった者は個別にリストを渡すからその中で自分で選択しろ。指名のなかったものは、あらかじめこちらからオファーした全国の受入可の事務所40件、その中から選んでもらう。当然、それぞれ活動区域や得意なジャンルが異なる」
「例えば、13号なら対ヴィランより事故災害や人命救助が中心、とかね」
4桁の事務所から選ぶ轟君、爆豪君よりマシだけど、190件もあるのか。
流石に全部を詳細に調べる訳にはいかないね。
「よく考えて選べよ。それと葉隠。お前は放課後、コスチューム一式持ってサポート科のパワーローダー先生のところへ行け。体育祭の件で、コスチュームの強制更新が決まった。拒否は許さんそうだ」
「はぁ~い」
「ハイは伸ばすな。職場体験にはそれを持って行け」
「はい!」
それは受けざるを得ないよねぇ、ここまで放置してた学校側も大概だけど。
さて、思っていたよりも多いが、どう選ぼうか。
せめて電子データでくれれば、一気なんだけどなぁ。
「あと、上鳴
「はい」
「職場体験の希望は週末までに出せよ」
はて。戦闘でのやりすぎ云々は、決勝戦がアレだったから無罪放免と思ってたのだけど。
ともあれ、呼ばれたら行かざるを得ないか。
「1-A 上鳴茉芭です。リカバリーガールがお呼びと聞きました」
「お入り」
リカバリーガールはカルテを書いていた手を止め、空いている椅子に座るように促す。
「昼休みにすまないね。食事は?」
「まだです。終わったら軽く食べようかと」
「イレイザーヘッドみたいにゼリー飲料で済まそうってつもりかい?年頃の娘なんだ。ちゃんと栄養は取らないと成長に響くよ。ただでさえヒーロー科は過酷なんだ」
それはお話の時間次第ですと言いたいが、わかってるとばかりにサンドイッチの包みと野菜ジュースのパックが渡された。
「お食べ」
「ありがたく頂きます……おぉこれは」
「毎年1年は中々ありつけないからね。迷惑料だよ」
ランチラッシュ食堂の個数限定、フルーツサンドだった。栄養のバランスとは?と思わず問い詰めたくなるが、食堂との距離の問題で上級生が買い占めてしまうため味わう機会がなかった。1年生にとっては幻の逸品を前に、つまらない突込みは無粋だろう。
思わぬ幸運にリカバリーガールに感謝をささげたのは言うまでもない。
時間がたってなお美味しいその味に舌鼓を打ちながら話を待つ。
「食べながら聞いとくれ、職場体験、色々とオファーが来ているだろう?」
フルーツサンドを堪能しながら頷く。うまうま。
「それでもしよかったら、行って欲しい所があってね」
差し出されたのは、相手先であるヒーロー事務所からのスカウト資料。
医療系ヒーロー事務所・アスクレピオスの名前は知っている。「医療の神」の名を冠するヒーロー事務所で、所属しているヒーローはリカバリーガールを筆頭に医療系、もしくは医学に活用できる個性の持ち主が集まっている。
所属するヒーローとサイドキック全員が医師や看護師などの医療資格を取得しているという、頭脳エリート。日本はもちろん世界の災害現場で活躍している。別にアスクレピオスというヒーローが立ち上げたわけではなく、医療系NGOを母体に持つ異色の事務所だ。
読んでみると、どうもリカバリーガールからの依頼でオファーを出しているらしい。確かに神経系を”見る”事が出来ると理解してから人体の急所を攻撃できないかと、鍼灸なども調べていたけど。狙いは何だろう。
「私の個性は確かに神経に対しても影響を与えますが、医療分野では専門機器ひとつに劣ると思うのですが」
「今はね。今後の伸びに期待しての事だよ。もちろん無理にとは言わないよ。ま、フルーツサンド分だけでも考えてくれると嬉しいね」
「1年生でこれを味わえたのは確かに価値ありますね。美味しかったです。ごちそうさまでした」
はー、幸せな気分になれた。甘味は正義だよねぇ
先輩方に聞いて、一度食べてみたかったのだ。一佳を盛大に悔しがらせてやろう。
上手く掌で踊らされた気分だが、きちんと検討することを約束して保健室を出た。
教室に戻ると、食事を終えて戻ってきた皆が職場体験先について話をしていた。
三奈ちゃんにオファーがなかったのは、確かに不思議。トーナメントの戦闘は確かに微妙さはあったけど、容姿も整っているし、そういう事務所がオファーを出してもおかしくはない。
お茶子ちゃんは瀬呂君や緑谷君と話し中か。
「実は私、もう決めてるよ」
「ホントにー?」
「どこに?」
「バトルヒーロー、ガンヘッドの事務所」
お茶子ちゃんの選択は何とも意外に過ぎた。けど、近接格闘の強化にはいいのかも。
あ、なるほど。どうもヒーロー名のことでまだ冷静になれてなかったようだ。私らしくもない。普段の私なら、あの場で即決していたはずだ。
「強くなればそんだけ可能性が広がる。やりたい方だけ向いてても見分狭まる」
思わず、そんなお茶子ちゃんに拍手をしていた。
「茉芭ちゃん、リカバリーガールのお話終わったの?」
「うん。それよりも、お茶子ちゃん、ありがと」
いきなり礼を言われて、何を言っているかわからないという顔。
それは確かにそうか。
「え?ワタシ、なにかしたっけ?」
「いま、可能性がーって言ってた。ちょっと視野が狭くなってたな、って思ったから」
「そっか、役に立ったなら嬉しいよ」
戦闘能力向上を狙うなら、職場体験後に2年生のお姉さま方を紹介するのも悪くない。
きっと、喜んで鍛えてくれるだろう。
「それでー?何の話だったの?」
「あぁ、お勧め事務所の話。そこにしようって今、決めた」
「へー、リカバリーガールのお勧め?どんなところ?」
「えっと、上鳴さん、どこに決めたの?」
何を選んだのかは三奈ちゃんと緑谷君の目が輝いて興味津々だ。そりゃ気になるよね。
「医療系ヒーロー事務所アクスレピオス。リカバリーガールも所属してるからその伝手だね」
大手ヒーロー事務所というと、象徴たるヒーロー1名で多数のサイドキックを抱える形のところが多い。代表的なところだと、現在は事務所は休業してるがオールマイト事務所とか、現役ならエンデヴァーを筆頭にビルボード上位の事務所はすべてこの形だ。
アクスレピオスはその逆で、サイドキックが多いのはもちろんだが単独行動可能なヒーローを複数抱えている。そして事務所自体の知名度は高いが個々の知名度は一般には決して高くいない。在り様としては、今のヒーロー業界では異端に近い。
「医療系っていうのは、ちょっと意外」
「実は自分でもそう思う。見分を広げるっていう、お茶子ちゃんリスペクトってことで」
多少、勢い任せの感はあるが、寄り道も悪くないだろう。
話が聞こえたか、轟君と八百万さんもこちらに来た。
「上鳴、行先、決めたのか」
「あぁ、うん」
「親父のところからのオファーはなかったか?」
リストをしっかり見る前に呼び出されたからなぁ
改めてリストを見ると、しっかり「エンデヴァー事務所」の名が。あのお誘い、社交辞令じゃなかったのか。
「あるね。戦闘特化の事務所に行っても、失望させるだけって思うからいいんじゃない?」
「体育祭の時にも思ったが、妙に自己評価低くないか?俺とあれだけ渡り合って弱いってことはねぇだろ」
「言ったじゃない。アレは環境依存の裏技だって」
単純な戦力としての評価なら、環境をものともしないか、環境を作って押し付ける事が出来ない時点で強いと言えるか疑問を持ってしまう。
勘違いしたくないし、させないで欲しいものだ。
「……誘いを蹴られたアイツがどんな面するか見物だから、楽しみにしておけ」
「お手柔らかにね、それよりも、人を親子のじゃれ合いのダシにしないでよ。それで轟君はエンデヴァーのところに?」
「あぁ、慣れ合うつもりはないが、やらないといけないこともある」
「そっか。頑張って」
「あぁ」
焚きつけた覚えはあるから何のことかわかるけど、そこは口出しできないね。
「八百万さんはもう決めた?」
「いえ、それが少し悩んでおりまして」
そう言ってリストを見せてくる。見ていいなら、遠慮なく。
チェックが入っているのは気になっているところかな。
有名どころは少なく、中堅どころが多い印象。この中で一番知名度が高いのはウワバミの事務所だけど。
「緑谷君。このリスト見て」
「え?ぼ、僕っ!?」
「で、そのリストを見て思うところがあれば。特にリストトップのウワバミ事務所」
「えっと、流石に事務所名から傾向を今ここですぐにってのは厳しいけれど、上鳴さんが気にしたスネークヒーロー・ウワバミはメディア露出も多いから人気は上がってきてるね。でも、ヒーロー活動は災害救助が多くて、もちろん、災害救助に重点を置くヒーローが忙しくないことはよいことなんだろうけど、事務所運営はかなり芸能活動に依存してるって聞いた覚えが」
「うん。どうもありがとう」
さすがオタク。八百万さん、唖然としてるな。轟君は感心半分、爆豪君は爆発寸前だから触らぬ爆弾にたたりなしで。
「えっと、ご意見、ありがとうございます」
「八百万さんは美人でスタイルもいいから、そういう方向で売り出していくのも悪くはないと思うけど」
余計な脂肪は適当なものを創造するだけで消費できる素敵ボディのおかげでプロポーションは群を抜いている。
そもそもがいいところのお嬢様だから、立ち振舞いも洗練されている。芸能活動にも十分対応できるだろう。ヒーロー免許は自衛に個性を使うため、と言うレベルならどこの事務所でも問題ないし、芸能関係にコネを作るのも悪い選択ではない。
「もう少し、考えますわ」
それがいいと思います。ええ。
「そんで、そっちはどうなのよ。指名、いっぱい来たんでしょ?宝石乙女のブルーアンバーちゃん?」
「やかましい。まぁ、バトルフィストさんよりは多いかもねぇ?」
「嫌味かこの子は……と言いたいけど、レクリエーションも真面目に出ておくもんだね。いくつか来た」
今日のランチは紹介と情報交換を兼ねて八百万さんを誘い、一佳と食べている。
そもそも共有の話題がなくて、ヒーロー名の話になったら「慣れるためにもこの場では本名禁止にしよう!」と言う一佳の仕切りでこうなった。
名前の由来は結構笑われた。「意外に乙女だったんだ。安心した」と笑いすぎて涙をこらえながら肩をバンバン叩くな。酔っ払いのおっさんかと問い詰めたい。
こういうおふざけができる程度にはB組の他の子とも気軽に話をできるようにしておきたいけど、なんか、怯えられているというか、遠巻きにされているんだよねぇ
「それで、もう決めたの?」
「んー、どうしようか悩んでてさ。指名と言ってもそんな数ないし。B組は体育祭ではパッとしなかったでしょ?なんか物間が煽るから、みんな変に対抗心燃やしてて。荒事に強いところが人気でさ」
実戦経験で差がついたとかさんざん言われたからなぁ、そうなっても仕方ないのか。
雄英が確保した40の事務所はすべてが戦闘重視ではない。だから対ヴィラン重視の所が争奪戦、というか、出来るだけ重複にならないようにする駆け引きが酷く、クラス内がピリピリしてるらしい。
「地力をちゃんと上げておく方がいい気もするけど。基礎トレの比率はB組のほうがいいじゃない」
「トレーニングルームの主に言われてもなぁ」
体育祭前にA組で自主練をやった人たちは、演習グラウンドでの実践的なのを優先する人が多かったからね。トレーニングルームは時々、障子君や尾白君が来るくらいだった。
「そんなわけで、武闘派大人気」
「で、武闘派としての素地があるバトルフィストとしては得意を伸ばすよりは、と?」
「そそ。一応、学校側のリストから希望出してもいいらしいけど、数少ないスカウト組が枠を圧迫するのもね。とりあえず来た中で一番、ランクが高いウワバミさんのところにしようかなと思ってる」
「けほっ、し、失礼しました」
「どしたのクリエティ?」
「い、いえ、その……ウワバミさんのことで、クラスの緑、いえ、デクさんから話を伺いまして……」
そこから「かくかくしかじかうまうま」となり、何やら考え込む様子に。
「そもそも、先輩方に慎重に調べないと後悔するってさんざん言われて、なんでそんな適当するかな。配慮も大事だけど、脳筋もいい加減しなよ」
「そっちこそ即決したんだろうが」
「ええと、お二人ともそんな喧嘩腰にならなくても……」
「意思を決めただけで手続きしてないよ。帰ってからネットで情報も当たって最終判断するわ」
お互い冗談半分で罵り合ってると、何やらガチで心配しだした八百万さんが困ってたので素に戻す。
「なんだ、もう終わり?マッハ」
「人を困らせてまでやる遊びじゃないよ。そうそう、組手の相手は明日でいいよね?職場体験後はお茶子ちゃんともやってみてよ」
話は終わり。とりあえず午後のヒーロー基礎学の準備をしないと。
「あぁ、あの根性ある子。ガンヘッドのとこ希望だっけ。いいなー」
「そーやって影響され過ぎるから、騎馬戦で振り回されて負けるんですけどー」
「あー、言ったな、この性悪!」
再び品のない言葉の応酬を始めた私たちを見て、今度は笑う八百万さん。
「お二人とも、とても仲がよろしいですね」
「「なんかもう腐れ縁、って感じで」」
不本意にもハモッた。
勿論、フルーツサンドと医療系ヒーロー事務所・アスクレピオスは捏造ですw
コネも使い、リューキュウ事務所と言うのも考えましたがヒーロー殺しルートはスキップになるし、そもそも飛ぶ能力は極めて限定的なので行っても足手まとい。
まだ、障害物競走で滑空してた障子(シーズン2第4話10:32ぐらい)のほうが役に立ちそう。
というわけで、わりとよく見るネタの初代インゲニウム救済(?)ルートへ。
ノープロットで書いてるので、本当に救済するかは書いてる時点では未定w
そして作中、ほとんど弄られポジというかかなり大外れ引いたんじゃないかって反応を見せていた八百万&拳藤コンビ。スナイプ先生が言う「よく考えないで失敗」したパターンなんでしょうが、期末試験まで尾を引いてた感じでしたからね。
弱者の自覚があるから事前準備を怠らないオリ主がいる、と言うことで、ちょっと改変入れました。