雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

24 / 115
第23話 職場体験(1)

 リストにあったヒーロー事務所について、ネットで大雑把に傾向を調べた。数が多いので本当にざっくりと。

 ヒーロー飽和社会。アピールのためにホームページやSNSは誰もがやっているから。一般向けの浅い情報でしかないが、それで十分。

 傾向的にはほぼすべてが都市部の対ヴィランが主な仕事。轟君の言う通り、2回戦での戦闘を評価してのことだろう。

 所属ヒーローを属性で見れば、電気系4割と言ったところか。電気系は騎馬戦でやった電撃の誘導を評価してのことと思う。ただこれは万年サイドキックの道まっしぐらとなるから、却下。

 

 職場体験がすぐに将来に直結するわけではないが、インターンまで視野に入れればよりメリットのあるコネにつなげたいところ。

 こちらに選ぶ権利がある数少ない機会なのだから、失敗は避けたい。

 

 他は土系や水系統はいない。氷系が多いが、炎系以上にありえない。確かに電子の動きは良くなるが、バッテリーには低温は大敵。装備込みだと実は低温すぎてもよろしくない。

 

 結局、戦闘系からのスカウトに素直に乗れないなら、選択肢はおのずと限られる。せっかく期待してくれたこともあるし、リカバリーガールに乗せられてみよう。

 翌朝、アクスレピオス事務所への希望票を提出した。

 

 八百万さんと一佳は思っていた以上に馬が合ったようで、2人で互いのリストを突き合わせた結果、共通して指名のあったカードックヒーロー事務所へ職場体験に向かうことにしたようだ。

 

 私とは逆に戦闘系へ向かう選択を取ったのが響香。指名は5件と少ないがその分、しっかり下調べができる。音楽系の副業をしている事務所や調査系はスルーして、なんとギャングオルカの事務所を選んだ。ゴリゴリの武闘派なので、ちょっと驚いた。

 

 

 指名の無かった生徒達の重複の調整と結果の通達、移動手段や宿泊先の確保、そして中間試験その他で中2週間を挟んだ週末、職場体験初日。正しくは移動日で正式な職場体験は翌日からになる。

 地方への移動が必要な生徒と近場の生徒で差が出ないための処置で、基本的には全員、前日に現地入りして挨拶まで済ませるのが建前となっている、らしい。

 そのままなし崩しに職場体験が始まるのが実情らしいが、建前は大事ということで。

 

「全員コスチューム持ったな。本来なら公共の場では着用禁止の身だ。落としたりするなよ」

「はーーい!」

「伸ばすな!はい、だ。芦戸」

「はい」

「くれぐれも体験先のヒーローに迷惑の無いように。じゃ、行け」

 

「「「はい!」」」

 

 アクスレピオス事務所は本拠地、と言うより事務局が東京にあり、まずはそこに来るように指定されている。東京方面に向かうのは他に数名いたな。

 

「あぁ、飯田君も東京方面だったっけ」

「上鳴さんか。あぁ」

 

 もとからお互いそんなに話す間柄でもないけど、なんというか話しかけんなオーラがすごい。休日の半端な時間だし、空いているから他でいいか。

 数列空けて席を取ろうと思ったら、見知った顔が居た。

 

茉芭(まつは)さん」

「よー、ブルーアンバーちゃん」

 

 八百万さんと一佳がいたので、2人席を回転させて3人で話をしながら東京まで行くことに。

 

「カードックさんのところは先輩の中に行った人がいたけど、結構ためになるらしい」

「まぁ、そうでしたの。今から楽しみです」

「確か、護衛任務が多い所だっけ?」

 

 ならば戦闘面でも得るものはあるだろうし、良い選択ではないだろうか。

 

「戻ってきたらバトルフィストがガードフィストに変わってたりして」

「あはは、それも悪くないねー」

「いいんですか、それで」

 

 そんな感じで四方山話に花を咲かせていれば、あっという間に終点。

 ここで皆とは別れて、それぞれの事務所に向かう。

 

 

 駅から徒歩数分。駅前の立派なオフィスビルの一角にアクスレピオス事務所はあった。

 

「本日からお世話になります。雄英高校ヒーロー科1年上鳴茉芭(まつは)、ヒーロー名ブルーアンバーです。どうぞよろしくお願いいたします」

「歓迎します。ブルーアンバー。事務局長の星井志矛院(ほしいしむいん)です」

 

 受付に迎えに来てくれたのはまさかの事務局長。

 

「あの、こちら、よろしかったら皆様で休憩の時にどうぞ」

「ありがとうございます。ランチラッシュ監修の雄英クッキーですか。懐かしいな。みんな喜びます」

 

 中に通されると、ヒーロー事務所と言うよりはごくごく普通のオフィス。

 ヒーローコスチュームに身を包んでいる人もいない。ただ、ひっきりなしにあちこちと電話をしていたり、忙しそうなのはわかる。

 オフィスの隅に打ち合わせ用らしいスペースがあり、そこで話を聞くことに。

 

「普通でしょう?」

「休日なのに忙しそう、とは思います」

「はは、一応、休みは交代で取ってますけどね」

「こちらは支援や調整の専門と言う事でしょうか?」

「その通りです。現在、国外に3チーム、国内では9チームが活動中です。我々は彼らが動きやすいように、現地の公的機関や拠点となる病院その他との調整が主な仕事です」

 

 どんなヒーローも報酬を得るためにはこういう地味な事務作業からは逃れらない。

 戦闘特化の人ほどこういう事が苦手なので、人を雇って解決するのが常らしいけど。そういう意味では経営科との接触も必要なのかもしれないけど、今はまだ考える事じゃないか。

 

「さて、職場体験の予定について説明しますね。ブルーアンバーにはこの後、屋上に待機させているヘリで体験先のチームに合流してもらいます。以降は彼らの指示に従うように」

「はい。かしこまりました」

 

 ここで星井さんがちょっと困った顔をする。

 

「職場体験でヘリまで動かすのは異例ですが、現地チームが手ぐすね引いて待ってまして。リカバリーガールから聞いていますが、個性の応用で神経系を見る事が出来るとか」

「そうですね。一応可能です。ただ医療機器の精度にはかなわないとは思いますが」

「さぁ、そこはどうでしょうねぇ……ともあれ、実りある職場体験になることを期待しています」

「ありがとうございます」

 

 星井さんとはここで握手をしたが、何やら最後には同情するような目で見られた気がする。リカバリーガール、なんか話を盛ってませんか?ちょっと逃げたくなってきたんだけど。

 初めて乗るヘリによる空の旅、東京遊覧という思わぬ余禄を心底楽しむことは出来そうもなかった。

 とは言っても、プレッシャーを感じてばかりではいられない。

 気分転換もかねてみんなに自慢してやろうと、職場体験中の情報交換にと立ち上がったクラス内メッセンジャーに写真付きで送ってやった。

 

『ヘリで空の旅満喫中、なうw』

『なにそれ羨ましい』

『いいなー』

『こっちも着いたぜ!なぜかB組の鉄哲もいるけどw』

『ケロロ、私はもうすぐ着くわ。海がキレイね』

『僕も着きました。頑張ってきます』

『皆さん頑張ってくださいね。私も頑張ってまいります』

 

 さらに遠方組もいるけど、ついた皆はもう動き始めてるか。移動日の定義が乱れてる。

 空を飛ぶことしばし、降ろされたのは病院の救難ヘリの発着場だった。

 

「ブルーアンバー、到着しました。どうぞよろしくお願いいたします」

「保須市総合病院へようこそ、ブルーアンバー。僕はホワイトマウス。本名も間臼(まうす)なので、気軽にマウス先生とかネズミ先生と呼んでください。まず、コスチュームに着替えてから、細かい話をしましょう」

 

 アクスレピオスが専用に確保している更衣室で着替えて、指示された会議室へ。

 ホワイトマウス先生からはジャケットとバイザー、グローブは緊急出動用の装備置き場に預けて、白衣を着るように指示された。

 白衣と共に渡された名札には「職場体験生 ブルーアンバー」と書かれた名札。ヒーローへの小さな一歩を確実に進んだと思えてちょっと嬉しかった。

 

「さて、改めてこれからの予定を説明しよう。まず今日は建前は移動日だから、軽い説明の後は職員宿舎へ……と言いたいけれど、予定していたチームから急遽、君を分捕った理由があってね」

 

 ……はい?

 

「……あの、なにかもすのごく不穏な言葉を聞いた気がするのですけど」

「大丈夫。君の耳は正常だ。まぁ、とりあえず話を聞いてほしい」

 

 苦笑を浮かべるホワイトマウス先生。とはいえ、そう極端に悪い話でもなかった。

 

「まず、僕たちは君の個性をある患者の症状を調査するのに使いたい。

 これは当初の配属予定でのチームでも基本的に内容は変わらないから、君が得る経験としては内容に差はない。質と量は大きく変わるけど」

 

 その時点ですでに職場体験と言う言葉に喧嘩売ってませんか?

 

「まぁ、まったくの期待外れだった時は、医療ボランティアの延長みたいな活動が中心となる。そうじゃない場合にはソレに加えて、君の個性を限界まで、いやその更に先まで振り絞ってもらうことになる。やっぱりやめておく?」

 

「いえ、私にできる今を尽くし、ご期待に応えたいと思います」

「さすが雄英生。そう来なくては」

 

 正直、虚勢もいくらか、いや、8割ぐらいはハッタリだけど。

 そのうえで案内されたのは地下にある施設。一般向けの検査施設があるよりさらに深い階層にある気密が保持された実験室だった。

 

「まず、君の個性の確認だ。個性「電子操作」体内外を問わず、電子を操作する。そのために電子を知覚でき、対人では神経網が結果的に透視できる、でよいかな?」

 

「はい。ある程度は集中が必要ですが、体育祭以降、その精度はいくらか向上したと思います」

「話はそれるけど、人間以外の物質の電子は常に見えているの?」

「いえ。やろうと思えばできるでしょうが、その場合、光で何も見えなくなります。おそらくは無意識下でフィルタがかかっているかと」

 

「なるほど。ではこの2体のマウスを個性で”見て”もらおうか。『チュウ(動くな)』」

 

 それがホワイトマウス先生の個性なのだろう。ひと鳴き?で凍り付いたように動かなくなったマウスを”見る”。心操君の時には気づかなかったが、他人の個性の支配下にある生き物と言うのは、中々に興味深い状態になる、と思った。

 指示棒替わりのピンセットを渡され、思うところを言うように指示された。

 

「まず、個体差と思える部分は除きますし、人間以外を”見る”のは初めてなので勝手が違いますが……右のマウスは左後足の神経に損傷がありますか?流れがいくらか渋いように思えます」

「なるほど。現時点でもかなり使えそうだね。チュウウ(もういいよ)

「ありがとうございます。それと個性での支配下では脳の活性が高まっているようです。多分、抵抗を試みてたのだと思いますが」

 

 傾向としては洗脳系なのだろう。全身異形型だから身体能力もマウス準拠かそれ以上だと思うけど。

 

「じゃあ次だ。ちょっとここからはキツクなるよ」

 

 神経に異常がある方のマウスをつかみ取ると、素早く四肢を拘束。メスで足を切り裂いて、傷口をピンセットで広げる。

 

「もう一度、”見て”。今度はこの電子顕微鏡の映像を見てほしい」

「は、はい……」

 

 流石にちょっとグロ。魚をさばくのと同じ、と思えば見れないこともないが。慣れないと。

 

「ええっと、すいません。映像以上のものは何も。直接だと電子顕微鏡から出る電子で何も見えません」

「あぁ、やっぱりこれはダメか。この分だとマイクロスコープ経由でも”見る”ことは難しいかな?」

「そうですね。機械を介するのはおそらく無理だと思います」

 

 映像の先まで電子操作をするには、私の知覚範囲がそこまで伸びるという事。それは理想だろうが流石に無理すぎる。要は自分の手を地球の裏まで伸ばせと言っているようなものだ。人間の限界を超えすぎている……いや、転移系個性がある人ならワンチャン行けるか?

 

「ふむふむ。なるほど。なら、このアプローチはここまでかな」

 

 そう言って、ホワイトマウス先生は足を切り裂いたマウスを別室に。後はお察しだが見せる必要はないという事だろう。実験に付き合わされた小さな命の冥福を祈った。

 

「期待はずれで申し訳ありません」

 

「早とちりは良くないよ。このアプローチはダメ、ってだけさ。少なくとも初見であってもマウスの小さな差異を君は知覚した。だからそちらから進めていく」

 

 そう言って、何枚かのレントゲン写真を実験室のパソコンに映し出す。

 

「これは現在入院中の患者、ターボヒーロー・インゲニウムのレントゲン写真だ」

「ニュースで見ました。クラスメイトにインゲニウムの弟がいます」

 

「そうだったね。再起不能報道があったように、脊髄損傷で下半身不随と診断されている。だいぶ粗末な刃物を使われたんだろうね。外科的処方での神経の再接合は出来なかった」

 

 そこに更に一般には報道されるはずもない傷口の写真。

 吐き気をこらえて写真を見るが、たしかに素人目にも荒い傷口だった。

 

「目を背けないのは上出来。もう少しこらえてね。現在の再生医療なら、この状態からでも再生できるケースはあるんだが、正直、成功率が良くない」

 

 神経組織は再生しないと思われがちだが、組織の再生を阻害する要因を薬剤で取り除けばきちんと再生するケースがある。ケースがある、つまり再生しないケースももちろんあり、飯田君のお兄さんはこの分の悪いギャンブルに負けたという事だ。

 

「最新医療機器の”眼”では再生自体は正常に行われているにもかかわらず、インゲニウムの半身不随は改善していない。体のどこが悪くて再生を阻害しているかわからない。そこで君の出番と言うわけだ。とりあえず意識しないでも”見る”事が出来るくらいまで、徹底的に個性を使い倒して人間を見て、触れてもらうから、覚悟してね」

 

 これ、職場体験でやることかなぁ?と思った私は悪くないと思う。

 




カードックヒーロー事務所はアニメ版では轟のリストに名前がありました。多分、爆豪にも出していたでしょう。本作では両名から削った分のうち、八百万、拳藤本来のスカウト枠と入れ替える形で2人にスカウトを出したという地味な改変。
耳郎に関しては冬のインターンがギャングオルカの所なので、前倒しで放り込むことに。
これら1-A他メンバーの改変部分は、別途、纏めて取り上げます。

登場したオリキャラ
名前はともかく、オリ個性考えるの楽し―(白目

星井(ほしい)志矛院(しむいん)
医療系ヒーロー事務所・アクスレピオス事務局長。事実上の代表で無個性。
雄英高校経営科出身。卒業後は海外留学の後にアクスレピオスに就職、事務局長に上り詰めた。
ちなみにアクスレピオスは、大体の現場でメンバーが頑張りすぎてて事務局もそれを支えようと頑張ってしまうためセルフブラック企業と化してますw

間臼(まうす)実健(じつけん)
ヒーロー名:ホワイトマウス
アクスレピオス所属のプロヒーロー、医師。ネズミの異形型で外見は頭部は白ネズミ。
オリ主の指導役兼初代インゲニウム飯田天晴の主治医という捏造キャラ。
個性「マスターマウス」
げっ歯類と意思疎通が可能。操る事も出来る。本人もネズミにできる事はネズミ以上にできる。実は根津校長からは蛇蝎のごとく嫌われてるw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。