職場体験が終わってからの初の授業。自主トレを兼ねて時間ギリギリまで登校する生徒を”見て”いたのだけど、教室に入ると珍しく笑い声というか、爆笑が響いていた。
「「マジか!マジか爆豪!!」」
「笑うなぁ!癖ついちまって洗っても直んねぇんだ!」
切島君と瀬呂君に更に笑われた爆豪君が完全にキレた結果、髪型が戻ってしまった。
聞いた話ではベストジーニストの所に行ったらしいが、ご愁傷様という言葉はどちらに投げかけるべきだろうか?
「へー、ヴィラン退治までやったんだ。羨ましいなぁ」
「避難誘導や後方支援で、実際に交戦はしなかったけどね」
「それでも凄いよ」
「私もトレーニングとパトロールばかりだったわ。一度、隣国からの密航者をとらえたくらい」
「「それ凄くない!?」」
三奈ちゃん、響香、梅雨ちゃんが話しているところに私も加わる。
「おはよう。職場体験の話?」
「そ、マッハはどうだった?」
「トレーニングとリハビリ介助かな。3日目の夜は保須の事件で患者さん押し寄せて簡易トリアージと誘導に駆り出されて徹夜してたけど」
「「それも大変そう!」」
実際たいへんでしたよ、ええ。脳無に見つからずにすんだのは本当に幸運だった。
梅雨ちゃんがお茶子ちゃんに話を振るが、この1週間で一番変わったのは彼女かもしれない。
「お茶子ちゃんはどうだったの?この1週間」
「コォォォ……とても……有意義だったよ」
「目覚めたのね、お茶子ちゃん」
「おー、すごい。今度、一佳も誘って組手しようね」
「今度はウチも誘ってよね」
軽いシャドーだけどしっかり腰が入ってる。対戦相手が増えて一佳もきっと喜ぶだろう。
その様子をうかがってた峰田と電気だけど、何か峰田はおびえた様子が。
「たった1週間で変化すげぇなぁ」
「オンナってのは、元から悪魔のような本性を隠し持ってるのさ……」
「
これでしばらくでも大人しくなってくれれば御の字。感謝します、
「まぁ、俺は割とチヤホヤされて楽しかったけど。一番変化、って言うか大変だったのはお前ら3人だな」
電気の視線は緑谷君、飯田君、轟君に向いている。かなりの怪我を負っていたしね。
それにしても、チヤホヤ、ねぇ
どうしてそういう待遇だったか、ちゃんと理解しないと万年サイドキックで個性だけいいように使われる未来が待ってそう。
「そうそう。ヒーロー殺し!」
「命あって何よりだぜ。マジでさ」
それに皆が口々に心配の言葉をかけながら3人のところに。終わった後に気付いたけど、緑谷君からの一斉メールがあったしね。多分、ヒーロー殺しとの交戦した場所だろう。
「上鳴さんも保須に居たみたいだけど……」
「病院で避難誘導に追われてたわ。落ち着いてから、入院したって聞いてお見舞いしたらピンピンしてたけど」
全部を言う必要もあるまいと尾白君の問いには多少ぼかして答え、彼らを見るとわかる程度に頷いてくれた。
「俺、ニュースとか見たけどさ、ヒーロー殺し、ヴィラン連合とも繋がってたんだろ。あんな恐ろしいのがUSJに来てたら、と思うとぞっとするよ」
「でもさ、ヒーロー殺しの動画見ると、一本気っうか、執念というか、格好よくねぇ?とか思っちゃわね?」
「上鳴君!」
「あ、わりぃ」
何を寝言を言っているだろうね。このバカ電気は。
「いいさ。確かに信念の男だった。クールだと思う人がいるのもわかる。だが奴は信念の果てに粛清という手段を選んだ。どんな考えを持とうと、そこだけは間違いなんだ。俺のような人をこれ以上、出さぬためにも、!改めて俺はヒーローへの道を歩む!」
電気にちょっと言ってやろうかと思ったが、飯田君がきれいに締めてくれたのでこの話はそれで終わりでよいのかな。
個人的にはあんなの単に個人の好みの話で、気に入らなければ偽物呼ばわりしてるだけど思うけど、まぁ、それはいい。問題はアレで煽られた人間が、ヴィラン連合やその他の裏組織に集まるだろうこと。その方が怖い。トップヒーローや警察は頭抱えていそうだなぁ
「はい、私がスルっと来た。今日のヒーロー基礎学は、職場体験直後ってことで遊びの要素を入れた救助訓練レースだ」
「はい!救助訓練ならUSJの方がよろしいではないでしょうか?」
「んー、あっちは災害時の訓練になるからなぁ。私はなんて言ったかな?そうレース!!」
要するに5人ずつグラウンドγの各所に分かれて、
「もちろん建物の被害は最小限にな!」
「指さすなよ」
最初の組は緑谷君、瀬呂君、尾白君、飯田君、三奈ちゃんだ。
順番待ちの間はモニターで各自のコース取りや動きを見学する。
「しいて言えば、緑谷さんが若干不利かしら」
「確かに。ぶっちゃけアイツの評価ってまだ定まんないんだよね」
「何かを成すたびに大怪我してますからね」
「そこは職場体験で何をつかんできたか、じゃないかな」
番狂わせがあるとしたら、職場体験で戦闘があったにもかかわらず、大怪我、少なくとも粉砕骨折はしていなかった緑谷君だろう。グラントリノさんの指導の成果がどんなものか。
「1位予想しようぜ、俺、瀬呂な」
「あ~、でも尾白もあるぜ」
「オイラは芦戸!あいつ運動神経すげぇぞ!」
「デクが最下位」
「怪我のハンデがあっても飯田君の気がするな」
「ケロ」
ショートカットしやすい場所なら、瀬呂君本命対抗尾白君。
純粋なスピード競争なら飯田君。入り組んだ地形をどう見るかで評価が分かれた感じかな。
スタートすると同時に、画面から消えた緑谷君。
追跡しているカメラドローンが再び捕らえたその姿は、緑色の雷光を纏い、軽快にビルの間を飛び跳ねる姿だった。まだ個性の制御に神経を使うのか、単純に元からの経験不足か、途中で着地に失敗した後はグダグダだったが。
1組目のトップはやはり瀬呂君。立体機動が取れる環境下ではかなり強いね。
ただちょっとばかり、爆豪君の表情に嫌なものが感じられた。正直、その辺のメンタルケアってザルだよねぇ、雄英って。ヤワなメンタルじゃヒーローは務まらない、ってことかもしれないけど。
2組目は、電気、響香、口田君に切島君と私の組み合わせ。うん、これ、機動力残念メンバーだね。
勝負になるような組み合わせを選んでいるんだろうけど、この場の勝利はいただこう。
試験運用がてら腰のベルトのバッテリーを強化包帯に入れ替えておいてよかった。
手ごろな引っ掛かりを見つけたら、取り出した包帯を投擲。
電子を流し込みながら、その動きを制御してつかませると、包帯の持つ弾性も使い一気に建物の屋上に。もちろん、包帯は途中で回収する。
「よし、方向確認。このままいけそう」
工場のパイプや給水塔など、電子を通しやすい素材を選びながら、包帯を使いつつコースをショートカット。
「素晴らしいよ!茉芭少女!君がトップだ!」
『助けてくれてありがとう』のたすき渡されたけど、なんかこう、罰ゲーム感が。
残るメンバーの到着を待つがしばらく時間がかかりそう。時間つぶしの意味もあるのだろう。オールマイト先生が話を振ってきた。
「ところで、今更なのだが体育祭の時の緑谷少年との会話は……」
「聞き取れたのは、「怖いとき、不安なときこそ笑え」というお話ぐらいです。言いふらしたりはしませんが、内緒話であれば人の来ない場所でお願いします」
「あぁ、私が迂闊だった。気遣い助かるよ。そういえばグラントリノにお会いしたとか?」
オールマイト先生とグラントリノはお知り合いなのは知らなかった。あぁ、そうか。オールマイト先生の伝手でのスカウトか。
「はい。保須市の病院で。少し世間話をさせていただいた程度ですけど」
「あぁ、いや、あの方はね、その、なんというか、私にとっては恩師に当たる方で、その、あの方が随分と君を褒めていたものだからつい興味がわいて、どんな話をしたのだろうかと」
何かものすごく震えているんですけど、大丈夫ですか?
「その様子だけで若かりし日のグラントリノが鬼教官と分かりますね。緑谷君の急成長も納得です」
「あ、あぁ、わかってくれてうれしいよ……ホント」
「と言っても、大した話はしてません。事件の口止めと目標とするヒーローは誰だ、という話はさせていただきましたけど」
「ほう。それば私も興味があるね」
「と言っても、名前も知らないんですよ」
グラントリノに説明したように、幼い日に1日だけ動画で見たヒーローの話をする。
その戦う姿、笑顔で胸を張って立つその姿に私は憧れた。ただ、オールマイト先生の「怖いとき、不安なときこそ笑っちまって臨むんだ」という言葉が、その憧れの姿を変えた。きっと怖かったかもしれない。苦しかったかもしれない。けれど、ヒーローとして、守るべき人のために笑う姿。
それはきっと尊く、指標としての理想にふさわしいものだろう。
そんな話をすると、オールマイト先生が目元を覆い、天を仰いでいた。涙?
「……あぁ、すまないね。茉芭少女。不覚にも感動してしまったよ。グラントリノが気に入るわけがよく分ったよ。その想い、大事にしてほしい」
「はい」
それにしてもそんなに気に入られるような話だろうか。おそらく、2人の関係者なのだろう。ただ何か訳ありで話すことができない、ってところかな。この話はもうしない方がいいかもしれない。
さて、そろそろほかの人の気配がする……ん?気配?そんなに気を張ってたつもりはないんだけど……まぁ、いいか。何にしてもお話もこれまでだろう。
「あ、くそっ、トップ取れなかった。てか、マッハ早くね?」
「あー、負けたー」
さらに少し遅れて口田君。座標はわかっているから、こればかりは運動能力の差だね。
「よし、みんなご苦労様だった。茉芭少女は特に早かったが、何かしたのかね?」
「はい。職場体験先で強化包帯を使った捕縛術を教わりました。これを相澤先生や瀬呂君、
この話が後回しだったのは、全員そろっての講評のためだろう。
「素晴らしい!身につけたものを早速試すチャレンジ精神はグッドだ。これからも頑張るように」
「はい。ありがとうございます」
「では次の組だ。配置につきたまえ」
その言葉とともに、オールマイトは次のゴール地点に移動した。
さて、早く戻って残りの組の観戦をするとしよう。
戻った時には3組目はもうスタートしていた。組み合わせは障子君、常闇君、八百万さん、透ちゃん、峰田。下馬評としては障子君、常闇君の2つに予想が割れている。
「八百万さんは何を創造するかで結果が変わりそう、あ、動いた」
「って、キックボード!?」
多分構造が簡単な電動キックボードだろうけど、演習場内なら規制も無視して爆走できる。
建物上部に移動してショートカット可能な常闇君も頑張ったが、わずかに及ばずタッチの差で八百万さんがトップ。
障子君は高い場所を確保した後は複製腕の間にある皮膜をうまく使い滑空。ショートカットに成功はしたが位置取りに時間がかかった分どうしても遅れてしまったらしい。
峰田?まあ、もぎもぎをうまく使ってビル上部に行けるし、反発を使ったショートカットもできていた。実際うまく動いていたと思う。ただどうしても捥ぐ、張り付けるというアクションが入るのでごく僅差ではあったけど最下位に。エロが絡まなければ、本当に能力はあるんだよなぁ、アレ。
最終組が爆豪君、轟君、青山君、梅雨ちゃんにお茶子ちゃん。有利不利でいえば、一番不利は持久力に難がある青山君だろう。
皆の予想は爆豪君と轟君、穴が梅雨ちゃんだった。移動能力を考えたら妥当なところだと思う。
実際、上空への到達スピード、その後の移動も氷を出して移動する轟君より速く、余裕でトップを確保した。
お茶子ちゃんはちょっと組み合わせに泣いたね。
折角だし、一佳との組み手に誘ってもう一鳴きしてもらおうか?
ともあれ授業終了後、当然のように更衣室で着替えていたのだが、響香が何か警戒している様子。
「どうしたの?」
「しーっ!」
イヤホンジャックを壁にさして、向こう側の会話を盗聴。個性の影響もあって、何もしないでもかなり耳がいいから、男子更衣室で不穏な会話がされているのを聞きつけたらしい。
字面は良くないが、この壁の向こうは男子更衣室。そしてよく見れば、壁に小さい穴。
うん、男って労力の無駄遣いが好きだよね。
『「八百万のヤオヨロッパイ!芦戸の腰つき!葉隠の浮かぶ下着!麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!』
ホント、個性のまともな使い方以外、褒めるところないよねぇ
アレが将来、性犯罪でヴィランとして報道されたら「いつかやると思ってました」ってコメントしてあげよう。
決して響香共々、スタイルで褒められなかった恨みではない。ないったらない。
2組目以降の組み合わせは捏造です。アニメだと1回戦以降はスキップしてましたし。
1組目に入れなかったのは、勝てるはずないからw
あとは期末との空白期間で、オールマイトと個別の話をするより、このタイミングの方がよかろう、と思いまして。え?職場体験との(捏造)2週間の空白?きっと、グラントリノに怒られないよう、緑谷君を学外で鍛えるのに忙しかったんですよ(すっとぼけ)
最後の覗きはさらっと流しました。
オリ主は見る側じゃないし。ちなみに峰田のストライクゾーンからは外れていた模様。
峰田は
余談ですが、本作では耳郎<オリ主<<超えられない壁<<その他女性陣、という感じです。
もっとも八百万とか麗日、初期と最新話でサイズ2回りは違いそうなんですがw