期末試験までおおよそ1か月弱。相変わらずペースの速い一般教養とヒーロー関連各種授業、それに自主トレと忙しい日々を過ごしている。
その間にコスチュームは若干の改造を入れて、アクスレピオスに譲って頂いたファーストエイドキットと強化包帯は装備に組み込んだ。
その完成に合わせて、放課後、相澤先生に呼び出しを受けた。
指定された場所に赴くと、相澤先生と心操君の姿があった。
「以前の約束だった捕縛布の使い方、お前、まだ要るか?」
「職場体験先で包帯捕縛術を習いました。使い方や身体能力からこちらの方が向いているとは思います。性質としては類似しておりますので、時折、訓練に参加させていただければ幸いです」
「いいだろう。ホワイトマウス仕込みなら鍛え甲斐がある」
別に遺恨じみた感じではないが、どうにも顔が怖いです。
「や、やぁ、どうも」
「どうも。心操君、あれから結構鍛えたみたいだね」
「よし、挨拶はもういいな。はじめるぞ。上鳴もとりあえず、コイツを使ってみろ」
勤務外のボランティアに近いから、こうして付き合っていただけるのはありがたい。渡されたのは予備のものらしい捕縛布。
肩に乗せると意外に重い。そして振るってみると、これを十全に扱うのはそれだけで一つの個性と言えるレベルで難しい。何より要求される身体能力がかなり高い。
「上鳴、どうだ?」
「使うだけならどうにか。電子操作や自分の格闘スタイルと組み合わせるなら、やっぱり軽い包帯の方がよさそうです」
「だろうな。ビデオを見たが、ずいぶんと器用に扱ってる」
心操君に目をやると、一心不乱に捕縛布を振るっている。時折絡まっているが、弱音の一つもはかないのは相澤先生好みだろう。
「体育祭の件は聞いた。その辺を差っ引いても、鍛えてモノになりそうなのはアイツぐらいでな。今年の普通科は不作だ」
そう言いつつ楽しそうな空気が伺える。ここから年度末まで9か月強。1年の差を覆して編入ができるのか、楽しみなのだろう。この後は強化包帯を使った移動を軽く披露するのと、心操君との個性なしでの組手で、包帯まみれにしてあげて終わった。
相澤先生のトレーニングには隔週程度のペースで参加することとなって、今度はオールマイト先生の呼び出しを受けた。そんなに呼び出されることした覚えないんだけど。
進路指導室にはオールマイト先生と、緊張した面持ちの緑谷君。
「来てくれたか。
「緑谷君がいるということは、師弟関係に関することですか?」
「あぁ、うん。その通りなんだ。実はリカバリーガールから少し話を聞いていてね」
「なるほど。”見る”だけでよいのです?」
教員間での情報の共有は当然のこと。そして緑谷君のことをリカバリーガールに相談したのは自分。そのツケが今になって返ってきた気分だった。
「気を悪くしないでほしい。ただちょっと緑谷少年について意見があれば欲しいと思ってね」
「ただの素人の頓珍漢な意見になっても構わなければ」
「大丈夫だろう。それと、このことで何かがあれば、すべて私が責任を持つ」
そのセリフはとてもありがたいです。ナンバーワンヒーローにただの学生が貸しを作れる、というのは凄いことだけど、少々手に余る。手に余るものというのは、大体において良くないものも引き寄せるので、自分の訓練程度に割り切ろう。
「じゃあ、緑谷君」
「う、うん……フルカウル!」
救助訓練レースで見た緑雷を舞う姿。直に”見る”のは初めてで、その力の流れは濁流というような力強さに満ちていた。
「じゃあ、今度は、前と同じように。できれば全力で5秒以上」
「わ、わかった」
正直あまり見たくない。エチケット袋用意しておくんだったと思いながら、緑谷君の体を暴れ回る力の渦を見る。なんというか、こんなものを内包してよく人の形を保っていると感心してしまう。
「もういいよ」
「はあっ、はあっ……う、うん」
オールマイト先生は声をかけてこない。多分だが、私が考えをまとめているのを待っているのだろう。
「緑谷君、その、フルカウルの使い方はグラントリノから?」
「え?うん、オールマイトから教わったことと、グラントリノからヒントをもらって」
「言える範囲で詳しく」
「えっと、100%だと体が壊れるから、電子レンジで卵が割れないイメージで出力を調整して、そこから手足の重点強化とか考えて、それを全身に……」
「つまりは個性そのものが電子レンジと?」
「え?そ、そうなる、のかな?」
なるほどと、緑谷君の話を咀嚼しながら、改めて緑谷君、モノのついでにオールマイトを見る。
なにやら確かに似た印象を感じるけど、親子というにはちょっと似ていない。恋人関係にも見えないし
「ええっと、これから偉大な先達であるグラントリノとオールマイト先生のお考えに対し、ものすごく、失礼なことを言いまくりますけど、いいですか?」
毒を食らえば皿まで、とはこのことか。
この際だから、思いついたことは全部言ってしまおう。正直、勿体ないお化けがハロウィンレベルで大量に湧くレベルで勿体ない。
「か、かまわないよ、茉芭少女」
「ええっと、ですね。まず、緑谷君の個性は「超パワー」でよかったですよね?」
「う、うん。ものすごく力が出るから、そう名付けて登録してる」
「まず、そこが間違いだと思います。性質的には「超エネルギー」とでも呼ぶべきではないかと。お師匠様であるオールマイトがそもそも「
「そんな風に思われてたのね、私って」
「失礼。つい口が滑りました。そんなエネルギーが緑谷君の体のどこに眠っているのか、正直不思議ですが、発現に合わせて血流に乗るような形で膨大なエネルギーが全身に回ってるんですよ。筋肉の肥大化も起きてるようですが、イメージ不足か筋肉増量効果はないのか、最小限にも足りてません。結果、自身の耐久度を無視したパワーに変換され、大怪我につながってるのではないかと。
そしてフルカウル。
外から覆って
「う、うん……そこまでわかるんだ」
「そのうえで、改善に関するアプローチは3つほど。うち2つはあまり勧めませんけど。まず、どれを選ぶとしても全身の筋トレは必須なんですが、何かやってます?」
「えっと、自宅でダンベルとかは、やってる」
「放課後にトレーニングルームに来ないで何と言う無駄を。とりあえず、尾白君あたりに筋トレのノウハウを教わったほうが良いと思う」
うん、マシントレーニングだけだと偏るけど、パワー系でやらないからおかしいと思ったら、まさかの非効率な自主トレとは。なんて勿体ない。
「さて、改善方法の1つ目。元々の使い方をやりながら、中身を強くするようにひたすらイメージしていく。そうすれば、いつかはオールマイト先生レベルかそれを超えるパワーが身につくと思います。
ただ、時間がかかるし、それまでに制御が追いつくか不安だからおすすめしません。そのためのフルカウルでしょうし。
2つ目はフルカウルの純粋強化。今、緑谷君がイメージする制御方法をそのまま続ける。ただ、土台である肉体の強化は自己鍛錬のみになるし、最初の使い方同様、耐久度がそのまま熟練度に直結する個性の使い方ですね。
3つ目は、この両方を組み合わせる。そのために、フルカウルの使い方をもう少し工夫する必要があります」
一気にまくしたてると、さすがに付いてこれなかったのか、緑谷君も目を丸くしているし、オールマイト先生は唖然としている。
ちょとやりすぎたかもしれないが、今更かな。
「緑谷君、フルカウルをもっと具体的に、鎧のような形にすることって出来る?」
「え?やってみたことないけど」
「正直、中身も今以上に強化しないといつか制御のミスで致命的な怪我をすると思います。そしてフルカウルのイメージが卵の殻ではあまりに弱い。ヒナが孵る前に
幸か不幸か個性そのものを外付けのように認識してるみたいだし、個性そのものでがっちり体を守って
「ええと、鎧、鎧、鎧のイメージ……」
多分、頭の中は飯田君とか、青山君が巡ってるのではないかと思う。
飯田君をイメージするのは悪くない。全身アーマーはおそらく理想的だろう。
「イメージしやすかったら自分のコスチュームそのものでいいと思うけど……ちょっと手を貸して」
言って、緑谷君の手を取る。
接触してそこから体内の電子に、神経に干渉する。
「え、えぇ、ええっと、か、上鳴、ひゃん」
「別に取って食わないって。そんなことしたらお茶っと何でもない!オールマイト先生、お熱いお茶のお替りくださーい」
「そのごまかし方は無理あるんじゃないかなっ!」
言いながらも急須に手を伸ばすオールマイト先生。ノリのいい人は好きですよ。
「落ち着いて、フルカウルの発動だけをイメージして」
「えっと……うん」
こういうところなんだろうなぁ、目をつむって集中する緑谷君を見つつお茶子ちゃんにはちょっと悪いことをしている気分を感じながら、腕の神経の電子の流れを把握しさらに増幅していく。
「落ち着いて、そのまま力の流れは維持して」
徐々に緑雷は強さを増す。純粋な雷ではないから、あまり触れているとダメージを受けそうだけど、ここは少し無理でも押し通す。
「……出ておいで。怖くないから」
一瞬、私の頭が軽く撫でられたかと思ったら、サムズアップをしながら去っていく笑顔の女性が見えた……気がした。え?
「よし、落ち着いて……そのままゆっくりと目を開けて」
「え、こ、これ……僕の、コス、チューム?」
我ながら上出来だろう。右腕から顔半分まで、ヒーロー・デクのコスチュームがより強い緑雷を纏いながら存在していた。
「フルカウル改めハードシェル、いや、フルフォルムとか、どうかな?」
「それはいいんだけど、上鳴さん、なんで……泣いて……?」
「え?あ、え?あれ、ほんとだ。いや、なんか一瞬、ずっと会いたかった人に会って、頭撫でて褒めてもらったような、あぁ、いや、ごめん、ちょっとわけわかんないね。ただ、嬉しいって気持ちがあふれて混乱してるかも」
さすがに泣き顔はこれ以上見せたくないので、顔を背けて、止まらない涙を流れるままにすることにした。あぁ、どうしよう。なんか本気で嬉しい。心底、自分と自分の個性が誇らしいと思える。その傍らで、オールマイト先生が驚愕の表情のまま急須からお茶を注ぎ続けてるのが視界の隅に映った。
「うあっちゃっ!!」
いい感じに空気を壊してくれたので、いったん落ち着いてお茶をすることに。
お茶請けは雄英土産、ミッドナイト・クリームケーキて……意外に商魂たくましい。現役で事務所に所属している先生方もいるから、利益配分の仕組みはどうなっているんだろう。
「えっと、アレが私のおすすめです。フルカウルの概念をさらに進め、外装を緑谷君の個性で形成し、出力を肉体ではなく個性そのものが持つエネルギーに受け止めさせようかと。大雑把にいえば意思のないダークシャドウですね」
「実際にどのくらいのパワーが出るのかな?」
「さあ?少なくともフルカウルよりは外に出てるエネルギーが多い筈だから、強くなるとは思う。その分、長期戦には不向きかもしれないから、そこは自分で確認と調整をして。イメージを強固に固めれば100%もいけるんじゃないかな。今後、
とりあえず、グランドβかγを半壊させる勢いでテストするのがいいと思います。
「まずは全身をフルフォルム化できるか、なんだけど」
「やってみる」
意外ととっかかりさえどうにかなれば、楽なようで。
ほんの10数分で緑谷君は自分のコスチュームを自分の個性で再現することができた。いやぁ、言ってみるものだね。まるで超常以前にあった架空の変身ヒーローみたいだ。思いのほか、緑谷君は天才の類なのかもしれない。
そして万が一のためにリカバリーガール立会いの下、
本人の体感としては60%ぐらいまではいける。あとは自分次第、とのこと。うん、手が付けられなくなりそうだね、これ。
雄英土産はもちろん捏造ですw
別にオリ主によって原作主人公がチートしたっていいじゃない(暴論
「力をストックする個性」と「個性を与える個性」が混じり合って生まれたのがワン・フォー・オールという風に語られてますが、ほぼ力=筋力なのが原作なんですよねぇ
まぁ、原作でも歴代継承者の個性は強化されているようですから、エネルギーの概念でも大外しはしてないと思います。
ともあれ、単なる筋力だけじゃ勿体ないな、と思って独自解釈、捏造設定のもと改変しました。
初期値で40%になりますから、以降の強化度合いは加速度的に増していきます。
作中でいえば、意思のないブラックアンクと思ってもいいかと。他にも多分、あなるだろうな、と想像するのはたやすいと思いますw
緑谷君、絶対喜ぶと思うんだ「変身!オールマイトフォーム!」とか。
というか、トゥルーフォームとマッスルフォームがあまりに違いすぎるので、強引に解釈したらこうなりました。踏ん張ってるというレベルじゃないでしょ、アレw
ただ早い主人公強化は爆豪が必要以上に歪みそうなので、期末試験と合宿で爆豪を上方修正しないといけないかも。
そしてご褒美的に志村奈菜さんと一瞬のコンタクトを果たしたオリ主。
さすがに「浮遊」の譲渡はないですが、ほんのりイオノクラフト効果による浮遊の使い勝手が上がったり、包帯捕縛術の練度が上がりやすくなったり、身体能力も上がりやすくなります。まぁようするにオリ主も限界突破してより成長しますw