なおオリ主の家族問題の話なので、読まなくても話は通じます。
静岡県垢離里、実は日本一治安のいい街として、「住みたい街No1」で堂々の殿堂入りを果たしている。
理由もちろん雄英高校の存在。
プロヒーローが教員として多数在籍するのはもちろん、ヒーロー科生徒が通学で近郊から学校に向かう。
本人たちにそのつもりがなくても、それはヒーローが日常的に行うパトロールそのものとして市民には映り、ヴィランには個性犯罪のやりにくさを感じさせる。
そんなわけで、本来は一地方都市でしかないのに、国内でも類を見ない安全で住みやすい街になっていた。
「そんな街に、私が帰ってきた―」
「いや、ナニ言ってるの?
「お約束ってやつ?」
朝早くに家を出て、開店直後に間に合うように現地入りできた。
駅前の不動産会社に行くと、メールでやり取りしていた担当の人がいた。
「お待ちしておりました、上鳴茉芭様と電気様、それとお母様ですね。お二人ともヒーロー科合格おめでとうございます。私は
腰の低い営業さんから名刺をもらう。
名刺なんてもらうのはお互い初めてでちょっと緊張する。
「ええと、本日は茉芭様のご予約物件2つへの内見と、電気様へのご紹介でしたね」
「はい。時間に余裕があれば先に電気の物件をある程度絞りたいです」
「はい。もちろんです」
電気の希望は荷物が問題なくしまえれば問題なしという程度。
とは言え、割と物持ちだから電車通学しないと広さが足らないだろうなぁ。
ひとまず候補を2軒に絞る。
内見の連絡を取ってもらうが、この時期、内見希望が多く、大家さんは多忙のため、電気の分の内見は明日になった。
候補はまとまったので、私の分の内見に行くことに。
女子専用なので電気は置いていくかと思ったが、内見だけなら問題ないとのことで電気も一緒。
雄英高校から徒歩での距離は少しあるけど、近くにはコンビニやスーパーや病院もある。
立地については文句なし。
ただよかったのはここまでで、中は酷いものだった。
内見には大家さん兼寮の管理人さんも立ち会ってくれている。
それで部屋に入ると、母さんが思わぬことを言い出した。
「あの、個性を使って確認させてもよろしいでしょうか?」
その問いに、大家さんはちょっと考えたが許可してくれた。
そして壁に手を当てて集中をする母さん。
ほんの数秒、こちらを見る母さんの顔には間違いなく憂いがあった。
「ねぇ?茉芭?ここは……」
「んー?……ちょっと待って」
母さんの個性は『操作』。
大体のモノの扱いが上手くなるというやや曖昧なものだけど、マンション一室にまで対象を広げられるとは思わなかった。
ただ訓練もしていない母さんにそれは大きい負担だし、何を憂いているかは想像がつくが私が調べた方がよりわかる。
「あー、なるほど。これ、母さん来てくれてよかった。ありがと。こことそこ、それにあそこにもあるか。うっわ、こんなところまで。ないわー」
うん、ネットだけで決めなくてよかったね。
部屋は綺麗だし、ちょっとトウがたってるが、一瞬、電気が見ほれる程度に美人の管理人さん。
ジムも含めて施設はまぁ、綺麗だし。
なにも気にしなければきっと快適な住まいだったろう。
だったのだけど。
「あ、あの?な、何かご不満でも?」
何やら不穏な会話をする私たち親子に釣られてか、不安そうな家野さん。
状況的にはこの人も疑いたくなるが、業者自体は雄英の紹介。
もっともこの大家さんも雄英OGを売りにしてるんだよなぁ
でもこれは、正直ないわー、ってなるし。
玄関で待っていた大家兼管理人さんに目を向けると、ひきつった顔で腰が引けている。
それで腹が決まったので、結論から告げる。
「パス。チェンジで」
「な、何がお気に召さなかったでしょうか?」
「えーっと、コレ、言ってもいいんですかね?」
その一言に管理人さんの顔色がさらに変わり、管理人さんの様子に気付いた家野さんの顔もこわばる。
「盗聴器と盗撮カメラの中で暮らしたくないですねー」
「うわ、何それ、ないわー」
HAHAHA、確かに高いが、雄英に近い割に安いと思ったんだ。
少し頭痛をこらえている様子の母さんに感謝する。
とりあえず、知らぬ間に被害者になっていたであろう前住人には、不動産会社の家野さんと雄英から連絡とってもらおう。
さしあたって、昼は母さんへの感謝を込めてウナギにしよう。
後日、聞いた話では、この管理人さん、投機に手を出して失敗して、現役雄英生の覗き画像の裏商売に手を染めていたとかで見事、お縄となったそうな。
「本当に申し訳ございません。我々も気づきませんでした。本当に感謝いたします」
警察や雄英の総務課への報告を行ったところでちょうど昼。
お詫びということで地元で評判のウナギ屋さんでお昼を頂きながら、何度も感謝を繰り返す家野さん。
私としては入居前にわかってホッとしているし、ウナギを奢ってもらえたので気にしていない。
食事を挟んで訪れたのは、第2候補。
同じく女子専用で、部屋はこっちの方が広い。
ただジム等の共用施設はない代わりに、2LDKと広いうえ、防音対策は完璧なんだとか。
「こちらのお部屋の場合、自分でトレーニング機器を置いて頂ければ運動を行っても騒音の心配はありません」
1室をつぶすかはちょっと考えるが、機器トレーニングをしても周辺に迷惑をかけないのはありがたい。
雄英から1駅の距離で、ちょっと遠くなるのが難点。
ただ実家近辺でも見かけるお安めのスーパーがあるのが素晴らしい。
セキュリティについては申し分なく、母さんも太鼓判を押したのでここに決めることにした。
この日は宿に泊まり、海が見える温泉と海の幸に舌鼓を打って就寝。
翌日は電気の住まい。
家賃が私のところとだいぶ違うけど、まぁ、強くイキロ。
それでも雄英から電車で4駅、駅から徒歩10分なら悪くないだろう。
買い物とかのインフラは駅前と、雄英と逆方向なんで平日は寄りにくいがちょっと離れた国道沿いのショッピングモールに集中してる。でも牛丼屋チェーンが一通りとマックが駅前に揃っているから、男子高校生なら生きていける。
栄養のバランス?
3週間ぐらいで月の予算使い果たせば自炊を始めると思うんだ、きっと。
最低限度の料理はできるんだし、しーらーなーい。
同居ははじめから考えていない。
仲が悪いわけではないが、お互い年齢的に互いに隠したいものもあるだろうし。
ヒーローになったら、お互い基本的に別行動と2人で話し合って決めている。
生活面はその第一歩。
まぁ、正直なところ、お互いの個性の相性はいいと思う。
と言うか、
オールマイト級の理不尽の権化でも相手にしなければ、大体の事態は力業でごり押し出来るのではないだろうか。いや、水系は危ないかもだけど。
ともあれ、お互い別の道を進んだほうが互いのため。
入学前にそこまで覚悟する必要はないかもしれないけど。
移動で車に揺られている間、つまらないことを考えていたら目当てのアパートが見えてきた。
少し古めだけど普通のアパート。1Kに広めのクローゼットがついて実質1KSで風呂トイレ別。
大家さんは引退した元ヒーローで、私が借りる部屋もこの人の所有だとか。
ヒーローとして独立したことはなく、名前が残る活躍もないとかでヒーローネームは教えてくれなかった。
20年ぐらいサイドキックをやった後、一線を退いて事務に転向。
雇い主のヒーローが引退するのに合わせて自身も引退。
ぱっとしないヒーロー資格者の典型みたいなキャリアだよ、と笑っていたが、五体満足で引退して笑っていられるのは偉大なことだと思う。
広めの中庭があり、周りに迷惑にならなければ自主練で使えるということでここに決まった。
何だかんだと部屋は決まり、どたばたと引っ越しの準備を整えた。
念願の一人暮らし。
2LDKと一人で暮らすには十分すぎる広い部屋。
汚部屋にならないよう気をつけねば。
上鳴兄妹の母親の設定はもちろん捏造です。
アニメ未登場、公式で設定していたらごめんなさい。
上鳴操(かみなりあや)
上鳴兄妹の母親。
個性婚というほどに闇が深いわけではないが、婚姻に当たり双方の個性を考慮していないと言ったら嘘になる夫婦。
父親似の兄・電気と双方の個性を引き継いだが結果的に外部出力が低いと思われた茉芭を比較し、兄優先の家庭を作ってしまったぐらいには己の個性に振り回された人。
個性:操作
対象の扱いが上手くなる。
ゲーム的に言えば包丁や掃除道具の扱いについて成功率や熟練度上昇にボーナスがある。
どの程度の上昇があるかは個性の熟練度と本人の嗜好に左右される。
無理に対象を広げて使うと激しい頭痛に襲われる。
家野冨路(いえのぷろ)
オリキャラ、モブで不動産屋さん。もう出てこないと思いますw
名無しの元ヒーロー
オリキャラ。五体満足かつそれなりの資産を作って引退したある意味勝ち組。