体育祭から職場体験と慌ただしい日々を過ごし、それがやっと落ち着きを見せたある日。
雄英高校ヒーロー科は勇学園ヒーロー科からの交流生を受け入れていた。
「突然だが本日のヒーロー実習に勇学園ヒーロー科から4名が特別に参加することになった」
「眼鏡女子だぁぁぁ」
あぁ、うん。そこの
眼鏡っ子がそんなに欲しければ、飯田君でも見てればいいのだ。
「ねぇ、彼女彼女ぉ、ライン教えてぇ?」
「どぁぁぁ!」
「他校にバカを晒すな」
ホームルーム中にナンパをし始めた
アレが双子の片割れと思うとちょっと情けない。機会を見て一度締めよう。
もっともこんな好き勝手を相澤先生がいつまでも許すはずもなく、ひと睨みで静まり返った。
「……自己紹介を」
「実習に参加させていただきます、勇学園ヒーロー科、赤外可視子です。よろしく」
「同じく、多弾 打弾です。よろしくお願いします」
「……藤見」
苗字のみで済ませた藤見君は、爆豪君をにらみつけている。
体育祭での挑発とかがよっぽど気に入らなかったのかもしれない。
「もう一人いたはずだが」
赤外さんの後ろに隠れていた子が恐る恐る顔を出すと、異形型の女の子が現れた。
「万偶数、雄英の奴なんかと仲良くしてんじゃねえ」
「オイ、今なんつった!二流以下のクソ学生が!」
「拙いって!かっちゃん」
「黙ってろ!この糞ナードが!」
「そういうお前も黙れ。全員、コスチュームに着替えてグラウンドΩに集合」
どこのヒーロー科も上に居る人間はひと癖もふた癖もあるってことなのだろう。内容次第では荒れるけど、まぁ、いつものことか。
「あー、やっぱりぃ、二人は同じ中学出身やったんやね」
「ええ、とっても仲のいいお友達だったの」
「そ、そう、なんだ」
「危険な感じはぬぐえないけど」
見た目は確かに捕食者と非捕食者的。でも個性の性質はともあれ、仲が良いのは間違いないのだろうからいいんじゃないだろうか。
自分がどうだったかと思い返せば、中学まではどちらかと言えば広く浅い表面的な付き合いが多かったな。当時はとにかく弱個性と言う見られ方が強かったし、親友という存在がいる梅雨ちゃんがちょっと羨ましい。
「赤外さんもクラス委員長をしてらっしゃるのね」
「はい。でも結構、大変なんです。1人、問題児がいて」
「それは……
八百万さんの場合、さらに1人、居るしね。主に女性の敵的な意味で。
クラス委員長同士、なまじ能力がある仲間を押さえるのに苦労してるようで、意気投合していた。
「あ、そうだ赤外さん。さっきはウチの
「え、ええ、気にしてませんので。上鳴さんも気になさらず」
「ありがとう。あと、背の低い峰田って男子にはくれぐれも注意してください。いざとなれば、A組女子全員でキッチリ
その言葉に全員が力強くうなずく。うん、他校に恥をさらすのは電気だけで十分だ。
「は、はぁ、お気遣い、ありがとうごございます?」
「ケロ、羽生子ちゃんも気をつけてね」
「ありがとう、梅雨ちゃん」
本当に、気を付けてほしいものだ。
「よし、全員集まったな。今日のヒーロー実習を担当するのは、俺ともう一人」
「わぁたしぃがぁーーーーっ!スペシャルゲストのような感じで来た!!」
雄英生にとってはすでに見慣れて、感動も薄れてきてるが勇学園の皆さんは目を輝かせている。そうだよね、生オールマイトだし。
「さて、今回の実習だが、全員参加でサバイバル訓練に挑戦してもらう」
4人1組でチームを組んで、達成目標は
Aチーム、緑谷君、三奈ちゃん、梅雨ちゃん、お茶子ちゃん
Bチーム、八百万さん、障子君、切島君、爆豪君
Cチーム、透ちゃん、口田君、轟君、尾白君
Dチーム、飯田君、常闇君、瀬呂君、私
Eチーム、響香、電気、青山君、峰田
Fチームが勇学園の赤外さん、万偶数さん、多弾君、藤見君
「全チーム、指定した場所で待機。5分後に合図なしで演習を開始する」
「みんな生き残れよ!」
「「「はい!!」」」
所定場所についたら開始までのわずかな時間は作戦タイムだ。
「俺としては生き残りに重点を置いて動くべきではないと思う」
「妥当な戦略だ」
飯田君、常闇君は待機案を推す。
「私としては反対。間違いなく爆豪君が動いて場を荒らす。それに勇学園の個性がわからない。索敵を重視して戦闘を避けつつ移動。視界の開けた場所を確保しておきたいところ」
「言えてる。アイツ、更衣室で藤見ってのとバチバチにメンチ切ってたし」
反対意見を述べる私に、瀬呂君が同調してくれた。これでチームは2対2で意見が割れたことになる。
「意見が割れたか。だが確かに一理ある。なら、視界を確保した後の行動はどうするべきか」
どうやら、爆豪君が動く可能性を否定しきれなかったらしい。
初日の戦闘訓練でも単独行動を止められなかったから、身に覚えもあるしね。
「発見されなければ、時間までその場を確保。他のB、Fチーム以外は交渉が可能なら、戦闘回避か連携。簡単に負けると思わないけど、無駄な交戦は避けたいかな」
「Fチーム、勇学園とは戦うのかい?」
「相手次第ではあるけど、あっちにも
「ふ。違いない」
「よし、では、移動しよう。常闇君、周辺警戒を頼む」
「任された」「アイヨォッ!」
複数の山を含む広大なグランドΩ、手ごろな高台を目指して移動を始めたが、すぐに爆音が響き渡る。
「始まったか。上鳴さんの予想が的中したな」
「多分、全チーム単独撃破、とか考えてそうだし、少し速度上げて逃げよっか」
「御意」
「あー、確かに。よっく見てんなぁ」
一瞬だけ、ダークシャドウが爆豪君の姿をとらえたが、距離を取れていたことと、八百万さんたちが追い付いたことで仕方なく足を止めたようで逃げ切る事が出来た。
そして今度はミサイルの着弾。
「これも勇学園か!凄い個性だな!」
「もう、コソコソしないでいいよね。全速で距離を取ろう!」
とりあえずチキンと言われようと、生き残り優先だし。幸い、ミサイル攻撃のおかげで、爆豪君の優先度は完全に勇学園のFチームに移ったはず。
速度では飯田君だが、こうした障害物の多い環境なら常闇君、瀬呂君は個性を使っての機動性が高いので、速度についていける。私も包帯捕縛術のおかげで瀬呂君ほどでは無いにせよ、木々伝いに速度を上げて移動できるので、十分な安全距離を確保して、見晴らしのいい稜線を確保できた。
「……うわぁ」
「なんと無様な」
「どーすんの、アレェ……」
ピンクの煙が森に広がり、それが晴れたと思ったら、ゾンビと化した爆豪君達と勇学園の3名。味方を巻き込んでゾンビ化かぁ、バトルロイヤルじゃないんだけど。
映画のゾンビと同じように生き物を襲うのだろうけど、緑谷君達Aチームか、轟君のCチームの方が近いのだろう。幸い、こちらには来なかった。
「むむむ、クラスメイトの危機。委員長の八百万さんもゾンビと化した今、彼らを救えるのは我々のみ!」
「あ、行くのは反対ねー」
「俺も反対。行ってもどうしようもできないだろ、アレ」
「確かに。死中に活を求める状況でもあるまい」
「やるなら迂回して後方に回りましょう。先生たちに異常事態を伝える、でもいいけど」
今度は3対1、脱出路を切り開くという意味での協力は出来るだろうけど。介入してもやられるリスクが高すぎる。
真っ直ぐ駆け付けたい様子だったけど、他3人を説得することは難しいと思ったようだ。
暫くは様子見。隣の山から高みの見学、と言えば聞こえはいいが、状況が見えないのがなんとも。
「遠いからよく判んねぇけど、勇学園の奴、全員ゾンビになってないか?」
「瀬呂君、本当に?……うわ、本当だ。なら、なおさら放っておいて、ゲートに戻りつつ距離をさらに取ろう」
「構わぬが、理由は?」
「生き残りがあの場から退避したら、こっちが狙われそうだし。本人も影響を受けるならそう極端に長続きする個性で無いと思う。今のうちに距離を広げておこう」
その後のことをお茶子ちゃんに聞く限りでは、途中で梅雨ちゃんがゾンビ化して脱落。
洞窟への籠城を選んだ緑谷君達Aチームの生き残りと轟君は追い詰められたところで、脱出のために強引に突破口を開こうと全員を吹っ飛ばしたのと同時にゾンビ化が解除。
正気に戻った爆豪君との戦闘になり、グダグダな状況でタイムアップになったらしい。
「とりあえずお疲れー。結局、無傷で戻ってきたのはDチームだけか。状況をよく読んで戦闘を避けたのは上出来だ。他はまぁ、初見の相手は怖いってことだけよく覚えておけ。はぁ……」
「「「はい」」」
文字通りの惨状に相澤先生も怒る気力も無くしたようだ。
ともあれ、他校のヒーロー科との初の交流は何ともグダグダに幕を閉じた。
思ったより書くことがなかった「Training of the Dead」
今回はあまり変えず砂藤ポジに放り込んでみましたが、交戦意欲と言う言葉をあっさりポイ捨てして逃げの一手。だってどう考えても爆豪は動くから、逃げるに限るんですよね。
緑谷Tのように、動かないのも合理的ではありますが、その場合、なすすべなく爆豪に捕縛された挙句、ゾンビ化なのでさらに書くことが減る悪循環w