「オイ待てコラ、チビ」
今日も一日、いい汗かいたなぁ、お茶子ちゃんの体術がさらにキレてきて、一佳も結構本気になってきてるし。さぁて、今日のご飯は何にしようかなーっと。
「おい!」
今日のタイムセールは何だったかなぁ、お肉が安かったら生姜焼きとか、いやいや、ここは久しぶりにカレーでもいいかもしれない。それにしてもさっきからなんだか五月蠅いなぁ
「コラ待て!上鳴
「んー?爆豪君から話しかけてくるなんて珍しい。なにか用?」
「……デクのことだ」
しかしホント、ヒーローのする顔じゃないね。視線で人が殺せるなら1、2回は死んでそうだ。相手が気になるのは判るけど、自分で自分を追い詰めすぎでしょ。
「緑谷君?私は特に関係はないけど?」
「スっとぼけンな。オールマイトと何かやってたのは判ってんだ」
「守秘義務って言葉、知ってる?」
「あ゛ぁ?バカにしてんのか?コラ」
話が通じている気がしない。用件が緑谷君と言うことは、先日、オールマイト先生に頼まれて彼を個性で”見た”ときの話だろうけど。
「つまり知ってても開示できないってこと。緑谷君のことならオールマイト先生に聞いて。知ってるでしょ、オールマイト先生は緑谷君を気にかけているって。それ以外のことなら多少の話はできるけども」
もともとの地頭は悪くないのだ。一般入試一位は伊達ではない。
「何が言いてぇ」
「んー、要するに、緑谷君に負けないように、その1?ぐらいになるかも?的な?」
「ちっ、気に入らねぇけど、聞かせろ」
「とりあえず、立ち話も何だし、どこか落ち着けるところで話そうか」
やれやれ。幼馴染と言うのも難儀なものなんだね。
さて駅前のファミレスは混んでないといいけれど、いい感じで隠れ家的な喫茶店でも都合よくないだろうか。
などと考えていたら、何故か爆豪君の家で話すことに。
「上がれ。おい、ババア、客」
「勝己!もうちょっと口の利き方ぁ!って、お客?アンタが珍しい……ってあらあらあら、色気づいちゃって」
「ちげぇっ!」
「あ、爆豪君のお母さまですね。同じクラスの上鳴茉芭と言います。突然お邪魔して申し訳ありません」
「いいのよー、ねー、勝己ぃ、なに?アンタの彼女?」
あぁ、うん。突然クラスメイトの女子を連れて帰ったら、大体の母親はこうなるよね。そんでもって、残念ながらお宅の息子さんは色恋よりも強くなることに夢中な
「いえ、ご期待に沿えず申し訳ございません」
「テメェもババアに付き合って謝ってんじゃねぇ!さっさと来い!」
「あ、それだけど、リビングでいいかな?余計な誤解の元は避けたいしね」
「あら本当に脈なさそ。もっとしっかりしな。お茶淹れるわねー」
この性格は間違いなく、爆豪君のお母さんだなぁ。
せめてもうちょっと礼儀を仕込んでおいてほしかったけれど。
「……なんか不可能なこと考えられた気がするわ」
そして勘が良すぎます。失礼しました。
「んで?」
「正直、この先のカリキュラムの先取りなんだけど、堅実路線が1つ2つ?ギャンブルが1つ、おまじない的なものが1つ、かなぁ?」
「どういう事だよ」
「期末試験後に林間合宿があるのは知ってる?」
「当然だろうが」
「先輩方に聞いたけど、毎年、そこでやるのが個性伸ばし」
ここで毎年、ヒーロー科の生徒は個性を大きく成長させている。自分にどれだけの伸び代があるのかは正直、不安もあるが、職場体験の短い間でも大きく伸びたから、きっと何とかなるだろう。
「私が思う爆豪君の伸び代は2つ。生成する物質の量、それと質」
「量は判る。だが質ぅ?」
「爆発時に黒い煙がかなり残るでしょ。不完全燃焼を起こしてるんじゃないかと思ってる。酸素に対して個性で生み出してる物質が多すぎるのか、そもそも燃料としての質か粒度が悪いのかどちらか。
個性による現象だからすべてが物理法則通りとは限らないけど、良い爆発に必要なものって知ってる?」
その質問には爆豪君のお母さんが答えてくれた。
「その言い方、乗り物が好きなのかしら?良い点火、良い圧縮、良い燃料、ね」
「ええ、まぁ、祖父と父がバイク好きでして」
「あぁ、それで茉芭ちゃんか。いい趣味してんね」
結構古い時代のバイクですが、よくご存じで。
正直、きっかけは子供の頃に父の歓心を引きたかっただけな気もするが、実際に触れてみるとオートバイと言う乗り物は実に楽しい代物だった。
流石に公道で乗らせてもらったことはないけど。ポケバイとかモンキーぐらいは実家の庭先で遊ばせてもらった。夏休みにでも一佳と中型免許を取りに行きたいと思っている。時間があれば、だけど。
「ババア、余計な口挟むな。もうちょっと詳しく言え」
「爆豪君の個性の場合、掌で爆発が起きるから圧縮はすぐには難しいと思うけど、燃料と点火の部分は色々調整できるでしょ?常闇君とやった時みたいに」
体育祭で爆発による閃光だけを取り出したような器用な爆破をとっさにできるのだから、意識してやればさらにバリエーションも広がると思う。
「堅実路線はそれくらい。学校の個性伸ばしだと多分、量でくるから、それまでに調べておくといいよ」
「おう。で、ギャンブルは」
全部聞きだすまで帰らせる気がなさそうだ。さようならタイムセール。
「んー、爆豪君の個性「爆破」って、本当に掌だけでしか発現しない?」
「何言ってるんだ、お前」
何言ってるんだ、コイツって顔だなぁ、って本当に言ったよ。
「手も足も大きさは違っても、構造は大きく変わらない。脚でも爆破が出来るようになるメリットは言わないでもわかるでしょう?」
手のひらで爆発させて機動力を確保している。器用に空も飛ぶが、攻撃時には掌を向ける必要があるから先読みしやすい。それを本人の格闘センスで補っているが、本当に上に上がっていくなら、どこかで行き詰まる。
「デメリットは継戦能力だけど、これはそもそも出来るかわからないからこそギャンブル。で、最後のおまじないは、正式のヒーロー名はちゃんと早めに決めた方がいい、くらいかな」
「けっ!あのババアのセンスがワリィんだよ」
「か~つぅ~きぃ?誰がババアだってえ?」
「テメェじゃねぇ!ババア!叩くな!ミッドナイトだ!!」
爆豪君のお母さんがヘッドロックをするのを、爆豪君が嫌がりながらも大人しく受けている。仲のいい親子なんだな。
「とまぁ、そんなところかな。じゃあ、今日はお邪魔しました」
「もう日も暮れたし、送るから食べていきなさい」
「ババア!余計なことすんな!」
そうは言ってもこういう場合、大体逃げ切れないので大人しくご相伴にあずかりますよ、ええ。
「ヒーロー科の子だから、体が資本でしょ?いっぱい食べなね」
「ありがとうございます」
ごちそうになったメニューはピリ辛野菜炒めと麻婆豆腐。
あまり極端に辛いのは苦手なので、辛さ控えめでお願いしたけど、爆豪君のは明らかに辛そうだ。
「ところで茉芭ちゃん。さっきのお話で1つ聞きたいんだけど」
「はい。私に答えられることなら」
「そのヒーロー名って、強くなるのにそんなに大事?」
意外なほどに重要だと思いますよ。ええ、ヒーロー名を決める前と後で、伸びがまったく違いますから。だからこそ勧める訳で。
「名は体を表す、名付けによりヒーローとしての自分のイメージを固め、そこへ進む事が大事、と教わりました。私は致命的な失敗をするところを、ミッドナイト先生に助けてもらって名前を決めました」
「へー、で、茉芭ちゃんのヒーロー名は?」
「ブルーアンバーです。琥珀の変種から名前をもらいました」
「わぉ、可愛い。んで、ウチのバカ息子は?」
いや流石にそれをこの場では。本人が「言ったら殺す」って目で睨んでますんで。
「それはご本人に後程、ゆっくりと聞いてください」
意訳すると、親子喧嘩必須なので勘弁してください。なんだけど、多分通じただろう。
「むぅ、手ごわい。お代わりはいるー?」
「すいません、いただきます」
いつの間にか空になっていた茶碗をそっと差し出した。人の作った料理って、おいしいよねぇ
食事を終えて、爆豪君のお母さんが車を出してくれるというので、ありがたく送ってもらうことにした。ちなみに本人は家で皿洗いと風呂掃除、自身の入浴まで済ますように言いつけられてお留守番。
「今日はうちの子が無理に誘ってゴメンネ?」
「いえ、私こそ図々しく食事まで頂いて」
「アレくらいいわよぉ。あの子だってアドバイスのお礼のつもりだったみたいだし」
それならよいのだけど。実際、個性伸ばし相当の部分以外は役に立つか微妙だし。
「あの子、学校ではどう?今まではずっとお山の大将でね。対等の友達っていなかったのよね」
「弄ってくる友達もいますし、大丈夫でしょう。緑谷君とはちょっと微妙ですけど」
「あー、あの子ねぇ。無個性って聞いてたのに、急に個性が発現するなんてあるのねぇ……にしても、あのバカ、まだ出久君にきつく当たってるのか。ちょっと締めるか」
「程々でお願いします。意外に打たれ弱いみたいですし」
「……ほんと、勝己の彼女になってくれたらねぇ、ピクリともかすらない?」
女性は何歳になっても女性で、恋バナ大好きですよねぇ
「今は自分もそう言うこと考える余裕はないですね」
率直に答えるなら、峰田よりマシだけどナイかなー。コツさえつかんでしまえば操縦は楽そうではあるが気疲れしそうだし。私みたいな腹黒系より、一佳みたいな姉御肌、少なくとも五分に喧嘩できる人の方が良い気がする。
「ヒーロー科は本当に忙しいですから。あ、ここで大丈夫です」
「そう?まぁ、機会があったら考えてみてよ。それじゃ、おやすみなさい」
やれやれ。それにしても私が考える事じゃないけど、緑谷君との関係は根が深いなぁ
雄英入学前まで無個性ねぇ、あのパワーに耐えられる肉体が出来上がるまで眠っていた、と言う事?でも職場体験まで加減も出来てなかったわけで、何ともおかしな話だなぁ。
微妙に釈然といかないものを感じながら、家路を急ぐことにした。
爆豪強化については、とりあえず材料を撒いて、後はキーボードの上をどれだけ指が滑るかに任せるノープランマン。
爆発の質の改善は、アニメを見てて思ったこと。
表現的に仕方がない部分もありますが、爆煙が多すぎるんですよ。それで目隠しに使われて自分も追い込まれているので、改善できる余地は多いと思います。
原作では燃料を増やして威力は増しているようですが、それだけじゃ個性を伸ばす方向としては弱いかなぁ、と。期末試験に間に合わなくても、事前知識を仕入れて合宿に臨めばそこそこ強化できるでしょう、めいびー
足から爆発については、きっと頑張ればできる(暴論
個性が成長すればワンチャン、と思ってます。緑谷君以上に蹴りを使ってませんからね。使わない手はない。