雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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改変部分の描写に複数の視点で話が進みます。
途中からオリ主視点に戻ります。



第33話 期末試験(3)

―――Side:教師陣

 試験の数日前、内容の変更に関する極秘の職員会議が深夜まで行われていた。

 

「今後、ヴィランとの戦闘が今以上に激化すると考えば、ロボとの戦闘は実戦的とは言い難い」

「それに、苦戦すらせずに倒せるものが今年は多い。優秀なのはいいが、楽な試験で増長されても困る」

 

 話の趣旨は分かるが、とても賛成できない。

 危険でもあるし、あまりの実力差に点数もつけられないというのが反対意見の趣旨だ。

 結局はハンデを付けることと、ほかならぬ根津校長が賛成していることで試験は生徒2名に教師1名のハンデキャップマッチになった。

 

「では組の采配ですが―――」

 

 爆豪と緑谷を組ませ、オールマイトとぶつける。実力よりもお互いの仲の悪さでの組み合わせに、ある意味元凶でもあるオールマイトは「よく見てる」と戦慄するしかなかった。

 

(あぁ、でもフルフォルム、アレがどこまで出力上がったんだろう。ハンデ次第では私も危ないかもしれないなぁ)

 

 何気に命の危険すら感じていた。

 自ら助力を求めたとはいえ、その原因である少女を少しだけ恨む。狙いすましたかのように、議題はオールマイトにとってある意味悩みのタネ、上鳴茉芭(まつは)に及んだ。

 

「上鳴茉芭ですが、入学当初の想定よりも伸びがいい。特に職場体験で一番伸びた生徒でしょう。装備なしでの火力に不安定感はあるものの、包帯捕縛術である程度補っており、この時期に要求される水準には達している。

 戦闘以外は蛙吹(あすい)と同じく高いレベルで安定している。コミュニケーション面に至っては上級生とのコネクションまで確立し、B組の拳藤と共にヒーロー科全体に利益を還元している。

 その割に自己評価が低いし状況の見切りが良くも悪くも早い。そこで芦戸と組ませます。芦戸は演習での遊び感覚が目立つ。ある意味で一番の問題児と組ませ、これを切り捨てずにクリアできるかを見極めたいと思います」

 

「「「異議なし」」」

 

「次に兄の上鳴電気ですが、目立った失点はないがスタミナ面の底が見えない。入学前の自己鍛錬は高いレベルだったようですが、それ故かあまり伸びていない。職場体験以降はむしろ甘えが目立つ。ちょうどいいのでスタミナの底を図るため、継戦に不安がある切島と組ませます」

 

「「「異議なし」」」

 

(ほんと、よく見てるよ、相澤君。茉芭少女、頑張ってくれよ……主に私の平穏のために)

 

 何かあったらグラントリノが五月蠅そうなので、無事のクリアを祈るオールマイトだった。

 そして始まった演習試験では、概ね、想定通りの結果になった。

 

 

―――Side:上鳴電気&切島鋭児郎

『上鳴電気、切島チーム、演習試験、 Ready Go!』

 

 1組目スタートなので、打ち合わせはグランドまでの移動時間とスタート直後に行う必要がある。

 

「なぁ、この試験、捕まえた方が成績はいいよな?」

「そりゃあそうだろ」

 

 2人は大通りを進みながら、まずは正面からセメントスに当たることを決める。

 程なくしてその行く手を阻むようにコンクリートの壁が現れる。

 

「いたぜ、先生だ」

「セメントス先生は動きが鈍い。一気に行くぜ!」

「おう!ついて来いよ、上鳴!」

 

 全身を硬化させてゆく手を阻むコンクリ壁を殴る切島。上鳴はその切島を踏み台に壁の上端部まで飛びあがると、拳に電気を集めてそのまま殴りつける。

 

「っおい!上鳴、こっちまでビリッと来たぞ!」

「あ、ワリィ、やっぱりまだ甘いかぁ」

 

 拳に電気を集めて打撃の威力を増すというのは、体育祭以降、戦闘の幅を広げるために積極的に使うようにした方法だ。己の双子の妹である上鳴茉芭が体育祭で見せたプラズマ化したエネルギーまで持って行けたら理想的。

 現時点ではそこまでの練度に至っていない。高電圧でパンチの威力を底上げするだけだが、無生物相手ではその効果も弱い。

 それでも地表付近に打撃による損傷があったコンクリ壁は上鳴電気の手で倒れていた。

 

「けど、壁は壊した。一気に行くぜ!切島!」

「おう!」

「まだまだ」

 

 体育祭で全力放電のためのわずかな貯めの間に相打ちに持ち込まれた苦い経験から、もう少し近づく必要があると考えていた。

 その判断自体は間違っていない。

 しかし距離を詰めるにはセメントスが繰り出すコンクリート壁は数も生成速度も破壊のそれを上回る。

 

「う、うぇ~~い」

 

 わずか数分で、コンクリートに呑まれ敗北となった。

 

 

―――Side:芦戸三奈

「凄い!凄い!すごい!スゴイ!!」

 

 今までに経験したことのない速度で工場や配管の隙間を飛び跳ねながら、芦戸三奈の頭の中は「すごい」で埋め尽くされていた。

 当人にそれを言ったところで、「ただの思い付きを短時間でココまでモノにする方がすごい」と取り合ってくれそうもないが、自分では考えてもいなかった酸の調整。応用すればさらにいろいろな使い方が出来そうだたった。

 

「楽しくなってきたー!……っと、いっけない」

 

 困難に立ち向かっても笑えるのはいいこと、とオールマイトの言葉を実践していたつもりだが、どうも周りにはふざけて居るようにしか見えなかったらしい。

 その評価には大いに不満に思う芦戸だが、体育祭後のスカウト件数ゼロという”実績”を言われてはぐうの音も出ない。ヒーローだってエンターテイナーなんだから、わんこと遊びたかったんだよぉ、と言っても今更だ。

 

「でも、ホントに峰田のこと嫌いなんだなー、くふふふ」

 

 アレはガチだ。この先でデレになる未来なんて全くないと断言できる。もしそんなこと言って揶揄ったりしたら、忘れたころに手痛いしっぺ返しを食らうに決まってる。

 

「でも轟はちょっと気になってるよねー、あー、合宿が楽しみ」

 

 ちょっとくらいガールズトークに花を咲かせる機会はあるはずだ。その楽しみをしっかり確保するためにも今は気を引き締めてかかるべきだと気合を入れなおす。

 

「よし、あとちょっと。一気に行くよっ!」

 

 こちらの動きを読んだのか、砲撃も終わる。つくづくよくできた友人だ。

 さらに反発力を上げて、一気に鉄塔を飛びあがる。蛙吹や常闇、爆豪に匹敵する機動性を発揮し始めた芦戸は瞬く間に操縦席にとりつくと、強い酸で扉を溶接してしまう。

 

「これくらいは遊んでもいいよね」

 

 甘く見られていい気分はしない。相棒である上鳴茉芭は自分も甘く見られてるようなことを言っていたが、その比率は自分の方が多いだろう。その原因がこうした気質とわかっていても、舐められっぱなしは許容しない。あえてゆっくりと操縦席を溶かしながら、ホラー映画のように声をかけた。

 

「ミ・ツ・ケ・タ」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

 もはや人語ではない悲鳴と言うか狂乱ぶりを見せる根津校長にハンドカフスを嵌めて落ち着かせるのに、そこから2分が必要で、最後にふざけたことを引っかき傷と共に大いに反省する芦戸三奈だった。

 

 

―――Side: 上鳴茉芭(まつは)

 

 試験自体は割と順調で、第1戦で押し負けた電気&切島君ペア以外は皆、苦戦しながらも勝ちを掴んでいると緑谷君とリカバリーガールに聞いた。

 なにやらみんなの顔色が悪いけど、どうも口田君が大量の虫をプレゼントマイク先生にけしかけたらしい。虫嫌いは克服できたのかな?ならよいことだと思う。

 

 

 第8戦では本格的に仕上がった、法令対応コスチュームに身を包んだ透ちゃんの実戦デビュー。

 熱光学迷彩用特殊素材と本人から採取したDNA情報を何やら難しい技術でこねくり回した代物らしい。そこまで深い技術は理解できないから詳細は知らないけど。

 イマイチ可愛くないと本人的には不満らしいけれど、熱光学迷彩を光学迷彩だけに絞り

可視化(・・・)時間を確保したとかなんとか。要は見た目は前と変わらないが、見えるようになった時にはグローブに合わせた薄い青のレオタード姿になる。

 そのシルエットは本人の魅力を十分に伝えてくれるのではないだろうか……何処とは言いたくないが負けてるし。

 そして本気で全身を隠す時でもブーツを脱がなくても良くなった分、不整地での移動速度が上がったおかげで見事、短時間でスナイプ先生にハンドカフスをかけることに成功していた。

 

 

 第9戦。開幕冒頭に背後から忍び寄ったミッドナイト先生に対して、瀬呂君が峰田君をテープを使い回避させた。ただ自身は逃げる事が出来ずに眠らされる。

 血涙まで流してラッキースケベを羨ましがりながら逃げる峰田を見て、見学してる皆の意見もやや厳しめ。

 

「ああいう子は、雄英(ここ)で生き残るのは難しいかもね」

「さぁ、それはどうでしょうか?」

 

 将来を見据え、試練を乗り越えていけないと厳しいという意見は同感です。

 けどねぇ、それはあの性欲の権化を見誤ってると思いますよ。

 

「下心が露骨かつ視線言動その他すべて下衆な点を除けば……除いたら個性しかない気もするけど、そのたった一つの使い方はものすごく上手いし、理由はアレでもモチベ自体は高いんですよねぇ、言っててサブイボ湧くぐらいに認めたくないけど、いやホンット」

「どんだけ嫌なのっ!」

 

 それはもう、今すぐ消滅してほしいくらいには。

 ともあれ、ミッドナイト先生を見事に拘束した峰田は見事に逃げ切り勝ちをしてのけた。

 

 

 そして最終第10戦緑谷君と爆豪君チームがオールマイト先生と戦うことになる。

 モニターでは会話は聞き取れない、もしかしたら先生方の間では聞こえているかもしれないけど、映像を見る限り、2人の関係はまるっきり変わってない。

 爆煙を見る限り、爆豪君のほうは改質は間に合わず、量的増加は程度が不明。

 緑谷君のほうはオールマイト相手に腰が引けている。そもそも敵わない、という思い込みもありそう。何せ相手は日本どころから世界ナンバーワンヒーロー・オールマイトなわけだし。

 そして始まるオールマイト無双。何と言う理不尽の権化。

 フルフォルムはまだ実戦では使えないかな?アレが出来れば多少は天秤が傾くのだけど。

 

 いったん、路地裏に逃げ込んで仕切り直し。

 ハンデもあるのかオールマイト先生も無理には追わない。 

 その後の戦闘でもいいように翻弄されていたけれど、最後に一撃入れたときは全身まっさらなスーツ姿だったし、実戦でのフルフォルムは利用可能なようだ。

 ……オールマイト先生、生きてるかな?

 

 

 翌日、実技試験敗北の2人はものの見事に沈み込んでいた。

 

「まぁまぁ、ドンマイ。いっぱい土産話してあげるから♪」

「それのどこが楽しみなんだよぉ」

 

 三奈ちゃんがすっごい輝く笑顔で電気と切島君の傷に塩を塗りこんでる。

 その騒ぎも相澤先生の登場で一瞬で収まるのだけど。

 

「おはよう。今回の期末テストだが、残念だが赤点が出た。よって林間合宿は……全員で行きます」

「行っていいんですか!」

「あぁ、筆記は赤点者はなし。実技は上鳴電気、切島、それと瀬呂が赤点だ」

 

 いいところなく敗れた二人はもちろん、勝ったはいいが貢献度が極めて低い瀬呂君は仕方がないのか。

 

「我々ヴィラン側は生徒に勝ち筋を残しつつ、課題にどう取り組むかを見るために動いた。でなければ課題云々の前に詰むやつばかりだったろうからな」

「本気で叩き潰すと仰っていたのは?」

 

「本気だったさ。ウエイトその他、様々な枷を嵌められた中での、な。各先生方は君らの本気を引き出すために追い込んだ。そもそも林間合宿は強化合宿。赤点とったやつこそここで力をつけてもらわなきゃならん。

 それと赤点とったやつは別途に補習時間を設けている。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりきついからな」

 

 そこで赤点3人が沈み込む。遊んでいる暇など無いと理解したのだろう。

 ご愁傷様です。




上鳴電気と切島チームはほとんど原作の砂藤&切島Tと同じ末路ですね。
なら書くなと言われそうだけど。
別段嫌いなキャラではないですが、原作でも職場体験で「ちやほやされて楽しかった」と言っていたので、とりあえず補習対象にすることは変えませんでした。

色々考えた結果、対オールマイト戦はざっくりと記述するにとどめました。
いくらチートモード追加しても、そんな一気に練度が上がるわけもなく、また、フルフォルム発動時間短縮は合宿でやったほうがよりリアルかな、とw
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