雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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本日2話目
iアイランド編の裏側です。他作品ネタなので、嫌いな方はスルー推奨。
また、読まなくても本編には一切影響はありません。


第36.5話 閑話・Project A.L.I.C.E.

 日本からやってきたヒーロー科の学生である上鳴茉芭(まつは)を見送り、マーサ・ビスト・カーバインは安堵のため息をついた。

 

「さぁ、ラボに連絡して。『ALICE』計画は現時刻をもって終了。関連資料はすべて焼却すること。ただのメモ1枚、1バイトのデータも残してはダメよ」

 

 iエキスポのスタッフに紛れていたマーサの部下たちは手早く関係各所に連絡を入れ始める。

 その速さは素晴らしく、5分もたたずにすべて完了との報告が集まる。

 

「専務。処置は完了しました。しかし惜しい気もしますね」

「仕方ないでしょう。”彼女(ALICE)”との約束だもの。それにいかに高性能でもいう事を聞かないAI何ていらないわ。彼女がもたらした技術は十分すぎるほど我が社のためになったし、元は取れた。それで満足しなさい」

 

 むしろ厄介払いが出来たとも思う。

 

「我々ではない(・・・・)アナハイムの産み出したイレギュラー、ですか」

「それも含めて忘れなさい、アルベルト。人類に宇宙(そら)はまだ早い。そういう事よ」

 

 今では個性という呼ばれ方が定着した物の、黎明期には異能とも呼ばれた特殊能力。「超常がなければ人類は今頃宇宙旅行を楽しんでいただろう」と言うのは夢物語のネタと言うわけではない。

 月やアステロイドの資源調査は始まっていたのだ。今では古いアニメの夢物語となったスペースコロニーですら実現していたかもしれない。

 

 そんな中、この世界では資源調査に当たる宇宙飛行士の一人であった、カーディナル・ビストがどこからもとなく手に入れた記憶デバイス。

 現在の技術より何世代も進んだソレからサルベージされたのが「A.L.I.C.E.」と呼ばれるAI。

 『彼女』のデータを基に現在の「ALICE」が産み出され、結果、様々な恩恵をアナハイムにもたらした。iアイランドの建造にも、そうしたアナハイムの技術が使われている。

 しかしそれも今日まで。今回のiエキスポを以てプロジェクトは終了の運びとなった。

 

「それで、ALICEはどうなります?あの子、普通に返してくると思いますけど」

「それならそれで物理的に消去するだけ。それは彼女も承知済み」

「わざわざあんな茶番までやって招待して。どれだけ他の大株主に文句を言われたか」

「会社のメインフレームと研究データ、文字通りの人質に取られた私たちが何を言っても仕方ないわ」

 

 きっかけは些細なことだった。様々なテレビ番組やネット情報に興味を持つALICEがたまたま見かけた雄英体育祭。一体なにがALICEの琴線に触れたのかは今もって謎だが、ALICEは上鳴茉芭をそれこそ一目惚れのように気に入り、猛烈な勢いでその情報を集め、接触を望んだ。

 

 予想以上の高性能化を果たしていたものの既に持て余し気味で、現在のコンピュータ技術ではこれ以上の成長も望めない。

 アナハイム・エレクトロニクスとしても成長の立役者でもあるALICEを無下には出来ないが、これ以上は維持するだけでもコストがかさむ。

 一方的消滅を拒否し、アナハイムのインフラ全てを一時的に支配してのけたALICEとの交渉の末、自らの消滅を受け入れることと引き換えに、ありもしない株主抽選をでっちあげて上鳴茉芭をiエキスポに招き入れた。

 

 マーサからすれば、上鳴茉芭がアナハイムの株主の1人に名を連ねていたことこそが幸運だったと思える。

 

 すべてのデータから自らを切り離し、最後の1日を過ごしに街に出たALICE。

 マーサ個人としては、感傷とわかりつつも穏やかな日であることを望んでいた。

 その夜、まさかのiアイランドを舞台としたテロが発生し、偶然居合わせ難を逃れた雄英高校ヒーロー科の生徒たちがヴィランと交戦。

 人質を取られ拘束されたオールマイトを解放したばかりか、ヴィランの撃破、拘束にまでも活躍したという話に島中は騒然とした。

 

 その思わぬ事件が明け、当事者であるオールマイトと上鳴茉芭が大変申し訳なさそうにオフィスを訪れた際、マーサは思わず本気で笑うのをこらえる羽目になった。

 

 どうせ捨てるつもりだったと素直に言うはずもなく、オールマイトとのツーショット撮影にサインまでもらったり、上鳴茉芭を加えた3人での写真にも各々のサインをもらう幸運を得たのだから文句を言うほどのこともない。

 プロでもないのでとサインを渋る上鳴茉芭には、未来への投資と吹き込んで、ヒーロー・ブルーアンバーとしての第一号サインを手に入れたのだから、心底結果に満足していた。

 

「さて、あの子はきちんと逝けたのかしら……あら?」

 

 背部装甲の一部として運用可能なコアユニット、そこだけは焦げ付いているが他は無事。

 モニターグラスも多少の汚れはあってもひび割れひとつなかったのだが、パイロットランプがまだ稼働中を示していた。もっとも、間もなく電池切れのサインが出ているが。

 

「……あら、あの子ったら。やってくれるわね」

 

『One of the deep secrets of life is that all that is really worth the doing is what we do for others.』

 

 この世界に随分と馴染んでいたようだと思えば、今更ながらに惜しいと思う気持ちも沸く。それでも、最後に己がこれと見込んだヒーローの卵と共に働き、満足して消えて行ったのならば、それでよいだろう。

 

「さようなら、ALICE。ゆっくりとお休みなさい」

 




んー、我ながら何を書いているのやらw
最初は人形使いと少佐殿のように融合(ただしオリ主無自覚)とかも考えてALICEを出したんですが、それもどうかなぁ、で取りやめ。
その意味ではこの閑話は世に出す必要が実はなくなってますw
まぁ、勿体ないお化けが湧かないように、と、一応使い捨てたALICEへの供養にネットの海に放り投げておきます。

なお、最後の一文はルイス・キャロルの名言を引っ張ってきています。訳は「他人のための行いにこそ価値があり、それが人生の重要な秘訣のひとつだ」だそうです。ヒロアカっぽくていいかな、と。

参考:英語の名言・格言【ルイス・キャロル】
https://iyashitour.com/archives/38098
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