雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第37話 プール

 雄英高校ヒーロー科の夏休みと言うのは「座学がないだけ」の期間を示す。

とは言っても、iエキスポに行ってさらに数日の完全オフを楽しめる程度の休みはある。

 今日は休み前からの約束で、iアイランドから帰った後の時差ボケ解消や、気晴らしを兼ねて女子全員で集まって水遊びをしようという約束になっている。

 この時期はランニングもきついから、泳ぐのもよいよね。

 

「おはよー、八百万さん。今日も暑いね」

「おはようございます。茉芭(まつは)さん」

 

 委員長としての責任感か、八百万さんが一番乗りだった。

 

「あの、お伺いしたいのですけど水着は……」

「学校のプールだから訓練用でいいかな、と思って持ってきてない」

 

 雄英のジャージとかは学外の持ち出しが実は制限されている。

 自分で洗濯しないでいいから楽だけど。何気に戦闘訓練に耐える強度もあるから、盗難防止だろう。なら制服は?となるが制服は普通の服だし問題ないらしい。

 

「それに、遊び名目でも市販のは何か言われそうだったし」

「ならよかったです」

 

 どういう事かと聞いてみれば、相澤先生からありがたくない忠告があったそうで。どうもこちらの日程を狙って峰田と電気がプールの利用申請を出してきたのだとか。

 危険だから、学校指定水着の着用を勧めるため、先に来ていたのだという。

 

「飯田さん達も後から追加になったそうなので、さほど心配はしてませんけど」

「それは誰からの申請だったんだろ?そういう目的で峰田が他の男子を入れるかな?」

「申請は上鳴さん、峰田さん、緑谷さんだったみたいです」

 

 なるほど、なんとなく想像できた。

 主犯は峰田と電気。緑谷君は多分、カモフラージュだろう。建前だけ言って、相澤先生に不審がられないように。で、その緑谷君が建前を素直に信じて男子全員に声をかけた、かな?

 

「なるほど。やっぱ、電気は1人暮らしでだいぶ緩んでるなぁ」

「まぁまぁ、夏休みですし」

「八百万さんがいいなら、まぁ……」

 

 正直、だらけて落ちていくならご自由に、とも思う。

 そうは言っても一応は身内だし、最も身近なヒーローだった双子の片割れだから、あまり情けない姿は見たくない。

 どうしようもなくなる前に余計なお世話の一つぐらいはしよう。まぁ、どっちにしても林間合宿で扱かれるんだから、その前のお楽しみと言うことでいいのか。

 

「そういえば、茉芭さん」

「うん?」

 

「他の皆さんは名前で呼ばれてますのに、(わたくし)だけ、苗字のまま、と言うのは、何か私に至らぬ点でもございましたでしょうか?」

 

 そこで急にしょんぼりとしない!あぁ、もう、気を許してくれてるのは嬉しいけど、何だろうこの美人系なのに可愛い生き物。

 

「え?いやいや、そうじゃなくて単にタイミングの問題……かな?」

「ならぜひ、私も名前で呼んでいただきたいです!」

「あー、じゃあ、百ちゃん、で?」

「はい!何なら響香さんや三奈さんのようにヤオモモでも結構ですわ!」

 

 パァッ!っていう擬音を幻視するくらいに輝く笑顔。

 何というか、対等の友達関係ならいくらお嬢様育ちでも、あだ名の一つもあったろうに、どんだけ箱入りに育ったのだろうか。

 

「おーい、ヤオモモー、茉芭ちゃーん。おっはー」

「おはよー、二人とも早いねー」

 

 5分前には全員集合。学校と言う場所のせいかもしれないけど、素晴らしいね。

 ともあれ、皆で着替えてプールへ。

 そこには既にプールサイドで入念に準備体操をしている飯田君達の姿があった。

 

「おや、八百万さん達も体力強化の訓練に?」

「いえ、私たちは、今日はリフレッシュのために日光浴とプール遊びの名目で」

「なるほど。旅行自粛もあるし、そういう考えも一理ある!」

 

 相変わらず硬いけど、まぁ、よいか。

 

「ただ、一応は学校のプールであるし、準備運動だけはしたうえで、ゆっくり過ごしてくれ」

 

 そう言い残して他の男子の元に戻る飯田君。

 まぁ、仕方ないよね、と男子側が使うのと反対側で準備運動を始めたところで、何やら勢いよく駆け込んできては飯田君の姿にガッカリとする電気と峰田の姿。

 ただ峰田はすぐに立ち直って、粘着質な視線を百ちゃんやお茶子ちゃんに向け始めた。水着なら何でもいいのか。死ねよ、もう。

 

「あー、やっぱアイツ等って……」

「まぁまぁ、ほっといて遊ぼう。ねー、ヤオモモー、プール入ってボール遊びしようよ」

「サンセー!」

 

 そうだね。気にしても仕方ないし、今日はゆっくり遊んですごそう。

 そしてひたすら50mを泳ぎまくる男子連中を横目に、私たちは存分に水遊びを楽しんだ。

 ただ学校のプールは基本的に泳ぐための設備で、体格が大きな異形型でもある程度泳げるように水深がやや深く作られている。

 身長もあって、常時立ち泳ぎのようになるから、私だとボール遊びの方がきついかもしれない。

 百ちゃんで辛うじて頭が出るくらいか。

 なので意外に運動量が多く、すぐに休憩となった。 

 

「意外と、こういうのも疲れるよねー」

「何だかんだと水中で飛び跳ねたりするから、泳ぐのとあまり変わらないね」

「まぁ、帰り際にみんなマッサージはしてあげるから」

「ありがたいけどそのまま寝ちゃいそう」

「アハハ、そこはまぁ、頑張れ」

 

 男子の方を見れば、思惑を見事に外した挙句、強制トレーニングで屍と化した電気と峰田。うん、ざまぁ

 しばらく見てると、男子の方も一休みらしい。夏の日差しは厳しいが、プールのおかげでいくらか涼しい。

 そしたら何故か遅れて爆豪君と切島君。

 まぁ、いつものことで爆豪君が何やらヒートアップしていたら、飯田君が妙なことを言い始めた。

 

「みんな!男子全員でだれが50mを一番速く泳げるか、競争しないか!?」

「おぉ!」

「面白そう!」

 

 そして男子たちはみんな意外に乗り気。

 

「飯田さん、それでしたら私たちもお手伝いしますわ」

 

 まぁ、自分も勝負に加わると言い出さないだけいいのか。

 仮に女子だけで勝負した場合、梅雨ちゃんの圧勝はまず確定。2位以下は水泳に活かせる個性持ちが居ない。その分、よい勝負にはなるかもしれないけど、普通に水泳の授業風景になりそうだ。

 

「個性は使っていいのか?」

「校内だから問題ないだろう。ただし!人や建物に被害を出さないこと!」

「あと、もう一ついいかな?」

 

 勝負はいいけど、そのままやると絶対に「それ水泳じゃねぇ」ってなりそうだし。

 

「コース仕切りの黄色部分は、必ず水面に体の半分以上が触れてること、ってのを追加で」

 

 具体的にスタートとゴール手前の各5メートル、合わせて10mは何やってもいいけど、他はちょっとぐらい泳げという事だ。

 

「む、それは何故かな?」

 

「個性ありなら50mぐらい軽く飛び越える人もいるから、最低限度、ちょっとは泳がないと”水泳”勝負にならないでしょ?」

 

 50m飛びなら、ずっと飛んでもいいけど”水泳”ではない。私の発言に爆豪君はちょっと不満げ、一番賛成したのは峰田だった。

 

「オイラ賛成!そうじゃなきゃ勝負にならない!」

「あー、そうだよな。爆豪とか轟なら軽く飛べるよな」

 

 他にも常闇君、瀬呂君あたりは大幅ショートカットが出来そうだ。どちらが有利になるかは人それぞれ、個性の活用方法次第だろう。

 

「ぶっ潰してやるよ、デク!もちろんお前もな!半分野郎!!」

 

 そして始まった水泳勝負。1組目が峰田、常闇君、口田君、爆豪君、電気の5人。

 

「それでは、位置について!よーい!」

 

 八百万さん……じゃなかった、百ちゃんの笛の音で一斉に飛び込む。

 

「ふはははは!オイラの勝ちだー!」

 

 もぎもぎをあらかじめスタート台に取り付けたらしい峰田が、スタートダッシュで水泳ゾーンギリギリで着水。まぁ、確かに違反ではないよね。どうせアレの見せ場はそこまでだし。

 そのあとは流石に手足の短さで遅れる。

 

「クソが!シケってやがる!……しゃぁ!」

 

 爆豪君は手のひらからの爆破がちょっと不発になったが、すぐに爆発を得てそれを推力に進んで一気に進む。

 

「む、いかん!ダークシャドウ!」

「アイヨォッ!」

「アメェんだよ!フラッシュグレネード!」

 

 ダークシャドウが先行してロープを掴んで本体である常闇君を引っ張ろうとするが、閃光だけを取り出すような小爆発でダークシャドウを弱体化させた爆豪君が逃げ切って僅差だけどトップ通過。勢い良すぎてちょっと頭痛そうだけど。

 

「うぷぷ……あの爆豪がプールの壁に頭から突っ込むって」

「ま、まぁ、それだけ勝ちに拘った、ってことで」

 

 私も笑うのをこらえるのに、ちょっとお腹痛い。いやぁ、プールが頑丈でよかったね。

 何にしても爆豪君がトップゴールだった。

 電気は普通に遅れてた。私が電気なら、スタート直後に放電して気絶してもらうけど、意外にフェアな勝負を挑んでいた……って、そうか、人に被害を及ぼせない、つまり攻撃禁止か。なら仕方ない。

 

 

 2組目は瀬呂君、青山君、轟君、切島君の4人。

 スタート直後にテープを反対側に飛ばして、引っ張って速度を稼ごうと思ったらしい瀬呂君だったけど、テープを飛ばす距離があってむしろタイムロス。

 ようやく普通の水泳になるかと思ったら、水泳ゾーンに入った轟君が、他のコースを凍らせて妨害。しかも完全に凍らせるのではなく、表面だけうっすらと凍らせるという器用な真似をしていた。

 自分は炎でコースを溶かしながら進むという、合理的だが鬼みたいな戦法でゴール。いやまぁ、うん、反則ではないよね。個性で妨害してはいけないとは誰も言ってないし。

 負けたみんなは日光浴で体温めてる。

 

 予選3組目は飯田君、緑谷君、尾白君、障子君。さすがに普通の水泳区間が足を引っ張ったか、水中だと個性「エンジン」は使えないのか、個性で身体能力を引き上げる事が出来る緑谷君が圧倒的トップ。

 

 

「超人水泳すぎる。もう少し考えるべきだったかなぁ?」

「いいえ、それぞれの使い方に工夫があって、素晴らしいと思います」

「ねぇ、ねぇ、ねぇ、次はだれが勝つかな!?」

「ケロ、緑谷ちゃんの速さは凄かったわね」

「妨害攻撃の凄さを考えると、轟さんも負けてませんわ」

 

 それぞれが予想で盛り上がるなか、いよいよ決勝戦……とはならなかった。

 

「17時、プールの利用時間はたった今、終わった。さっさと家に帰れ」

「「「はい!」」」

 

 残念ながらの時間切れで、第1回1-A水泳大会はお開きとなってしまった。

 ちょっと締まらない気分だけど、まぁ、こんな日もいいよね。




ある程度きちんと泳いだ結果、決勝のスタートにつく前に時間切れになりましたw
次回から林間合宿です。
爆豪はここでアプデフラグ回収……できるかなぁ?
さて、オリ主の強化、どうしようかなぁ……(書き溜めはあるけど、書いてる時点では決めてないw
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