雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第4話 入学初日(1)

「おはよー、電気。寝坊しなかったんだね」

「いや、実はめっちゃした」

「やっぱりねー。ご飯は?」

 

 聞くまでもないが食べてないだろう。

 予想通りの答えに特大おにぎりを差し出してやる。

 10秒チャージなゼリー飲料よりマシだろう。

 

「入学祝ってことで」

「やっす。でもまぁ、サンキュー」

 

 言って歩きながら食らいつく。

 天下の雄英生が歩き食いとは!と怒るような堅物にエンカウントすることなく、校門までの間に無事に胃袋に収まった。

 

「で、マッハはどうよ?」

「んー、実はちょっと寝坊した。でも近いから食事は間に合った」

「うらやまし―。俺もちょっとは投資やるべきだったかなぁ?」

 

 いやまぁ、ね。そんな時間あったら勉強しないと受かってないでしょ。

 

「ヒーローになって、頑張ってヒーロービルボードに載るくらいなれば、お金なんて勝手についてくるよ」

「なれっといいなぁ」

「そこはなる、と言わないと」

「おー、目指せなんばーわーん」

「おー」

 

 本当にナンバーワンになろうと思ったら、オールマイトやエンデヴァーという真の超人、ヒーローを超えなければならないから、大変どころの話ではないけど。

 

 それはともかく、入学案内によれば、まず各自のクラスで待機とのこと。

 構内の見取り図を確認して、目当てとなるヒーロー科1-Aの教室についた。

 

「すっげぇ扉」

「異形型へのバリアフリーと言ってもここまで徹底してるのはあまりないよね。さすが雄英」

 

 天井が高い分、空間効率悪いよなぁと思いながら大きい扉を開く。

 動力補助があるのだろう、普通サイズの扉と大差ない感じで開く。

 

「んじゃ」

「おう」

 

 コツンと握りこぶしを当ててから入室。

 見渡せばすでに何人かのクラスメートの姿。

 朝のホームルームまでは20分ぐらいある。全員は無理でも女子に挨拶して回るくらいはできるかな。

 あたりを見渡し、何やらお上品なオーラを纏うお嬢さんを発見。

 

「あら、初めまして。私、八百万百と申します」

「初めまして。上鳴茉芭(まつは)です」

「ワタシ芦戸三奈ー!三奈でいいよー、よろしくねー」

 異形型の個性が出てるのか、肌色ピンクの元気な子。

 八百万さんと言い、ヒーロー科の戦力(ムネ)は化け物ぞろいか!?

「ワタシ、蛙吹(あすい)梅雨、ヨロシクネ?」

「私は葉隠透だよ!」

「よろしくー、あっちにいるのが双子の兄で上鳴が2人になるから、私のことは茉芭かマッハって呼んでね」

「判ったわ。ワタシのことは梅雨ちゃんと呼んで」

「おっけー、梅雨ちゃん、よろしくー」

 イエー、と軽くハイタッチ。

 透明人間な葉隠透ちゃんと、そして唯一、この苦しみを共有できそうな耳郎響香ちゃん。

「響香でいいよ、仲よくしよう、茉芭」

「うんうん、ヨロシクネ!響香」

 お互いの手を取り合って、つらい格差から目を背ける。

 と言っても、響香も形は素晴らしそうなんだよなぁ

 

 ひとまず今度ゆっくりお話ししようねー、と約束して席に着く。

 もうすぐ先生来るしね。オールマイトが担任……は、新任だしないか。

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」

「思わねーよ!てめーどこ中だよ!端役が!」

 

 女性陣でお互いの出身とかアレコレと話していたら、男子の方でもめ事が起きた。

 何というか、ひたすら真面目、といった眼鏡の人が不良っぽいというか切れてる子に注意してる。

 いやいいけどねぇ。

 そこにもじゃ頭の男の子と、やっぱりオッキイ子が来て状況がカオスに。

 

 もう現実逃避気味に机に組み込まれてる端末でクラス名簿を呼び出して、顔と名前を覚えながら「先生いつ来るのカナー」とか考えていたら、寝袋にくるまった不審者。

 

「はい、静かになるのに8秒もかかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」

 

 ヒーローというには草臥れた外見。

 ホームレスよりはマシという程度のぼさぼさ頭を見て、不審に思わない人はないだろう。

 

「担任の相澤消太です。早速だがお前らこれ着てグラウンドに出ろ」

 

 寝袋の中から出てきたのは体操服。

 言われるがままに更衣室で着替え、グラウンドに出てみれば「個性把握テスト」なるものをやるとの宣言。麗日さんが皆の疑問を代弁してくれた。

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間ないよー」

 

 3年という短期間で鍛え上げなければならないから時間はいくらあっても足らない、ということだけは同意です。

 

「雄英は自由な個性が売り文句。そしてそれは先生方も然り」

 

 それってつまり、B組は入学式に出てるということでは?

 それを指摘してもいいことはないだろうから黙っておくけど。そして携帯端末を掲げながら、やることを告げる。

 

「お前らも中学の頃やったことあるだろ?個性使用禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を作って無意味な平均を取り続けてる。文科省の怠慢だな」

 

 コレ、普通の先生が言ったら問題なんだろうけど、そもそも教師業をクビになっても大して痛くないプロヒーローだから言いたい放題だ。

 

「一般入試のトップは爆豪だったな。中学のソフトボール投げ、何メートルだ?」

「67メートル」

「じゃあ個性使ってやってみろ」

 

 なるほど。確かに個性把握テストと言っていた。

 実技試験でもある程度は見られているだろうけど、数値化した能力、応用力が見たいというところかな。

 それは確かに興味がある。

 パワータイプほどの結果は出せないだろうけど、いや、増幅系でないからこそできうる限りで鍛えてきたのだから、今の限界と目指す先は見ておきたい。

 爆豪君がサークルに入ると、相澤先生が急かしてくる。

 

「円からでなきゃ何やってもいい。思いっきりな」

 

 軽く腕のストレッチをして豪快なフォームから手のひらで爆発。

「死ねぇぇぇぇ!!」

((死ね?))

 

 物騒極まりない掛け声と爆風に乗ったボールは3重の輪っか状の雲を残して吹き飛んでいった。

 アレ、瞬間的に音速近く出てないかな?

 

「まず自分の最大を知れ。それがヒーローの素地を作る合理的手段」

 

 そこには705.2メートルとまさに超人と呼ぶべき記録が。

 大記録に対する歓声と思い思いの言葉が漏れる。

 

「何それ面白そー!」

「個性を思いっきり使えるんだ!さっすがヒーロー科!」

 

 あ、これマズいかも。

 そう思った瞬間、相澤先生の雰囲気がわずかに変わった……気がした。

 

「面白そう……か。ヒーローになるための3年間。ずっとそんな心づもりでいる気かい?」

 

 うっわ、うつむいた先の笑顔が胡散臭い。めっさ怖い。

 真剣味にかけてたのは事実だから、一緒に怒られるしかないんだけど。確かにちょっとおもしろそうとも思ったし!

 

「よし、8種目トータル最下位の者は見込みなしとみなし、除籍処分としよう」

 

 驚愕に震える。

 流石に300倍の倍率を乗り越えて初日除籍はみな避けたい。

 

「生徒の如何は教師の自由。ようこそ諸君。これが雄英高校ヒーロー科だ!」

 

 

「最下位除籍って!入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても……理不尽すぎる!!」

 

 先生に食って掛かれるその精神性は評価するけど、論破されるの見えるなぁ。

 

「自然災害。

 大事故。

 そして身勝手なヴィラン達。

 いつどこから来るか分からない厄災、日本は理不尽にまみれている。そうしたピンチを覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならお生憎。

 これから三年間雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。

 『さらに向こうへ』"Plus Ultra"さ。

 全力で乗り越えてこい(かかってきやがれ)

 

 かかってこいと言わんばかりの相澤先生に皆の表情が変わる。

 

「さて、デモンストレーションは終わり。ここからが本番だ」

 

 

第1種目:50m走

 個性を使ってすっ飛んでいった爆豪君の4秒13というタイムもすごいが、メガネの飯田君が3秒04。

 スピードにはちょっと自信あったんだけど、特化個性には遠く及ばないなぁ。

 それでも4秒80で走れたのだから良しとしよう、うん。

 

第2種目:握力

 ここでは複数の腕を持つ障子君が540kgという記録を出していた。

 自己記録59.56kg

 

第3種目:立ち幅跳び

 実技試験の時にやった、イオノクラフト効果を使った浮遊を組み合わせて距離を伸ばせるか試してみた。

 周辺で捕まえられる電子が少ないから、浮力を得たのはほんの一瞬。

 それでも353.35cmなら上出来だろう。

 電気がやり方を教えろとしつこかったから、お昼ご飯おごりで手を打った。細かい調整苦手なのにいいのかな?

 

第4種目:反復横跳び

 反復横跳びは71回とまずまず。

 特徴的な髪形の峰田君とかいう子がとんでもない回数をたたき出していた。アレはちょっと面白そうだが、彼が女子を見る目を考えると話しかけたくないなぁ。

 

第5種目:ソフトボール投げ

 筋力任せで60.7m

 体幹をしっかり鍛えた甲斐があった。

 中学校の頃は普通程度の記録に抑えていたからね。爆豪君の個性無し記録より下なのはちょっと凹むけど。

 緑谷君というモジャ頭の子が悲痛な表情から一転、覚悟を決めて投げようとしたときに相澤先生、抹消ヒーロー・イレイザーヘッドが動いた。

 どうやら、入学試験で相当のことをやらかしたらしい。

 705.3mと大記録を出したが指1本をおそらく粉砕骨折。

 皆がここまで最下位爆走中の緑谷君の超記録に驚いたり、何故かキレた挙句に捕縛された爆豪君に唖然としてたが、私はそれどころではなかった。

 ていうか――――

 

「キ、ギモヂ、ワル……何、あれ」

 

 吐き気をこらえるのに必死だったのだ。

 

 以降の種目は特にこれといった波乱もなく。

 気持ち悪さをこらえきれなくて、あの後トイレに逃げたけど。

 

「んじゃパパっと結果発表。

 口頭で説明するのは面倒なんで、一括開示する」

 

 面倒だし順位をつけることで生徒間の競争意識も高められる。

 合理的デスネー

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

「はぁーーーー!?」

 

 あ、緑谷君が真っ白に燃え尽きた。

 

「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

「あんなの嘘に決まってるじゃない。ちょっと考えればわかりますわ」

 

 そうかなぁ?

 後でちょっと調べてみよう。少なくとも本気だったと私は思う。

 

 




机の情報端末は捏造ですw

初日の個性把握テスト、成績はおおむね、スポーツ庁「令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」の男子の記録を基に4割増しを基本に調整しています。ただし握力は2倍、ハンドボール投げは3倍しましたがw
この成績を見ると、緑谷君、現実世界なら結構鍛えてると思います(足の速さは平凡だけど)
オールマイトに出会う前に一切鍛えている形跡がないのはいただけませんが、頑張って10か月鍛えたんだなぁとわかります。これでも個性使われるとビリになるあたり、空気中のプロテインは個性に反応しているんだって感じですねw

オリ主は身体能力的にはヒーロー科全体で得意種目なら上の下くらい。
反射神経だけはトップレベルに設定しています。
ただし肉体増強系ではなく、『個性も活用して鍛えただけ』のレベルですから、トータルで見れば平均程度に収まります。
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