手早くお風呂を上がると、雄英のジャージに着替えてプッシーキャッツの事務室へ、その途中でピクシーボブさんにお会いした。
「ピクシーボブさん、さっき洸汰君が運ばれてきたと思うんですけど」
「あぁ?あの子なら大丈夫。心配してきてくれたの?ありがとねー」
「い、いえ、大丈夫そうなら、その、はい」
ならよいか。さすがに当人に「変なもの見せちゃってごめんねー」とは言い難いし。
「ところでー、途中の様子伺ってたんだけど、ええっと」
「上鳴
「クラスの子たちに何かしてたでしょ、回復系じゃないのに?」
あぁ、それは気になりますよね。
どうせ明日からも使いまくることになるのだし、実演して見せればいいか。
「個性で相手の体内の神経伝達からマッサージができるんですよ。体感してみます?」
「あ~……これは、なかなか……いいわー」
「本来は自分のトレーニング用の使い方だったんですけどね。出力調整で強制的に寝てもらうこともできます」
職場体験ではそれに随分と助けられた。
「へぇ、それは職場体験で?」
「はい。お世話になったホワイトマウス先生に良い鍛錬になるから今後も続けるように、と」
「ふぅん……ちなみにこれ、A、Bクラス全員にやるのは結構負担?」
「時間がかかることを除けば、さほどではないですね」
拙いことを言った自覚はある。これでトレーニングの密度が上がる可能性が高くなったのだし。
「とりあえず、もうすぐご飯できるから、食堂に行ってて」
「はい。では失礼します」
その後は皆で美味しいご飯を存分に食べて、夕方到着して食後にお風呂だったB組全員とクラスメイト達のマッサージを終えたら、そこで限界。朝まで泥のように眠った。
2日目、5時30分と言うまだ早い時間に朝に集合させられていた。疲れは大分抜けているけれど、やはりみんな眠そう。あー、朝日が目に染みる。
「おはよう諸君。今日から本格的に強化合宿を行う。今回の合宿の目的は全員の強化、またそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に備えての準備だ。心して臨むように」
空耳でなければ、仮免、と言う単語が聞こえた。通常は2年で取得するのだけど、ヴィラン連合とか出てきたから前倒し、と。いざとなれば自衛が可能なように、という事ですね。わかりたくないです。
そして入学時との比較と言うことで遠投を行う爆豪君だが、710mほどと、さほど距離は伸びていなかった。
「入学から3カ月、色々な経験を経て確かに君らは成長している。だがそれはあくまで精神面や技術面、後は多少の体力面の成長がメインで個性そのものは今見た通り、それほど成長していない。だからこれから君らの個性を伸ばす。死ぬほどキツイがくれぐれも……死なないように」
うわぁ、あのうさん臭い笑顔。煽ってくるなぁ
そして朝食もこれから自炊なのかと思ったら、時間がもったいないので、災害用の備蓄食料で済ませるとのこと……保管期限切れの入れ替え分の消費ですね。捨てるよりはいいけれど。なお、お昼も同様らしい。
消費するカロリーを考慮して朝食として数食分のエマージェンシービスケットと共に各々の強化メニューが言い渡されていく。
たまに食べる分には美味しいんだけど、毎食はきついな。明日は早起きを心がけよう。
用意された機材を設置も当然自分たちでやることに。ひたすら走る飯田君とかは燃料がオレンジジュースというのが、ちょっとうらやましいかも。
さて、私は何を強化するのだろうか。電気と同じメニューをやっても効果があると思えないしなぁ
「上鳴
そう言って渡されたのはハチマキ……いや、目隠し?
「保須事件の際、視覚外から接近していた脳無に相手より先に気付いたと報告書にあった。他、これまでの実績等を鑑み、感覚系を重点的に鍛えてもらう。とりあえず目隠ししたままでも不自由なく行動できるぐらいなれば理想的だが、周辺の人物や危険が感知できるようになるだけでも構わん。
感知に関しては、傾向は違うがラグドールの個性も参考になるだろう。
ホワイトマウスがやった視覚からのアプローチももちろん継続して行ってもらう。具体的には昼と夜の最低2回、A、B全員のマッサージをやってもらう」
とりあえず、目隠しを取らなければ自由にしていてもいいらしい。
ただ、周りから何もしないというわけではないから、攻撃される可能性はあると思っておこう。
「バッテリーがあればな……ぁ!」
電子を飛ばして簡易的なレーダーの代わりくらいは出来そう。
そう思った時に何か凄いエネルギーが感覚に引っかかった。思わず目隠しを外してそちらに目をやると、木々に隠れてヒーロー・デクと緑谷君が交互に見える。なるほど。フルフォルムの練習か。
ともあれ、ちょうど感知しやすい電子の塊、と言うよりエネルギーの塊があるならまずはそこから始めて、その波がそれる先、つまり木々を認識していこう。
視覚では本能的に排除している人以外の電子を感じ取れれば、きっと視界の代わりになる。
そう思って集中していると、背中に衝撃。正直割と痛い。テニスボールぐらいの硬さはありそうだ。
「判っていると思うが、何もしないとは言っていないぞ。集中は切らすなよ」
「はい」
さて、改めて集中しないと。と思っても、深い集中状態になれば必ずと言っていいほど、何かしらが飛んできたり、肩を叩かれたりしてビクッとなる。
あの時と今の差が何かと言われれば、結局は実戦の臨場感と言うか集中力。己の中に対して集中するのは比較的容易いけど、視覚を遮断した状況で外に対して意識を広げつつ集中するのはなかなか難しい。
ただそれでも、何度も見てきた電気と分かる電子の流れが近くにあったり、とにかく知覚に良い刺激となる緑谷君がいるおかげで、状況の把握は思っていたより形になりそうだった。
むしろこの色がなく、かつ、全方位が見える異質な知覚の中で歩くことの方が苦労しそうだと、頭痛をこらえながら、飛んできたボールを何とか避けることに成功していた。
「さぁさぁさぁ、昨日言ったよねー、面倒を見るのは初日だけって」
「己で食う飯くらい、己で作れ!カレーー!」
割と全員ボロボロな気がするんだけど、仕方ないかと目隠しを外す。
というか、外してよいですよね?と、相澤先生を見ると頷いていたので、よいのだろう……思っていたより慣れてたみたい。
流石に調理はまだ危ないだろうから、普通に見ながらにしよう。
「全員全身ぶっちぶち。だからって雑な猫マンマは作っちゃだめね!」
何とも狂気を感じさせるメイクと笑い声で煽ってくるけど、本当にキャリア12年のベテランなんだろうか……更年期かなぁ?と失礼なことを考えていると睨まれた。なんでわかるんですか。
「確かに災害時に消耗した人の腹と心を満たすのも救助の一環。さすが雄英、無駄がない。世界一上手いカレーを作ろう!みんな!」
立ち直りが早いなぁ。そこまで考えてのこととは思えないけど、こういうのこそ学校っぽくていいかもしれない。
「普通の林間学校っぽくてこういうのもいいね」
「あー、言われりゃ、たしかに
改めて見渡すと、材料は一応、全員分というかそれ以上にありそう。
ご飯炊くの飯盒かぁ……焚火台での調理って正直、ひたすら面倒なんだけど……煤で汚れるし。
とりあえず全員で手分けして、ご飯を炊く班とカレー班に分かれ、準備を始める。私はご飯の方に回った。鍋でお米を研いで、各自の飯盒に。それはいいんだけど、量が足りるかな?
大き目の4合炊き飯盒が1クラス3個の計6個。合計24合は1人前0.5合から0.7合ぐらいと思えばギリギリの量だ。体を動かしていた人たちのことを考えると足らない気がする。
米を磨ぐのに使った鍋があいたから、お代わり分を少し炊いておこうか。余ってもだれか食べるだろうし。
「ご飯が飯盒だけだと多分、足らない人いるから、このお鍋使うねー」
最低限度の仕込みが終わって、後は火を通す工程となって、火おこしでは轟君が大活躍だった。
個性で高温の炎を出して太い薪にすぐに火をつけていた。
「轟ー、こっちにも火を頂戴!」
三奈ちゃんが轟君を呼んで、火付けをお願いしてるのを見て、切島君が何を思ったか爆豪君をからかい始めた。
「爆豪、爆発で火ぃつけられね?」
「つけれるわ、クソが!!」
余計なことを言って煽ったせいで、焚火台が1個崩壊したけど。
「皆さん、人の手を煩わせてばかりでは、火の起こし方も学べませんわよ」
「えぇ……?」
そう言って、着火用のライターを創り出す百ちゃんと、それってあり?と疑問の響香。大丈夫、それだけだとすぐに火はつかないから。
「いや、いいよ」
轟君がすぐに火をつける傍らで、百ちゃんがやっぱり苦戦していた。
「あ、あら?」
「ライターで火をつけるなら、着火剤か小枝、新聞紙とかで種火を起こさないと。薪は案外、燃え難いらしいよ」
幸い、着火剤もしっかり用意してあったので、百ちゃんに手渡す。
手を出そうかとこちらを見ていた轟君にはちょっとストップをかける。折角だし、ちょっとぐらい苦労しても、そのほうが楽しいと思うんだよね。
「そうなんですのね、
「小学生の時の林間学校。あとは本やマンガのにわか知識だね」
今度は着火剤がいい仕事をしてくれて、無事に薪に火が付いた。輝くような百ちゃんの笑顔を見て、轟君も笑みを浮かべていた。
「「「「いただきまーす」」」」
「店とかで出したら微妙かもしれねえけど、この状況も相まってうめぇぇ!」
「野暮なこと言うよな!」
雰囲気も味のうちと言うし。それにしても百ちゃんの個性に対してアレと例えるのは、食事中に何を考えているのやら。
「あ、ご飯のお代わり欲しい人はそこのお鍋に焚いてあるからねー」
「おー、サンキュー!」
「しっかり食わねぇと、明日も持たねぇもんな」
余ったらおにぎりにしておいて夜食……と言いたいけど、残らない気がする。もっと炊いておくべきだったかも。今日は食後に入浴。明日の朝7時からトレーニング開始。災害用保存食が嫌なら自炊しなさい、ってことですね。
初日のことがあったが、入浴はクラス別。峰田のみ前科ありということで、相澤先生、ブラド先生との入浴になったみたいだけど、自業自得だからだれも同情しない。
「ねーねー、今日はみんなで女子会しよーよ」
補修組の電気と切島君が連行されるのを見送って、三奈ちゃんの提案で寝る前に女子会と言うかパジャマパーティをすることになった。
百ちゃんが一佳に声をかけたことで、B組女子も参加だ。
「とゆーわけで、お招きありがとねー」
一佳を筆頭にB組のみんなが入るとさすがに10人ぐらいが眠れる部屋も少々狭く感じる。
それぞれが持ち寄ったお菓子をつまみながら、それぞれの個性伸ばし訓練の話から始まって、個性伸ばしの一環でやっているマッサージについてはかなりお礼を言われた。
「前からやってもらってるけど、最近は効果上がってない?すごいキレがよくなる感じだよ」
「疲れが残らなくて助かるよー」
「そういえば、お風呂上がりにマッサージしてもらった時と目の色が違う気がするけど?」
「なんか、個性を使って特に”見る”ことを意識すると色が変わるようになって」
そういえば最近では自分でも忘れてたよ。言われてみたらみんな気にしてなかったし。
「なんかそういうの格好良くない?」
「あー、黒色とか喜びそう」
「A組だと常闇かなー、アイツ絶対中2なアレだし」
「「だよねー」」
そういえばその事についてクラスメイトに聞かれたことなかった気が。
今更だけど、それについて聞いてみたら「必要なら言うだろうし別によくない?綺麗だし」で終わってたらしい。いやまぁ、いいけど。
ともあれ、そこから話がクラスの男子に関することに。恋バナをしたいー、と三奈ちゃんは騒いだけど、誰も彼氏がいないという悲しい現実に、まずは男子の品評会となった。
「B組は物間がアレだけど、他は割と草食系?かな?」
「顔はまぁまぁ普通よりちょっと上ぐらいなのに、中身残念マンねー」
「鉄哲とか暑苦しいのが草食とかなくない?」
「
「アイツはそういう個性だから仕方ないけど。普段は紳士的じゃん」
「砂藤がたまに分けてくれるお菓子はおいしいよねー」
「ん」
意外にみんな辛辣だった。そして砂糖でパワーアップする砂藤君は個性のための甘味をおすそ分けすることで独特の地位を築いているっぽい。
「A組はー?なんだっけ、あのやたら粘っこい視線のアレ、大丈夫?」
「峰田ちゃんは昨日もお風呂覗こうとしてたワ。みんなも気を付けて」
「「「サイッテー」」」
「そー言えば、アレが自販機を物陰から眺めてハァハァしてたのウラメシかったんだけど……」
うん?怨めしい?怖くてジュース買えなかったとか?
「あぁ、レイ子語で怖いってことね」
「なる、アイツ、機械にも欲情するのか。人として終わってない?」
「……多分、アレのヒーロー名が……だから……うん、後は言いたくないかなぁ……」
「「「……うわぁ」」」
無事、B組のみんなにも危機感が共有されて、これで一安心。
ついでに雄英1年女子が今後飲まないであろう、とあるジュースが決定した瞬間である。
「そ、それはそうとさ、戦闘力高い人多いよね。A組。最近だと、緑谷が伸びてるって?」
「あぁ、うん、デク君は凄いんよ」
「デク?それって緑谷のヒーロー名だっけ?」
もとは蔑称みたいだけど、お茶子ちゃんがそれをプラスの意味に変えたとか。
「ほー、じゃあ入試でゼロポイントヴィラン倒したのって緑谷なのか」
「そして、それはお茶子ちゃんを助けるため!」
「これは、LOVEネ!」
すっかり弄られて顔が真っ赤のお茶子ちゃん。本人はそんなんじゃないと言ってるけど、表情がねぇ
人の不幸は蜜の味と、弄られてるお茶子ちゃんを肴にジュースを飲むという余裕を見せられたのはここまでだった。
「そーいえば、体育祭では熱い想いをぶつけてた宝石乙女なブルーアンバーちゃんとしてわぁ、ショートきゅんのことはどうなのかなにゃぁ~?」
「けほっ、にゃ、
うわぁぁぁ、忘れたい黒歴史がぁぁ
しかも言い方ぁ!檄を飛ばしたのは事実だけど、その言い方は違う意味で言ってるでしょ!
「あ、噛んだ。マッハがこんなに狼狽えるのってなんか新鮮」
「そうですわね、いつも冷静でそこが頼もしくもあるのですが、とても可愛らしいですわ」
「うわ、茉芭ちゃんかわいー」
「くふふ、ほ・う・せ・き・お・と・め……拳藤、あんたってサイッコー♪一佳でいい?私も三奈でいいから」
「オッケー、三奈」
あぁぁぁ、なんか混ぜるな危険って感じの二人ががっちり手を組んだ気がするぅ
「いや、だってさ、あそこまでガチでやりあったのに、元の木阿弥みたいな半端して負けるの見るのって、ムカついて、つい、その……」
「あー、まぁ、その心理はわかるね」
「でもさ、iアイランドのレセプションパーティでも、わざわざ轟からドレス褒めに行ってたよね」
「う゛っ」
「結構、轟もまんざらでなかったりして」
「うう、そういう響香だって、電気の反応にむくれてたじゃん」
「そりゃ、ヤオモモが折角選んでくれたのに、女殺し屋なんて言われたら腹立つじゃん。て、アイツぅ?話しやすいけどチャラいし、身内のマッハには悪いけど、ちょっと今はないなー、でー?話そらして逃げよーってのはナシよ、マッハ?それとも、ブルーアンバーちゃ~ん?」
うわ、藪蛇だった。完全に捕食者の目になってるぅぅ
あぁぁぁ、もう逃げたいぃ
「逃がさないよー。ほーれ、吐いちゃえ。ちょっとぐらいは気になってるんでしょー?」
この勘の良さ。本当に三奈ちゃんは楽しんでる時が一番手に負えないなぁ、それが自分に向くのは本当に勘弁してほしいのだけど。あぁ、こら揉むな。なにがジャストサイズだ。チギっていい?
「…………そりゃ、まぁ、全く気にならないと言ったら、ウソになる……と、思う」
「「「「キャーーーッ♪♪」」」」
ああぁぁぁ、もう顔から火が出そう。
結局この歓声で騒ぎすぎとブラド先生が乗り込んできて、私が弄られまくったパジャマパーティは終了になった。ううう、明日から、轟君の顔、まともに見られるだろうか?
合宿1日目夜から2日目でした。
3日目に襲撃って、正直、最終日までまってくれー、と思わなくもないのですが、ヴィラン連合側に待つ理由がないのでそこは原作通りの予定。
そんでもって女子会というかパジャマパーティ……いやまぁ、からむ機会が多かったから、ある意味テンプレなんですけどねぇ
轟ルートって割と地雷要素が多いんですが……まぁ、いいか。どちらにしてもガッツリ恋愛を描くかは未定。その気になるまで麗日が弄られるついでに時々フレーバーとして出す程度にしたいと思います。