雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第47話 必殺技開発(2)

 圧縮訓練の1日目が終わり、着替えて寮に戻るところで相澤先生に呼び出しを受けた。呼び出されたのは面談室。当然のようにリカバリーガールと初代インゲニウム、飯田先生の姿もあった。

「さて、用件はわかっているな?」

「飯田先生の件でよろしいでしょうか?」

「その通りだが、口止めとはちょっと違うんだよ」

 

 おや?確かに既に口止めはされていたし、これからも特に言うようなことではない。

 

「ホワイトマウスの奴が今回の件を纏めて、個性医学学会に論文発表するって言っててね」

「はぁ、それは良いことなのではないかと」

 

 実際、効果が実証されたわけで、同じように障害が残るケースは減るだろう。

 

「その功労者として、ブルーアンバーの名も出したいとの打診だ」

「……はい?」

「君の個性による診断がなければ、私は今でも車椅子での生活だよ。十分凄いことをしたし賞賛を受ける権利と義務がある、それは判るね?」

 

 いやいやいや、それは流石に過大評価でしょう。

 プロヒーローならその功績は自ら世に宣伝するけど、まだ学生の身分でしかもかなり適当な思い付きですし。

 

「素人の思い付きを笑うことなく、評価したホワイトマウス先生の功績と思いますけど」

「アンタは未成年のうえ学生だから本人の希望で名前は伏せる事が出来る。ただ、『被験者の神経・個性の体内での作用を観測できる個性』の持ち主が関与したことは公表される」

 

 個性の作用ってそこは過大評価だと思います。私の個性「電子操作」がその発表内容にマッチすると思う人はまず居ないと思うから、悪くはない気がする。

 

「実力以上の評価をもらっても碌なことになりませんから、匿名でお願いします」

「今の段階では合理的だな。良いですね?リカバリーガール」

「判ってるよ。マウスだって初めからそのつもりだったろうしね」

 

 それなら初めから匿名で処理しておいてください。ヒーロー資格を取るのだから名前を売っておいたほうが良いから一応は確認しておこう、と言う事みたいだけど。

 

「多分だが、個性の観測は過大評価、とか思っているだろう?」

「……正直なところ、仰る通りです」

 

 だって神経を伝わる電子と区別つきませんよ。電子は電子で別に色ついてないし。

 

「他人の個性への干渉、それどころか”調整”の実績があるだろ。オールマイトに聞いたぞ。緑谷のフルフォルムは上鳴が干渉してとっかかりを掴んだと」

「アレはフルカウル使用時の神経信号を増幅して、イメージを言葉で伝えただけなんですけどね。形にしたのは緑谷君の努力と才能です」

「エクトプラズムの分身を電子操作で崩しててもそう思うか?程度はあるが個性で制御されている物質に干渉可能レベルに達していると自覚しろ。爆豪のように過剰な自信も厄介だが、なさすぎるのも問題だ」

 

 そう言われてしまうと何も言えないなぁ

 神経を伝わる電子と同じ感覚で干渉したから、正直言って差がつかめないけど。

 

「ともかく、”個性の調整”というのはヒーローもヴィランも恩恵にあやかりたいものが多い。身の回りには十分気をつけろ」

「わかりました。あの、個性伸ばしを兼ねているマッサージはやめた方が良いですか?」

「……自衛のための能力も伸びるから、やめろとは言えない。ただ、今よりも”調整”の域に届きそうならすぐ報告しろ」

 

 相手の個性の形を整える。それが出来たら確かにすごいことだけど、ただ電子を操作するだけの個性が、なんだかすごいことになってしまった気がした。

 

 

 必殺技開発のための圧縮訓練、2日目になり改良したブーツの試験運用を行っていた。

 重量や強度に影響のない範囲での改造なので、それほど多くの電子を蓄えられるわけではないが、浮遊効果を得る最初のトリガー分には十分な量。

 これにより機動力はずいぶんと上げる事が出来た。

「移動技としてはこんな感じでいいと思うんですけど、どうでしょう?」

「ウム、空中停止状態カラノ移動ニ難ガアルガ、性質上、ヤムヲエマイ」

 

 そこは流石に空中を蹴るといった空間干渉系の個性が必要だと思います。

 お茶子ちゃんみたいに無重力になっても、同じ問題はついて回る。こればかりは、すぐ対策を考えるのが難しい。空中戦闘専門になるなら装備で補う手もあるけど、別にそういうわけではないからなぁ

 

「そこまで頻繁に飛び回るわけでもないので、サポートアイテムを追加するのも躊躇うんですよね」

「マァ、構ワンダロウ。後ハ個性伸バシデ良イノダナ?」

「はい。格闘訓練と1日おきにやっていこうと思いますがどうでしょうか?」

「合理的ダ」

 

 知覚範囲を広げるためには電子操作をより積極的に使っていく必要がある。

 イオノクラフト効果で地面から数センチほど浮き上がると、全周囲視界のまま肉眼による通常視界の組み合わせに変える。

 

「きっ……つぅ……」

 

 この組み合わせは実用面ではあまりメリットがない。ただ負荷をかけるにはちょうどいい。ある程度の時間まで維持したら、次は距離を伸ばすように意識する。この繰り返しで個性が持つ知覚能力を鍛える。

 体は疲れないが、地味に消耗するトレーニングで、終わった後に皆にマッサージをするころには割とヘロヘロになっていたりする。

 

 3日目はB組がTDLを使っているので訓練はお休み……と言うことはなく、午前中はトレーニング室で自主トレ。飯田君はグランドを爆走していて、午後からはグラウンドで林間合宿でやった個性伸ばしを全員で。爆豪君はここで量の改善には一旦区切りをつけて、質の改善と装備の改良をするらしい。

 具体的なところは知らないが、爆豪君のお母さんから「良い爆発」について大分聞かれたと連絡をもらった。多分、グローブから噴出する物質の粒度を変更するつもりだろう。

 それにしても、嬉々として暴れまわっているのはいいが、マッサージ回数が尋常ではない。それに釣られてか、筋トレをするメンバーが増えて地味にマッサージが忙しい。

 

 4日目の訓練ではエクトプラズム先生にお願いして、1対2で格闘、と言うよりも回避に重点を置いた訓練をお願いした。見えていても反応できない、と言うのは困るし、連携されて逃げた先が詰んでいたなんてことは1対1でもあるが対複数ならその難易度は増す。

 

「げほっ!」

「二手三手先ヲ読ンデ動ケ。ソノタメニ、更ニ思考ノ速度ヲ上ゲロ」

「は、はい……」

 

 危うくお昼ご飯をぶちまけてしまうところだったけど、その辺りはギリギリで回避できるように手加減をしてくれたらしい。

 

「ダガ動キハ良クナッテイル。ソロソロ包帯モ使ッテ行クトイイ」

 

 なんだか包帯捕縛術が包帯格闘術に進化と言うか変化しそうなんですが。と言うか戦闘スタイルがだんだんと、パワーの無い相澤先生になっている気がする。

 包帯に電子を通して攻防に使えるようになってくると、エクトプラズム先生が3人に増えた。容赦なさ過ぎて泣いていいかな?

 

 5日目はTDLの利用が午前のみ。午後はB組が使うらしい。その辺のバランスはどうなっているのか。1日おきとかにしてもらったほうがメリハリがつくのだけど、先生間で妙な競争意識でもあるのかな?

「どーよ、マッハ。これでマッハに頼らなくても指向性攻撃に問題なし!」

「へー、それは本当にすごいね」

 

 聞けば、少し前からサポート科に相談はしていたらしい。

 非殺傷のターゲット用のアイテムを対象に貼り付け、それに向けて放電することで指向性を確保したとか。射程が10mとやや狭いけれど大規模範囲攻撃かピンポイントな格闘どちらかしか選択肢がなかったこれまでとは格段の進歩だろう。

 

 爆豪君は爆破を圧縮した徹甲弾(APショット)を完成させ、緑谷君もフルカウルでの威力と戦いやすさを求めてシュートスタイルに切り替えるなど、戦闘能力の向上が著しい。

 

 その徹甲弾の練習でコンクリの大きな破片がオールマイト先生めがけて落ちかけたのは失敗だけど、こればかりはうかつに訓練エリアに入ったオールマイト先生が悪いしねぇ

 

 

「そこまでだ!A組!午後からはB組がここを使わせてもらう予定だ!」

「まだ10分弱ある。時間厳守ならそのまま待て」

 ブラドキング先生の後ろには一佳と物間君か。そういえばB組の副委員長って知らないけどこの組み合わせってもしかして物間君が副委員長なのかな?

 

「ねえ、知ってる?仮免試験ってさ半分は落ちるんだって。だから君たち全員落ちて」

 

 なかなか斬新な意見だけど、「雄英の半分」が落ちる訳じゃないんだよなぁ

 浮遊効果で移動距離をかさましして、一佳のところまで飛ぶ。どうせもうすぐ時間だし。

 

「や、一佳。調子はどう?」

「順調。そっちも調子よさそうじゃない。ブルーアンバーちゃん?」

「まぁ、ぼちぼちねー。しっかし、物間君は悪い意味でブレないねー」

 

 軽く挨拶がてら、柔軟程度のマッサージをしてやると、気持ちよさそうに目を細める。

 その間に電気や他のクラスメイトも時間前に集まってきて、電気が一佳に物間君のことを聞いている。

 

「つーか、物間のコスチュームってアレ何?」

「個性がコピーだから特に奇をてらう必要はない、とか言ってた」

「タキシードが?」

「せめて仮め「それ以上はいけない」アッ、ハイ」

 

 微妙に似合ってるような気もするし、なんとなく服に着られている気もする。もっとも奇をてらわな過ぎてて、アレで街中をパトロールしていたらすさまじく浮きそう。

 ヒーローコスチュームってヒーローとわかる奇抜さも必要なんだなぁ、と思ってしまった。

 確かヒーロー名がファントムシーフだっけ。うん、怪盗紳士を気取るなら、シルクハットとステッキも欲しかったね。似合うかは別としても。

 

 

「うえ~、毎日、訓練漬けで大変だぁ~」

「圧縮訓練ってだけあって、厳しいよね~」

「休みの方がキツイ、早く授業始まらないかな~」

 

 夜、ロビーのソファーで入浴後に皆でくつろいでいたが、流石に滅入ってきてるのか、三奈ちゃんのボヤキに透ちゃんと響香も乗ってきていた。

 体の疲れは取ってやれるけど、メンタルまではねぇ

 

「仮免試験まで日数も少ないですし、仕方ないですわ」

「ヤオモモは必殺技、どう?」

「やりたいことはあるのですが、まだ体が追い付かないので個性伸ばしが中心ですわ」

 

 体の脂質を使って創造するから、単純に体脂肪を増やすというか、霜降りみたいになればいいのだろうけど、一般的な体作りと方向性が違うから難しいよねぇ

 

「梅雨ちゃんは?」

「ワタシは蛙らしい技が完成しつつあるわ。きっと、びっくりよ」

「それはちょっと楽しみだね。お茶子ちゃんは?」

「お茶子ちゃん?」

「うえぇぁっ!?」

「……お疲れのようね?」

 

 なにやら心ここにあらずって感じかな。心配した梅雨ちゃんが触れるとなんか驚いてるし。はて?マッサージではさほど肉体的な疲れはないように思ったけど。

 

「いやいや、疲れてなんていられへん。まだまだこっから!」

 

 なんかテンション高いなぁ

 

「……と思ったんだけど、なんか最近、無駄にココロがざわつくんよね」

「恋だ!」

 

 あ、なんかヤな予感。逃げようと思ったら響香がシャツの裾掴んでるんだけど。

 

「お相手は緑谷か飯田?一緒にいること多いよねー!」

「ちゃうわちゃうわー」

 

 照れ隠しに浮いてるのはなんかカワイイ。

 で、響香、お願いだからもう(にげ)たいんですけどー

 

「コイツみたいにゲロっちまいなー。自白したほうが罪軽くなるんだよー」

「あぁぁ、もー、あんまり野暮なことしないのー」

「そうね。無理に詮索するものじゃないわ」

「えぇ、今日はもう遅いですし、お休みしましょ?」

「えー!ヤダー!!もっとお話ししたいー!なんでもない話でも強引に恋愛に結び付けたいー!」

 

 困った駄々っ子だなぁ

 期末試験の時には引き締まったのだけど。これも息抜きの手段ってことかもしれないけどね。おっと、これなら満足してくれるでしょ

 

「三奈ちゃん、アレ」

「うん?……あー、いーねー」

「それ以上は馬に蹴られるからねー?てことで、今日はもう寝よう?」

 

 追及が緩んだお茶子ちゃんの視線の先には、窓からの明かりを頼りに自主練をする緑谷君の姿が。うん、まぁ、それが答えだよね。みんなしてニヤニヤしつつ部屋に戻ることになった。




圧縮訓練、もう1話ほど続きます。
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