雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第53話 始業式

 仮免試験終了の翌日、まぁ、案の定というか普通に学校行事は存在したということで全校集会に参加することに。

 

「聞いたよ、A組ぃ?君たち、仮免に落ちたのが出たんだってぇ~?」

 

 残暑の鬱陶しさに物間君とか、空気が粘性を帯びそうで怖いなぁ、まぁ、一佳が隣にスタンバイしてるから、すぐ止まるだろうけど。

 

「相変わらず、病名のある精神状態っぽいな」

「さてはお前も落ちたな!」

 

 切島君と電気の言葉に高笑いを上げる物間君。

 

「残~念、僕らB組は全員合格さ。ははははーーっ!水が開いたね、A組ぃ?」

「……ワリィ」

「いや別に競ってないし」

 

 なにやら轟君が謝ってるけど、講習を受けて再試験を受かればいいのでそんな気にしなくてもいいとは思う。調子に乗った物間君が角取さんを使って更に煽ってきたけど、流石に一佳が止めていた。

 

「どいてくれる?つまってるんだけど、ヒーロー科」

 

 話が途切れたとこを普通科の人たちが下駄箱へ向かっていく。先頭を歩いていた心操君が会釈してくれたけど、だいぶ体が出来上がってきたみたいだ。

 

 

 正直、まだ暑いのでこの時期に屋外で突っ立って先生の話を聞くだけのイベントは授業や訓練で潰れてくれた方が楽だと思う。

 まして前振りなのか、毛並みの手入れの話を延々とされても。いやまぁ、ヘアケアには人並みに気を使いますけどね。

 

「これから社会には多くの困難が待ち構えている。特に、ヒーロー科諸君には。2、3年生が取り組んでいるヒーローインターンについても、これまで以上に危機感を持って取り組む必要がある」

 

 1年生が仮免を取得したけど、インターン活動はどうするんだろう?まぁ、焦る必要はないけど。

 

「暗い話はどうしても気が重くなるね。大人たちはその重い空気をどうにかしようと懸命に取り組んでいる。君たちはその結果を受け継ぎ、発展させられる人材になってほしい」

「根津校長、ありがとうございました。さて、ここで新任の先生を紹介します。飯田先生、どうぞ」

 

 1年のヒーロー科には休み期間中に紹介をされたけれど、ここで初代インゲニウム、飯田先生が正式に雄英の教員として教壇に立つことになった。

 

「皆さん、はじめまして。飯田天晴です。ヒーロー基礎学の副担当および、主に普通科、サポート科を対象で実験的に実施されるヒーロー科転入強化プログラムを担当します」

 

 この発言に普通科、サポート科の生徒の雰囲気が変わり、一部はヒーロー科に向けて強い視線を向けてくる。

 

「轟ぃ、聞いたかぁ?追いつかれちまうぞ~?」

「あぁ」

 

 ついでに峰田が轟君を物間君並に煽っているけど、普通科が転入するまで半年。その間に講習も再試験も終わる。さすがに轟君が再試験にまで落ちるとは考えにくいのだけど。まぁ、短い優位を楽しめばいいのかな?とてもヒーローのふるまいとは思えないことは置いておくけど。

 

「このプログラムは通常のカリキュラムに加え、ヒーロー科で要求される身体能力、各種関連法規に関する知識の習得を目指します。通常の勉学に加えての取り組みとなりますので負担も大きい。やる気のある生徒の参加を期待します」

 

 多分、一週間持たないんじゃないかなぁ

 玄関で見た限り、心操君は余裕でこなすと思うけど他の併願組は無理だと思う。それにしても暑いなぁ。

 

「ちょっと、マッハ。なんかきつそうだけど大丈夫?」

「あぁうん。もうちょっとだし大丈夫」

「ならいいけど。無理はしないでよ?」

 

 ちょっと気になって飯田先生の状態を改めて”見た”時につい全周囲視界までオンにして、情報量で倒れそうになったのは黙っておこう。

 まぁ、普通に回復はしているようだった。ただやはり、足に回る電子の流れがいくらか弱いというか鈍い。現役復帰はやはり無理なのだとわかる状態だった。こればかりはどうにもできない。本当に個性に自在に干渉できるようになるなら、どうにかできるだろうか?

 

 全校集会も終わり、教室へ3年生から戻る際、久しぶりに見かけた波動先輩と視線が合った。

 何か面白いおもちゃを見る目でこっちに手を振っていたから、ひょっとしたら近いうちに何か絡むイベントがあるのかもしれない。

 

 

「今日から授業が再開となる。夏休みは色々あったが、上手く切り替えて学生の本分を全うするように。今日は座学のみだが、後期はより厳しい訓練になっていく。引き締めて行けよ」

 

「先生、質問いいかしら。始業式でお話にでたヒーローインターンってどういうものか、聞かせてもらえないかしら」

 

 一瞬、相澤先生の視線がこちらに向いたので、小さく首を振っておく。寮に入った際のルール決めの場で、インターンがあるかもしれないから共同炊事に反対したので、その辺の説明もしてあると思っていたようだ。

 生憎とそこまで突っ込んた話をしてなかったんですよね。

 

「そういえば、そんな話あったな」

「うむ。俺も気になっていた」

「先輩方の多くが取り組んでらっしゃるとか」

 

 少し面倒くさそうにしていた相澤先生だが、説明自体はしてくれた。

 

「それについては後日説明するつもりだったが、まぁ、いいだろう。校外でのヒーロー活動、以前に行った職場体験、その本格版だ」

 

 話の内容を皆が咀嚼するのに数秒。真っ先に反応したのはお茶子ちゃんだった。

 

「体育祭での頑張りは何だったんですかぁっ!」

「確かに。そんな制度があるなら体育祭でスカウトを頂かなくても道が開けるか」

 

 いやいや、インターン先とのコネが必要だから。と言うか、天晴さん、飯田先生って、飯田君にそういう事情はあまり説明してなかったのかな。まぁ、職場体験もインターンも自分のところで受け入れるつもりだったのかもしれないけど。

 

「ヒーローインターンは体育祭で得たスカウトをコネクションに使う。これは授業の一環ではなく、生徒の任意で行う活動だ。体育祭でスカウトを得られなかった者は、活動自体が難しい。元々は事務所側の募集があったそうだが、雄英生の囲い込みでいざこざが多発して現在の形になった。

 仮免を取得したことで、より長期的、本格的に活動を行える。ただヴィランの活性化、1年での仮免取得はあまり例がないこともあり、お前らの参加は慎重に検討中だ。

 まぁ、体験談なども含め、後日、ちゃんとした説明と今後の方針を話す。以上だ」

 

 1日座学という、ヒーロー科としては珍しい日が終わり、寮のロビーでは制服のまま何人か伸びていた。久しぶりに頭使ったから疲れたみたいだ。

 

「英語の授業……当たり前みたいに習ってない文法出てた……」

「あー、切島も?アタシもびっくりした~」

「予習、忘れてた~~」

 

 切島君、三奈ちゃん、電気がぼやいてる。まぁ、その辺はヒーロー科あるあるで1学期で十分わかってたと思うんだけど。まだ初日だから挽回できる範囲なんでがんばれ。

 

「夏休みが訓練漬けだったから、勉強の習慣戻さないとね」

「うむ!確かにその通り。インターンも可能になればさらに自習が大事になるな!」

 

 飯田君の追い打ちに更にげんなりとなっている。

 

「うえ~、授業して訓練して、さらに自習かぁ~」

「こうなってくると、通学5分がありがたいね」

「あ、それにみんな寮だから、勉強教えてもらいに行きやすい!」

 

 透ちゃんの言う通りで、なにやら百ちゃんがキラキラしてるというか、プリプリしてる。多分、みんなで勉強会、とか考えているんだろうなぁ

 

「行けるなら行きたいけど、社長、インターン受け入れてくれるかな?」

「職場体験先で受け入れてくれるといいよね!」

「行きたいよな~」

 

 経験と言う意味では確かに逃す手はないけど、就職にほぼ直結するから安易に選べないのが厳しい。まぁ、進学の可能性の方が高いから、無理にやる必要はないのだけど。

 

「ねー、マッハは職場体験先って受け入れてくれそう?」

「いや、無理」

「え?なんで?」

 

 医療系ヒーロー事務所アクスレピオスはインターンとなると、途端に医療よりの性格が濃くなる。医療従事者、最低でも看護師の資格がないと門前払いとなるため、事実上、ヒーロー科所属の高校生をインターンとして受け入れていない。

 事前の説明がなくて申し訳ないとホワイトマウス先生に謝られたけど、そもそも職場体験の時はそこまで考えていなかったし、特に問題とはならない。

 

「とまぁ、そんな訳でインターンをやるなら、他を探さないと」

「何それ。リカバリーガール、そんなところ薦めたの?」

「まぁ、そもそも知見を広めるために選んだから。心配してくれてありがと、響香」

 

 悪く言えば飯田天晴さんの治療のために利用された、とも取れる。ただあの経験で大きく伸びる事が出来たし、自分の個性が人の役に立つという実感を得る事が出来た。そこに後悔はないし、やり遂げたことには嬉しくもある。間違いなく、あの時の選択には胸を張れる。

 

「それに進学っていう選択肢もあるしね」

 

 その言葉にぴしりと固まるのが三奈ちゃんや透ちゃん、電気と言った座学苦手の面々。

 

「え?上鳴さんは大学行くの?」

「マッハ、そんなの聞いてねぇぞ」

「まだちゃんと決めてないしね。でも本気で医療系ヒーローやるなら必須になるし」

 

 意外そうに聞いてくる切島君だけど、多分、百ちゃんとかも進学すると思う。

 成績を落としているつもりはないが、それはあくまでヒーロー科の中での話。普通に勉強している学生や浪人生と医学部を争うのは相当厳しいとは思う。

 ヒーロー資格者の推薦枠を設けている大学もあるから、極端に選ばなければどうにかなると思うけど、入学後に要求される学力は一般受験と大差ないから勉強も手が抜けない。

 正直、2年まで決断は先送りにしたかった。けど、仮免を取ったからにはそろそろ決めないと。じゃないと、行動選択がブレそうだ。しっかり考えよう。

 インターンは興味深いが、正直、行ってる暇はないかもしれない。

 

「うん、確かにその道もある。俺も米国の大学に進み、学びながら本場のヒーローと切磋琢磨してみたいという目標がある。そう!若かりし日のオールマイトのように!」

 

「あぁ?このクソ眼鏡!テメェだけにやらせねぇよ」

「おぉ!爆豪君!君もか!気が合うな!!」

 

 熱く語る飯田君。そんな目標があったのか。確かにオールマイト先生は雄英卒業後に米国留学をして、ヒーロー活動もしていたんだっけ。

 そして爆豪君も同じこと考えてたのね。まぁ、成績は確かにいいから割と本気かもしれない。

 でもあの言動で、ヴィランと間違えられないといいけどね。

 話を聞いて緑谷君が考え込んでいる。

 ひょっとしたら緑谷君もオールマイトと同じ道を歩むつもりかな?

 

 海外で働く日本人ヒーロー、いないわけではないけど、語学で苦労するのは皆一緒。インタビューで適当に答えすぎてヴィラン扱いされかかった人までいたらしいし。暫くの間、英語の授業は荒れそうだなぁ




下期スタートです。
適当に受け答えして困ったのはどこの苦労マンでしょうねw
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