雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第55話 取材が入った日

 朝食の時間帯に珍しく相澤先生が顔を出したと思ったら、なにやら取材が入ることになったらしい。

 

「新聞社がお前たちを取材したいそうだ」

 

「凄いね!デク君!」

「う、うんっ!」

 

 興奮気味のお茶子ちゃんと、相変わらずキョドる緑谷君。先は長そうだなぁ

 

「なんか照れるな」

「何でだよ?」

「体育祭、全国中継されてたでしょ」

 

 電気が何に照れているのかは私も分からないなぁ

 尾白君が言うように、体育祭で全国に顔と名前出てるし。プロになればそういう機会も増えるだろうし。

 

「三奈ちゃん!取材だって!おめかししなきゃ!」

「だよねー!」

「葉隠はする必要ないんじゃ……」

 

 みんなそれぞれ感想を言ってあってる。でも透ちゃんがメイクしたらどうなるのかは気になるかも。

 電子で肌表面はある程度把握できるから、かなり可愛いのは知ってるけど。

 

「浮かれるな。取材内容は寮生活を始めた生徒たちの暮らしぶりをレポートする、だそうだ。お前たちが元気に暮らしているのを保護者の方にも知ってもらおうと考えた校長が特別に許可を出した」

 

「取材に来るのって、女かな?女子アナ?」

「新聞社だって」

 

 軽く注意されたものの、授業と言うわけではないからちょっとの私語ぐらいではすぐに怒られない。峰田が瀬呂君になにやら妄想を語り始めてるけど。

 

「よく考えたら、女子アナってすげぇネーミングだよな、女子のア―――」

 

「だから、そういう真似を絶対にするな」

 

 捕縛布が峰田との間に居たみんなの間をすり抜け、見事に縛り上げている。地味に技術の極みだよね。包帯捕縛術もだいぶいい感じに使えてきてるけど、そもそも布として軽いのであまり変化はつけられずに直線軌道が多い。

 峰田の尊くない犠牲のおかげで朝から良いものを見られた。それにしても、そんなことで床に涎がたまるほど興奮できるって、どれだけ性欲が強いんだろう?

 

「そう言うのは止めません?相澤先生。私は寮生活をしている雄英生の生の姿を取材したいんです」

 

 そう言うのも生の姿ですが。記録しないでくれるのは助かるけど。恥をさらす必要はないし。

 

「特田さん。まだ入っていいとは」

「取材許可は7時から18時まで。もう始まってます」

 

 流石に反論の余地がないのか押し黙る。若干胡散臭そうに特田という記者さんを見ているけど、知らない人が見たら方向性が違うだけでどっちも等しく不審者だよねぇ

 

「皆さん、記者の特田です。今日は一日よろしくお願いします」

「「「よろしくお願いします」」」

 

「特別な何かをしていただく必要はありません。普段送っている通りの生活をカメラに収めさせてください。質問をさせていただくかもしれませんが、その時はよろしく」

 

 聞かれて困るようなものはない……はずだからいいけど、どうにも胡散臭いなぁ

 

「わ!さわやかイケメンだ!」

「女じゃねぇのかよ」

「困っちゃうね、僕なんて常日頃から輝いているから、格好の被写体になっちゃうよね」

 

 それにしても三奈ちゃんはああいうのがタイプなのかな?とても爽やかには見えないんだけど、まぁいっか。趣味は人それぞれだし。

 記者が男性なのに不貞腐れている峰田はどうでもいいが、青山君の自信が凄い。

 

「校長先生からお話があったと思いますが、くれぐれも取材への干渉はどうかご遠慮ください」

「わかってます。何かあれば連絡をください」

「何もありはしませんよ。1年A組の皆さんは、将来有望なヒーロー候補じゃないですか」

 

 特田さんと相澤先生が何か小声で話しているけど、少なくとも相澤先生はやや警戒をしている感じ。無理に探るものでもないだろうし、気にしないでおこう。

 

「八百万、飯田。問題があったらすぐに連絡しろ」

「「はい」」

「やだなぁ、気にしすぎですよ。それで皆さん、これから何を?」

「朝食ですわ」

 

 通学距離徒歩5分だから以前よりもゆっくり食べられる。朝食は大体、洗顔とか済ませて7時半ぐらいから食べ始めてる。このあたり、当初はバラバラだったけど、だんだんとみんなの生活リズムが揃っていくのが面白い。

 人によっては8時ぐらいに食べてるけど、着替えとかも含めるとあまり時間に余裕がないから、寝坊でもしない限りは、大体、それくらいのペースになる。

 それはそれとして、朝食を抜く人は基本的にいない。一日しっかり体を動かすことになる以上、三食以上をしっかり食べないと持たないから当然だけど。

 

「やあ、写真いいかな?」

「はぁ、どうぞ」

 

 今日はお茶子ちゃん、梅雨ちゃんと同じテーブルで食べていた。女子は誰と一緒に食べるかは、みんな特に決まってない。変にグループとして固定されない程度にローテーションしている。

 

「そういえば食事のメニューはみんな違うんだね」

「個性や体質で食事も違いますから」

 

 今日は3人とも和食メニュー。単なる好みもあるけど、個性や体質が食事に影響を与えるのは嘘ではない。

 例えば百ちゃんは個性で体内の脂質を消費するから、1回あたりの食事の量も比較的多いし、糖分や脂質多めのメニューが多い。私が同じものを食べていたら、体重計が悲惨なことになるのは請け合いだ。

 独特の美意識でメニューに拘る青山君はまぁ、別枠で。

 

「週末とかだと、みんなで作って食べることもありますね」

「この間のお好み焼きは美味しかったよねー」

 

 たまには皆でワイワイやりたい、と叫んだのは三奈ちゃんだったか透ちゃんだったか。百ちゃんもそういうのは好きらしいので、週一程度で合宿の時のように皆で調理して食べることがある。

 先週はお好み焼きパーティだった。複製腕を器用に使い、広島風をしっかり焼き上げた障子君には感謝。

 冬になったら鍋パーティもいいかもしれない。

 

「はは。それは週末に取材を入れるべきだったかな。食事の邪魔してごめんね」

「いえ」

 

 一人で朝食を取っていた爆豪君も撮影していたけど、何か気に障ったのか、急に食事をかきこみ始めた。体育祭や普段の粗野な印象と違って、私なんかよりよっぽど食べ方が綺麗なんだけどね。

 食事の作法はあのお母さんが厳しく躾けたのだろう。そういう育ちの良さも見せたくない、と言うのはよくわからない。

 別に爆豪君を見てお坊ちゃんと思う人はいないと思うんだけどね。

 

 

―――Side:特田種雄

 雄英高校ヒーロー科1年A組。この中にオールマイトの後継者がいる。私の記者としての勘はそう告げている。

 ただ正直言って、候補を絞るのが難しいと思った。雄英体育祭の上位はもちろん、トーナメント出場者がすべてA組だった。

 記録をたどるにここ10年はそんなことはなかった。オールマイトのために実力者を集めたクラス、全員が後継候補なのではないかと思ってしまいたくなる。

 だが、実際に見ればそれは違うと確信した。

 簡単な消去法で導き出せる話だ。

 

 まず異例の同時優勝者の一人、爆豪勝己。

 彼は中学時代からオールマイトを超えると公言している。後継と言うポジションに甘んじる人物ではないだろう。もちろん、ただ引き継ぐのではなく、そこから更に超えていくというのは、後継の在りようとして一つの理想ではある。

 けれど、実際に話してみると”平和の象徴”の後継、ではないね。どちらかと言えば、エンデヴァーのような、力と畏怖の象徴になるだろう。

 

 もう1人の優勝者、轟焦凍。

 エンデヴァーの息子である以上、オールマイトの後継者にはなりえないだろう。優勝時のコメントではオールマイトへの憧れも口にしていたが、よほどのことがない限り、それこそオールマイト自身が後継として轟焦凍の名を口にするぐらいのことがなければ、世間は彼を「エンデヴァーの息子」としてしか見ないだろう。

 

 これは3位入賞の飯田天哉も同様だ。

 彼は引退したターボヒーロー・インゲニウムの名を継いだ。インゲニウムも一流のヒーローだが、オールマイトの後継にはなりえない。そう言えば、チームをサイドキックの1人に任せ、雄英の教師に就任していたな。インゲニウム(セカンド)と言うべき、飯田天哉の教育に専念するつもりだろう。

 

 もう1人の3位入賞者、常闇踏陰。今一つ判然としないが、オールマイトに敬意は持っていてもそれを継ごうという熱量に乏しいように思える。

 どうにも思春期の少年特有のアレが抜けてないみたいだし。

 

 残りのメンバーの中で個人的に注目株だった切島鋭児郎だが、彼は紅頼雄斗(クリムゾンライオット)が目標と語っていた。オールマイトの後継と言うには方向性が違うだろう。それにしても渋いね。

 

 彼らはそれぞれ一流のヒーローにはなるだろう。だが、記者としての勘はそれ止まりだと告げている。

 

 残るトーナメント出場者で気になったのは、上鳴茉芭(まつは)と緑谷出久。

 他のA組の生徒たちはヒーローとしての素質こそ疑う余地はないが、オールマイトの後継と言う視点で見れば誰も物足りない。

 

 上鳴茉芭はその発言を拾えばオールマイトの熱心なファンに思える。だが、オールマイトの後継を目指すようなタイプには思えなかった。

 目標とするヒーローについて聞いてみても、具体的な目標はいないと答えていた。目標像はやや曖昧なもので「自分の個性を人の役に立たせたい、困難にあっても笑って挑めるようなヒーローを目指す」と言うのは、雄英の生徒としては模範的ではあるが、それ以上でもそれ以下でもない。

 そう言えば双子の兄、上鳴電気もトーナメント出場は果たしていた。目標がナンバーワン、と言うのはわかりやすいが、オールマイトの後継と言うには軽すぎるだろう。

 

 そうなれば答えは明白だ。パワー系の個性で、体育祭の時とはレベルが違う動きを見せている緑谷出久。おそらく、彼がオールマイトの後継者なのだろう。

 1回戦で敗れたのは少々解せないが、相手が女子だったから遠慮でもあったのだろう。彼は外で自主練か。さて、どんな話が聞き出せるかな。

 

 

―――Side:上鳴茉芭

 今日は午前中の一般科目で体育と言う名の基礎体力トレーニングがある。多分、被写体には困らなかったろう。

 雄英ヒーロー科の体育はすべて個性利用自由で行われる。幅跳びで100メートル以上の跳躍を軽々と見せるお茶子ちゃんとか、高跳びなのに助走すらせず、棒高跳びの世界記録をあっさり超える尾白君とか、100メートル走でぶっちぎりの速さを見せる飯田君とか。

 装備無しなので、私自身の記録は可もなく不可もなく。幅跳びぐらいはそこそこの数字が出たけど、お茶子ちゃんと比べると普通になる。

 

 午後はTDLで各自の個性訓練。

 とは言っても、今日はみんなかなり手加減と言うか、見栄えを意識しながらやっている。

 街中でのヴィラン退治は見栄えも大事になるから、悪いことではないのだろうけど。ただ、そうなると私は途端に地味になる。

 派手組だと、今日の爆豪君は無理に飛び回らず、切島君をサンドバックにして強度アップを手伝っていた。

 緑谷君もフルフォルムや黒鞭は使わず、今日はフルカウルのみ。

 

「たまにはクラスメイトと組み手でいいか。尾白君、手すき?」

「うん、切島が埋まってるから、型稽古よりはいいかもね」

 

 そんなわけで、個性地味コンビとして、尾白君との組手でお茶を濁させてもらった。格闘では格上になるし、あの太い尻尾を避けるのは中々に骨が折れる作業で、割と本気でいい訓練になった。

 個性伸ばし的なメニューは流石に地味すぎて、今日は行わない。だって、ただボーっと立ってるか浮いてるようにしか見えないから、それよりはいい……と思う。

 

 どっちにしても全体的に地味なのは変わらないけども。

 個性と言う点では、クラスで一番地味だと思う。

 

 ともあれ、全体的に悪く言えば手抜きなのだけど、先生方も流石に今日は何も言わない。あらかじめメッセンジャーを使って、男子のマッサージは取材終了後と言ってある。

 そんなわけで授業は滞りなく終わり、皆は寮に戻っていった。

 

 私はいつも通り、トレーニング室で少し自主トレだ。

 記者の特田さんは皆について寮に戻ったから気楽に取り組める。今日は念のため、全周囲視界を維持しながら行っておこうかな。

 いつも通りのストレッチとマシントレーニングで1時間半ほど汗を流す。

 もちろん途中に休憩は挟むし、セルフマッサージは欠かさない。

 さて、そろそろ取材時間も終わりだし、夕食の時間だ。遅れると飯田君が五月蠅いから、シャワーで汗を流したら戻るとしよう。

 

「おや、こんな時間まで居残りですか?」

「ええ、少し自主トレで」

「放課後も自主トレ?他の子は休んでいるのに、ずいぶんと熱心だ」

 

 時間はまだ少し余裕があるけれど、早々に切り上げたらしい。なにやら満足げな表情だ。

 

「ありがとうございます。弱いんで、置いて行かれないように必死なんですよ。では」

 

 こちらに用はないだろうし、お互い軽い挨拶だけして別れた。やれやれ、後は飛ばし記事を書かれないように祈るばかり。

 

 後日、掲載誌が寮に送られてきてみんなで読んだ。

 「平和の象徴(オールマイト)の教え子達、若きヒーローの日常」とベタなタイトルで無難と言う言葉の見本みたいな記事だった。

 一応、日を分けてB組や他のクラスも取材したらしい。扱いは少ないが多少の写真は載っていた。もっとも、記事としての話題にはほとんどならなかったと思う。

 表紙と言うか、オールマイト先生が全部、美味しいところは持って行った。

 雑誌の表紙に美味しそうに肉まんをパクつくオールマイト先生の姿が掲載され「日常に戻った元ナンバーワンヒーロー」と題された姿が妙な人気を博し、店頭から掲載誌が軒並み消えて、異例の再発行までされたのだとか。




アニメのストーリー的にはシーズン4の第1話ですね。
地味に取材開始時間を1時間前倒ししています。8時にジャージ姿で食事して、そこから着替えて登校って、登校5分といっても忙しない気がしてw
制服に着替えてあって8時食事なら、まだわかるんですけどねー

ともあれ、キャラ紹介のエピソードですから、改変がない個所を削るとまぁ、書くことがないw

この話で朝食のメニューが皆でそれぞれ違うようなので、入寮の際の食事システムを注文仕出しのシステムにしました。
同時に、爆豪の食事の姿勢や箸の使い方が、ちょっかい出されるまで凄いきれいだったので、あの両親、特にお母さんがかなり厳しく躾けたんだろうなぁ、と感心した覚えがあります(笑)
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