雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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本日2話目。

閑話です。オリキャラと原作キャラの恋愛を好まない方は以降の本作はスルー推奨です。
若干ですが性的な部分に触れた表現あり。







それでもよろしければ、ご覧ください。






















第56.5話 閑話・轟家

―――Side:轟焦凍

「何やってるんだ……俺」

 

 訓練で頭を打った。異常なしとの診断だったが、自分の頭がおかしくなったのかと疑いたくなる。後始末をしながら、思わず独り言がこぼれた。

 自分だって高校生なのだから、そうした知識はある。生理現象として自分で処理することだってある。

 峰田のように性欲が過剰なのは理解ができない。経験はないが、あれ程に執着するほど良いものなのだろうか?母さんを苦しめた結果(オレ)を生んだ行為と思えば、正直、煩わしい、忌まわしいさえと思っていた。

 

 だから女なんてどうだっていいだろ、と思っていた。と言うよりも、周辺にいた人間に興味がなかった。思い出そうとしても、中学以前の連中は顔も名前も浮かんでこない。

 

 ……なのに、今日、何度か触れた感触、背負われたときに感じた、鍛えていてもやはり細い肩や体つき、甘い香り、息遣い、最後、意識を取り戻した時に……偶然だが、思い切り掴んだ……いや、揉んでしまった感触が頭から消えなかった。

 どうにも寝付けないし収まらないと”処理”をして、やっと一息ついた……のはいいが、なんと言うか、ものすごい空しくなったし、悪いことをしている気になった。

 

 どうにも心が落ち着かない。今日に限って、頭から離れないのは理不尽だと思った。

 同じ寮に住んでいるんだから、会いたいと思えば会えるが、会ったところで何を話せばいいのかわからない。文句の一つも言えばいいのかもしれないが、「勝手に人の頭に居つくな」と言うのは理不尽の極みだろう。

 曇ってた目を覚ましてもらった恩はある。それだけだったはずなのに、なんでかアイツを見ていると妙に心がざわつく。なのに、決して不快には思えない。

 会いたい、話したい、触れたいという欲求がなぜ生まれるのか、よくわからない。

 

「冬姉……いや、流石に拙い、よな?」

 

 こんなことを相談しようものなら、汚物を見るような目で見られそうだ。

 母さんは論外。最近になってようやく話せるようになったのだ。親父にされたことを思えば、息子である自分からこんな話を聞かされたら傷つけてしまいそうだ。それにこの時間じゃ、電話を取り次いでもらえない。

 

 ダメ元で、話を聞いてほしいと夏兄の番号にかけてみた。

 

『焦凍か、こんな時間にどうした?』

「夏兄、わりぃ、その……いま、時間、いいか?」

『なんか深刻そうだな。まぁ、言うだけ言ってみな。役に立てるかわかんねぇけど』

 

 ヒーローを志した訳じゃないから、そういう話は分からない。と、電話の先で多少の自虐をこめて笑う声が聞こえるが、聞いてもらえるならありがたかった。

 

「その、今日、救助訓練ってのがあって、その時に―――」

 

 

―――Side:轟夏雄

 日も変わろうかってタイミングで珍しく焦凍からの電話があった。

 今日は彼女もいないし、明日は休みだからちょっとぐらい遅くなっても大丈夫。それに、焦凍に兄貴風を吹かす事が出来るなんて珍しいと思ったら、なんというか、高校生にもなってコレか。

 

「つまりクラスメイトでシちゃって、自己嫌悪って?ハハッ、若いなぁ」

『夏兄だってそんな歳は変わらねぇだろ』

 

 そういう事じゃないんだけどな。

 焦凍の奴は体は立派に育っているが、こうして話すと心がまだ幼すぎる。

 これまで虐待じみた、いや、虐待そのものな訓練漬け。クソ親父(エンデヴァー)のせいで兄妹で遊ぶとかもなかったし、友達と遊ぶ機会なんてもっとない。

 学校はただ通うだけ。友達も作らずに、いや、作れずにいたから情緒がきちんと育っていない部分もあるのだろう。

 何が住む世界が違うだ。精神面では成長を阻害しただけじゃねぇか!

 

 自分の感情を持て余して、どう処理していいかわかっていない。知識はあるから結果オーライな解消法をとっているだけで、思春期に差し掛かったばかりの小学校高学年ぐらいの子供が、自分の心と体の変化に戸惑っているのと変わらない。

 衝動のままに動くような短絡的な性格でなくて、本当によかった。

 

 実家を出て寮暮らしになって、結果的にクソ親父の支配からいくらか離れることができた。そのおかげで、凍り付いていた焦凍の心が成長を始めたのなら、雄英と焦凍が気にする子に感謝だ。他人に、異性にも関心を持てるなら、それは健全な事だと思う。

 

 本来なら、小学校の教員でもある姉ちゃんの方がこういう相談には向いている。ただ姉とは言え、年上の女性に相談するには勇気のいる内容だ。だからこそ、自分に連絡してきたんだろうし。

 

 とは言え、燈矢兄といい、焦凍と言い、深夜に俺に愚痴とか相談を持ち掛けるのは何かの嫌がらせか。これもある意味で血筋なのかと思ってしまうけどな。

 

 初恋だ、なんて言ったら何て顔するかな。けど、からかうのはやめておこう。本当に困っているみたいだし。

 

「誰でもいいから、とか、ただ見た目が好みだからヤりたい、とかじゃないんだろ?」

『……それは、違う、と思う』

「なら自分が相手をどう思ってるか、だよ」

 

 一時の感情で突き進まないように少しブレーキはかけておいたほうが良いな。なんか、思い込んだら止まらなそうだし。

 

『そう……なのか?』

 

「あぁ、気になる女の子には触れたいと思うのは当然だよ、男なんてそんなもんだ。ただ、その欲求に素直に従い過ぎたら犯罪だからな?」

 

『わかってる』

 

 焦凍だからそこは大丈夫だろう。

 

『なぁ……夏兄も、そう、なのか?』

「お、俺?そ、そりゃ、彼女とは一緒にいたいし、許されるなら触りたいって思うさ」

『そうなのか……夏兄、彼女いたんだな』

「おい、お前、俺がモテないとか思ってないだろうな?」

『……』

「おい!」

 

 くそう。母さん似の焦凍に比べれば確かにモテないけどよ。似たくもねぇのに、顔も体つきも親父に似ちまった。って俺のことはいいんだ。

 にしても、これは本当にカウンセラーか姉ちゃんの仕事だよな。

 

「まぁ、いいや。それで、どんな子なんだ?その子を見て、焦凍は何を思う?」

 

『上鳴茉芭(まつは)って、やつで、背は低いけど、強えぇ、と、思う。クラスでも誰とでも……あぁ、いや、峰田だけは嫌ってるみたいだけど。他とは仲は、いいな。体育祭で、活入れられて、なりてぇモン、思い出させてくれた。最近だと……通形先輩を褒めてた顔がなんかムカついた。今日だって俺が胸とか触っちまったのに、怒りもしなくて……で、匂いとか感触が……ってワリィ、何言ってんだろ』

 

「ぶっ!胸って何やってんだよ!焦凍!」

『いや、訓練中に偶然……謝ったし、怒らなかったから、何とも思われてねぇんじゃねぇか、って』

 

 いやいや、それお前、べた惚れしてねーか?って素直に言ったらムキになって否定しそうだけど。缶コーヒーを冷蔵庫から出して飲みながら、さらに続くとりとめもない言葉の羅列に相槌を打ちながら耳を傾ける。

 

 こりゃ相手の子もだいぶ罪作りだ。本当に嫌なら当然怒るし悲鳴の一つも上げるだろう。それがない時点で、少なからず気持ちはあるのだろう。あるよな?

 焦凍は顔の火傷はマイナスだが、身内びいきを除いても母さん似の美形だ。その焦凍を相手に表情が変わったのが数回程度て……関心がないようにも思えるけど、話を聞くに、悪印象は持ってなさそうだ。

 

 焦凍の主観だから、断言は難しいけど。それにしてもよく見てるな。兄ちゃん、焦凍の惚気で胸焼けしそうだよ。ブラックなのになんかものスゲェ甘いんだけど。

 

 全部が正しいとしたら、相手の子、相当に上手く感情を抑えられるタイプなのか、そうでなきゃ、よっぽど女捨ててるかだ。

 焦凍を背負って吹き抜けのフロアをダイブしてノーダメって、いくらヒーロー科って言っても、それどんなゴリラだ?

 けど、少なからず好意があるとしても、肝心の焦凍が鈍すぎる。

 

「ま、まぁ、でも随分と気にしてんじゃん」

『……あぁ』

 

「気になる子にそうなるのは自然なことだから、適当に発散しな。どうしても触れたいって思うなら、ちゃんと好きだって告白でもしてみろ。白黒つけたらスッキリするだろうし」

 

 初恋は実らないっていうけど、それも人生経験だ。ちょっとは感情を見せてくれて嬉しいよ。

 

『……考えてみる』

「おう。じゃあ、もう遅いしそろそろ切るぞ。兄貴らしいことできて嬉しかった。また連絡しろよ」

『夏兄……ありがとう。じゃあ、おやすみ』

 

 それで電話が切れた。

 

「ありがとう、か。それは俺のセリフだよ、焦凍。さて、明日……もう今日か。デートのキャンセルして、実家に顔を出すか」

 

 こんな面白ネタ、姉ちゃんに報告しない手はない。

 それに純粋に焦凍の相談役にもなってもらえるだろう。直接は無理でも、アドバイスのためのアドバイス位欲しいし。

 突然のキャンセルに彼女はちょっと怒ったが、実家がらみが複雑なのは理解してくれている。理解のある彼女で幸せだな、とちょっと思った。

 

 

―――Side:轟冬美

 あらあらあら、まぁまぁまぁ

 

「……この子が焦凍の?」

「そうらしいよ。こうやって映像で見ると、焦凍の趣味が判んねぇな、美人系だけどキツクね?」

「戦闘中だもの。普段はもっと優しい子なのかも?ちょっと自信ないけど……」

 

 雄英体育祭、特に今年のは注目されたから、ちょっと調べれば怖いくらいに情報が集まって、それらは夏君が教えてくれた。

 

 上鳴茉芭(まつは)、雄英高校ヒーロー科1年A組所属。出席番号8番。二卵性双生児で兄・電気と共にヒーロー科に入学。個性は「電子操作」と言うなんだか難しそうなもの。

 体育祭に出たことで、中学以前の情報も気楽にネットに上がっていて、ちょっと探すだけで小中時代のクラスメイトとの写真や思い出話などいくらでも見つかったらしい。

 雄英のネームバリューとかネットの怖さを感じるけど、中学までは決して恵まれていたわけではないみたい。

 ヒーローを目指すと言っても、どうやら弱個性だから無理と言われていたみたい。焦凍との試合を見たら、弱個性って言葉の意味を疑ってしまうけど。

 ネットの記事では真偽不明だけど、家族からも疎んじられていたとかの話もあるらしい。

 

 ただ、それは事実らしいと、以前、焦凍が言っていた。

 お家の事情はそのうち誰かが、好き勝手に脚色してスキャンダルになるから自分たちから公開したほうが良い、と、焦凍に告げたのもこの子。

 一般家庭で育ったただの高校生なのに、雄英体育祭での活躍だけでこれだけ情報が溢れてる。お父さん(エンデヴァー)の知名度を考えれば、お家の事が世間で騒ぎになっていないことが奇跡に思える。

 

 言葉の正しさは理性が理解したけれど、感情が受け入れられなかった。

 そんな鋭利な、言ってしまえば家族をないがしろにしていた頃のお父さん(エンデヴァー)のような冷徹な思考の持ち主、と思っていた。

 けれど、そんな娘に焦凍が惹かれるはずがない。

 

 焦凍がいい方に変わったのは間違いない。

 この子が変えたのか、焦凍がこの子を変えたのかも分からないけど。

 

「夏雄、帰っていたのか」

「親父」

「あら、お父さん!あのね!聞いて聞いて!焦凍がねー!」

「ちょ、姉ちゃん!」

 

 こんな良いことを黙っておいたらダメでしょう?少なからず焦凍の将来にだって関わるかもしれないし、将来の義妹になってくれるかもしれないんだし!それに、焦凍がそんな風にいろいろな感情を出してくれたなんて、いいことじゃない!

 

「……そうか」

 

 もっとリアクションがあるかと思ったけど、反応は意外に淡白で私としては拍子抜けした。

 

「焦凍に伝えておいてくれ。例の件を進める。本気であろうとなかろうと、しばし待て、と」

 

 あぁ、この人は今更ではあるし、不器用ではあるけれど、家族のことを全く見ていないわけではない。焦凍が万が一にもこれ以上、傷つかないでいいように考えてくれている。

 

「……例の件?何をする気だよ、親父」

「焦凍がプロデビューする前に、ううん、お父さんがナンバーワンになる前に、お家のことを公開する、って」

 

「はぁ!?いまさらそんなことして何のつもりだよ!そんなことで許されようってのか!」

「違うの!夏君!!」

 

「冷や冬美、夏雄を、そして焦凍を守るためだ。言われるまで、いや、言われてなお目を背けていた。俺の罪は裁かれなければ、ならない。そして、そのうえで、お前たちに償いたい」

 

「お母さんを!また傷つけるのかよ!アンタは!」

「冷には手紙を書いた。冷の承知が得られたら、だ」

 

 その目は相変わらず厳しい。でも以前、感じたような冷たさは……ない、とは言わないけれど、それ以上に見えるのは困惑。そして、怯え。

 己の成したことが亡霊のように足を引っ張り、先に進めずにいる哀れな姿。

 この先、普通の家族のような一家団欒があるのかわからない。けれど、焦凍の想い人が焦凍を変えたのなら、お母さんがお父さんを変えてくれる日が来て欲しい。

 そう願うしか、私にはできなかった。




実のところ、書くだけ書いて公開するか悩んでいたエピソードでした。なんせ、原作キャラにナニさせてるわけでしてw
ただ、この先の書き溜め分を推敲を兼ねて読み返すと、今話を非公開のままとすると、唐突感が強い部分もあり開き直って公開することにしました。
ちなみに、今話の公開を決めた時点でタグにR-15と恋愛を追加してます。

まぁ、あまり厳しい拒否反応があるようならチラ裏に移行するか丸っと削除(公開制限)も検討します。
今話までの感想などを見る限り、好まない人はすでに離れていて問題はないと思いますが。


そういえば、エンデヴァーの分がないのですが……これは次の機会に。
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