雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第58話 インターンのお誘い(2)

 一足先に学校に戻り、相澤先生にサー・ナイトアイから受け取った秘密保持の誓約書を提出した。

 

「ご苦労さん。それで、インターンはどうするんだ?」

「通形先輩の勘違い、と言う事でしたので辞退、ということになりました。サー・ナイトアイにも了承いただいております」

「……一応細かい経緯を聞かせろ。ついてこい」

 

 そんなわけで、生徒指導室へと直行になった。なんて言われるかは想像がつくけど。

 

「……なるほど。緑谷については……まぁ、オールマイトだろ。俺の方から話をしておく。とは言え、お前自身の成長の機会と言う意味では、正直、あまり合理的な判断じゃないぞ」

 

「わかっています。ただの我儘と言われてしまえば、その通りですし」

「わかっているならいい。どうやったって、いつかはバラバラになるんだ。感情との折り合いはしっかりつけるようにしろ」

 

「はい」

「それならそれで、別の話がある。寮に戻るぞ」

 

 はて?そんな大量にインターンの誘いを受けるほどの派手な活躍をした覚えはないんだけど。

 不思議に思いながら、相澤先生に従って寮に戻る。ちょうど緑谷君も戻ってみんなにインターン先が決まった報告をしているところだった。

 相澤先生のハンドサインで、しばらく様子を見ることに。いや、いいですけどね。

 

「決まったんだ。よかったね!デク君!!」

「やったじゃん!緑谷!」

「おめでとう。緑谷君。俺もうかうかしていられないな」

 

 飯田君が緑谷君と握手をしている。その様子に電気や瀬呂君、切島君も寄ってくる。

 

「けど、ほんとスゲェよ、緑谷」

「あぁ、あのサー・ナイトアイの事務所だもんな」

「通形先輩の推薦だって?」

 

 口々に褒められる緑谷君だが、表情は微妙だった。どうにも採用の理由が不本意らしかったし。

 一方で、インターン先探しにお茶子ちゃんたちは苦労しているようだった。それを考えると、断る選択をしたのが少々申し訳なく感じてしまう。

 

「ガンヘッドさん、受け入れ実績が少ないから、ダメって言われた」

「私も。セルキーさんのところに行きたかったわ」

「フォースカインドさん、インターン募集してねぇって」

 

「けっ!ジーパンの野郎!ほつれの酷いダメージジーンズだから受け入れられねぇって、なんじゃそりゃぁ!」

 

「ウチもダメだった~、社長、補講で忙しいから、冬まで待てって。轟ぃ!なんで落ちたのよ、もーっ!」

「……ワリィ」

 

 職場体験までは良くてもインターン実績が足らない。そんなこともあるんだ。そして爆豪君は結局、ベストジーニストさんに連絡を取ったのか。ちょっと意外。

 言い回しが謎だけど、要するに療養中です、と。

 響香は予約できただけいいと思うな。受け入れるつもりはあると言ってもらえてるわけだし。他校にも補講組はいるから、結果は変わらないしね。

 

「って、いうか、元から敷居が高いんだよな」

「受け入れ実績の多いプロにしか頼めないからなぁ」

「仕方ないよ。インターンは実戦。何かあった場合―――」

 

「プロ側の責任問題に発展する」

 

 尾白君の言葉を引き継いだ相澤先生にみんなの注目が集まる。先に戻ったはずなのに制服姿の私を見て、緑谷君は少々気まずそうだった。

 緑谷君が気に病むことじゃないんだけどね。機会を見て謝っておこうか。

 

「相澤先生。それにマッハも」

「リスクを承知で受け入れるプロこそ本物。常闇、その本物からインターンの誘いが来ている。九州で活動するホークスだ」

 

 ホークスと言うビックネームに電気や瀬呂君はもちろん、みんなが驚きの表情で常闇君を見ている。

 ランキング3位からのオファーと言うのはそれだけの価値がある。

 

「どうする?常闇」

「謹んで受諾を」

「わかった。あとで書類を渡す。日程が決まったら教えろ。公欠扱いにしておく」

「良かったなぁ、常闇」

「恐悦至極」

 

 障子君からのお祝いにも表情を変えず、短く返すだけ。相変わらず(ちゅうに)だなぁ、と思うけど、喜びを表に出す常闇君と言うのも想像がつかない。

 部屋でゆっくり一人で……って、ちがうか。ダークシャドウと喜びを分かち合ってください。

 

「それから切島。ビッグスリーの天喰(あまじき)がお前に会いたいそうだ」

「お、俺っすか?」

蛙吹(あすい)に麗日、それと上鳴茉芭(まつは)にも波動から話があるらしい。明日にでも会って話を聞いてこい。以上だ」

 

 この話をしたいから、一緒に寮に戻ってきたと。波動先輩?なんでだろう。前のアパートではお世話になったし、マッサージも気に入ってくれているから、それかな?

 

「天喰先輩、何の用だろ?」

「やっぱりインターンがらみの話じゃないかしら?」

「うそ!そうなら期待してまう!!」

 

 時期的にそういう話でしょうねぇ

 波動先輩と言えば、関西のリューキュウ事務所だったかな。機動力で見劣りするから、正直、あまり役に立たない気がする。

 一気に3人も増やすとは思わないんだけど、そんなに業績好調なのか、だれか独立したのかな?

 

「明日までなんて待てねぇ……俺!今から3年の寮に行ってくる!」

「お茶子ちゃん、私たちも行きましょう」

「うん!ほら、茉芭ちゃんも……って、制服なのね。私たちも着替えてこよう!」

 

 波動先輩はそんなの気にしないと思う、と言うより先にエレベーターへと消えて行って、私は少々気まずい状態で取り残されることになった。

 どうしようかと思ったら、轟君と電気が話しかけてきた。

 

「ところで上鳴。緑谷と外出してたんじゃねぇのか?」

「あぁ、うん。通形先輩のお誘いで、サー・ナイトアイの事務所に行ったけど……」

「ってことは、マッハもインターン決まったのか?」

「ううん。私は通形先輩の勘違いだったみたい。受け入れてもいいとは言ってもらったけど、お断りしてきた」

「なんだよ、それ。勿体ねー」

 

 そうは言ってもね。嫌だったんだよ。私は私の速度で進めばいい。

 

「それでもサー・ナイトアイと会って、お話しできて、握手してもらえただけで十分でしょ」

「相手はオールマイトの元サイドキックだもんな。確かにそれはちょっと羨ましいかも」

「……そんなもん、なのか?」

「そんなもん、そんなもん」

 

 ちょうどそこでお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが制服に着替えて戻ってきたので、話を切り上げて3年生の寮に向かうことになった。

 

 

 まだ暑い時期だが、夕方にもなればそれもだいぶ和らぐ。

 街灯がつき始めるの眺めながら、3人で寮に向かっている。切島君はジャージ姿だったから、爆走していったみたいだけど。歩きながら、今日の外出の話を簡単に2人にもした。

 

「茉芭ちゃんはサー・ナイトアイのところ、行かなくてよかったの?」

「ケロロ」

「うん、ちょっと、今の緑谷君とは一緒に働きたくなくて」

 

 その発言は、二人の足を止めるには十分な重さがあったらしい。

 

「どういうこと?何か喧嘩でもした?」

「ちょっと、座って話そっか。波動先輩にはメールしておく」

 

 持つべきものはコネである。30分ぐらいしたら、今いる場所に来てくれるそうだ。

 ベンチに腰掛け、ざっくりと今日の出来事を話す。

 

「実際のところ、大した理由じゃないよ。『みんなと歩みを合わせていては、トップにはなれない』、って決意を聞いて、嫌だな、って思っただけ」

 

「それ……デク君?」

 

「そ。私自身、ヒーロー科に進むために足を引っ張るモノ(両親)を切り捨ててるから、偉そうに否定できないけどね」

「前に、和解済みって言ってなかったっけ?」

「和解はしたよ。謝られたから、受け入れてる」

 

 ベンチに座ったまま足を抱え込む。人が来たら見えちゃうけど、この時間なら平気だろう。

 

「切り捨てられる側になったら、ムカついたってだけ。我ながら、身勝手だと思うよ。自分が捨てるのはいいけど、切り捨てられるのは嫌だって、言ってるんだし」

 

 そんなわけで、棚ぼたでサー・ナイトアイのところでインターン、と言うのはチャンスとは思っても乗る気にはならなかった。

 

「……考えすぎじゃない?実力で道を切り開かないと、ヒーローになれないんだし」

 

「ちょっと違う。ただヒーローになる。じゃなく、トップになる。上昇志向のためだけに仲間を切り捨てるのは、私は嫌ってだけ。競う価値もないって言ってくる相手と一緒の職場に居たいとは思わないよ」

 

 今の世の中はヒーロー飽和社会と言われて久しい。確かな実力と向上心のないものは生き残ることはできないのは間違いない。

 卒業して、無事にヒーローになったら、報酬を得るためにクラスメイトとだって競争になることはあるだろう。

 ただ、あの決意のもと動く緑谷君は、そういう次元じゃないと思う。

 

「あぁ、そうだ。仮免試験の時、気持ちに蓋してもいいことない、って言ったの覚えてる?」

「……うん」

 

「悪いけど、前言撤回するわ。最短最速で目標にたどり着こうってのは……まぁ、いいけどさ。そのために不要なモノは躊躇なく切り捨てるようなのは、ちょっとね……それに……多分、自分自身さえも、勘定に入ってないんじゃないかって思うし」

 

 自分の身の安全が考慮の外だから、フルパワーで体を壊すとわかっていても戦闘訓練で撃った。お茶子ちゃんの話では入試でも同じだったようだし。

 

「ケロ……戦闘訓練やUSJのことかしら?」

 

「あと、林間合宿に、聞く限りじゃ入試も、かな。保須の頃には制御も形になってたから、自分が勘定外、ってのは言い過ぎかもしれないけど、危ういものは感じるよ」

 

「最近は怪我はしなくなったじゃない」

 

「うん。だから気にしすぎかもしれない。自分の力不足を棚に上げての僻みとか、我儘だっていうのはよくわかっている。相澤先生にも言われたし。

 でもね、私はそこまで生き急いでない。それに切り捨てるには重く大事なものを沢山、みんなに貰っている。今が大事だし、心地いい。だから、ああいう風には進めないし、進みたくない。

 引きずられたくないから、サーの誘いもお断りした。

 もし、蓋をできるレベルなら、まだ引き返せる。けど、ちょっとでも違うなら、周りを見ないで突き進んだ挙句に、一人になって転ぶ前に止めたほうが良い。

 私は……偉そうに言える側じゃないし、止められなかったなぁ」

 

 私たちを振り切った先に、同じ次元で競える仲間がいるならそれでいいけどね。まぁ、速度が違うならそれはそれで受け入れるしかない。

 そう思っていたら、どうも話を聞かれていたらしい。

 

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

 

「デク君!?」

「緑谷ちゃん……聞いてたのね」

 

 別に訓練中でもなかったから、全周囲視界は解除してた。緑谷君がついてきていたのは気づかなかった。で、梅雨ちゃん、実は気付いてたんじゃあ?

 

「その……僕、そんなつもりは一切なくて。でもどうしても強くならないといけなくて……クラスのみんなを要らない、なんてことは思ってもいなかったけど……でも、言われて確かに、そうだって、思った。ヒーローになりたい。ヒーローになるんだって、ずっと思ってて……やっと、憧れの舞台に立てて、個性が制御できなくてずっと焦ってて、オールマイトやグラントリノ、上鳴さんにも手伝ってもらってやっと今が、あるの、に……ぼくは、それを……ふみ、にじって、しまって……ここで止まれ、なくて……」

 

 とうとう泣き出してしまった緑谷君を見て、何を思ったか、お茶子ちゃんが拳を固める。

 

「デク君!歯ぁ、食いしばれぇ―!」

「え、ちょ、う、麗日さんっ!?その顔は全然、麗らかじゃ、へぶっ!」

「そんでもって、マッハちゃんも!」

 

 流石に顔面は勘弁してもらえたものの、しっかり鍛えられた拳が頭に振り下ろされた。星が飛んだ。スター。

 

「あたたたた」

「お茶子ちゃん、流石ね」

 

 フンス!と鼻息も荒く仁王立ちするお茶子ちゃん。いや、怖いより可愛いが先に立つけどね。梅雨ちゃんが庇ってくれない……いやまぁ、私が自分の価値観で一方的に拒絶したのは事実だから仕方ないけど。

 

「喧嘩両成敗!まず、デク君!」

「は、はいっ!」

 

「それはマッハちゃんが怒って当たり前!デク君は確かに強い!強くなった!でも、一人で何でもできる訳がない!一人で突っ走って……それでデク君が、無茶して、傷ついたら……悲しいよ」

 

 そのお茶子ちゃんの顔に緑谷君の顔が真っ赤に染まる。おお、いい感じ。

 

「それでマッハちゃん!」

「はいっ!」

「人の気持ち、勝手に決めないで……ね?」

 

 ものすごいイイ笑顔で肩を掴まれた。うわ、般若が見える。これに逆らうとか、ないわー

 

「は……はい」

「でも、心配してくれて、ありがとうね。私、ちゃんと考えてみるよ。だから、茉芭ちゃんも頑張って」

 

 それはいいんだけど、抱きかかえられるとその発育の暴力で呼吸が困難に、ですね。HAHAHA、緑谷君、羨ましいだろう。前かがみになっていることは黙っておいてあげよう。

 そんでもって、私も頑張れって……全面的に否定できないところがなんとも、と言うか、そろそろ苦しいんですけど。

 

「お茶子ちゃん、いいシーンなんだけど、その辺にしないと茉芭ちゃんが死ぬワ」

「あわわわわ!ま、マッハちゃーん!!」

 

 何ともグダグダになったところで、ちょうど波動先輩が現れてくれた。

 

「あれれ?えっと、緑谷だよね?なんで?」

「あー……ちょっと個人的な話で。緑谷君」

「な、なに、かな?」

 

「ちゃんと理由も言わずに勝手にへそ曲げて、陰口みたいなことしてごめんなさい。私の事は気にせず頑張って」

 

「う、うん……その、僕も、焦りすぎてた……麗日さんも、ありがとう」

 

 お互い頭を下げ合ってから、緑谷君は寮に戻っていった。

 

「すいません、先輩。お待たせしました」

 

 私たちは気を取り直し、波動先輩からの話を伺うことに。

 

「茉芭ちゃんは通形にとられちゃったと思ってたんで、リューキュウには2人受け入れてって話になってるんだけど、どーしよっか?」

「あー、それなら梅雨ちゃんとお茶子ちゃんでお願いします。」

「いいの?多分、お願いしたら受け入れてくれるよ?」

 

 そう言って首をかしげる波動先輩。それだけの信頼をトップレベルのヒーローから得ているのは凄いと思う。

 

「私への遠慮とかお詫びで譲る、とかなら……」

 

 そう言って、拳を固めるお茶子ちゃん。いつの間にかすっかり肉体言語派(のうきん)になっちゃって。

 

「いや、単純に勉強が忙しいんで。雄英のボランティアの方でいいやって思ってて」

「あー、そうだったね」

 

 そうなんです。1年の2学期に入った今の時期に進路を完全に固めるのは、一般の高校生と比べたら早い。けど、仮免を取った以上、先の選択がぶれていると進もうにも進めなくなってしまう。

 丁度いい、いつまでもウダウダしててもしかたない。決意表明ではないけど、口に出しておこう。

 

「そうなの?」

「そうなんです。医療ヒーロー目指して、医学部を受けてみようかと」

「ぶ~、リューキュウにもマッサージ受けてもらいたかったのに」

 

 拗ねる波動先輩は可愛いけれど、ともあれ、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんの二人をリューキュウに紹介することで話がまとまった。

 ちなみに、切島君は天喰先輩の紹介でBMIヒーロー・ファットガムのところにインターン先が決まったそうだ。

 

 

 そんなわけで、ビッグスリーのうち2人からの誘いを蹴ったという微妙な立ち位置になってしまったものの、翌日から放課後を使った周辺自治体のパトロールや美化活動に参加を申し込んだ。

 

「ヒーローだ!がんばれー!」

「はーい、ありがとうね。クルマに気を付けてねー」

「「「は~い」」」

 

 ヒーローコスチュームで街に出られて、街の人たちに歓迎(チヤホヤ)されるということで、駅近辺の見回りなどは人気があるらしく、順番待ち。

 逆に美化活動と言う名のゴミ拾いや下校中の小学生の見守り任務は不人気だ。こっちはお子様が遠慮なく、ヒーロー候補生をからかってくるので、割と空きがある。

 今日はB組の塩崎さん、ヒーロー名ヴァインと一緒に参加している。

 

 一応は警戒のためもあって、全周囲視界は使いっぱなしだ。じわじわと距離は伸びて、400メートルをようやく超えるようになってきた。地下探査はまだ50メートルがいいところだけど、建物の構造把握はだいぶ精度が向上している。

 だいぶ慣れてきた学校内と違い、人の分布も動きも統一性がないので正直、これだけでも個性の成長と言う点では美味しい。

 そう思っていたら、ちょっと困ったものを見てしまった。こっちに来るからちょうどいいか。

 

「……ヴァイン、もうすぐバイクが来るんで拘束。ひったくりの現行犯」

「かしこまりました。欲に塗れた不逞の輩に裁きを、磔刑(クルセフィクション)

 

 蔓状の髪の毛が一気に伸びて、バイクごと拘束する。

 

「な、なんじゃこらぁ!離しやがれぇ!」

「何でこんなところにヒーローがいるんだよ!」

 

 そう言われても。下調べしてまでひったくりやるなら、その努力をもうちょっと建設的なことに使わない?

 

「ヴァイン、少し拘束緩めて。頭が出るくらいで」

「……わかりました」

「ありがと、じゃ、おやすみ」

 

 触れて、職場体験の時と同じ要領で神経に干渉して、おやすみなさい。

 お子様がいるのに、ギャーギャー喚かれたら教育に悪いってクレーム来そうだし。

 

「ドロボー!誰か、捕まえ……あら」

「被害者の方ですね、大丈夫。犯人は捕らえました。警察を呼びますのでお待ちください」

 

 さて、警察を呼ばないと。

 と思ったが、被害者の方がすでに通報していたようで、こちらの通報と連動してすぐに引き渡しが出来た。

 

「雄英の学生さんですか。仮免なのに大したものだ。では、確かに受け取りました」

「いえ、当然の務めです。咎人をよろしくお願いいたします」

「は、はぁ……」

 

 多少、ヴァインの話しぶりに面食らっている感はあったけど、引き渡しは完了。

 そんな見世物があれば、お子様たちはひったくり犯、ケチな犯罪者と言ってもヴィランを拘束したヒーロー・ヴァインに群がる。

 

「緑のおねーちゃんスゲー、かっけー!つえー!!」

「ヴァイン、っていうんだって。すげー」

「あっちの黒い人は何にもしてないー、怪し―」

 

 そうは言われても。見て分かるモノでないからなぁ

 どう頑張っても派手さはないからね、こればかりは仕方ない。

 

「はいはい。確かに何もしてないねー、はい、ヴァインと握手したい子は並んで―、終わったら帰るんだよー」

「「はーい」」

 

 握手したければ並べと整列させてたら、話を聞いて駆けてきた子が周りを見ずに交差点に駆けこんでこようとしている。

 このスピードだと、車道に出るな。

 

「そこの子!止まりなさい!」

 

 勢いよく交差点から飛び出ようとした子の前に、電柱に包帯を張ってストッパーにする。突然目の前にそんなものが出現したら、足を止めざるを得ない。

 足が止まったその鼻先を、トラックが通過して行ったから、危ないところだった。トラックの方は普通に安全運転してたから、事故にならなくてよかった。

 

「ひぇっ、あ、あぶねー」

 

 まったくだね。これで怪我でもされたら寝覚めが悪いよ。

 

「少年、まずは危険なことをしたのだから、お仕置きだ」

「えー?」

 

 軽くデコピン一発。と言っても、触る程度で痛みは全くない。ついでにバレない程度に脳内の電気信号を鎮静化させて、興奮気味のところを落ち着かせる。

 

「元気なのはいいけれど。交差点は走ったら危ないよ。慌てず急ぎなさい」

「う、うん……?」

「あの、それは流石に言い回しが難しいのではないかと」

 

 いいんですよ、単に煙に巻きたいだけだから。

 

「先生やお父さん、お母さんに教わったことを守るだけでいい、出来るね?」

「……う、うん」

「いい子だね。なら、気を付けて帰りなさい」

 

 後はちょっと乱暴に頭を撫でてやって、ポンと背中を押せば、こういうタイプの男の子はちょっと得した気分になって、満足げに帰ってくれる。

 そこまではいいんだけど、ヴァインに集ってた子の一部が「自分もなでろ」と期待する目で寄って来た。ワンコか、君らは。

 そこから10分程度、2人で子供の相手に追われた。喜んでくれるから悪い気はしない。

 

「人気ですね、ブルーアンバー。さ、みなさんも、気を付けてお帰りなさい」

 

「「「はーい!」」」

 

 ヴァインを取り囲んでいた子供や一部こっちに来た子達も、とりあえず満足したらしい。ワイワイ話しながら帰っていく。

 

「時間ですね。戻りましょう、ブルーアンバー」

「了解、ヴァイン」

 

 互いをヒーロー名で呼び合うのも少し慣れてきた。やっぱり見知った者同士だと照れが出るよね。そこを的確にからかってくる一佳、バトルフィストとかもいるけど。

 

「そういえばヴァインはインターンは?」

「シンリンカムイはまだ若輩ゆえに実績が足らないと……残念ですが、これも定め」

「若手だとそういう事もあるかー」

 

 寮で今日の事を話すと、不人気のボランティア活動でもヴィランと遭遇する可能性がある、ってことで皆の目の色が変わった。

 B組も含めて、インターン先が見つかっていない人のほとんどが申し込んだらしい。暫くは順番回ってこないな、こりゃ

 

 こんな風にそこそこ平穏に経験を積んでいけるかと思ったら、数日後にはあっさり覆されることになるとは思ってもいなかった。




麗日にSEKKYO(物理)される回。
まぁ、実際、緑谷が全部だめって訳でないのでしょうけど、原作でもこの時期から黒デクの素地はあったよなぁ、と。

某赤い英霊並みに「誰かを救う」念に捕らわれている緑谷ですが、それ以上にOFAを継いだ以上、トップに立たねば、と言うことに捕らわれてますよね。ちょっとそこを突いてみた形です。
ぶっちゃけ、さっさと麗日とくっついてしまって、落ち着いて活躍しろと。
まぁ、AFOと死柄木一味が居なくならないと無理なのですけど。
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