また、個性破壊弾に関しての捏造設定がてんこ盛りです。
いやな予感、と言うのは気のせいと思っても忘れたころにやってくるんだなぁ、とつくづく痛感した。
お茶子ちゃん、梅雨ちゃん、切島君のデビュー戦が全国ニュースに乗った翌日、私は半ば強制的に相澤先生、イレイザーヘッドによって、インターン活動を始めることになってしまった。
「上鳴
「はい?インターンではなく??」
疑問に思うのは当然だと思う。私はまだ学生でしかも1年生。ヒーロー仮免許を持っていると言っても、別にどこかの事務所に所属しているわけではないのに、チームアップ?……ん?
「気づいたか。雄英高校は元からヒーロー事務所としての活動もある」
正確には、文字通りの個人事務所で事務員などが居ない先生のヒーロー活動のサポートに、処理代行を行っているのだとか。
「ちょっと厄介な依頼でな。かと言って代わりがいない」
つまり拒否権もないという事ですね。
仕方なしに詳細を聞いてみると、何とも意外な名が出た。
「アクスレピオス事務所、ですか。あそこは医療従事者でないとインターンを受け付けないとホワイトマウス先生に聞いてましたが?」
「だから雄英への協力要請だ。一応、学生の身分のまま、雄英の、というより俺のサイドキックとしての籍も持つことになる。雄英経由だから正規の給与は出るぞ」
「ええっと、状況は理解しました。これって是非はともかく、クラスメイトには?といいますか、インターンの受け入れ実績云々は……?」
「……あまり話すな。後が面倒だ。
「はい、わかりました」
ともあれ、所属に関しては詭弁と言うものではないかと思います。実質、アクスレピオス所属に等しいけど、指揮監督権は
名義貸しと言うか、多重派遣と言うか。何とも生臭い話だなぁ
ヒーローにもこんなグレーな話があるのか。
ともあれ、アクスレピオスには恩もあるし断りづらい。受諾する旨を告げた。
「別件で協力要請を受けている件に関連する。やる気は?」
「あります。ただ正直、内容が不安ですが」
「ホワイトマウスが噛んでる。お前の眼、個性の観測、干渉能力が求められている」
あの、それってかなり大ごとになるのでは?
いやほんと、つまらない意地を張らずにサー・ナイトアイのところで働いておくんだった。
「言っておくが、話の出どころはナイトアイだ。どのみち巻き込まれてた。諦めろ」
「そうですか。嬉しくないですね」
間違いなく厄介ごとだと思う。でも求められて動かなかったらヒーローではないと、気合を入れなおす。
相澤先生引率の下、雄英から車で30分ほどのところにある研究施設。どうもバイオハザード対策が整っている本格的な研究所らしい。
とは言っても、今いるのは普通の格好で出入り可能な事務エリアだけど。
「久しぶりだね。ブルーアンバー」
「お久しぶりです、ホワイトマウス先生。そちらの方は?」
「やあ、私はドラギッツと呼んでくれ。このマウスの同僚だ。早速だが、用件を説明しよう」
挨拶もそこそこにモニターには特殊な弾丸のようなものが映し出された。
「これは先日、ファットガム監督下のインターン生、サンイーターと
「ニュースで見ました。注射針がついた特殊弾……ですか?」
何でも同じ弾丸を受けた
病院での診断としては、何らかの要因で個性因子が傷ついている、と言うもの。
個性因子自体は、出力の数値化などが可能だけど、明確にコレ、と純粋な物質化がされていない。血液や細胞の一部に含まれているだろうとは言われているけど。
個性出力が安定せず、結果的に個性が発動しないか自由に操れない。少なくとも普段とは比べ物にならないくらい、個性数値が低くなったため、「個性因子が傷ついた」という診断になったらしい。
そこから詳細な解析依頼がアクスレピオスに回ってきた、と言う事らしい。
「結果としての症状は理解できるが、原理がわからない」
「君の成長に賭けて、こうして来てもらったわけだ」
またずいぶんと無茶ぶりが来た。いやまぁ、やるだけやりますけど。
受諾に合わせて開示された情報は、関連すると思われる人物を簡潔にまとめた物だった。
製造元と目されているのは、指定ヴィラン団体である死穢八斎會。
古い言い方をすれば、暴力団、ヤクザと言われる存在らしい。そんなの、オールド・ムービーの世界だと思ってた。
その若頭である
「成分を分析すると人間の血液細胞が確認された。提供された情報から、治崎の娘とされるエリの物と思われる。先日、巡回中のインターン生と接触があり、その際には手足に怪我の跡が確認されているから、この少女の物と言う可能性が高い」
サー・ナイトアイ事務所のインターン生と言うと、通形先輩と緑谷君か。この情報を知っているのだろうか。どちらにしても胸糞悪い話だった。
「何とも、気分が悪いですね」
「君に依頼したいのは、この個性破壊弾の現象の把握。これは個性由来なので難しいが、治療薬の確立への協力だ。短期ではあるが、心身を削る作業になると思う」
ホワイトマウス先生、職場体験の時も思いましたが、無茶ぶりが過ぎませんか?
「判りました。出来る限りのことをさせていただきます」
「では、イレイザーヘッド。ブルーアンバーをお借りします」
「仕方ありませんね。後は期間等ですが……」
細かい条件を詰めると、それ自体は私にとって極端に悪い物ではなかった。
基本的には放課後直行。そのまま朝まで拘束されることはあるけど、最低限の睡眠は確保の上、授業に間に合うように送り返す、というか、業務終了。
問題は移動の足。ここ、施設の性質もあって、バス路線とかから離れてるんですよね。車で30分の距離は、走るにはちょっときついし。敷地に入ってからの距離もかなりあるし。タクシーを呼ぶにもだいぶ嫌がられるとか。
「今日の戻りはタクシーを使うか、送ってもらえ。明日以降は別途指示する」
「はい。わかりました」
全寮化前に中型二輪は取ったから、バイクの置く場所用意してくれれば買うけど、継続して乗れないと維持が面倒になるのがねぇ
そして私を置いて雄英に戻るイレイザーヘッド。いいですけどね。何とも妙なことになったなぁ
早速だから、とまずは着替え。ジャケットやグローブなどの戦闘装備は預けて、白衣……ではなく使い捨ての防護服を着ることに。
「まず、ドラギッツの個性も使い、培養を行い複製した薬剤がある」
「これをまず、”見て”欲しい」
見た目は血そのものである”薬”を”見る”。もうこうなってくると視界は邪魔に感じてくるので、目は閉じて意識をより集中するが、動き回る電子はあるけれど、それ以上の事はわからない。
「すいません。さすがにこの状態では何も」
「それは予想の内。では次だ」
その言葉に今度は実験用のマウスが数匹。
「
「個性としては歯がすぐ生えるという程度で、そう極端に強力なものではない」
ネズミの大きさの神経網を把握するのは正直、今でもそれなりに集中がいる。
薬剤が注射されてからの変化を見逃さぬよう、集中を高めていく。
「なに、これ……」
薬を打たれた実験用マウスの神経網が点滅したように見えた。今は薬剤を打つ前よりも輝きが弱い気がする。電灯が切れる前の様に微かに点滅をしている感じだ。
「電子が……揺らぐ?分断?……え?神経は切れてない、なんで??」
見たままをつぶやくと、ホワイトマウス先生が解釈を加えてくれる。
「以前、個性を使うと神経系が活性化すると言っていたね。要は個性を使う神経と人体固有のそれが二重構造なんじゃないかな?君に分かりやすく言えばレイヤーが重なっている状態だ。
薄れている神経網の特徴を覚えておくといい。通常の神経網を伝わる電子との違いが分かれば、個性因子への干渉が容易になるだろう」
「個性因子と言うより、個性網とでも言うべきか?それの分断……ねぇ?壊すだけなら治崎の個性の方が向いてるんじゃないか?」
ドラギッツ先生の言う通りだろう。オーバーホールと言う個性、多分壊しっぱなしにもできるだろうし、中途半端なところで修復を止めることもできるはずだ。もっとも、個性因子を狙い撃ちするような繊細な破壊ができるのなら、だけど。
「そうだとしても、全身の細胞に個性因子があるような異形型の個性まで破壊しつくすにはこの薬剤の量では少なすぎる」
「ところで、何か不思議がっていたが何か違和感があったのか?」
「はい。いくら個性破壊薬、というよりも個性を壊す個性だとしても、効果がいきなり全身に広がるのはおかしい、と」
個性って本当に物理だけで語れないって本当にそう思う。
ある意味で、治崎と言う人、私はもちろん、ホワイトマウス先生やドラギッツ先生と言った専門家より、個性と言うものの本質を掴んでいるのではないだろうか。褒めたくはないけど。
「確かにそんな即効性があるというのは異常だな」
「医学と言うよりファンタジーですよね。個性という概念を壊しているという感じに思えます」
人間が今いる世界と次元が違う場所に個性本体があるというか、不可視のレイヤーを重ねてあるような。
「個性と言う”概念”破壊か。ないとは言えないのがなんともなぁ」
「あるいは超常以前に退化をさせる、かな?」
「どっちも、医者、薬学者としては否定したい暴論だ」
個性で発生する現象と言うのは、まさにファンタジーと言うか超常以前で言う超能力そのものと言えるものも多い。そういった個性は発現のすべてが物理法則では語れない。
と言うより語り切れない。
世の学者を悩ませ、いまでも異能排斥論と言うカルト思想が残る根拠はそうした、まさに超常と言う側面があるからだ。
二人の議論の議論は進むけど、それと同時にもう一つ確認しなければいけない現象がある。
「現状、時間をおけば回復するのなら、先ほどのマウス、継続して状況を見たいですね」
「うん、量は少なめだから、深夜に及ぶが今日中には戻るだろう」
時間を追うごとにまだらに神経、正しくは神経と個性の流れが重なり合い始め、時計の針が重なるころにはマウスは元通り、歯がすぐに生えるようになった。
「消したものが元に戻る、なんだろ、パソコンだったらゴミ箱に入れて復活させたみたい」
ともあれ、見るものは見たということで情報の共有を行うことに。
「さて、まずは状況を整理しよう」
「世代やタイプを問わず個性を壊すなら、概念破壊か超常以前、無個性への退化」
「破壊か退化か、個性として発現して分かりやすいのは破壊の方だね」
これは私に聞いてますかね。
「被害者である天喰先輩、サンイーターが回復したことを踏まえると、どちらがありえるでしょう?」
「破壊……いや、退化の方かな。問題はそうした概念が回復するのか、だ」
「最終的には個性消滅が目的だろう。しかし血清がないと自分たちも危険になる。異能排斥論者の可能性はあるが、目的半ばで自身の個性を失いたくはないはずだ。元に戻せるなら、壊すや進化、退化と言うよりも、隠す、と言う考え方かもしれないが」
結局のところ、未完成品を使ったリバースエンジニアリングは上手く行かないという話になる。
現状は手詰まり。少なくとも報告に値する情報は集まったということで、いったん休憩を取ることになった。コーヒーと言うより、練乳と砂糖にコーヒーの色を付けたような、コーヒーと言う存在に喧嘩売ってるような激甘缶コーヒーを3人ですする。
これ、地元の方ではたまに見るけど、このあたりでも売ってたのか。美味しいかは別として、糖分が疲れた体にありがたい。
そのまま、ブレインストーミングと言うか、雑談になった。
「そういえば、飯田天晴さん以降の脊髄損傷の治療のほうはどうなったんですか?」
「順調だよ。現状は他の医療機関や研究者が症例を積み上げてくれている。ただ、治療のための拘束系個性持ちが奪い合いでね。今はドラギッツと個性を眠らせる、いわば個性麻酔の開発中だ」
「患者の体質や個性ごとに調整するならいいが、どうしても高額になる。汎用化がカギだな」
その話の流れで、この個性麻酔薬が個性破壊薬の予防薬や血清代わりに使えないかと聞いてみたが、あいにくそこまで便利にはいかないらしい。
そんな話をしていると、だんだんと話題は個性破壊薬へと向かってしまう。
「これを治崎と言う男が作ったのなら、ヴィランにしておくにはもったいない知性だ」
「相当のトライアンドエラーがあったろうね。研究者向きと言えるが、犠牲になっている子供のことを考えると、評価しがたいね」
「結局のところ、血清を作るなら、この個性破壊をしている個性因子の働きを”書き換える”必要があるんですね」
なんでそこでお二人とも黙るんですかね。私、何かやらかしました?
……やらかしたんだろうなぁ
「なるほど興味深い。確かに人体を離れた個性因子が暴走していない以上、制御方法はありそうだ」
「いっそ、ブルーアンバーの個性で思い切り干渉したら、その命令、書き換わらないか?」
「そんな脳筋理論……ドラギッツ、君、疲れてるんだよ」
でも、個性って、割と脳筋理論と言うか、ファンタジーの世界ですよね。
「どんなに観測しても対価もなく、すさまじい効果を発揮する個性ってありますから、脳筋と言うか、ファンタジーではありますね」
具体的にはオールマイト先生とか。個性を止めるっていう意味では、イレイザーヘッドもそうか。
「あー、失敗しました。イレイザーヘッドの抹消で個性破壊薬を止めていたら、どうなっていたんでしょう?」
「……あぁ、そうだね。僕らも迂闊だった。明日にでも話をしておいてくれるかな?」
「わかりました」
凄く嫌がりそうだけど。飯田先生の時も、少し恨み言を言われたし。
「イレイザーヘッドの個性は、個性による個性破壊の証明にはなるがそれだけだな。材料の時点で確認以上の意味は持たないぞ。
俺としては、ブルーアンバーの個性でも試してもらいたい。電子操作、電子そのものを操るわけだが、そこを応用して個性因子に命令できそうだし」
「ドラギッツ先生の調薬でしたっけ。薬剤の成分調整、薬効を変えるという意味での操作はどうだったんですか?」
「それは試したが、今一つだな。多少効果の増減はあった程度だ」
「つまり、他人の個性で干渉可能ってことなんですね」
なるほど。確かにそれなら試してみたくなる気持ちはわかる。それにしても、薬剤に限定されても個性因子を含む生薬を調整できるって、かなりチート個性だと思う。
「医学分野ではかなりのチート性能ですよね、それ」
「まぁ、まぁ、僕みたいな平凡な個性からすれば、どちらもチート性能だよ」
「寝言は寝て言え、このチートハーレム野郎」
「えー?異形型は結婚相手を探すのも大変なんだよ?」
「事実だが気をつけろよ?ブルーアンバー。コイツ、サイドキック2人だけじゃなくて、他にも手ぇ出してやがる。しかも公認」
あー、今日はお見掛けしてないけど、ドールマウスさんやヘッジホッグさんはやっぱりそういう関係でしたか。
「あはは、それはまた」
下ネタはさておいて、相澤先生に繰り返し言われているが、個性への干渉と言うのはレアではある。心操君や相澤先生自身の個性はその部類だ。
私の個性「電子制御」は干渉可能と言われてても、正直半信半疑だ。だって、個性を思うがままに調整できたら、私は今頃、電気よりも大容量、大出力放電が出来てるだろうし。
それも結局、その個性でできないことはできない、ってことなのかもしれないけど。
相澤先生の考えを鵜呑みにすれば、確かに発現そのものを調整できる、あるいはやったのかもしれない。
緑谷君のフルフォルム、最近では爆豪君の足からの爆破も、直前に何度もやったマッサージ、つまり私からの干渉が遠因だと思われている。
ついでに一佳やクラスメイト、先輩方曰く、マッサージを受けた後は各種訓練の結果がいいらしい。単に体調がいいだけ、と言うわけではなく、技量や個性の伸びがよいのだとか。
正直、買いかぶりすぎ、とは思うのだけど。
一度ぐらい、それを信じてみてもよいかもしれない。
「サンプルを少し分けていただければ、試すだけ試してみたいと思います」
あえて言えば、寝不足のテンションで、妙な決意を固めるもんじゃないと、時間を巻き戻せるなら全力で止めに行きたい。
「まずは、元の個性を知らないとどうにもならないので、初期化をイメージしてみます」
ほんの数滴、電子の数も多くはない。
試験管を手に取り、ありったけの集中力で電子に、初期化のイメージを叩き込む。
「初期化、初期化……これもPlus Ultra……
微かに、電子が反応した気配があった。そしてその結果については、正直、予想外にもほどがあった。
「うぐっ」
「こ、これは……」
「若返り……いや、巻き戻す、個性、か?」
個性持ちではない実験用マウスに投与したところ、時間を巻き戻すかのように小さくなっていき、その存在が消えた。
結果として、私は初めて、自分の明確な意思を持って、他人の個性への干渉と発現の”調整”を成功するに至ったことになる。
……相澤先生、頭抱えるだろうなぁ
ごめんなさい。やらかしました。
治崎が年単位の時間をかけた物を半日で覆すオリ主w
ご都合主義の産物とご容赦ください。
まぁ、個性の調整が出来たところで戦闘面ではもう一工夫要りますが。
とは言え、何度か書いてますが青山を筆頭に個性が体に合わない人にとって、喉から手が出るほどに欲しい人材になりましたね。
とは言え、この先で絡むかは微妙なんですけど。
オリキャラ
薬研来馬(やげん くるま)
ヒーロー名:ドラギッツ
アクスレピオス所属で製薬部門担当。男性。医師兼薬剤師。
名前は薬研車から。ヒーロー名はDruggist's Mortar(米英語表記で薬研、参照:wikipedia)から。
個性:調薬
対象の薬剤を作りだす。サンプルをもとに複製や成分の調整も可能。
性質的には薬品に特化した創造。