雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第62話 救出作戦(2)

 警察車両に分乗して死穢八斎會の会長宅を取り囲む。

 当然、周辺住人は何事かと様子をうかがうが、ただならぬ様子に家に引っ込むか、自主的に避難を始めているようだ。

 

「令状を読み上げたら、ダーッと行くんで」

 

 最後の念押しと言うところで刑事さんが皆に声をかけている。

 

「しつっこいな。信用してねぇのかよ」

「そういう意味やないやろ。意地悪やな」

 

 サー・ナイトアイが集めたマイナーヒーローが多いから、心配なのだろう。それに私たちインターン組は明らかに年が若いし。

 そしてインターホンを鳴らす直前、中から強力な一撃で門扉が吹き飛んだ。

 

 玄関前にいた警察官が3人吹き飛んで、イレイザーヘッド、デク、私が1人ずつ回収する。

 

「大丈夫ですか?」

「あぁ、ありがとう」

 

 ざっと見た限り、怪我は軽微。これなら動けるだろう。

 

「なんなんですかぁ?朝から大人数で」

 

 おおよそ6メートルほどの大男。この男がドアを吹き飛ばしたらしい。私だと相性最悪すぎるな。

 

「おいおいおい、勘づかれたのかよ!」

「いいから、みんなで取り押さえるぞ!」

 

 いや、あの、屋敷を十重二十重に包囲して置いて、気付かない方がおかしいと思いますよ?連中だって、違法行為をしている自覚ぐらいあるだろうし。場合によっては警察署や周辺のヒーロー事務所を張るぐらいするでしょうし。

 

「すこし、元気が入ったぞ……そぉーれ」

「離れて!」

「何の用ですかぁーーー!?」

 

 衝撃で渦巻く砂ぼこりの中、リューキュウさんがその姿を竜に変える。

 

「ここに人員を割くのは違うでしょ。彼はリューキュウ事務所が対応します!」

「頼みます!突入ー!」

 

 ネジレチャンの指示でサポートに入ったウラビティとFROPPYに視線を送ってから、イレイザーヘッドに従って敷地内に突入した。

 

「ヒーローと警察だ!違法薬物の製造および販売容疑で捜索令状が出ている!」

 

 建物への侵入ルートは盾持ちの警察の方が作ってくれる。私たちはそれをすり抜けてきた組員を押しのけるように進む。

 

「ここは我々に任せて先に行って!」

「頼みます!」

 

 サー・ナイトアイが組員制圧に当たってくれたヒーローに礼を言って建物へ走っていく。

 

「火急の用や!土足で失礼するで!」

 

 純粋に建物としてみれば、純和風の瀟洒な造り。土足で上がりこむのも躊躇するが建物には泣いてもらおう。踏み込むと同時に私の個性で知覚できる限りの場所を見る。

 

「結局、怪しい素振りどころじゃなかったな」

「俺はだいぶ不安になってきたぜ。ここまで来たら、進むしかねぇがよ」

「どこからか情報が漏れていたのだろうか?いやに一丸となっている気がする」

「だったらもっとスマートにかわそうとするはずだ。元から言い含められていたんだろう!」

 

 勝手に作られた地下ルートへの侵入口を目指して進む中で、中に入ると会話をする余裕がある程度に人がいない。

 

「盃を交わせば、親分兄貴分に忠義を尽くす。肩身が狭い分、昔ながらの結束が重視されてるんだろうな。治崎や幹部連中の姿がない。今頃、隠蔽や逃げ出す算段を付けているだろう」

 

「忠義じゃねぇやそんなもん!子分に責任押し付けて逃げ出そうなんて、漢じゃねぇ!」

「うむ」

 

 そのまま真っ直ぐに進み、掛け軸と生け花が飾られた飾り棚があった。

 

「ここです」

 

「この先の空間に待ち伏せがいます。3名、おそらく武器を所持。警戒を」

 

 突入前から個性による知覚は全開にしている。個性がないわけではないだろうけど、おそらく武器を使ってくる。制圧は容易と思えた。

 

「了解。バブルガール1人頼む」

「はい!」

 

 サー・ナイトアイが飾り棚の仕掛けを操作すると、隠し扉が開く。

 

「なんじゃテメェらぁぁ」

 

 飛び出してきた組員の内二人は、ムカデ状の腕を伸ばしたセンチピーダーさんが拘束。もう一人も、バブルガールさんがあっという間に組み伏せる。

 そのまま気絶させようかと思ったが、イレイザーヘッドに肩を掴まれた。余計な手出しは不要、と言う事らしい。

 

「このまま大人しくさせます!先に行ってください!」

 

 会議でのオドオドした様子などかけらも感じさせない強い声。サー・ナイトアイがサイドキックとして採用しているのは伊達ではない、と言う事だろう。

 どうも最初の印象がアレだから、強いと思えなかったのだけど、さすがプロだった。

 違法建築でもある地下部分に突入すると、意外なほどに近代化された空間が広がっていた。

 そのままエリちゃんの監禁場所を目指すが、通路が塞がれていた。

 

「確かめます」

「ルミリオン先輩!そのまま行ったらマッパになるんじゃ」

「大丈夫。ミリオのコスチュームは自身の毛髪からできた特別製だ。発動に呼応して透過する」

 

 あぁ、透ちゃん、インビジブルガールのコスチュームがその技術を応用して作られたとか。あっちは常時発動タイプだから、見えるようにするのに時間制限がある面白仕様だけど。

 

「壁でふさいであるだけです。ただ大分、厚い壁です」

「治崎の分解して直すなら、こういう事も出来るのか」

「見られたら困るって言っているようなものだ」

「そうだな。こんなもんで妨害できると思ったら、甘く見られたもんだな!」

 

 烈怒頼雄斗(レッドライオット)の必殺技、烈怒……ええと、烈怒頑斗裂屠(レッドガントレッド)だったかな?とデクのシュートスタイルでの蹴りでコンクリ壁はたやすく破壊された。

 

「……中々、やるじゃねぇか」

 

 パワータイプには見えないロックロックさんがこれを壊そうとしていたというのはちょっと意外。この分厚さは私だとどうにもできないなぁ

 

「進みましょう」

「……この先に1人います。女の子は……多分、移動しています」

 

 方角は知覚範囲ギリギリか少し外。実戦の緊張感が感知距離を引き延ばしてると思う。限界を超えるのはいいけど、明日は動けるといいなぁ、と思うけど。

 

「上出来だ。どのみち後は幹部のみだ。無理するな」

「はい」

 

 あと少し、だったのだけど事態はそう簡単に進まなかった。感知していた人物が壁と一体になったと思ったら、周辺の床や壁がありえないレベルでうねりだした。

 

「道がうねって」

「変わっていく!?」

 

 眩暈を起こしそうなぐらいに床や壁が動き、そこに新しい壁や曲がり角が形成される。

 

「治崎じゃねぇ!逸脱してる。考えられるとすれば本部長の入中だ!奴の個性は擬態!」

「規模が大きすぎるぞ!」

「かなりキツメにブーストすれば、ありえない事もない。イレイザー!消されへんのか!!」

「本体が見えないと、どうにも」

 

 物体に入り込んで操る個性。同級生ならB組の黒色君と似たタイプ。対象は選ばないけど、冷蔵庫サイズが限界と言うのは操れるのはあくまで自分自身。

 

「ブルーアンバー!今の位置から逃げた方角は?」

「……大丈夫です。進行角度は変わっていません。ルミリオン、ご武運を」

「ありがとう!スピードが勝負、先に行きます!」

「ルミリオン!」

 

 サーは止めようとするが、透過で障害をものともしないルミリオンならば追いかけられる。そして、話しかけられていったん中止したけれど、この状況は私向きだ。

 

「擬態の中、なら、体内も同然。ブルーアンバー(わたし)を呑んだことを後悔しなさい」

 

 触れた感触は確かにコンクリートそのもの。ただし薄皮一枚隔てたところに流れる電子。これならいけそう。

 

「イレイザー……引きずり出せます」

「……なに?……仕方ない。やれ!」

 

 出し惜しみして警察の方に被害が出るのを恐れたのだろう。許可を得たので、全力で目当ての電子へと操作、正しくは干渉を試みる。

 

「はい!強制停止(サスペンド)!!」

 

 ええ、ネーミングセンスはありませんが何か?

 発現した他人の個性に干渉すると言っても、イレイザーヘッドほどの強力な拘束力もないし維持するには気力も体力も削られすぎる。だから効果は一瞬。それでも擬態が解けた瞬間、地下通路のうねりは止まり、天井から男性が落ちてきた。

 

 個性破壊薬の検証作業と治療薬開発における副産物。新しく開発した技は識別した個性因子由来の電子に「止まれ」と命じるだけの単純なもの。

 個性「電子操作」は電子を操る。今までなら回路に流れる自由電子を外に出して、電撃に変えたりイオノクラフト効果を生むために使っていた。この技は、電子はそのまま流れを変えたり、物質から奪ったりもせずにただ電子を介して個性因子に命令伝達の素子として使うだけ。

 元からやっていたことの延長線。そうとわかれば難しい技ではなかった。

 

「あっ、しまった!」

 

 ただ、ちょっとばかり解除されて通路に落ちた場所が悪かった。

 動きが速くて場所を共有できてなかったこともあって、イレイザーヘッドから視線が通らないまま、警官隊の中に落下してしまった。

 

「か、確保しろ!」

「さぁせるぁぁぁ!」

 

 入中と言う名の幹部、もうヴィランと言って問題ないと思うが、再び通路に擬態をして、私やイレイザーヘッドが何かをするよりも先に床に大穴を開けてきた。

 

「あっ!」

「ブルー!」

「ブルーアンバー!」

 

 短く私を呼んだのは、イレイザーヘッドかデクかわからないが、落ちた瞬間に新しくコンクリが足元に延びてきた。強制停止(サスペンド)をかけるより早く、制御していない土に変わってそのまま別の場所へと滑り落ちることになった。

 

「あたた……失敗したなぁ」

 

 あちこち打ち身で痛いけど、動くことに支障はない。

 危険とみて、分断して始末しようという事だろう。あそこでイレイザーヘッドとの連携に失敗したのは痛かった。

 サイドキック扱い、教師と生徒と言っても、一緒に仕事するのが初では連携何て取れるはずがない、と、言い訳しておこう。

 ともあれ、この状況、次に起こることは明白だ。

 

「分断して各個撃破は常道とは言っても」

 

 私の不意を突きたかったら、眠っている時でも狙ってくるか、人間サイズの電子顕微鏡でも用意して視界を塞げ。あぁ、いや、そうなってもネガポジ反転ぐらいかな。ちょっと眩しいと思うけど。

 ともあれ、背後から両手で短刀を突きさすように飛び掛かってきた、セーラー服の女性、確かヴィラン連合のトガヒミコ……のようなナニカ。

 

ディスタブ(Disturbing)・ナッコー!」

 

 電子を乱す意図を乗せた右ストレートを叩き込む。

 多分、トゥワイスの分身なのだろう。殴ったと同時に泥のように変わる。分身はその人を完全再現しているが、エクトプラズム先生の分身と同じで容易く崩せた。

 そしてその隙を突いて飛びつくつもりだったらしい攻撃を前転の要領でかわす。

 

「ヴィラン連合のトガヒミコ……」

「あらら、避けられちゃいました。ですがちょっと違います。今は時代遅れの絶滅危惧種、極道者のトガです。悪者なのです」

 

 ケーブルにつながったナイフと背中のタンク。林間合宿の時と同じく、血を集めることに固執しているらしい。そういう個性らしいけど。

 

「アナタの事は知ってます。上鳴茉芭(まつは)ちゃん。体育祭、凄かったです。山では隣にいた男の子といい雰囲気でしたよね?好きなんですか?いいですねぇ、カァイイねぇ、ワタシも楽しくマッハちゃんやお茶子ちゃんと恋バナしたいです」

 

 言っていること行動が一致しないが、戦い慣れている。戦いながら妙な妄想を垂れ流さないで欲しい。

 ナイフの分、リーチで不利。スピードは困ったことにやや劣る。反応では私が有利。総じて互角。

 

「ワタシ、血塗れボロボロの人が大好きなの、斬るね」

「あらそう。血でメイクする趣味はないかなっ、っと」

「斬れてない……速い、ううん、速度じゃない。反応がいい。強いね」

 

 あっぶな。注意して見ていた。全周囲視界に死角など無いのに、意識の隙間に潜り込むような動きをされた。避けられたのは、トガが言うように、反応で勝るおかげ。

 鍛えててよかったと思うけど、同じミスは繰り返せない。

 

 それにしても何てヤバい趣味。林間合宿の時の爆豪君とかデク、見られてないだろうね?あの時ボロボロだったから危ないかも。

 

「趣味の押しつけは良くないよ!個性カウンセリングで言われなかった!?」

 

 足を狙ったローキックを途中で跳ね上げて、鉄板入りブーツで顎を狙うけど、見え透いてて避けられた。距離を取ってお互い仕切り直す。

 

「フツーになれとしか言わないのに、あんなの意味があるんです?」

「随分とハズレのカウンセラーだったんだね。個性と自分と世の中のすり合わせ、ズレちゃったか」

 

 かと言って、同情は出来ないけどね。とっかかりは個性事故の類だろう。個性が衝動と直結しているタイプなら不思議じゃない。そこでとどまらず、ズレた自分を押し通したのは彼女自身だ。

 

「残念ですねぇ、マッハちゃんはこっちの方が生きやすいと思うのに。辛くなかったですかぁ?弱い個性と両親にも疎まれて、それでも必死に鍛えて、鍛えて、見捨てられても意地張って。そんなにイイ子にならないでもっと好きに生きましょう?」

 

 話しながらもナイフを振るう手は止まらないし、ヒーロー科のみんなと比べても上位と言える速度で普通の(・・・)人ならあるだろう死角へと潜り込む動きを見せる。

 視線、体のかすかな動き、呼吸、それらすべてが欺瞞に満ちている。

 先手を取られたのは痛かったけど、見た目ではなく神経に気を付ければどうにかなる。そもそも私に死角は存在しないのだから、トガの動きはよほどミスをしなければ避けられる。

 無駄に動き回りながらも、トガの口撃は止まらず、動きもどんどん滑らかになり反応が追い付かなくなってきた。

 

「あぁ、でも好きな人がいるから今は幸せなんですかぁ?イイですねぇ、カァイイです。乙女です。羨ましいです。ワタシもアナタやお茶子ちゃんになりたいです。ねぇ、だからもっと血を頂戴?」

 

 リーチの差もあって、数か所ほど斬られてるけど、防御重視の素材を選んだおかげでコスチュームが少し破ける程度で済んでいる。

 多少、血がにじむ箇所があって、比例してトガの表情に熱がこもる。ボロボロ、血まみれなら男女問わずとか拗らせすぎでしょ。

 

「イイですねぇ……ワタシ、好きな人は最後は血まみれにしちゃうの。マッハちゃんは余り好みじゃなかったけど、とっても好きになれそう」

 

「悪いけど、私はノーマルなのよねっ!」

 

 こちらの集中を乱すつもりか、どこまで本音かわからないけど、いろいろ言ってくる。体育祭でトーナメントまで勝ち残ったから、私の過去なんて調べようと思えばすぐにアレコレ出てくる。

 その過去の積み重ねがあるから、いまのブルーアンバー(わたし)があるので、否定する必要もなければ、怒る必要すらない。

 優位を確信したか、動きがシンプルになってきたのを見計らって温存していた包帯に手を伸ばす。

 

「にしても、ずいぶんと調べたみたいね。さてと、何だかんだ、恋バナ?にも付き合ってあげたんだし、もういいよね?アンタはここで捕まえる!」

 

「嫌です。ワタシはもっと好きになる」

 

 さっきから時折、入中らしい電子の集まりが壁際に出たり入ったりしている。多分、支援のタイミングを狙っているのだろう。2対1ができないとは思わないけど負担は増す。

 好きに喋らせても、情報は出てきそうもない。幸い、血は回収されてないけど、落下で当たった箇所とか、トガとの格闘で多少なりともダメージはあるから応急処置もしておきたい。

 話は終わりと、包帯捕縛術を使ってトガの上半身を拘束する。

 

「あら、捕まっちゃいました。しかたな―――」

「逃がすわけないでしょう?」

 

 形勢不利と取ったか跳んで逃げようとしたところで、包帯経由でバッテリーから電子を送り込み、一気に意識を落とす。

 

「っと、あぶなっ!殺す気ぃっ!?」

 

 勢いが落ちたせいか、分断用に降りてきた壁にトガが潰されてしまうところだった。もう一度、引きずり出したかったが、入中の電子は余所に消えた。

 トガが倒された以上、こっちに構ってられないのだろう。

 

「さて、合流しないと。うぅ、イレイザーヘッドに怒られそうだなぁ」

 

 色々な反省点が頭の中を渦巻くけど、今は後回し。サー・ナイトアイかイレイザーヘッドがいるらしい集団に向かって、トガを背負って移動した。




話の勢いでトガヒミコ、逮捕w
HAHAHA、ヴィラン連合、死柄木と黒霧と荼毘、それとスピナーしか残ってねーぞ
え?トゥワイス?未覚醒なのにトガがいないで逃げ切れると思います?
とは言え、ちょっと弱体化しすぎた感はあるので、どこかで少しバランスを取ります。ならやるな?ごもっともです。

思いつくままに書いてたら、オリ主がレディ・イレイザーになってしまった。
捕縛布(包帯捕縛術)を戦闘で使い拘束、さらに個性を止める(強制停止(サスペンド))……あれ?
そして便利な技だからきっと強化する……あれ?
不思議~(違

直前の感想で予想されている方もいましたが、まぁ、バレますよね。
その予定はないですが、原作ルートに進んでも、物間と一緒にフィクサーやれそうですw
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