雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第68話 文化祭(1)

 10月。そろそろ暑さも和らぎ……と言うか、圧縮訓練からの怒涛の日々が濃すぎて、仮免取得してから1カ月しかたってないというのが信じられないある日。

 時期は学校によって異なるが、学生にとっては一大イベントが執り行われようとしていた。

 

「えー、文化祭があります」

「「「「ガッポォオォイ!!」」」」

 

 相変わらず「普通の学校生活」と言うものへの飢えがすごい。

 雄英文化祭、そういえばそんなものがあった。体育祭と違ってテレビですべては中継されないけど、サポート科の展示とかには例年、結構な取材が入るしテレビにも取り上げられる。

 

「文化祭ー♪」

「学校っぽいの来ましたー!!」

「何やるか決めよー!」

 

 話の流れ的にそういう事だよね。でもこれまでの経緯から、切島君はその決定に疑問があるようだった。

 

「先生!いいんですか?このご時世にお気楽すぎじゃあ!」

「……切島君、体育祭と同じだと思うよ?」

「あんときに比べたら、ヴィランの勢いが違うだろ。上鳴さんも知ってるだろ!」

 

 切島君の言葉を聞きながら、寝袋の準備を進める相澤先生。つまり、反論は聞いてない、と。

 

「その意見はもっともだ。だが雄英もヒーロー科だけで回っているわけじゃない。体育祭がヒーロー科の晴れの舞台だとしたら、文化祭はサポート科、普通科、経営科が主役。彼らにとっては晴れの舞台だ。そして全寮制への移行など、ヒーロー科主体の動きにストレスを感じている者もいる」

 

「それ、言われちゃうと何も言えねぇっす」

 

「あぁ、だからおいそれと自粛とは言えん。もろもろの調整の結果、今年は一部関係者を招くだけの開催になる。主役ではないと言ったが、各クラスで何かしら出し物をせにゃならん。今日は……それをきめて……もらう」

 

 熟睡始めたよこの先生。実は公安の目良さんと生き別れの兄弟だとかないですよね?

 まぁ、相澤先生だし仕方ない、と言うことで、百ちゃんと飯田君が教壇に。

 

「では、先生(寝た子)が起きるまでに話をまとめましょう。希望のあるか――――」

「「「「はいはいはいはい!」」」」

「ええい!なんて変わり身の早さ!そして無駄に風圧がすごいぞ!まずは上鳴君!」

 

 みんな鍛えてるからねぇ。挙手だけで風圧を生むってのもすごいけど。

 

「はい!メイド喫茶がいいと思います!」

「奉仕か!悪くない」

 

 具体的なイメージがどう想像してもハーレムだけど。まぁ、言うだけならタダだ。ヒーロー科、全体的に女子の顔面偏差値高いし。で、飯田君。君は一度、アキバへ逝こう?都内出身でなんでアレを知らないの?ある意味凄い。

 

「温いぞ上鳴!オッパ……」

「重り……あるかしら?」

「お、おぅ、梅雨ちゃん、こえぇぇ」

 

 梅雨ちゃん、私の知覚を超える速度で峰田を簀巻きにして吊るすとは……恐ろしい子!

 

「百ちゃん、お願い」

「え、えぇ……その、大丈夫、です……よ、ね?」

 

 まぁ、ナニをやりたいのかは想像ついたけど、風俗なんてやれるわけないでしょうに。空気が停滞している時ならギャグで済ませるけど、モノには限度が。

 そして次々出てくるカオスな意見。殺し合い(デスマッチ)、暗黒学徒の宴、ふれあい動物園、コント、ダンス、手打ち蕎麦とかまぁ、色々。みんな個性的でいいね、とはよく言ったもので。

 

「あと意見が出てないのは……茉芭さん、いかがですか?」

 

「う~ん、iアイランドでやったヴィランアタックで。ヴィラン役は私たちがやって、個性行使にはハンデで制限する形で」

 

 もう一個、コスチュームを着てのヒーローカフェ、というのも考えたけど、それこそ他科の反発がすごそうなので言わないでおく。

 

「……マッハ、実はストレスたまってる?」

「え?」

「発想が爆豪みてーだぞ」

「え゛っ」

「んだその反応は!……その手があったか

 

 そんなつもりはないんだけどなぁ、荒事に染まりすぎたかな?反省。なんかボソッと不穏な一言があったけど、まぁ、気にしないでおこう。

 

 

「不適切、実現不可、よくわからないものは除外しますね」

 

 爆豪君の殺し合い(デスマッチ)は論外。常闇君の暗黒学徒の宴ってわけがわからない。青山君の「僕のキラキラショー」は長時間のレーザー放射に耐えられるようになってから出直してこいと。峰田の提案?通るわけがない。

 

「ケッ!なら聞くんじゃねぇ」

 

 うーん、どうしてくれようこの戦闘狂。最近はだいぶ落ち着いたと思っていたんだけど。まぁ、いいか。

 

「残ったうちの郷土史研究発表って地味じゃない?」

「当日は少数の説明員を置けば遊べるし、悪くはない。地味だけど」

「そーゆーメリットもあるか、地味だけど」

「くぅ、総意には逆らうまい!」

 

 まぁ、やってもいいとは思うけど、地味なのは否定できないよね。

 

「食べ物系は纏められるんじゃね?」

「手打ち蕎麦とか、難易度高いよ?」

「やっぱりビックリハウスだよー!」

「いや、お化け屋敷系も結構被るぜ」

 

 一度意見が発散し始めたら、百ちゃんだけでなく、飯田君が必死に声を出しても聞いてもらえるもんじゃない。そうしている間に響く無情なチャイム。

 

「実に非合理的な時間だったな。お前ら、明日の朝までに決まらなかったら、公開座学にするからな」

「……後悔座学の間違いじゃあ?」

「ただの勉強じゃん」

「冗談っしょ」

「……冗談に聞こえるか?」

 

 どう割り引いても本気ですね。

 

「皆さん!今日中に出し物を決めましょう!」

「「「おーーー!」」」

「けっ、くだらねぇ」

 

 一応、電気と切島君……は補習だから瀬呂君に話を通しておこう。うまく煽って連れてきてもらわないと。

 夜、寮の共有スペースにインターン組を除く、全員が集まった。

 人数が足らないことに尾白君が電気に聞いている。

 

「あれ?上鳴さん以外のインターン組は?」

「補習。話し合いに参加できないから決定に従うってさ」

「上鳴さんは補習ないの?」

「うん、そもそも、放課後の活動が主でほとんど休んでないし」

 

 私の場合、朝夕の自主練が全部潰れてたぐらい。打ち合わせや八斎會突入日は公欠だったけど、補習が必要なほどに休んでいない。課題の提出で済んだ。

 緑谷君達はそれ以外にも複数日、公欠があったからね。

 

「……爆豪君は?」

 

 無理だったかな?と思ったが、瀬呂君と電気がしっかり連れ出してくれていた。うん、これで後々揉めるリスクは減るでしょ。

 当人が納得の上で委任してきた補習組はともかく、爆豪君が白紙委任なんてするわけないんだし。

 

「ほら、かっちゃん、折角なんだしみんなで楽しもうぜ!」

「そーだぜ爆豪。イケてるイベントにして、トップとろーぜ、そーゆーの好きだろ?」

「ケッ!」

 

 うん、お願いしておいた甲斐があった。

 全員が揃ったところで、百ちゃん、飯田君の仕切りで話し合いが再開された。

 

「さて、話し合いの続きをはじめましょう」

「委員長、まず俺から良いかな。相澤先生が仰っていた他の科のストレス。俺たちは発散の一助となる企画を出すべきだと思う」

「そうですわね。ヒーローを志す者がご迷惑をおかけしたままではいけませんもの」

 

 んー?なんかそれ違くないかなぁ?まだ混ぜっ返すには早いから黙っとくけど。

 

「あぁ?何言ってやがんだ。ワリィのはヴィランどもで俺らじゃねぇだろ。俺らがいつ、モブどもに迷惑かけて回った。日和ってご機嫌取りなんざ冗談じゃねぇ」

 

 ……と思ったら、爆豪君が即否定。まぁ、いいか。間違ったことは言ってないし。

 

「でもよ、俺らが狙われたせいで、全寮制に移行したのは事実だぜ?」

「なら普通科が狙われたら、オメェは普通科のせいで全寮制になったっていうんかよ?」

 

 まぁ、本質として間違っていないよね。でもホント言い方ぁ

 本当に口の悪さで損してる。礼儀正しくする、ってことにものすごい抵抗があるみたいだけど、そこはホントよく分らないなぁ

 

「……言わねぇなぁ、決めたのは学校だし。俺らは自分の意志で雄英に残ってるし」

 

「センコー共にはビビッて文句も言えねぇ臆病者(チキン)が、手ごろな俺らに文句言ってるだけだ。舐められてんだよ!どっちにしたって、そんなクソ共が、ムカついてる連中からのご機嫌取りなんざ受け取るかよ。ますます調子に乗らせるだけだ、そんな連中、ブッ殺しゃいいんだよ!」

 

「あぁ、それで文句があるならかかってこいってノリで殺し合い(デスマッチ)と」

「おう!暴れらんねぇ奴らだ。全力で個性ぶっぱして暴れさせりゃ、スッキリすんだろ」

 

 意外としっかり考えてた。

 まぁ、入学当初ならそれでもいいけど、今は練度の差で弱い者いじめにしかならないけどね。てか、ケガ人を量産するから絶対に許可下りないだろうなぁ

 

「まぁ、報道で名前が出たこともあって、目立つから元凶扱いってのは実際あるけどね。と言ってもそんなのごく一部でしょ。一連の事件で憂さ晴らししたいのはむしろ私たちだよね?」

 

「むぅ、そう言われてしまえば確かに」

 

 相変わらず、まじめで真っ直ぐに話を聞いてくれるけど、悪く言えば流されやすい。

 

「それと言うほど、みんなストレス感じてないんだよねぇ」

「あら、そうなんですの?」

「あくまで私の付き合いの範囲では、だけどね」

 

 まず、ヒーロー科の上級生は全寮化を大歓迎している。むしろなんで今更、もっと早くやれよと言う不満はあるけど。

 自主訓練の時間が増えることが何より大事。

 私たちの前の仮免試験だと、半分は受かる難易度だったわけで、ヴィランの活性化等で要求レベルが上がっているので、訓練時間が増える全寮化は歓迎されていた。

 

 サポート科も同様。主に発目さんとその同類なマッド連中だけど。寝食を惜しんでサポートアイテムを弄り倒して遊……んでる部分は否定しないけど、研究に没頭している。

 

 普通科と経営科は確かに全寮化の恩恵は薄い。ただ、少なくとも普通科1年は心操君を中心とした転入希望グループと飯田先生がその辺りの不満をなだめている。

 彼らも遅れを取り戻すため、今は全寮化を歓迎している。訓練時間もそうだけど休める時間が増えるから。インゲニウム・ブートキャンプが結構きついらしい。

 まぁ、心操君以外が合格水準に到達できるかは微妙みたいだけど。

 

 結局のところ、集団生活が苦手な連中の逆恨みなんだよね。

 ついでに最近はヴィラン犯罪が増えてヒーローや警察への批判が増えているから、それに乗せられてヒーロー関係者は無条件で批判していいと勘違いしてる連中とか、ヒーロー殺しの動画に影響された潜在的原理主義者とか。

 まぁ、それがそこそこな数になるから問題だけど。

 

「まぁ、どんな状況でも不満は出るから、ストレスがないとは言わないけど。それに、どうせなら自分たちも楽しみたいよね」

 

 ヒーローの卵として、ほかの人たちのためになるための企画、というのは素晴らしいけど。それこそ、みんなが事あるごとに言うように、学校らしく。学生らしく、行事はまず自分が楽しまないと、面白くない。

 

「ふむ!確かに自分たちのことも考えていなかったな」

 

 話が通しやすいのはいいけど、ホント、将来騙されないか心配してしまう。

 そんなわけで仕切り直し。爆豪君はソファーでふんぞり返ってるけど、言いたいことは言ったのか微妙に満足げだ。

 

「まず、飲食系だが、メイド喫茶、飲食と体験系の複合だろう?これは楽しいのだろうか?」

「俺は楽しい!」

「だーからー、そんなの温いぜ上鳴!やっぱりオイラのオ―――」

 

「いい加減にしようか?ねぇ、その続きのRは?まだ言う?」

も、もがもがもがもが(な、何でもないです)

「うん、全年齢対象でいいアイディアあったら言ってね」

もがっが(わかった)

 

 はい。よろしい。回収した包帯はごみ箱に捨てておこう。よい子は全年齢対象で提案しようね?

 

「でもさ、女子だけに負担がかかるのはどうかと思うぜ」

 

 切島君の意見もごもっとも。男女比で言えば男子の方が圧倒的に多いしね。

 話が脇道に逸れそうなところで、百ちゃんと飯田君が話を元に戻す。

 

「負担については別の案がなく、これにするとなったら改めてお話ししましょう」

「あとは他のクラスの出し物との被りが気になるな。上鳴さん、その辺はわかるかな?」

「経営科に伝手はないからそこまでは。でも飲食はどうしても被りはあると思うよ」

 

 イベント全体の仕切りは普通なら生徒会、なんだろうけど、雄英では経営科の有志が中心だ。ある程度のかぶりは調整するだろうけど、どうだろ?

 文化祭で模擬店、お化け屋敷は鉄板ネタ。特にメイド、執事系は男装女装、和洋の差はあってもかぶりが出ると思っておいた方がいい。

 まぁ、さすがに手打ち蕎麦を出すクラスはないと思うけど……ない、よね?

 

「まぁ、飲食はランチラッシュの品質を考えれば厳しいものがある」

「飲食以外の体験系となりますと、ふれあい動物園かビックリハウスですか?」

 

「あとヴィランアタックって、俺らは授業と変わねぇよな。自分達も楽しむって趣旨じゃちょっと違うし、やるなら景品とかつけねぇと。でも予算とか厳しそう」

 

 あぁ、それは確かに。セメントス先生の協力があればともかく、多分無理だしね。

 

「動物園は衛生面が厳しくね?それと、口田一人に頼りきりになるし」

「ぼ、僕はそれでも大丈夫」

 

 腕相撲大会を外したのは、他科では勝てないから、かな。まぁ、その判断は正しいと思う。

 

「コントとかはダメかな?」

「素人芸ほどストレスになるものはねぇからなぁ」

 

 響香の提案に瀬呂君からのダメ出し。そう言えば、響香の提案はコントだった。音楽好きは知ってたけど、お笑いはちょっと意外。

 

「みんなで踊ると楽しいよ?」

 

 まぁ、残っている中では一番ありだね。みんなで楽しめるもの、って意外に難しい。楽しいって思えても、内容次第で独りよがりになりかねないし。

 

「ダンス、悪くねぇんじゃねぇかな?」

「わっ、超意外な援軍が」

 

 飯田君のノートパソコンを操作して、轟君が表示したのはライブで踊るファンの姿。

 

「なんて言うか知らねぇけど、バカ騒ぎするやつ」

「轟から出る発想じゃねぇ、パーティピーポーになったのかよ!」

 

「違げぇ、てか、なんだそれ?他の科のストレスを発散させようっていう飯田の意見はもっともだし、これなら俺たちも楽しめる」

 

「でもよ、さっきも言ったが、素人芸でストレスをあたえるのってマズくね?」

「私、ダンス教えられるよ!」

 

「おー、確かに奇怪な動きだった青山が1日でステップをマスターしたな。芦戸の指導は確かだ!」

 

 やってたね。躍動感のある動きは凄かった。あれを見て素人芸と思う人はあまりいないと思う。

 

「待て!素人共!ダンスと言えばリズム!パリピは極上の音に乗るんだー!」

「音楽と言えば!響香ちゃんの楽器で生演奏!」

 

 峰田と透ちゃんがノリノリで提案してるけど、響香は微妙に戸惑ってる。ちょっと意外。音楽やってる人って、聞いてもらう機会は逃さないイメージあるけど。

 

「いや、三奈とかさ、みんなはヒーロー活動に根差した趣味じゃん?ウチのは、ホントただの趣味だし、表立って自慢できるものじゃない、っつーか」

 

「昼間のアレはそーゆーことか」

 

 三奈ちゃんが即興のダンスを披露して、音楽趣味がどうのと話をしてた時のことかな。あぁ、なるほど。ヒーロー活動と趣味の両立かな?

 何か言ってあげたいけど、こういう時の電気は止める必要ないからいいか。つくづく会話勘というか、押さえるポイントはしっかり押さえるのは得意だし。

 

「あんな楽器できるなんて、めっちゃかっけーじゃん!」

「耳郎さん!みんなを笑顔にできるかもしれない技だよ!十分、ヒーロー活動に根差していると思う!」

 

 おぉ、口田君まで。もうちょっと電気が押してくれてもよかったけど、そこで引くからなぁ

 

「お二人とも、それくらいで。これから先は―――」

「いや……ここまで言われて、やらないってのも……ロックじゃない、よね」

 

 

 それで話は決まり、届けは無事に受理された。




とりあえず、ここで一区切り。
爆豪の提案、デスマッチに理屈を補強してたら、思わず流されそうになったのはナイショw
戦闘系アトラクションはどんな理屈をこさえても、まず許可が下りないでしょうね。入試が対ロボなのも、対人戦への批判対策な訳ですし。
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