授業も終わり、夜、皆が食事も済ませた後、具体的な内容を詰める時間となった。
「文化祭まで1か月しかありません。早めに詳細な内容を決めてしまいましょう」
「まずは曲だよね!何やる!?」
「やっぱまず、俺らがノレる奴じゃねーと!」
「踊れるヤツー!」
具体的な曲名はあまり出てこない。これに関しては私は言えることが少ないなぁ
正直、歌番組なんてほとんど見た覚えないし。
「……基本的にはニューレイブ系のクラブロックだよね。ダンスミュージックだとホントはEDMで回したほうが良いんだけど、みんなは楽器やる気なんだよね?」
あ、みんなの頭の上にクエスチョンマークが浮かんでそう。
「にわか知識の知ったかぶりで悪いけど、あらかじめ録音した曲をパソコンとかシンセみたいな機材を使って、アレンジしながら流す方法ね。コレだと、曲は生演奏じゃないから現場に楽器が要らないみたい」
「あれ、マッハが意外に詳しい……って、調べたのか。フォローありがと」
知っている人が1人だけだと、専門用語でクエスチョンマークが飛び交うから、少し予習しておいてよかった。
「うん。パソコン使って~とかのほうは多少はサポートできるかもだけど」
「それは助かる。で、話し戻すと、ライブ形式でやるなら、ベースとかドラムやってた人いる?」
うん、そこで詰まるよね。百ちゃんはピアノぐらいは経験ありそうだけど。ジャンル違いすぎて発想がないかな。
「まず、バンドの骨子ってドラムなんだけど、ウチもギターメインでドラムはまだ練習中でね。素人に教えながら自分も練習だと、1か月はちょっとキツイ」
「あ、そういえば爆豪、お前、音楽教室に行かされてたって言ってたじゃん!」
「誰がやるか」
「ドラムってかなりムズイらしいぞー」
電気、そして瀬呂君、ナイス。その言い方だと「下手だから逃げてるんだろ?」って爆豪君は脳内変換する。操縦法、わかってるなぁ
「……か、完璧」
「才能マン!キタコレ!」
「爆豪がドラムで決定だな!」
響香の部屋から運び出されたドラムセットを完璧に叩いて見せた。音楽教室って、ピアノとかエレクトーン、ヴァイオリンってイメージがあるけど、ドラム教わってたのかな?楽器自体が大きくて音も大きいから、気にいるだろうし。
「仕方ねぇ……オメェら、やるなら雄英全体、音で殺せ!」
「「爆豪!!」」
「理屈がやばいけどやってくれるんだね!」
要のドラムが決まって、後のポジションを決める話になったら、やっぱり百ちゃんは楽器経験があったらしい。
「私、教養の一環で幼少のころからピアノを習っておりますが、役に立ちますでしょうか?」
「わぁ!それならヤオモモはキーボードだ!」
「シンセはクラブミュージックには必須だから助かるよ」
「頑張りますわ!」
「女子でガールズダンサーズやろうと思ってたんだけどなぁ、でも可愛いからいっか」
シンセが他にいても響香がバンドの方だからね。女子全員がダンサーって訳にはいかないでしょ。
「ベースはウチがやるから、後はギターとボーカルだね」
「じゃあ、それ以外の人はダンス?」
多分、ミキサーとかの操作、PAとかいう役割も要るから、全員ステージは無理かなぁ
それに他にも裏方は必要だろうし
「しかしそれだけで、盛り上がれるだろうか?」
「演出を加えなきゃ―!」
ものすごく楽しそうに場を仕切る三奈ちゃん。
轟君が出した動画と別のもので、ミラーボールとか火花に紙吹雪と言ったものが入り乱れる状態を見せてきた。
「空間づくりで欠かせないのが演出!」
「夢の国のパレードみたいにしようよ!」
「それの参加一体型!例えば麗日に轟と切島を浮かせてもらって、轟の氷を切島がそれをゴリゴリ削る!それで青山がミラーボールになってるから、スターダストみたいに光がキラキラ舞い降りる!ズバリ!チーム・スノーマンズ!」
レイニーデイといい、チームを作るのに嵌ってるみたい。あと何個、三奈ちゃん製チームが生まれるかなぁ?
まぁ、でも、体育館を借り切ってやるとなれば暑くなるし、冷やすのにもいいかも。
「僕が……ミラーボール?……イイじゃなぁい!!」
いいのか。まぁ、あの部屋だし。本人が納得ならいいか。
そこまで決まったところで、補習組も戻ってきた。
ボーカルは切島君、峰田、青山君がやりたがったけど、切島君の好みはコブシが効いたド演歌でロックとは深く広い谷があった。歌自体は上手だったけど。
峰田は何かよく分らない叫び。アレはなにをしたいのか。そんな音楽のジャンルあるのかな?
青山君は裏声でオペラっぽい何かを謡っていた。
まぁ、ぜんぶ、ロックと言う言葉に喧嘩売ってるよね。
結局、透ちゃんたちのリクエストで実際に歌ってもらった結果に全員が納得して、響香がベース兼ボーカルとなった。
「……ウチのことは置いといて……最後!ギター!できれば2本欲しい!」
電気と峰田が立候補したけど、峰田は体格でギターが持てず断念。
「子供サイズのギターとかはないの?」
「手持ちにはないよ。昔使ってのはアコギだからこういうのには使えないし」
まぁ、継続して使わないと無駄になるし、無理だね。機材が響香の私物頼みってだけでも問題なところはあるし。そして峰田が諦めたギターを拾い上げたのが常闇君。
「常闇、ギター弾けるんだ」
「なぜ黙っていた?」
「Fコードで一度挫折した身故、言えなかった。峰田、お前が諦めるなら、その分も俺が爪弾こう」
それに拗ねまくった峰田に「峰田のハーレムパートがあるならやる?」なんて、三奈ちゃんが甘い顔を見せる。まぁ、全員参加でへそ曲げてるのいると白けるから仕方ないけど。
とりあえず、エレキ系の楽器類ばかりだし、裏でミキシングや照明機材の操作も必要だから、バンド隊のバックアップは受け持つことにした。
深夜1時にまで及んだ役割分担の打ち合わせは何とかまとまり、文化祭までの1カ月間、放課後はほとんどの時間がこの練習に費やされることになった。
そして週末、休日、そして全寮制と言うこともあって学校全体が文化祭の準備で平日と変わらないところか、それ以上の賑やかさの中、珍しいお客様を迎えることになった。
1階の共有スペースがバンド隊の練習場になっていて。私はその練習を聞きながら、響香が作った進行表とライブに必要な機材のマニュアルを見比べて、どう操作するかをイメトレしていた。現物?一か月借り倒すにはクラスに割り当てられてる予算では無理なので。
「おーい、上鳴さん!ちょっと来て!」
「ん?どうしたの?」
「壊理ちゃんが来てる!」
切島君に呼ばれて外に出ると、ダンス隊メンバーのほかに通形先輩と相澤先生、それにかわいらしい赤いスカートの壊理ちゃんがいた。
「壊理ちゃん!って俺のことは知らねぇか」
「遊びに来てくれたんだ」
「……うん」
何でも、外の世界を知って笑顔になってもらいたいと、緑谷君がお見舞いの時に思いついて提案をしてくれたそうな。それは何ともグッジョブ。そしていきなり文化祭では刺激が強いということで、今日は慣れるためにも学校を訪れたらしい。
まだちょっと不安そうな顔をして通形先輩の裾を掴んでいるけど、少しずつ、普通の生活に馴染んで行けるといいな。壊理ちゃんの学校見学に緑谷君も付き添うとのことで、ダンス隊は休憩を挟むことに。
「一緒に案内してやってもよかったんじゃないか?」
「私はちょっと護衛しただけですしね。壊理ちゃんのヒーローはルミリオンとデクでしょう?」
「ま、それでいいなら構わんが」
ちょうど人もいないしと、今後の話を聞かされた。
今後の見通しとして、壊理ちゃんは雄英で保護する予定だという。個性の希少性に対する保護目的もあるが、万が一の暴走があった場合に止められるのはイレイザーヘッドか私のみと言うことがその理由だ。
「おそらく職員寮の空き部屋に入れて、様子を見ることになる。監視と指導について代行や補助をさせることもある」
「わかりました」
「……で、進捗は?」
遠隔ができるようになるのはすでに確定事項扱いですか。
「試すにしても実験台が、と言う問題がありまして。識別の精度は上がってきました。知覚領域も広がるごとに情報量が増えるので、増える情報に慣らしながら、と言った感じです」
「よし……俺に試してみろ」
「わかりました……
別の方向を向いて個性を発動させている。その相澤先生に対して、試した結果、逆立った髪の毛が一瞬とは言え戻った。
「できるじゃないか。距離はどうだ?」
先日の飯田君とのボランティアパトロールのことを思い返しながら、個性を全開にする。林間合宿からここまで二カ月少々ということを考えたら、驚異的な成長速度だと思う。
「見るだけなら500mは少し超えたと言う感じです。ただ距離がある分、精度が落ちそうです」
「ふむ……これなら警備の雑務も任せられるな。前に言った通り、可能な限り距離は伸ばせ。とりあえず、戻っていいいぞ」
「わかりました」
学校の警備?文字通りの
話はこれで終わりらしい。相澤先生は校舎の方に向かっていったから、遠くから壊理ちゃんたちを尾行するつもりだろう。
何というか、娘のはじめてのお使いを遠目に見守るお父さんみたい。
しかも心配性と過保護がセット。
個性で”見て”はいないけど、額の角が大分短くなっているから、暴走の心配はないか、暴走するようなエネルギーがない。まぁ、どこからそのエネルギーを生み出しているかが不透明なので、警戒は必要と言う事だろうけど。
でもやっぱり過保護。そう思って寮に戻った。
壊理ちゃんの見学は無事に終えたらしい。途中で物間君達と絡んだらしいけど、雄英の負の面、ねぇ……的確な表現だと思った。
その数日後、ちょっと予想外の事態が起きた。
「え?ダンス隊に加われ?PAどうするの?」
「演出隊が思いついた演出があって、中盤から青山を会場全体に行き渡らせたいんだって」
なんだその謎表現。青山君を行き渡らせる??
「んん?それってどういう意味?」
「ええと、観客が飽きないように青山君をただ吊り下げるんじゃなくて、あちこち動かしたくて。そのためにパワー系の緑谷君を引き抜きたいんだけど、今度はダンス隊が人数減っちゃって見栄えが……」
なるほど。口田君のアイディアか。そして移動するミラーボールと言うアイディアは確かに面白い。
「なるほど。ちょっと待って」
受諾はせず一旦保留。携帯で電話をかけるのは発目さん。
『はいはい、何ですー?今は文化祭にむけてドッカワベイビー202児の調整に忙しいですから、装備の調整は内容によってはできませんよー?』
「発目さんの可愛いベイビーに、文化祭で活躍の場があるんだけど他を当たろうか?」
『何をおっしゃいます!私のベイビーに御用があるなら、是非に!』
流石の掌ドリル。抜け目ないよね。まぁ、外部客が少ないからアピール度は低くなるかもしれないけど、目に留まる機会は逃さないと思ったよ。
「体育祭で使ったジェットパックあったでしょ。アレ、借りられない?電子版のプログラム詳細と間に合えばフライヤーに名前を載せてあげるから」
『お安い御用です!使われるのは
「いや、青山君。後でそっち行かせるから。んじゃ」
足らないモノは余所から持ってくればいい。事後承諾の形になったけど、百ちゃんの許可も貰えた。フライヤーの方はギリギリだったけど、修正はしてもらえることになった。
「と、言うわけで、空中に自在で動けると思うから、青山君は装備受け取ったら練習頑張って」
「メルシー、ロープで吊り下げられるよりずっとエレガントだよ」
「うん、それはよかった。それとダンス隊に加わるのはPAをどうにかできるならいいけど、緑谷君の引き抜きはちょっと反対。多分、壊理ちゃんにいい所見せたいだろうし」
「あぁ、あの子か。それもそっかー」
「んじゃ、後はマッハを引っ張り出すだけね!ヤオモモー!」
あ、やべ。うっかりダンスするのは構わないなんて言わなきゃよかった。シンセサイザーの演奏にもすっかり慣れた百ちゃんは、ミキサー兼任もどうにかこなせるというので、バンド隊のバックアップから私は解雇。百ちゃんの手が回りきらないだろう機材操作は、動物で人手を補う予定の口田君がもうひと頑張りすることに。
ダンス隊に加わる羽目になってしまった。いや、いいけどね。
夜。今日も文化祭の練習が終わった後、自身の個性訓練を兼ねて、テレビではなくより複雑なパソコンを操作してみることにした。
だいぶ操作も慣れたので、百ちゃんが淹れてくれた紅茶の銘柄でも調べてみるかと仮想キーボードで文字入力を行う。細かく複数への干渉はやはりもたつくなぁ
そして開いた検索結果の内にちょっと気になる動画があった。
「……ナニコレ?」
動画としての面白みは皆無。迷惑系配信者と言うか、小物のヴィラン。
ただこの時期に思わせぶりは犯行予告、と言うのが気にかかるので、一応、相澤先生にはメールを送っておいた。
心配しすぎだとは思うけど、その万が一を超えてくるのがヴィラン。それに備えるのがヒーロー。用心しすぎであることを期待して、眠りについた。
緑谷のステージでの出番を削らないように考えたら、文化祭が危なくなるこのジレンマw
ただジェットパックについては、思い出してもよかったと思うんですよね、特に緑谷は。体育祭であれだけ助けてもらったんだし。
まぁ、実はジャンクの山に埋もれてて使えない状態かもしれませんがw
なお、基本的に全周囲視界はオリ主を中心に円形に広がります。
距離が増えれば、その面積もガシガシ増えるので、獲得経験値がバグる……と言うことにしておきます。まぁ、不意打ち防止と捜索以外には使い道が薄いんで、雑に増やしていく予定です。