ヒーロービルボードチャートJP下半期の発表の翌日、九州にエンデヴァーの姿があった。
その前には街を案内するホークスの姿。
「異能解放!ばんざぁぁぁぁ……」
自分の勤めていた会社にテロを働こうとしていたヴィランを瞬時に仕留めながらもその足は止めない。エンデヴァーが視線を向けた先には、追いついてきて事後処理に当たるホークスのサイドキック達の姿。
「エンデヴァーさん、好きな食べ物とかあります?”ヨミトリ”の水炊き、スゲェ美味いんですよ。鶏の味がしっかり出てて。焼き鳥とかもいいですよぉ、癖になる」
言いながら、リードを振り切って横断歩道へ飛び出した犬を救い、重い荷物に苦労していた老婆を手伝う。足を止めたらあっという間に人だかりができ、ファンサービスにも余念がない。
エンデヴァーとしては、正直、気に入らない若造ではある。だが同時に、現代ヒーローのあるべき姿として感心するしかない点もあった。
もっともそれが自分にできるとは思えない。意を決して己のファンと思しき少年に話しかければ、「エンデヴァーはファンサなんてしない!」と血涙まで流されて否定される始末。
食事の場ではキャラじゃない、と笑われる始末。
「エンデヴァーさん、食べないんスか?それ貰っても?」
「卑しいな、好きに喰え」
「どーも。欲しいと思ったらどうにも我慢できなくて。体育際の後も、息子さん、指名してたんですよ。ナンバーツーの息子なんて肩書、欲しいじゃないですか。でもまぁ、今となっちゃ、ツクヨミが来てくれてよかった。焦凍君、仮免落ちてブランドに傷つけちゃいましたしね。
あぁ、でも、ちょっと惜しかったかな。あの電話、ナイスアシストでしたね。焦凍君が言ってた子達、1人は士傑みたいだけど、そっちも欲しかったかも。今年の1年は雄英に限らず豊作ですよねぇ」
「雄英出身でもないのに詳しいな?」
「見聞が広いんです。1人は医療系に行くみたいだから無理として、爆豪君とかどうです?結構いいライバル関係みたいじゃないですか」
「ふん。奴はベストジーニストに義理立てしてるらしいから、貴様になびくとは思わんぞ」
その情報はホークスも知らないと、意外そうな表情をする。意外に親子で話をするようになっているのだと、同時に感心もしていたが。
もっともこちらはこちらでホークスの認識と実態はややずれている。近況については轟焦凍からは兄の夏雄、姉の冬美が主に聞き出していて、エンデヴァー自身はまた聞きのことが多い。
既読スルーの比率が減っただけでもマシになったのだ。
「ありゃ、意外に真面目。なんつーか、息子さんより性格似てませんか?実は隠し子だとか?」
「貴様……いい加減にしろよ」
自分はあそこまで粗暴ではない、と、10人中7,8人は突っ込みを入れてきそうなことを考えている。
エンデヴァーも体育祭は現地で見ていた。ツクヨミと言う名はもちろん、他に名前があがった者も心当たりはあった。
名前の出なかった1名はそれこそ因縁浅からぬ、と言う面があるが、同時に名前が出ないことに安堵もする。
ツクヨミ、常闇踏陰はインターンでホークスについた。おそらく、言葉巧みに本人も気づかぬままにスパイのような真似をさせられているのだろうとあたりを付けている。
事実はもっと酷く、情報が欲しいとはっきり言った上で、聞き出せる限りを聞きだしているのだが。
「あぁ、そういえば、トガを捕らえたのって、その医療系希望の……えっと」
「そろそろ本題に入れ。こんな話に付き合うために九州くんだりまで来たわけじゃない」
わざとなのか、本当に知らないのかわからない。だが、エンデヴァーとしては色々な意味で話題にしたくない相手だ。ホークスの話を本題に引き戻していた。
「噂……脳無の目撃情報の件ですか。神野でオール・フォー・ワンもろとも格納されていた十数体を捕らえ、以降、死穢八斎會の事件でトゥワイス、トガヒミコが逮捕、その後、護送中のオーバーホールとその配下が襲撃されるなど、動きは確認されているが脳無の出現は確認されていない。アレが全部だったのか、他にもあるけどオール・フォーさんしか場所を知らない、ってのが大方の見方です」
「それは知っている。と言うより、よくその名を知ってるな。神野の関係者には緘口令が敷かれているはずだが」
「いやぁ、色々耳ざといもんでして」
悪びれず答えるが、ビルボードの順位は人気投票の分を除けば、公安からの信頼度の指標でもある。そちらの伝手だろうと言う事はわかる。
「ふん。で、チームアップを頼んだからには、確証があるんだろうな?」
「ないです。ガチで噂です」
悪びれた様子もなく、あっけらかんと言い切ったホークスに、ただでさえ細く短いエンデヴァーの堪忍袋の緒は切れた。
「会計だ!俺は帰る!!」
ブチ切れながらも、食事は奢ってくれるつもりなんだよなぁ、この人と、ずれた感心しながらもホークスはエンデヴァーを引き留めるだけの言葉を放つ。
「待ってください。脳無の目撃談、
マスコミが取り上げるほどの確証もなく、無秩序な破壊工作などの被害もない。ただ、混乱を起こさない程度に不安を煽っていると語っていた。
「そこで気になって、全国を飛び回って調査してみたんです」
そこでその手段を誇示するかのように背中の翼を広げて見せる。
帰ろうとしていたエンデヴァーだが、結局話を聞く羽目になっていると、内心舌打ちをしていた。
「調査?」
「多少の差異はあれど、似たような噂がまったく関連のない土地で発生していました。脳無と言うヴィラン以上に不気味な存在をみんな知ってるわけじゃないですか。どっかの阿呆が適当な嘘八百並べ立てて不安を煽って、それが全国に伝播してんじゃないかな、と。
さっき捕まえたヴィラン。「異能解放万歳」とか叫んでたじゃないですか。今、昔の犯罪者の自伝が再出版されてて、結構売れてるんですよ。ステイン同様、感化されちゃったんじゃないですかね。
社会が不安なときほど、そういうのが流行るっていうか、蔓延るというか」
言っている内容は重いが、表情に暗さはない。
そして状況こそ伝わったが、エンデヴァーはまだこのチームアップの、ホークスの目的を聞いていなかった。
「まどろっこしいな。結局、何が目的だ!」
「ナンバーワンの貴方に頼れるリーダーになってほしい。この噂話を検証して、「大丈夫だ」ってみんなに発表して安心させてほしい」
こればかりは本当だと言わんばかりのドヤ顔に、エンデヴァーとしては呆れの感情を覚えてしまう。若造が上を目指さずにどうするのだと。
「貴様……自分でやろうという気概はないのか!」
「ないです。俺は特に何もしない。要はナンバーワンのプロデュースですよね!
俺はもっと下で気楽にやってたいんです。1日だらだらパトロールして、今日も何事もなかったと床に就く。サイコーじゃないですか。エンデヴァーさん、俺はね、ヒーローが暇を持て余す世の中にしたいんですよ」
ヒーロー飽和社会と言われてなお、個性を悪用するヴィラン犯罪はなくならない。
ヒーローが暇な世界など夢物語。だが、この若造は本気なのだと、エンデヴァーは感覚で理解した。
だがそれに何かを言うより早く、長年実戦に身を置いた感覚が、今いる場が戦場に変わったと告げていた。
「……エンデヴァーさん」
一拍遅れてホークスも「何か」に気が付いた。
「お客様、お飲み物を―――」
「下がって!お姉さん!!」
窓の外から高速で近づく異形の人影が、窓を破って突入するのと、悲鳴を上げる中居をホークスがその身と翼で守るのは同時だった。
「ドイツ、ガ、イチバン、ツヨ、イ?」
「ホークス!避難誘導を!」
ビルの最上階にある料亭に全速で突っ込んできたヴィラン、改人・脳無。
「了解!エンデヴァーさんは!?」
「いたずらの類ではなかったか、何とも間のいいやつだ」
左手に装着したサポートアイテムから排熱のための熱気が噴出する。
「赫灼熱拳!ジェットバーン!!」
並のヴィランなら大火傷で致命傷となる威力で熱線をたたきつける。ビルの外に吹き飛ばされた脳無だが、そのまま落下することなく宙にとどまった。
それを見て、エンデヴァーも割れた窓から飛び出した。
「エンデヴァーさん!飛べるんですか!?」
「落ちないだけだ!ぬかるな!コイツはまだ動く!」
「コ、コンナ、熱、デ、オ、オレ、ヲ、コロ、コロ、セルト、オオモッタ、カ?」
話しながらジェットバーンで吹き飛んだ右腕と、胴の火傷が直って元の姿になる。強力な再生能力、これはエンデヴァーも見覚えがあった。
「その上で人語を話せる知性……ならば生け捕りにする!赫灼熱拳!ヘルスパイダー!!」
糸状に圧縮した熱線が脳無を切断するが、さして時間をおかずに再生する。
挙句、大技で動きが鈍ったところを突進され、逆噴射でも間に合わずにビルを斜めに輪切りにする手伝いのような真似をさせられる。
もっともそれがなければ、ビルにたたきつけられて絶命したであろうから、逆噴射を愚行と否定するのは難しい。
脳無との戦闘でビルが斜めに切り取られれて、このままでは崩壊の危機。そのまま崩れ落ちれば周辺被害を含めて大勢が死ぬ。
ホークスはビルから脱出する手段を失った上層部の人間を、自らの個性「剛翼」の羽で振動を感知することで居場所を特定。
羽の遠隔操作で全員をビル外に脱出させるという離れ業をやってのける。
単なる人気だけでナンバーツーにまで上り詰めただけではない、確かにその地位にあるにふさわしい実力だった。
「被害部分の76名、全員避難完了!」
「よくやった!後はみじん切る!赫灼熱拳!ヘルスパイダー!!」
ビル上層部が崩落して地上に被害を与える前に細かく分割する。物のついでとばかりに再生したばかりの脳無も6分割に再び切り刻む。さらにもう一撃で言葉通りのみじん切りにして、破片による被害の軽減を図る。
そのまま地上に落ちたら危険なサイズのものも多いが、可能な限りホークスが落下速度を緩めて地上や周辺ビルの屋上に落としていく。
代わりに、浮力を失ったか、バランスを崩して隣接するビルに落下していた。
「エンデヴァーさん!料理下手っすね!みじん切り荒いですよ!」
「つまらん粗探しより、動きに神経を使ったらどうだ!」
「いやぁ、羽を展開しすぎると、飛行性能落ちるんですよ!」
「そいつはすまなんだ!」
思っていたよりも互いの相性が良い、エンデヴァーは改めて口調は軽いが卓越した技量を見せるホークスに感心する。ナンバーツーは伊達ではない、そう思えた。
「エンデヴァー!ホークス!加勢する!!」
そこに他のヒーローも駆けつけてきた。炎の拳を飛ばすヒーローと、己の四肢をブーメランに変えて飛ばしている。
エンデヴァーが知らぬ地場のヒーローではあるが、脳無が回避を選択する程度には威力のある攻撃ができるようだ。
「ジャ、ジャマァ、クサッ」
脳無の体表から異臭がしたと思ったら、そこから新たな脳無が出現していた。オールマイトやシンリンカムイであれば、神野のバーから死柄木弔を連れ去った転移と同じだとわかっただろう。
新たな脅威の処理に、ホークスや他のヒーローの手が取られることになり、エンデヴァーと脳無の戦闘はそのまま続くこととなる。
「死人よ、もはや生け捕りは考えぬ」
状況の悪化にもはや生け捕りで済ませられる状況ではないと、エンデヴァーは己の個性を全開にして全身から激しく炎を噴出する。
「チカラ、ヲ、俺、ノ、新タナ、ツヨサ、ヲ、タ、タメサセ、テ、クレ!」
「させぬわ!逃げも再生もかなわぬ煉獄!その身に刻め!!プロミネンスバーン!!」
エンデヴァー渾身の一撃が脳無を焼き、誰もが終わったと思った次の瞬間。
「ザン、ネン」
己の首を引きちぎってプロミネンスバーンの有効範囲から逃れた脳無の一撃が、エンデヴァーを撃墜した。
―――Side:轟焦凍
『適当なこと言うなや!クソテレビ!まだ炎が上がっているやろ!
おらん象徴の尾っぽ引いて、勝手に絶望すんなや!
今!俺らの為に!命、張っとるんは誰や!!ちゃんと見ろや!!』
『ガチすぎや!もうやめよや!はよ逃げよって!』
ただ、それでも、親父を、エンデヴァーを見て応援してくれていた人がいた。
「……親父」
再び立ち上がり、全身から炎を噴出させて脳無を追う。親父の個性「ヘルフレイム」は体内に熱がこもり続ける。すでに意識を保つのも限界に近いはずなのに、それでも追撃をやめず、ホークスの羽の力も借りて、炎の翼を背負い、上空へと昇っていく。
「……見てるぞ!」
もはや白色にまで到達した高温の炎で、脳無を焼き尽くし、地上に堕ちる。
視界が晴れたとき、脳無の亡骸を背に、最後の力を振り絞ってのスタンディング。
『エンデヴァーーーー!立っています!勝利の!いえ!始まりの!!スタンディングです!』
それはオールマイトのようでありながら、全く異なる頼もしさを感じさせるスタンディング。
安心したら力抜けて、その場にへたり込んでしまった。
安堵と興奮、それが混ざった感情に戸惑いながらも、この日、親父は真のナンバーワンになった。そう思った。
ただひとつ、最後に現れたヴィラン連合の荼毘……望遠、しかも温度でいえば、白炎を上回る蒼炎で視界が塞がれたから、何をしていたのかはさっぱりわからない。
けれど、
―――Side:荼毘
ははっ、すげぇなぁ、さっすがナンバーワン。氏子さん自慢のハイエンドを倒しきったか。予定とはちょっと違うが氏子さんも喜んでたし、上首尾だろ。
お気に入りの個体なのか、回収したいってのは勘弁して欲しいけどな。
「よぉ、はじめまして、かな?エンデヴァー」
適当に強いヤツ、と言っておいたらエンデヴァー。まぁ、ちょうどいいか。テストとしては上出来だ。超再生にちゃんと考える頭があれば、ナンバーワンに匹敵する。
他のヒーローが来てるが、今は邪魔だ。無駄な殺しは面倒なんだ。ひっこんでろ。
「……貴様、ヴィラン、連合か」
「あぁ?そーいや、まだ手配かかってなかったな。ヴィラン連合の荼毘だ。凄かったぜナンバーワン、ちょっと話そうぜ?折角の機会だし」
消耗で立つのも無理って感じか。いっそここで殺すか。今際の際に名乗ってやりゃ、ちょっとは絶望して死んでくれるだろ。もっと持ち上げてから方がいいけど、これを逃すのも勿体ねぇ
「ぐっ」
「エンデヴァーさんは休んでてください。俺やります。ザコ羽根しか残ってないけど、時間稼ぎぐらいは……」
ホークスか。羽根も焼けたなら、もうエンデヴァーを燃え上がらせることも出来ねぇだろ。今のお前に用はねぇんだよ。
「おいおい、勘弁してくれよ。そこの脳無を回収したいだけなんだよ。オレ、体弱いんだ。勝てるわけないだろ……満身創痍のナンバーツー相手に、っ!」
二人まとめてこんがりトーストにしてやりたかったが、俺の炎の壁を越えて突っ込んできたイカレ野郎がいやがった!どこのどいつだよ!!
「ニュース見てスッ”跳んで”来たぞ!面白れぇことになってんな!エンデヴァー!ホークス!!」
ミルコかよ!フィジカルモンスターの戦闘狂相手じゃ分が悪い。ち、ナンバーワンになったとたん、ツキが回ってんのかよ。胸糞ワリィ
「聞こえてたぞ!お前、連合だってな!蹴っ飛ばす!!」
「ちっ!ミルコ……ったく、お楽しみはこれからだってのに。しゃーねー、その脳無はやるよ。氏子さん」
同時に口から出る泥。
「話は今度だ。またな、ナンバーワン。精々頑張れ。死ぬんじゃねぇぞ、轟炎司ぃ!」
「今、話してけっ!」
次の機会、追加の脳無は貸してくれねぇだろうから、ヴィランをガンガン、くべるとするか。焚きつけるにゃヤクと金も要るな。手ごろな
次もよっく燃えてくれよ、エンデヴァー
戦闘中盤でフードちゃんが出した白脳無、何度も分割されてアレを出せるって謎すぎるので、ドクターが増援に送り込んだことにw
原作でも未登場の誰かの個性による格納の可能性が高いですけど、コンプレスの個性だと本作では採取してる時間がそもそもないだろうと、念のため改変してます。
フードちゃんに嗅覚があるのかは不明ですが、まぁ、あることにしておきますw
対ハイエンドは最後は若干端折りました。だって戦闘の流れ自体は原作ママなので、原作を見た方が間違いなく面白い<マテ
特にアニメの方は音の使い方が秀逸でしたよねー(個人の感想です