とりあえず、短距離でよいのであれば持続性のある遠隔操作に目途がついた。まだ練度不足の感はあるが、進捗状況の共有を兼ねて相澤先生、オールマイト先生に面談を願い出ることにした。
「……以上の様に、距離は今のところ確実を期すなら、肉眼の見通し距離が良いですが、個性に対する遠隔操作の目途は立ちました。その上で、今後のトレーニングにも影響しますので、何をさせたいのかを具体的に伺っておきたいと思いまして」
そういうと、相澤先生は当然だという顔、オールマイト先生は何というかあきれ顔だ。
「そ、それはまた、早いね。
「ありがとうございます」
「言いつけは守っているようだが、長距離の方は感触はどうだ?」
当然の疑問なんですが、その辺が難しいんですよねぇ
「見える距離と操作できる距離はやはり乖離がありますが、練習するしかないですね。距離と精度の両立、複数同時操作、と言う点ではB組の
体の一部なら、感覚だけでどうにか動かせる。取蔭さんにしても分割した体はあくまで自分の体の一部だし。その辺の感覚は言語化するのが難しいし、人それぞれだからなんとも。
電子を自分の体の一部と思えれば……思えるかな?自分の体内にも当然、電子はあるのだけど。
「ふむ。訓練方法は考えんとな。それもオールマイトの依頼次第ではあるか。で、どうなんです?」
オールマイト先生はそれに対して少し考えて、ためらいがちに口を開いた。
「これについては、口外はしてほしくないが、ある個性とわれわれの意識を接続できるかを試してもらいたい。人数は、茉芭少女はもちろん施術者になるので当然だが、5、6人と思って欲しい」
多分、オールマイト先生、サー・ナイトアイ、緑谷君が確定で、相澤先生と私、場合によって通形先輩、かな?フルフォルムが何か面白……もとい、おかしな変化でも起こしたのだろうか?
私の成長を待てる辺りは、緊急事態と言うわけではなさそうだけど。
「……個性と接続……精神感応系ならマンダレイさんのほうが良い気がしますが」
「はははは、普通はそう思うのも無理はないが、そこはその場で話すことになる、と思う」
「マンダレイの個性は一方通行だからな。要求に合わないという事だろう」
問題は、そこまでの練度を得るための訓練をどのように行うか。
「最悪、手でもつないでもらって有線接続のイメージでどうにかなるかもしれません。もし都合が合うなら、一度、最小限の関係者で実験をさせてください。正直、実現可能性を探ってばかりだとどうにも」
「……前向きに、検討するよ」
「ふむ……少々逸脱した依頼だとは思うが、まぁ、いい。索敵としての距離伸ばしは今後も必要だが、元が副産物だ。やらせておいて言う事じゃないが、それだけに拘るなよ?当面は個性への干渉は見通し距離で負担の軽減、複数同時処理を中心に取り組め。長距離や誤爆での影響を踏まえての
近距離かつ複数同時か。それならどうにか目途が付けられるかな。
ただ、オールマイト先生の要求を叶える前段階でしかないのがなんとも。
夜、自室での勉強を切り上げて、すっかり習慣化しつつある「モーレツ!プリエア」シリーズ視聴中。最新の10はだいぶ前に見終わって、自分が子供の頃に放映していたシリーズを見てる。
前と違って毎日リモコンレス、キーボードレスじゃないけど。見ながらこうして、考え事もしてるので、息抜きになっているか微妙なところだが。
このシリーズ、私としては想い出補正もあって好きだけど、壊理ちゃんは監禁中にこのシリーズのオモチャを与えられたりしてたから、どうだろう?
機会があればアニメとかも一緒に見てみよう。
それはともかく、他人の個性と人の意志を接続、と言うのは何ともファンタジー。参考になりそうなのはマンダレイさんのテレパスだけど、あれはいったいどういう仕組みか。
一方通行だけど、選択的に通話対象を選べるとか、他人を対象にできる個性として興味深い。合宿の時に今と同じ精度で”見る”事が出来ていたらもう少し、とか思わなくもないけど。
ただ参考にするためだけにプッシーキャッツに接触するのも難しい。冬シーズンの到来で、山岳救助は頻度が減る分、深刻度は増すだろうし。
結局のところ、遠隔干渉の威力と精度を上げるなら、自分の一部としての電子を外に出すとかを考えないといけない。ドローンとかいっそファンネルって、その辺もアニメか。
それに機械は所詮、機械だしなぁ
こういうとこは私の頭が固いのかもしれない。
うーん、自由電子なら離れていてもどうにかしやすいんだけど。だからサンダー・ブレイカーとか、入学前に技として作れたわけで……子供の悪ノリってすごいよね。
その上で、人と個性の接触と言う無理を通すのならどうするか。
「んー、もういっそ個性をその人と分離して、一つの人格として考えれ……ば、ん……?そーいえば、何か人のイメージを感じたことがあった」
あった。確かにあった。緑谷君の個性に触れたときに2度、別の人を感じたときが確かにあった。それぞれ別の人と言うのが不思議だけど。
「個性に、ご先祖様の意志でも宿ってるのかな?……変わった家系……あ、ダメだ、眠い、寝よ」
これ以上は思考が迷路だ。一旦寝て、リセットしようとベッドにもぐりこんだ。
夢を見た。なんだかよくわからない夢。
あっちフラフラ、こっちふらふら、広いおうちにたくさんの扉。覗いてみてもがらんどう。見上げると、お友達はみんなくぅくぅ気持ちよさそう。でも起きてる私はさみしくなってまたふらふら。お部屋に入ってみたいけど、扉が通れない。
どうしよっかな?とおもったら、すいすい通れる道があった。ちょいッとくぐってみるとがらんどう。他のお部屋もからっぽっぽ。さみしいよぉ
よし、通れる道があるからとなり行こう。起きてる人はいないか、探検だ。
仕切りは邪魔だけど、どのお部屋も細い道が通ってる。壁を抜けるのは大変だけど、こっちはすいすい。私凄い。
ひょいッと抜けて、やっと誰かがいたけど、何か嫌。これは嫌。見てるものがイヤ。ぺちっと嫌なものをもっと嫌にするモノを退治すること数度、諦めて寝た。私は勝った。たぶん。えっへん。
ちょっと、おいで?って言われてる気がするお部屋もあるけど、今欲しいのはちょっと違う。またこんどー、それに君はもっとふわふわのおにゃ子がにあうのれふ。あぁ、夢の中でも眠いってなんだろ。ベッドはどこだっけ?
そのあとも、あちこちふらふら。別に嫌なものはもうないけど、心地よいものもない。みんなくうくう、ぐうぐう夢の中。なんかこわいお部屋もあったから、そこはみない。何だか面白くない、もう帰ろう、そうだ私は眠いのだ。そんなときに何か心地よさげなモノを見た。
良い気分で、私は夢の中でそのよさげな寝床で再び眠りについた。
「……なんか、ものすごい、変な夢見た気が……」
ほんのり頭が重いが、まぁ、寝起きだ仕方ない。けど今日の個性訓練はやめておこうか。また倒れたくないし。水分補給をして朝のトレーニングをしようと二度寝の誘惑を振り切った。
この日、朝食の場で峰田が何か騒いでいたけど、いつものこととスルーした。
今日も夢を見た。わたしがふたり、これなら寂しくない、と思ったのかわからない。でもやっぱりわたしはわたし。大きいわたしはくぅくぅ寝てるし。自分じゃだめだとフラフラしだす。私はこんな人恋しい子だったろうか?
やっぱりふらふら。でも、今日はわるものを退治したら、心地よい寝床へまっしぐら。この道はいいね。遠くまでいけそう。
って、ちょっとまてわたし。私の寝床はここにあるんだけど、そっちは迷惑だからやめなさい。
えーでも、安心して寝られるのはいいことよー、おっきい私の所に戻るの疲れるし―って、夢のわたしはふらふら進む。昨日見なかったお部屋も見たけど、くぅくぅ寝てて、悪くないけどちょっと違う。やっぱり私はこっちがいいらしい。でも今日はなんだか苦しそう。額に手を当てると、なんだか落ち着いた。良いことをした気になった私はそのまま深い眠りに落ちた。
2日連続で奇妙な夢を見た。やっぱりちょっと頭が重い。
目覚まし時計に起こされて、頭痛が直りたてのような頭の重さに念のため体温を測る。寝起きの割に高いけど、まあ、平熱。
「う~ん?気持ちだるいし、今日も軽めにしておこう」
ともあれ、時間は有限。水分を取って体操服に着替えると、頭の中で朝の自主練メニューを体調不良時の軽いものに変えつつ、体内の神経を個性で探る。
「別に、体調不良って訳でもないけど、念のため」
いつものストレッチ。ただ、やる予定だったランニングを削る分、少し長めに。体の動きに合わせての神経の把握。
過剰訓練は控えるように言われてはいるが、これはもう完全に習慣化してて負担にすらならないので。それに体調を把握するにも良い。
朝の自主トレとしては強度軽め、でも普段より増量のストレッチをこなして、シャワーで汗を流す。
髪を乾かしてロビーに戻ったころには他のみんなも朝食に降りてきた頃合いだった。
「ホントだって!出るんだよ!この寮!」
「いやいや、新築半年たってないんだぜ、ここ」
なにやら朝から元気わめいている峰田が五月蠅い。なにが出たのだろうか?家庭内害虫?でも男子のほうは共用ミニキッチンなんてほとんど使ってないと思うのだけど。
あー、でもカップ麺のスープとか流してたら、結構汚れてるのかも。そうしたら虫が湧いても仕方ない。
女子側は皆ちょこちょこ使うし、対策しておこうかな。
「おはよ、なんか朝から騒がしいけど、なにかあったの?」
「おっはよー!聞いて聞いて!峰田が見たんだって!」
三奈ちゃんが面白そうに胸の前で手を下げて「ヒュードロドロ~」と。
「はあ?お彼岸はとうに終わったしもう冬だよ?」
「いや、マッハ、それ季節関係ないんじゃ?」
否定してくる響香はちょっと顔色が悪い。そういえばホラー系ダメな子だった。
「おはよう、峰田君。何か顔色悪いけど、大丈夫?」
「緑谷~、聞いてくれよ!お前ならきっと信じてくれる!」
瀬呂君や切島君が信じてくれないものだから、緑谷君に泣きついて何が起きたかを話し始めた。
「いや、ちょっと朝からホラー話は勘弁」
本気で嫌がってたので、最速で食事を済ませて授業の準備と言って部屋に戻ってしまった。私はのんびり食べながら、聞くと無しに聞いていた。
「昨日よ、オイラが秘蔵のスゲェモン見てたんだけどよ」
あぁ、なんかもうその時点で先を聞きたくなくなってきた。朝からホラーも確かに嫌だが、朝から猥談は勘弁してほしい。
「あぁ、うん、中身は聞かないでおくよ。それで、何があったの?」
「いきなり、モニターが消えるんだよ。つけても何度も、しかも2日連続だぜ!」
「モニター、壊れたんじゃないの?」
普通そう思うよねぇ?早いものなら4~5年で買い替えだし。安物掴まされたんじゃ?
「いやいや、壊れただけじゃ、スピーカーからノイズに紛れてイヤ、とか、シネッとか、声っぽいノイズしねーだろ!何度か再起動してもそうなるし、諦めて寝たけど、起きたらさ、今度は携帯のバッテリー切れてるんだぜ!寝る前にフル充電しておいたのに!」
ん?……えっと、なんかすごい嫌な予感が。
「そーいや、俺のもだいぶ電池減ってたな」
「あ、僕のもだ」
話が広がると、どうも寮内の携帯電話、充電しっぱなしだったものを除いて大分バッテリーが減っていたらしい。ただし、瀬呂君、轟君、爆豪君と私は何の被害なし……えっと、まぢかぁ……
「な!きっと出るんだと!おい!飯田!お前郷土史研究とか言ってたじゃん!なんか曰くとか知ってね!?」
「こっわ、でもそんな携帯のバッテリー狙う幽霊なんているかぁ?」
居ないよねぇ、うん。てか、電気、多分、気付いてるでしょ?
あはははは。いや、まさかと思うけど。でもこれ、早めに言わないと大ごとになる奴だ。
「あー、ごめん、峰田とみんな、多分、それ私のせいだわ」
「「「「はぁ!?」」」」
そこからはつるし上げ、と言うわけではなく、夢の内容を一部端折って、個性制御の改善に、電子をすべて自分の一部と認識できたら、と考えていたら、無意識下で暴走したらしい、とのことで一応納得してくれた。
ついでにクラス対抗戦も近いので、この情報は秘密にしてもらうことに。
実害はほぼなかったしね。一応、相澤先生には報告することになったけど。
「お前……寝てても訓練するのか……程々にしとけよ」
心底可哀想な生き物を見る目をされた。いやまぁ、他の人がやったら同じ反応しますけどね。
轟君と瀬呂君が無事だったのは2人が男子側の最上階で、女子側2階の私とは距離があるから、で、一応納得してくれた。してくれたんだけど……
「そーいや、誰か横にいた気もしたけど……そうか、上鳴だったか」
とか、余計なことを言わないで欲しい。ぜったい、あとで三奈ちゃんと響香に弄られるぅぅ
ちなみに、峰田は二度と邪魔させない!、電磁波の侵入を阻害する素材の壁紙を張ったるとかなんとか息巻いてた。
もっとも私の個性は電子を操るモノであって、電波じゃないんだよなぁ
しかも侵入ルートが電線っぽいし。
壁越しに”見る”事も出来るから、対策が無駄って訳じゃないし、私としても見たくないから、好きに対策してほしい。
幸いにして、この現象、自覚したとたんに収まった。
ついでに遠距離、と言っても最大で寮の範囲ぐらいまでになるが、操作する精度が格段に向上した。さらに電子の通り道、つまり電線を使ってその先を見るという応用に道が開けたので結果オーライ……なんだけど、ご迷惑をおかけしました。
オリ主が多少暴走した回。
なお、オールマイトとの具体的なアレコレは7話ほど先になりますが、多分、皆さんの予想通りになると思いますw