グラウンドγ、工場区画を再現した演習場でA組、B組の合同戦闘訓練が行われることになった。対抗戦形式と言うことで、ブラドキング先生がかなり張り切っているらしい。
「見て見て!冬仕様!格好いいでしょー!」
「ええ」
「流石に寒くなってきたし、いいね」
三奈ちゃんのコスチュームは基本がレオタードだけど、ファーがついたジャケットとレオタード自体もデザインは同じだけど厚手のものに変わっていて寒さを軽減できるようになっていた。
同じようなファーが尾白君のコスチュームにもある。そういえば、あの尻尾は寒くないのだろうか?
「そういえば、尻尾って寒さ感じるの?」
「あぁ、うん。いくらかはね。かといって、あまり保護しても動きづらいし」
「なるほど。個性によってはいろいろ大変だね」
寒さ対策をしているのは他にもいる。
一番厳しそうな百ちゃんはコスチュームの色に合わせた赤いマントを羽織ってる。なんとなく、これはこれでアウトな気がするけど……通形先輩のコスチュームみたいに創造を邪魔しないコスチュームとか作れればいいのだけど。
私のコスチュームに関しては、上半身のレオタードを変えようかと思ったが、ジャケットの袖を降ろせば十分温かいし、静電気の集まりもよいので変えずじまい。
冬はいいね。個性伸ばし以前の戦い方でも動きやすい。
「入学時に比べると、みんなのコスチュームも様変わりしてきたな」
そう言ってる飯田君のコスチュームはあまり変わってないけど。夏場を全身鎧のようなコスチュームで過ごしたのは凄いと思う。
「緑谷も少し変えたんだな」
「うん、シュートスタイルの運用もだいぶ慣れたし、改めてパンチも強化していきたいと思って」
アイアンソールを導入した際に同時に強化していたグローブの保護機能をさらに強化したらしい。
フルフォルムでの強化も順調で、このまま順調なら進級までの間に100%フルパワーを解禁できるらしい。限界ギリギリでの怪我防止で保険として優秀な対策だろう。
正直、対戦相手が気の毒なレベルだと思う。先生方を数人、入れて丁度いいんじゃないかな?
「かっちゃん!かっちゃんも冬仕様に変えたんだね!」
「あぁ?文句あんのか、デク」
「ううん!そのスーツは保温発熱機能付き?汗腺が武器のかっちゃんにとって理にかなった変更だと思うよ!」
「褒めてんじゃねぇ!」
いやいや、褒められた時ぐらい素直に喜ぼうよ。
お互いのコスチューム変更でワイワイやってたら、微妙に挑発めいた声が聞こえてきた。
「おいおい、A組、ずいぶんと弛んだ空気じゃないか。僕らを舐めてるのかい?」
「来たな。ちげーよ!ワクワクしてんだよ!」
「ふん、そうかい。でも波は今、確実に僕らの方に来てるのさ。さぁ!A組!今日こそ白黒つけようか!」
しょっぱなからテンション振り切ってる物間君。何というか、一佳も大変だなぁ
「ねぇねぇねぇ、見てよこのアンケート、文化祭で取ったんだけどさぁ!A組のライブと、僕らB組の超・ハイ・クオリティ演劇!どっちが良かったか、みぇるぅー!?2票差で僕らの勝利だったんだよねぇ、USJから続く君たちの悪目立ち状況も変わりつつあるのさ!」
ふーん。ある意味で素直なんだけど、「ぼくしらべ」の文字がねぇ
母数の少なさとか、色々突っ込みどころはあるけど、指摘するのも面倒。私たちは楽しかったし、観客も楽しんだ。それで十分。
で、その辺にしておかないと、一佳が拳固めてるよ?あぁ、もしかして殴られたい人だったかな?
「そして今日!A組vsB組!初めての合同戦闘訓練!僕らがひゅ!」
「黙れ」
おや珍しい。相澤先生が物間君を止めるなんて。そしてブラドキング先生、物間君が物理的に締められるのは問題ないのか。
「今日は特別参加者がいます!」
「なんで、しょうもない姿は余り見せないでくれ」
そこで視線が爆豪君と峰田に行くあたりが、納得と言うか、物間君の時点で時すでに遅しと言うべきかと。なにせ、雄英の負の面だそうだから。
「ヒーロー科に転入を希望している、心操人使君だ」
仕上げてきたなぁ、流石、飯田先生と相澤先生。多分、フィジカルならヒーロー科の皆に見劣りしないはず。だからこそ、今日、ここに連れてきた。
「心操、一言挨拶を」
「心操人使です。何名かは体育祭で接しました。俺はあの場で、色々と自分が至らないことに気がついた。気が付かせてもらいました。
その差を埋めるために必死に、飯田先生、相澤先生に鍛えてもらい、今ここにいます。それでも、皆より、何十歩も遅れていると思う。
俺は立派なヒーローになって、自分の個性を人のために使いたい。
この場のみんなが超えるべき壁です。慣れ合うつもりはありません。よろしくお願いします」
若干まばらな拍手で迎えられる。いきなりゲストと言われて戸惑うのもわかる。
「おぉ、ギラついてる」
「引き締まる」
お茶子ちゃん、常闇君の感想は私も同意だなぁ
体育祭で話をした電気や飯田君からは好意的な反応だ。
「おぅ、心操!がんばれよ!」
「うむ!鍛錬の結果を見せてくれ!」
「初期ろき君を見てる気分だぜ」
「そうか?」
「ああ」
精々追いつかれないように頑張るとしよう。
今回の訓練、基本的に4体4で実施で、うち2回、それぞれのクラスに心操君が加わり5人になる。
「5人チームは数的優位を得るがハンデもある。状況想定としてはヴィラングループ全員の逮捕。お互いがお互いをヴィランと認識しろ!4人捕まえた方が勝利となる」
「うぉぉぉ!!ヒーローでありながら相手にとってはヴィラン。どちらになりきればいいんだ!」
「ヒーローでよろしいかと」
相変わらず、お堅いなぁ
逮捕した場合の投獄先、ゲキカワ据え置きプリズンて……
「可愛いと言えばかわいいけど、校長かぁ、期末試験を思い出すとなんかムカつく」
「あ、わかるー」
雄英って、この辺のセンスは割と悪ノリが多いよね。ことあるごとに自分をアピールする姿勢は、人気商売としてのヒーローと考えたら見習うべきかもしれないけど。いや、考えすぎかな?
「自陣近くで戦闘不能に陥らせるのが最も効果的ですが、そう上手くは行きませんな」
「4人捕まえた方……ハンデってそういう事か」
「え?どいうこと?」
いや、あの、電気?そろそろ本気で心配になってきた。勉強してる?頭動かしてる?
「あぁ、慣れないメンバーを入れる事。そして5人チームでも4人捕まえられたら負けとする」
「お荷物抱えて戦えってか、クソだな!」
「ひでぇ言い方止めなよ」
「いいよ。事実だし」
「徳の高さで何歩も先行かれてるよ!」
爆豪君と電気の掛け合いがなんとも笑える。第1試合で組む電気は確かに少し大変かもしれない。訓練とは言っても骨折ぐらいは普通に起きるのがヒーロー科の戦闘訓練。
体育祭以来の実戦にどの程度、動けるか……。
相澤先生と初代インゲニウム、飯田先生が鍛えてる時点で遜色ないと思っておこう。捕縛布については、今も訓練には参加してる。
初動が型通りなんでそこを突くことはたやすいけど、それ以外は割といいレベル……あー、うん、これ、かなりいいところ行くんじゃないかな?
「組み合わせはくじ引きな」
「各試合は講評までセットで行う。順番待ちの各チームはモニター前で見学だ。打ち合わせをしてもいいが、他の動きを見るのも勉強だぞ」
第1試合が梅雨ちゃん、電気、切島君、口田君、心操君の5人チームとB組が円場君、鱗君、
心操君は参加する先を選ぶ形でくじを引き、第1試合でA組、第5試合でB組に加わる。
「あ、オールマイトとミッドナイトが来た!熱愛?」
「やーめーて、年上は管轄外」
三奈ちゃんは相変わらずだなぁ
「さて、皆さん、見学しながら、少し打ち合わせをしましょう」
「うん、よろしく。百ちゃん、透ちゃん、常闇君」
「あぁ、よろしく頼む」
「がんばろー!」
私は次の第2試合、百ちゃん、透ちゃん、常闇君と私が組む。B組は一佳、小森さん、砂藤君、黒色君。向こうも集まって作戦会議をしながら見学するようだ。
第1試合は即開始だと他の試合より不利すぎるので、開始前の時間が多めに取られている。始まるまでの間、百ちゃんの仕切りで打ち合わせが始まった。
「まず、皆さんの気になる点、やりたいことがあれば、お伺いしたいですわ」
「黒色は俺と同じく、深淵を覗くもの。俺が相手をしよう」
うん、相変わらずの
「うーん、当たり前だけど、勝ちたい!」
「私としては目標の優先度、危険度の意識共有をしておきたい」
「優先度に危険度、ですか?」
この組み合わせ、正面からのぶつかり合いは不利だと思う。かといって、勝ち筋がないわけでもないけど。
「そう。向こうはパワー系2、広範囲攻撃ができる小森さんと、黒色君。前衛2後衛1遊撃1のほうが良いかな?こっちはオールラウンダーな常闇君がいるけど、全体的にパワー不足。真っ向勝負は正直不利だと思う」
「確かに、そう考えるとバランスが悪いですわね」
「だから相手に合わせた作戦とかより、誰から落とすか、の方が決めやすいかなと」
常闇君もフィジカルは鍛えているけど、生身でパワー系の個性持ちと真っ向勝負できるほどじゃない。そしてダークシャドウの弱点はすでに知られている。主導権を握ることがまず大事だけど、それは相手にとっても同じこと。
「
「捕獲優先度的には黒色君、小森さん。危険度では小森さん。未知の要素が大きいのが砂藤君」
砂藤君のコスチュームはシンプルなタイツスタイルだったけど、背中にサポートアイテムが追加されている。アレがどう影響するか。
「小森さん?個性キノコだっけ。そんなに怖い?」
「胞子が体に入ったら、と思うと怖い」
「う゛……それは嫌かも」
どれだけの種類のキノコを作れるか知らないけど、毒キノコとかうっかり吸い込んだら危険なものあるだろうし。
「ただ、最優先は黒色君。かく乱されたくないし。小森さんは事前対策さえ用意できれば、流れの中で捕獲すればいいかな」
「捕らえられる前提なんだ」
「個性への対策さえしてしまえば、多分、一番落としやすいしね」
「なるほど。ではそういたしましょう」
「異議なし」
話は一区切りついたところで、第1試合が始まった。そこからは当然、見学の方が話題の中心になる。
「蛙吹、仮免の頃より隠形の腕を上げたな。奴も闇に潜むか」
「よく見ればわかる程度だけど、アレは便利だね。偵察や潜伏に重宝しそう」
「あれくらいなら、ワタシと被らない。セフセフ」
そこまで透明であることにアイデンティティを求めなくても。
「心操さんのサポートアイテム、素晴らしいですわね」
「相手の声に似せるための調整アイテムかぁ、うん、知ってても警戒しないといけないとか、厄介すぎる」
塩崎さんの茨と
「お、電気、モノにしたんだ」
「何がですの?」
「ダッシュした時に足元にスパークが見えた。イオノクラフト効果の浮遊を一瞬生んで軽さと初速を取ったか、筋肉を無理に動かして速度を取ったかどちらかだと思う」
速さが加わると、電気は厄介だな。懐に入りこまれたら電撃を防ぎきれない。
そうこうしている間に口田君、切島君が投獄。そこからポインターの位置情報を……って、自分のデバイスの機能を梅雨ちゃんに指摘されてるのは、流石にちょっと甘い。
それでも心操君の洗脳が上手く嵌り、第1試合はA組の勝利で終わり、講評の時間となった。
「第1試合、準備がない分、ややドタバタした感があったな。まずは各自の反省を述べよ」
「相手に喧嘩する気がねぇと、俺の個性は役立てづれぇ、実戦だったら塩崎につかまった時点で殺されてた」
「そうだな。接近戦闘に誘えるためのセットアップ、切島は状況をもっと俯瞰して動け」
「押忍!」
「虫たちにもっと細やかな指示を出せるようにならないと」
「口田は自覚している通り、精度を今以上にあげろ。それと接近戦防御はまだ甘い」
「はい」
「俺は良かったっしょー?惚れるっしょー!いいよ、惚れてー!」
「上鳴!序盤の緩み!仲間がやられないと力を発揮できないのか!」
「……ぅぃ、すいません」
そりゃ、相澤先生の前であそこまで調子に乗ったら怒られる。宍戸君との対戦は耐えられると思っていなかったから反撃を喰らっていたし、色々勿体ない感じ。
「口田ちゃん、切島ちゃんを失ったこと。誰もかけることなく勝ちたかったワ。先生の言う通り、バタバタしちゃった」
「
「ケロ」
切島君と梅雨ちゃんの反省は実戦想定、このあたりのシビアさはインターン組だなぁ、と思う。
心操君はまず個性の使いこなしは誇っていいと思うけど、出来て当然、と言うことかもしれない。
「捕縛布……教わったことの1割も実践できなかった……悔しいです」
「いきなり出来たら苦労しない。
「……はい」
B組のほうはブラドキング先生が、宍戸君と塩崎さん、2人のどちらかを軸とした行動をとっていれば勝てた、と言っていた。
初見の心操君が厄介すぎた面もあるから、どう動くかが最適解なのかは悩ましい。けど、実戦なら全部が初見になるわけで。
私個人としては広域探知が可能なメンバーが複数いるなら、司令塔は別にしたい。そこは考え方の差だろう。
さて、もうすぐ出番だ。打ち合わせの続きをしよう。
クラス対抗戦、全部ランダムに組みなおすことも考えましたが、乱数の神様に任せると、どうにも面白い組み合わせにならなくて。
それに円場君とか、折角のフラグ?がなくなるのも惜しいので基本は変えずに行くことに。
その上で、砂藤ポジで第4試合……は勝ち確の上、何だかんだ爆豪との相性が悪くないのでイージーすぎるからパス。
A組唯一の黒星になった第2戦に青山と入れ替えて放り込みました。
本作B組とブラドキングは泣いていいと思います。
第3試合に放り込むのも考えましたが、轟と組ませるのも露骨すぎて却下。それにオリ主の現状スペックだと、一応はNG技扱いですが骨抜を「いしのなかにいる」とか出来てしまうので、これもあまり苦戦しない……