流石に壊しすぎと小森さんのキノコが消えるまでに時間がかかるので、戦闘エリアの移動が行われることなり、その間は休憩となった。
「お疲れ、マッハ!」
「サンキュー、響香。いや~、百ちゃんの指揮があると動きやすいわ」
「ケロ、でも
そこは否定できないね。別に功を焦ったわけではないけど。
「数的優位を確保した時点で、包囲網を形成するのは正しいですわ。常闇さん経由で報告もいただいてましたし」
「柔軟に対応してくれる指揮官で助かったよ。常闇君の最大重量を確認してなかったから、そこはお互いミスだったね」
「そうですわね。けれど味方でも切り札は伏せる、と言うことは今後もあるでしょうし」
百ちゃんの視線は私に向いてる。あー、まぁ、ね。これは見抜かれてるな。うん。先日の幽霊騒動の後あたりから、遠隔でもほぼ間違いなく個性への干渉は出来そうではある。ただ、まだイレイザーヘッドからは許可が出てないからね。
確実に実績を増やしていく感じで進めている。
仮に解禁されてたとしても、試合と言うか周りの経験にならないと禁じ手になっていたと思う。
『よぉーし!今度こそ意地を見せるのだ!B組骨抜チーム!第3試合、スタァァァトッ!』
「偏向実況やめろー!」
三奈ちゃんがブラドキング先生に抗議するが、それで聞くはずも無い。
開始早々、B組の鉄哲君が、施設をガンガン破壊しながら前に進み始めた。
「乱暴な方法ですが、誘い……でしょうか」
「かなぁ?考えなしにも見えるけど、時間短縮にはなるよね」
鉄哲君だから、多分考えてない。けど、探すの面倒だから呼び寄せようぜ、ってのは悪くない。
「B組メンバーに索敵持ちはいないし。角取さんの角がそういう用途に使えてもおかしくないけどねぇ」
「生憎と、そういう風には鍛えてないね」
百ちゃんとお互いそれぞれの分析をぶつけ合ってると、一佳が隣に腰掛けてきた。
「お疲れ、一佳。試合の話は今度、みんなで反省会でもやろう」
「あぁ、いいね。で、この勝負、2人はどっちが有利と見る?」
言われて少し考える。B組メンバーの個性も概略ぐらいは知っている。中途半端で終わったとはいえ、林間合宿以降は全寮化に移行したこともあって、お互い自主トレなどで顔を合わす機会も増えた。
クラス対抗戦の話が出てからは、お互い、あまり突っ込んだ話はしてないけどね。
さて、一佳の質問に考えを戻すと、結局は主導権がどっちに行くか次第としか。百ちゃんの予想としては、A組有利。
「索敵に勝る障子さんがいます。轟さんと飯田さんで先手を取れるA組有利かと」
「骨抜君が個性伸ばしの結果で、どの程度まで柔化できるか。それと、鉄哲君が誰を狙うか次第かな。情報が足らない骨抜君はいったん置いといて、轟君か飯田君を拘束出来ればB組有利。飯田君達は骨抜君を最優先で落とせば後は押し切れると思う」
体育祭の障害物競走では骨抜君にやられて順位落としたんだよね。林間合宿以降も個性伸ばしをしていれば、相当厄介になるっていると思う。
個性の相性的に飯田君を嵌めてしまえば、B組が押し切れるだろう。
「なるほどねー、そういう風に意見の軸が合わないことが多いから、そこを突くつもりだったんだけどな」
「第2試合の話は後にしなって。接触するよ」
鉄哲君が楽しく施設破壊に勤しんでたところに、轟君達が到着、包囲網を展開する。そこからの大規模氷結での拘束は轟君の得意技、と言うか必勝パターン。
『轟の広範囲攻撃を見事に撥ね退けたB組骨抜!さぁ、反撃だぁ!』
凄いな。柔化の範囲が広い。しかも複数個所を柔化させておけるって、かなりえぐい。
そこから轟君は鉄哲君、障子君は角取さん、尾白君は回原君、飯田君が骨抜君と分断されてしまった。
「懸念されていた形になりましたね。突破口はあるのでしょうか?」
「B組側が相性のいい相手をうまく分断したよね。一度引くなりして、無理やり相手を変えたいけど」
「それでしたら、飯田さんでしょうか?」
「ちょっと待ってよ。飯田の奴、骨抜に固められたじゃない」
それはその通りなんだけど、飯田君、インゲニウムを閉じ込めるのに氷はちょっと甘すぎない?
「うっそ!あそこから氷を割れるの!?」
「その気になれば、一佳もできるでしょ?」
「……出来るね。そう思えば甘かったか」
新技のレシプロターボと言うのは私たちも初見だけど、10分間の超スピードと言うのはすさまじい。速すぎて制御できないとか言う割に、器用に一撃離脱戦をやっているし。
その速度のままに回原君をプリズンまで一気に運んでしまった。
「轟君が拘束されてるのが痛いというか、飯田君もフォローが追い付かないね」
「よっし!行けポニー!!」
ブラドキング先生と同じく一佳がエキサイトしてるけど、角取さんは尻尾で拘束しにきた尾白君ごと、自陣のプリズンに突入。これで1対1。後は双方決め手に欠くというかグダグダの消耗戦になった。動けるのは角取さん、障子君のみ。
上空に逃げて時間切れを待った角取さんの機転で、第3試合は引き分けになった。
「障子君は浮力を得る方法が少ないのが勿体ないね、飛べればチャンスがつかめた状況だった」
「確かに。少し勿体ない結果でしたわ。今度、お話してみますわ」
「それがいいね。本当、勿体ないし。飛べるなら飛ぶべきだ、だっけ?」
「あぁ、我が師ホークスの言葉だ」
複製腕は数を増やすごとに強度が落ちるらしいから、それで羽ばたいて飛びあがるのは難しいだろうけど、体育祭や訓練でも滑空をするぐらいの強度があった。
自在に空中戦が出来る訳じゃないけど、それこそ、飛ぶ選択肢は確保したいね。
その辺は相澤先生の仕事かもしれないけど、どうにも惜しいよね。両チーム、行動不能になった人が多いので、第3試合の講評は後回しになった。
残り2試合で2勝1分と、クラス対抗戦と言う意味ではA組の負けは消えた。しかもA組最強の爆豪君と緑谷君がそれぞれ別の組で控えている。おかげで見る側としてはいくらか気楽に見える。
「おっ、もうこれラクショーじゃね?なぁ、イケんじゃね?」
ただ、電気はちょっと調子に乗りすぎな気がする。言ってることは同感だけど、それをあまり態度に出すのは感心しない。
「電気?物間君と同じところに堕ちたくなかったら、ちょっと自重しようか?」
「う、うぃぃ」
「どういう意味かな!?」
多分自覚はあるのだろう。笑顔が引きつってるし。
「そういう意味だな!気にすんな!鏡見とけ、物間!」
わざわざ煽る必要ないでしょ。勝ったと言ってもほんの僅かな差だったのは事実だし。そして切島君、意外とナチュラルに煽るね。まぁいいけど。
『ここまでA組2勝1分け!しかし!そのうちの1勝はほぼ心操のおかげと言うもの!ここで1勝すれば少なくとも最終結果をイーブンに持ち込める!気合を入れろ!
ほかならぬ先生自らが煽りまくってる気もするけど。別にA組を過度に貶めるような発言はないしねぇ
生徒への愛がちょっと重すぎるけど。
「そんでー、第4試合の予想は?」
「こればっかりは、悪いけど、A組有利と思うわ」
「ええ、青山さんは、スタミナ面が不安ですが」
第4試合、A組は響香、爆豪君、瀬呂君、青山君。B組が取蔭さん、泡瀬君、鎌切君、凡戸君。爆豪君は百ちゃん以上に主導権至上主義なとことがあるから、速攻をかけるはず。
開始と同時に、個性で作り出した爆薬内蔵の小型爆弾をメンバーに渡して、自ら先陣を切る爆豪君。とりあえずは腕のみで飛んでいるのは、速度に配慮してかな。
「随分と、響香を警戒してる」
「そりゃ、あのチームはテクニカルなのが多いから、位置バレは警戒するよ」
確かにそれもそうか。
「でも、あそこまで細かく自分を分けて、自在に動けるのは素晴らしいですが、消耗も大きそうですわね」
「やっぱり百は油断ならないよね。まぁ、確かにね」
「短期決戦で、響香を最初に落とすつもりなら、ありかな?」
テープで捕らえる蜘蛛の巣を作った瀬呂君だけど、そこを凡戸君、鎌切君の連携で逆手に取られる。なるほど、確かに待ちの戦術はこういう危険もあるか。
そこを救った爆豪君に、物間君が驚いているけど。
「あっれぇ?僕の目が変なのかな?彼、耳郎さんをかばったような?」
「かばったな。蹴ったけど」
「アイツは意外とそう言う奴だ。大丈夫だ、物間。お前の目
頭はアレだけどね。
地味に取蔭さんの分割数が減ってるあたり、やはり体力の消耗はあるのだろう。青山君のレーザーの弾幕で結構な数が落とされているし、なおさら消耗が早そうだ。
随分と連射性が上がってる。お腹が最後まで持てばいいけど。
更に一部を瀬呂君がテープで拘束して、本体に戻れなくしているし。
一瞬だけ、泡瀬君の個性でコスチュームごと工場のパイプに溶接されてたけど、これも青山君がレーザーで焼き切っていた。流石にそこでお腹が限界っぽいけど。
そして泡瀬君は、響香がハートビート・サラウンドで動きを止めたところを瀬呂君がテープで拘束。
ともあれ、後は個別に撃破され、勝負は5分少々で終わっていた。
『なんと、僅か5分!4対0でA組、完全勝利だぁ!』
「……うっそぉ」
「私としては、思った以上に青山君が活躍した」
「機動力を補った瀬呂さんのサポートも素晴らしかったですわ」
講評については、この日最高の評価だったんじゃないだろうか。
「必要以上の被害も出さず、捕捉からの確保も迅速。機動力、戦闘力に優れた爆豪を軸に3人ともよく合わせた」
相澤先生がサムズアップを見せるあたり、最上級の誉め言葉だ。前の緊急訓練に続いて、戦闘での成果が出たことで、響香も嬉しそうだ。爆豪君も完全勝利に満足げだ。
「過去の戦闘データと戦闘力の差を考えた堅実な作戦だった。だが、固めすぎて骨抜のような柔軟性に欠けた……」
罠を張る受動的な戦術で、結果的に主導権を爆豪君に明け渡したのが最大の失敗だと思います。直接戦闘では爆豪君に勝てない前提での戦術だったみたいだし、一概にそれが悪いとは言えないのだけど。
「あー、悔しいなぁ、みんな結構、必死に訓練したんだよ。インターン組とか強すぎない?」
「訓練してるのはA組も同じ。というか第4試合にインターン組いないし」
「いやでも、実戦経験の共有とか、刺激とかさ……」
「B組もインターンに行った人、いたよね?」
「何人かはね。
そう言えば忙しそうだから聞けなかったけど、イレイザーヘッドのサイドキックって何よ、あれ?」
おぉ、なんか新鮮な反応。そう言えば、全然説明してなかったね。
「ブラドキング先生からは聞いてないの?」
「高校生のインターンを受け入れない事務所からの協力要請に対する特例だって」
「うん、そういう話。事件の方はその関連」
「……続いてんの?」
「別の事情があって。就業がないから名目だけだし、タダ働きの方が多いかな」
壊理ちゃんのお世話がイヤと言うわけじゃないからそれはいいけど。
妹とかいなかったしね。お姉ちゃん気分を味わうってのは、電気がいたから別に新鮮味はないけど。
「ふぅん、どっかの誰かさんが、茨とひったくり捕まえたり、飯田と空巣捕まえたりで、ボランティアの方でもヴィランと戦えるかも!ってなって、そっちで活動したのも多いけどさ。アレ、意外と平和で……そもブラド先生がインターンはあまり勧めなかったからね。今日の結果がこれじゃ、また実戦経験がどうとかで荒れそう」
それをなだめる苦労を想像しているのか、がっくりと肩を落としている。気の毒ではあるけど、こればかりは頑張れとしか言えないなぁ
「相澤先生も同じと言うか、行きたい奴は勝手に探せ、ぐらいのノリだったし」
A組のインターン組は梅雨ちゃん、お茶子ちゃん、切島君、常闇君、緑谷君。あと、少々イレギュラーな形で私と、クラスの半数に満たない。刺激になったという点では否定しないけど、それならB組のインターン組も同様だと思う。
「第3、第4試合のA組メンバーはインターンやってないし。インターン経験の有無が今日の結果と結びついたわけじゃないと思う」
多分、数値化された個性出力はB組のほうが高いんじゃないかな。その辺が多分、B組全体の自信だったんだろうけど、そういうノイズに振り回されたよね。
「じゃあ何だったのさ」
「思うところはあるけど、教わる?自分で考える?」
「……言うじゃん。自分で考えるわよ。ったく、もうちょっとわかりやすくできない?」
さぁ?少なくとも拗ねて僻んだりするのは、拳藤一佳と言う女傑には似合わないとは思うよ。
「終わったらみんなで反省会で答え合わせしようよ」
「うん。小森とか、怯えて来ないかもだけど」
いつも思うのだけど、私、そんなに怖いかなぁ?
A:薄暗いところで常闇から分離した勢いで蹴りかかって、挙句に逃げようにも縛られてぶん殴られたら、普通怯えます。
最終第五試合は、原作主人公の見せ場ですし、1話使おうと思ってたけど……本作強化緑谷が苦戦するヴィジョンがまったく見えないので、複数視点になる予定。