話は少しさかのぼって12月に入ってすぐ。気が付けば年末である。
そうなれば当然、お祭りごととか楽しいことが大好きな三奈ちゃんが黙っていないわけで。
「折角みんなで暮らしてるんだし!クリスマスパーティーしたいー!」
「したいー!」
「それは素晴らしいですわ!私、お友達とのクリスマスパーティってはじめてですの!」
流石に楽団を呼んでどうこうは皆が止めにかかったけれど、それなりの料理を用意してパーティをやろうという話はすんなりまとまり、相澤先生の許可も取れた。
「折角だし、壊理ちゃんを呼ぶのもいいかもね」
「あ、それいい!」
まず間違いなく、クリスマスなんて祝ったことがないだろうし。楽しいことはいっぱい、経験してもらいたい。
「さて、そうなると料理とケーキかぁ」
「20人分プラスアルファだと、分担しても大変だよね。まずは注文できるか、見てみよう?」
「ケロ」
最低限度の料理スキルは全員あるから、分担して作ってもいいけど。
男子?寮に入って以来の食事を見てれば、大体の技量は想像つく。爆豪君は料理が結構できるのは林間合宿で分かってる。休日に自炊してる時は、かなりレベルの高いもの作っているし。ただ辛いもの大好きマンだし、積極的にやってくれるとはさすがに思えない。
「手間のかかる丸ごと鶏とか揚げ物は注文がいいね。というか、パーティメニュー丸っと頼めばいい気が」
正直、後片付けが面倒な揚げ物は寮でしたくないです。
「ケーキは?」
「何種類か選んで買ったほうが失敗はないけど……」
「えー、ケーキぐらいは作ろうよー、マッハの手作りケーキを食べた轟の反応が見たい―!」
顔色一つ変えず淡々と食べるに1票。三奈ちゃんが望むような面白展開は来ないと思うよ?
でも全部仕出しであとは食べるだけ、ってのが味気ないというのもわかる。
甘味ならシュガーマン、B組の砂藤君が一番なんだけど、B組でもパーティはやるだろうし。
「んー、ケーキ作りの道具、持ってきてるひとー?」
無反応なあたり、先が心配だなぁ
「じゃあ、家庭科の授業以外で経験はある人ー」
これには一応、反応があって、三奈ちゃん、透ちゃん、梅雨ちゃんの手が上がった。
「3号の型は持ってるけど、20人分プラスアルファだと、結構、時間かかるけど……」
「高い物じゃないから買ってもいいけど、どうしようか」
「種類が欲しいか、大物が欲しいか、かな?」
「むむ、色々な味……イイかも」
大きいケーキは見栄えがするけど、色々な味があってもいいだろうし。
んー、と、そうなるとあるものでどうにか……このレシピならいけるかな。
「とりあえず、3号で定番イチゴケーキと、チョコ系は1個どうにかする」
「ケロ、そう言えば、前にお部屋でガトーショコラ、ご馳走になったわ。美味しかったの」
「ちょっと焦げたけどねー」
レシピ通りにやれば失敗はほぼないけど、多少のミスはご愛敬ってことで。ただふんわりした生地を焼こうとすると、それなりに難易度が高い。
「種類と量が欲しかったら、土台だけ買うか、市販のロールケーキとかをデコってみる?他にはクレープ生地でのミルフィーユとか」
「あ、それいい!じゃあ、デコやるー!」
「私、クレープのミルフィーユ!」
それだけあれば、行き渡らないということもないだろうし、いいんじゃないかな?
料理の方も、業者が用意してくれているパーティプランが使えそう。当然、この時期にパーティをやることは想定してるよね。レンタル機材にあるチョコフォンデュとか、壊理ちゃんは夢中になるんじゃないだろうか?
値段もみんなで頭割りならどうにかなる、かな?
このあたりまでの話はおおよそ女性陣で纏め、男子に提案した。おおむね好評で、飾りつけなどは男子の方で手配することになった。
後は定番のプレゼント交換なのだけど、これについては一つだけ注文を付けさせてもらった。
「予算に下限と上限を決めておかない?手作りの場合は材料費で縛りを入れる形で。あと、実家の物を含めて私物の譲渡は禁止か市場価格を確認の上で」
「ん?マッハ、それって……あぁ、確かに」
「あぁ、そやね」
「うむ!確かに我々はまだ学生の身。節度が必要であるな!」
「な、なんですの?みなさん?」
皆の視線が百ちゃんに集まっているのに困惑しているが、流石にね。飯田君も賛同してくれたけど、贈るものの金額差で気後れしたくないからです。百ちゃんのティーカップひとつで、いくらするかなんて考えたくないしね。
そんな話が12月の冒頭にあり、そこからしばし。轟君の仮免事件やインタビュー演習が終わり、クリスマスパーティの日となった。
「「「「メリークリスマス!!」」」」
メインゲストの壊理ちゃんやオールマイト先生が遅れてて居ないけど、とりあえず1回目の乾杯ということで、軽く摘まむことになった。
全員が……と言っても爆豪君以外がサンタのコスを着ている。衣装自体は市販のものだけど、帽子の先にそれぞれの個性や趣味嗜好に応じたアクセがついている。
梅雨ちゃんならカエル、響香なら音符、百ちゃんが本とか。私のは、本物のブルーアンバーはかなり高額だから、透明な青い樹脂製のオブジェを付けている。
アンバーとして黄色の樹脂もつけようかと思ったんだけど、黄色と青の樹脂飾りって、なんか、ぼっちになる呪いが降りかかりそうな感じがして。青だけにしておいた。
「それにしてもツリー、これ、オールマイト人形はともかく、漢気て……」
この辺のセンスは緑谷君と切島君かな。それと電気、「No1ヒーローになる!!」はいいけど、七夕じゃないんだから……
やたらめったとヤドリギがあちこち飾られてるのは峰田だろうなぁ
クリスマスまで欲望一直線とか、救いがない。
「いいじゃねーか、マッハ。それにしても、新年早々から全員がインターンに行けって、雄英史上、最もせわしない1年生だろ、俺ら」
その言葉にみんなのインターン先についての話になってしまった。
「二人は継続してリューキュウのところ?」
「うん。響香ちゃんは?」
「社長、今度は受け入れてくれるといいんだけどねぇ、マッハ、なんか言ってた?」
「時間もなかったし、そこまでの話は出なかった。嬉しそうだったし、大丈夫と思うけど」
技を見せたいというのは喜んでいたし、仮免補講という雑務も終わったし、大丈夫じゃないかな?
「緑谷君は継続してナイトアイ事務所かい?」
「そのつもりだったんだけど……なんか事情があるみたいで。明日にその辺の面談があって、それ次第だって。ダメだったら、学校側で紹介してくれることになってる」
あぁ、はい。そういえば日程決まってたね。今日は夜更かしをしないように気を付けないと。
「大変だなぁ、それ。そーいえば、爆豪はジーニストの所か?」
「あ゛ぁ゛!?……決めてねぇ」
そういえば所在不明のニュースが流れてたね。他に行くつもりがないという程度には、気に入ったのか、何や思うところがあるみたい。
「上鳴さんは?このままイレイザーヘッドのサイドキック?」
「どうも私も外でってことみたい。元々がアクスレピオスへの派遣のための名目だったし」
「あぁ、医療資格がないとダメなところの。色々大変だよなぁ」
まったくね。とりあえず、対複数の遠隔操作と言うお題はクリアしたので、先にそっちを解決するのが先だけど。
そんな真面目な話に盛り上がっていたら、我慢できなかったらしい峰田が吠えた。
「ぅおい!きよしこの夜だぞ!クリスマスだぞ!あくまでも学業にうつつ抜かしてるんじゃねぇよ!」
「斬新な意見だな、おい」
メインのゲストがまだこないから、純粋に楽しむにしても今一つ締まらなくてねぇ
あぁ、でもちょうどいいタイミングか。
「そろそろ来るだろうから、ケーキ出すねー」
「あ、私も手伝う―!」
とりあえず、大量の手作りケーキでも食べて、今日のところは機嫌を直してほしいところ。
そしてケーキを並べたところで、メインゲストの壊理ちゃんが相澤先生に連れられて寮に来てくれた。
「すまん、遅くなった。もう、始まっているか?」
「え、ええと、メリー、クリスマス?」
クリスマスとかいろいろなお祭りがあって、一時期全部ごっちゃになって混乱してたけど、大変よくできました。
「「「壊理ちゃん!!」」」
「サンタの壊理ちゃん、カワイイ~~」
「似合ってるね!」
お茶子ちゃんの表情が蕩けてるなぁ
「通形先輩は来ないんスか?」
「今日はクラスの皆と過ごすそうだ。3年は冬休みに入ったら進学組以外はインターンの名目で、本採用先だ。学校にも卒業式までほとんど来られないからな。名残を楽しみたいんだろ。ほら、行っておいで」
「うん」
なるほど。それは確かに。それにしても相澤先生、お父さんしてますねぇ
「なんだ?上鳴。言いたいことがあったら言え」
「いえいえ、なんだかいいお父さんしているなぁ、とか思ってません」
「……まぁ、絆されてるのは否定しないがな」
いっそ、
そんなこと言ったら、除籍にされそうだから言わないけど。
壊理ちゃんを加えて改めて乾杯。そこからはみんな、存分にご馳走を堪能し、響香がギターを持ち出してミニライブを始めたりと大いに盛り上がった。
やっぱり甘いものには目がないのか、ケーキ各種とチョコフォンデュは壊理ちゃんに大好評だった。
「壊理ちゃん、見て!ウサギのりんご飴だよ!」
「わぁ!すごい!デクさん!!」
色々甘味は用意したけど、壊理ちゃんの一番は緑谷君が工夫して作った、ウサギに切って飴でコーティングしたウサギのりんご飴かな。
「轟ー!そのチョコケーキはマッハの手作りだぞ!味わって食えー」
「あぁ、そうなのか……甘すぎなくて、ウマいな」
「ありがと。そういってもらえると、作った甲斐があるわ」
男子向けに少しビターにしたからね。炊飯器チョコブラウニー。
それにしても今日の三奈ちゃんはテンション高いなー
隙を見ては爆豪君にサンタコスを着せようと、ものすごい隠密性と瞬発力を発揮してるし。それは電気もか。
「アイツら……あれを訓練でもやって見せろってんだ」
あぁ、うん。そうなりますよねぇ
さすがにこの場で説教は無粋と、相澤先生も抑えてくれたけど。
「さーって、お楽しみのプレゼント交換だー!」
「プレゼント?」
壊理ちゃんからの分がないので、どうしようという空気に。
「あ、大丈夫。相澤先生から資金提供で、壊理ちゃん提供分として1個用意してあるから」
「「「相澤先生!ありがとうございます!!」」」
「お、おう」
なお、先日のGANRIKINEKOの件で懲りたのか、中身はお任せされたので、私の趣味で買わせていただいた。同じものは壊理ちゃんに思い切って見てもらったが、思ったより好評だったし。
「クリスマスのプレゼント……サンタさんじゃない、の?」
そーいえば、絵本とかでそんな話をしたね。
「サンタさんは小さいよい子のところ回るのに忙しいから。大きい子は自分で用意したり、こうやって友達同士で交換こ。
今日は壊理ちゃんがみんなのサンタさんだよ。壊理ちゃんのところに来てくれるかは、明日の朝にわかるからね。
夜更かしする悪い子のところには来ないから、よく寝ようね」
「……楽しみ」
教員寮に住んでて何もなしってことはないでしょ。相澤先生も頷いてるし。
「えっと……それで、これ、どうするの?」
「あそこにみんなが用意したプレゼントを置いて、くじ引きして当たったものが自分のものになるの。中身は……ね」
耳元に小声で中身を教えておく。自分も持っているものだから、惜しいとは思わないだろうと思って選んだ。
「来年は壊理ちゃんが自分で選んだものを用意しようか」
「うん!」
いったん壊理ちゃんに渡ったプレゼントの袋を瀬呂君に手渡している。さて、誰の手にわたるかなぁ?
「よっし、んじゃ、それぞれのプレゼントにテープ張ってくな」
瀬呂君が各自の持ち寄りプレゼントにテープを張っていく。気付かれないように爆豪君の足元にもテープが巻き付いてるのはナイス。
「はい。私の分はこれね」
「おっけー、これ、割れ物?」
「緩衝材はあるけど、下に置かれるとちょっと心配かな?」
用意したのは、自分が使っているものと同系統の微香料アロマの基本セット。サンプルから好きな香り選んで取り寄せるタイプなので、よほどこういうのが嫌いでなければ大丈夫と思う。
男女問わず使えるものって、ことで選んだ。そして張られたテープをまとめていた瀬呂君から、自分が引く分のテープを渡される。
「「「せーのっ!」」」
これ、壊理ちゃんの分は仕込み入れてもらうべきだったかもしれない。
瀬呂君が微妙に失敗したって顔してるのだけど……あぁ、うん、常闇君の厨二心満載な大剣オブジェ。壊理ちゃんが軽々持てる程度に軽いみたいだし、気に入ったようだからいいだろう。
めぼしいところでは、飯田君が光り輝く金塊……に見せかけたお菓子詰め合わせ。反応からして、電気かな?その電気はバスケットボールで凹んでた。持ってるしね。
プレゼントなのか嫌がらせなのか判断に迷うのは、峰田が引き当てた青山君のプレゼント。自身のサイン入りブロマイドに加えて写真集と言う誰得な逸品。ヒーローとして有名になれば、プレミアが……つく、かな?でも今は要らないよねぇ
その青山君は峰田セレクトの「凄いDVD」らしい……壊理ちゃんが引かなくてよかった。相澤先生がいる場で度胸あるなぁ
爆豪君が引き当てたのはなにやら鈍器レベルの分厚い本。これは飯田君かなぁ?
響香が引き当てたのはセーターと言うよりポンチョかな?柄からして瀬呂君だろう。やっぱりセンスがいいね。その瀬呂君はカエルの鏡なので、梅雨ちゃんセレクトだろう。
三奈ちゃんはダンベル。これはちょっと誰が贈ったかわからないけど、切島君か尾白君あたりだろう。
緑谷君とお茶子ちゃんはプレゼント交換になったようだ。
緑谷君が贈ったのは、オールマイトの根付。たぶん、そこそこにレアな逸品なのだろう。
お茶子ちゃんからは高級お餅セット……自分が引き当てる気だったのか、これもある意味で布教活動かな?
2人とも真っ赤になっているから、誰からのプレゼントかは理解してるね。よきよき……他人事としては。
それはそれとしても……思わずジト目で見るぐらいは許してほしい。
「瀬呂君……もしかして仕込んだ?」
「さぁ?何のことかな?それより上鳴さん、中身見ないの?」
追及したところで意味ないか。なんだかんだと楽しみではあるし。
「わ、かわいい」
「お、いいじゃん。お洒落」
「ね。これならインテリアにおいておけるし」
漆塗に蒔絵が施されたペーパーウェイト。華やかすぎずちょっと大人っぽい雰囲気がまたいい。そのまま飾ってもいいくらいだ。私のアロマは、ちょっとズルして個性を使うと、どうもやっぱりと言うか、轟君のところに行ったっぽい。
そして壊理ちゃんからのプレゼント、資金は相澤先生、セレクトが私の品物は、ある意味、最も似合わない常闇君が引き当てた。
「こ、これは……魔女の、饗宴?」
「アニメ……?これ、上鳴さんが選んだんだっけ……?」
そう言いましたが何か?「モーレツ!プリエア10」映画版「2人のプリエア」面白いよ?
「ケロ、プリエア……懐かしいわ。妹とよく見てたの」
「大丈夫なのか?それ、なんつうか……」
「大丈夫、見てもらって割と気に入ってくれたから」
「ええっとね、かわいい女の子が、こう、わぁーってなって、デクさんとかルミリオンさんみたいに格好いいけど、かわいいの!」
監禁生活を思い出すかと思ったけど、息抜きに動画サイト見せたときに壊理ちゃんの方から興味を持ってくれたからね。一緒に楽しく見ましたよ。
エンディングを映像に合わせて踊る壊理ちゃんの姿は教員寮に出入りしてるメンバーの癒しだね。多分、今ならサーのところで埃をかぶっているだろう変身セットも喜んで受け取ると思う。オタに染めた?何のことかわかりませんねー
「多分、常闇君が気に入る子もいるから、試しに一度見ることをお勧めするよ」
映画版でラスボスとして登場した過去作主人公の闇落ち魔法少女verとか、多分、大好物だと思うんだ。
「……うむ、ありがたく頂こう。礼を言う、壊理ちゃん」
「うん!
壊理ちゃんが将来、廚二に染まらないことを心から祈る。
流石にその場で上映会とはならず、壊理ちゃんが夜更かしをしない程度の時間で解散となった。
こんな楽しいクリスマスパーティ、来年もまたやれるといいな。
The・肩透かし回
どーにも、轟が上手く動いてくれる気がしないので、ここでくっつくのはなしで。
爆豪が引き当てたメガネはさすがにアレはないわー、と改変w
というか、あのプレゼント類、自室の余剰品?って感じでしたよね。上鳴電気のバスケットボールは自分が出したものがUターンだったのかもしれませんが、持ってた箱がもっと薄いので、別の人からのプレゼントとしています(想定として尾白)