そもそも緑谷君の個性に干渉、と言うより神経系に干渉を試みたときには個性と通常の神経の電子について区別は出来ていなかった。
その中で半ば無意識なのか意図的なのか、そんな残留思念か個性因子の残留物?に干渉していたなんて言いうのはファンタジーが過ぎると思う。
「そもそも僕自身、「力をストックする個性」の持ち主の意志など感じたことすらなかった。僕たちの前に現れた今も、人格と呼べるものすらない、ただ感覚的にそうだと思った。赤子の姿にしても、僕たちが付与した仮の姿みたいなものだ。
と、思ってたんだけど、思いのほか、君に似てるね。上鳴
口調は冗談っぽいけれど、言っている内容は深刻極まりないんですが。
ただでさえ、他人の個性行使を妨害できる技とか身に着けたんですよ?その上で、浸食!?なにその危険物。
「あの、そんなことをした覚えが全くないんですけど……」
「あぁ、うん。そんな不安そうにしないでいい。意外にわかりやすいね、君。僕も本心からそう思ってるわけじゃない。
「まったくです。そんなユーモアに欠ける人物がオールマイトの
サー・ナイトアイの援護がありがたいです。ブラックなユーモアで揶揄ってすいませんでした。
「あぁ、君の言う通りだね、サー・ナイトアイ。それでもね、その子は間違いなく、兄、オール・フォー・ワンと僕の被害者なんだ。少なくとも、僕にその事実を思い出させてくれた恩人だ。
僕自身、何も気にせず足蹴にしていた存在がいた。
それじゃ、アイツと変わらない。
オール・フォー・ワンを倒す、それだけに凝り固まり、
そのことに気付かせてもらった礼を言いたかったんだ。
ありがとう、ブルーアンバー。
我々はそれでも奴を倒すけど、この小さな犠牲者を思い起こさせてくれたことに感謝する」
ただの偶然で狙ってやったことではない。ただ成したことで救われた、と言うのなら、それは受け取るべきだろう。
「はい。そう言ってもらえて光栄に思います」
「その上で、その子の扱いだ。気付いた以上は放置できない。かと言って現実に干渉できない以上、僕たちにできる事は限られる。
その子ね、緑谷出久を介して外を見ている時に、君に対して強く好意的な反応を示すんだ。それで、根気よく調べてね。会話は出来ないけど、オール・フォー・ワンとの記憶に対しては激しい拒絶を示すことから、僕たちの一部だろうとは思っている。
と言っても、「力をストックする個性」の
でも、その子の望みを叶えるのが、僕が蔑ろにしていた犠牲者への償いだと思う。
上鳴茉芭、ヒーロー・ブルーアンバー、君に2つ頼みがある。1つは僕たち、ワン・フォー・オールがオール・フォー・ワンとの戦いに終止符を打つための助力を。
そして、そのためにも、その子を君が連れて行ってくれ」
なんだかものすごい無茶振りをされているんですが。他人の個性因子を引き取れと?
「ちょっと待ってください!それは、その、つまり、上鳴さんがワン・フォー・オールを継承、する、と?」
「いや、そうじゃない。落ち着いて、緑谷出久。その子は「力をストックする個性」の個性因子としても成立しない、記憶の欠片と言ったレベルの存在だ。彼女の個性に合わせて言えば、かつて「力をストックする個性」の個性因子に紐づいていた最後の電子、と言ったものなんだ。ただそれでも、彼女の力をより引き延ばす栄養薬ぐらいにはなる」
「断らせる気がないのはちょっとどうかと思いますが、意思を持つ存在と同化しろとか、消すのは流石に躊躇います」
「大丈夫、本当に自我があるわけではないから。そして、八木君や緑谷君が継承して分かったこととして、ワン・フォー・オールは持たざる者……つまり無個性のみが引き継ぎ、真価を発揮できる個性となった。故に、おそらく次世代に継ぐことはもうできない。2代続けて無個性の継承者を得られた幸運。今の時代に、すべての決着をつけたい」
そんな話してましたね。個性を持つ存在がワン・フォー・オールを継承することは大幅に寿命を削ると。
歴代で唯一、天寿を全うした方は、僅か40代で老衰で亡くなったとか。
そして、世界的に無個性は総人口の2割を切る。次の世代ではほぼ絶滅だろう。
もっとも、緑谷君のご両親は個性持ちだと言うから、ある種の先祖返りなのだろう。劣性遺伝的な扱いかもしれないが、無個性がこれからも生まれる希望はある。
希少になっても、無個性が完全に絶滅することはないのかもしれない。でも無個性でありながらヒーローを目指す、と言う人はおそらく出ないだろう。
同じ複数個性の所持が出来るオール・フォー・ワンが、数多くの個性を保有し続ける事が出来るけど、これはもう、そういう性質だから、と思うしかない。
既に個性がある場所に、ワン・フォー・オールと言う巨大な個性を詰め込めば、人体に負担がかかる。満員電車とか過積載のトラックみたいなものだろう。
オール・フォー・ワンにもストックできる上限はあるだろうけど、要らないモノは他人に押し付けてしまえばいいから、極端な問題にはならないはず。
その辺の考察はともかく、受けるとしても問題は他にある。
「引き受けるとしても確認があります。その方法で確実にオール・フォー・ワンが倒せるのか、と言うのが1つ。そして倒した後にあなた方と緑谷君がどうなるか、です。少なくとも、緑谷君の生命や以降のヒーロー活動に影響があるようなら、私は引き受けません」
「それと私からも聞きたい。その赤子、全くの第三者、例えばオール・フォー・ワンの残滓である可能性は?」
「上鳴さん!サー!?」
「緑谷、落ち着きなさい。ブルーアンバーの言うことは尤もだと私も思う。君はミリオと同じくオールマイト、エンデヴァーに次ぐ次世代の象徴になり得る人材だ。ワン・フォー・オールの歴代継承者の意志とは言え、所詮は残留思念。それに振り回されるのも良くない」
「そうですね。仲間を無駄に危険にさらしてまで倒すべき相手と思えません。オール・フォー・ワンは少なくとも収監されている。後は死柄木弔を逮捕。最悪、殺害すれば、基本的にはそれで終わる話でしょう?」
サー・ナイトアイと私の言葉に困ったようにうなずく初代。そこにグラントリノが口を挟んできた。
「のう、ナイトアイ。緑谷かブルーアンバーのどっちでもええ、未来を見てはどうだ?この場でも個性は使えるのだろう?」
「そうだね。現実とは違うから、制限も働かないだろう」
初代がそう保証してくれた。もしかしたら時間の流れも違うのかもしれない。
「なるほど……良いでしょう」
そして、ナイトアイは緑谷君と私、ついでにオールマイトの未来を”見た”。1日1回の制限はこの場では働かなかったようだ。不思議空間、ってことでいいのかな?
「理解しがたいが、確かにそれぞれの未来にブレがある。そして、この申し出を断る未来は……残念ながら許容しがたい」
概略としてみた未来を聞かせてもらったけど、どうにも判断しがたい。確かによりマシな未来と言う意味なら選択の余地は少ない。
「納得できたかな?疑問に答えると、オール・フォー・ワンと言う概念、個性を殺すことはできると思う。緑谷君の記憶にある個性破壊薬でも良いが、1つでも残したらヤツが生き残る。それに生体融合系の個性を持っていたら効かない可能性すらある。
原点を同じくするものという点で、オール・フォー・ワンと同質の我々が対決したほうが確実だ」
壊理ちゃんの個性を使った個性破壊薬。すべて破棄されたはずだけど、公式云々言うあたり、秘匿されている可能性はある。それに、死穢八斎會がばら撒いたサンプルもどこかに残っている可能性がある。
そこから対策を作ることは不可能ではない。ほかならぬ私がそれをやってのけた。
「そして緑谷君だが、勝ち残りさえすれば、彼自身がヒーローとして活動する分には問題ないだろう。一時的なパワー低下はあるかもしれないけど。
僕たちは……戦いの結果次第、だろうね。ただ僕らは所詮は死人だ。気にすることではないよ。
ついでに言えば、上鳴茉芭さんへの影響も、さほどないだろう。個性はさらに成長すると思うけど。
最後の質問は、感覚は大丈夫だと告げている。少なくとも、オール・フォー・ワンの匂いはしない。歴代たちもそれに同意している」
確かに志村さんに抱えられながら、私の方に手を伸ばしている。それも楽し気に。
となれば、断るのは難しい。
断った場合、緑谷君にすべてを委ねることとなる。それは一人で前に進もうとするのを否とした
それにその場合、高確率で緑谷君は死ぬか、よくて死柄木を取り逃がしヒーロー側も壊滅的な被害を受け、黎明期の混乱が再び、となるらしい。見たい未来への収斂としての予知かもしれないけれど。仕方ない、か。
「繰り返しになりますが、その子、本当に個人としての意思はないんですよね?」
「ない。どっちにしてもね、勝手についていきそうな勢いだし。今回の様に緑谷君の手を借りなくても、僕らとオール・フォー・ワンをつなぐための橋渡し役を連れて行くとでも思って欲しい」
何というか強引なセールスすぎて、断りたくなる。けどなぁ、この初代さんの頼みはともかく、憧れのヒーローだった志村さんの期待にも応えたいし、その両方はイコールだし……仕方ないか。
「最後に。私に対して特異点と言いましたが、あれは?」
「今更だね。君たちだと古典になるかもしれないが、個性特異点と言う言葉は知っているかい?世代を重ねるごとに複雑化し、いずれ制御不能になる、そんな予言があった。そういう超常後の人類すら旧人類としかねない、常識の枠を超えた個性に対する呼び方だ。気を悪くしたなら謝ろう」
「そこまで非常識な性能してると思ったことはないですが」
それはもう世代の話ですね。ケミィや夜嵐君の話じゃ、最近の小学生って怖いレベルの強個性揃いだって言ってたし。
「ブルーアンバー、そこはすまないが初代に同意する。電子と言う物理における最小レベルの存在を知覚し、操るという個性は確かに現象の規模は小さいかもしれないが、既存物理学全てを覆す可能性すら秘めている。プロセスは異なれど、抹消と同質の技、緑谷やミリオに見せた、個性の成長方向の誘導。確かに直接戦闘向けではないが、知れば誰もが君を欲するぐらいの希少かつ貴重な能力と認識しなさい」
何か怒涛の勢いで、お前の認識がおかしいと言われてしまった。
「はぁ、恐縮です」
「ま、自信過剰もよくないけど、過少もよくないってことだよ。素直に褒められておきな」
ドンと強い勢いで背中を叩かれる。流石にオールマイトのお師匠様だけあって、割と脳筋思想らしい。
「はぁ、出来るだけそう努めます。とりあえず仕方なさそうなので。志村さん」
「まーは!」
「あぁ、面倒をかけるね。この子を頼んだよ、茉芭。アンタは血こそ繋がらないが、私の、私たちのもう一人の子供だ、胸を張って、ヒーローをやってくれ」
「はい」
その言葉ともに、ワン・フォー・オール、その根幹であったかもしれない小さな個性の残滓は私の胸に溶け込むように消えた。何か変わったような感じはしないけど。
「グラントリノ、俊典」
「おう」
「はい、お師匠」
「この私は所詮は残留思念で本物の志村菜奈じゃない。けど会えて嬉しかったよ。緑谷と
「まったく、この年寄に無理を言う……じゃが、引き受けよう」
最後の挨拶、と言うところで、そろそろ限界と言うか、外部からの干渉を感じた。
「多分、イレイザーヘッドが抹消を使用しています」
「では、すまないけれど、僕らの子を頼んだよ、ブルーアンバー」
その言葉を最後に、強制的に接続が切られた。ちょっと待って。何その意味深な言い方ぁ!
「意識はあるな?どこか異常はあるか?上鳴!」
意識を取り戻したとき、心配そうにこちらをのぞき込む相澤先生とリカバリーガールの姿があった。
「あ、はい。大丈夫です。意識はクリアですし、頭痛もありません」
「ならいい。急にお前が発光したんでな。何か起きたと思い止めさせてもらった」
辺りを見渡すと、オールマイト先生にサー・ナイトアイ、緑谷君も意識を取り戻していた。
何があったかを説明すると、相澤先生は頭痛をこらえるようにこめかみを押さえていた。
「オール・フォー・ワンとヴィラン連合のリーダー、死柄木が動く……なるほど」
「相澤君?」
何か考え込んでいたけれど、仕方がないと重いため息をついていた。
「状況は理解しました。サー・ナイトアイ。緑谷はどうされますか?」
「今後の状況を踏まえれば、私の所では少々実戦経験に欠けるだろう。八斎會の残党も最近はだいぶ大人しくなったから、ミリオだけでも十分な程度だ。緑谷に一番必要なのは濃密な実戦経験だろう」
その理屈だと、私も現状維持は難しいだろうなぁ
正直、個性だけなら訓練で十分伸ばせるけれど。
「緑谷、上鳴」
「「はい」」
「轟から誘いを受けてるだろう。爆豪も連れて、エンデヴァーの所に行け」
あぁ、やっぱりそうなるのか。
「一応、理由をお伺いしても?」
「緑谷と同じだ。最前線に立つことになるなら、もう少し場数を積ませたい。最近、エンデヴァーの担当地区は妙に荒れてるからな。実戦の機会は事欠かないだろう」
どちらかと言えば慎重派の相澤先生が後押しをするのは珍しい。
正直、裏の一つや二つありそうだけど。
ともあれ、冬のインターンについては、エンデヴァーの下に身を寄せることが決まってしまった。
作中では次話ぐらいまでオリ主が半信半疑で頭を悩ませますw
基本的には作中の通り、OFA内に残留していた「力をストックする個性」元所有者の不完全情報を再構成したぐらいの代物です。
1人称ですと地の文で補完しきれる情報でもないので、反則ですが、後書きで補足。
見落としてるだけかもしれませんが、原作ではAFOが「使いやすい手頃な異能」と言って初代に押し付けた結果、OFAが誕生したという情報があるだけで、誰が持っていたかの言及がないので、疑問があるなら捏造しようとw
第一次決戦以降は話が煮詰まりすぎてて触れる余裕がないのか、そもそも決めてないのかどっちでしょうね?
戦闘で派手にやりあってるから、そこに触れることもないだろうと捏造しまくってます。