雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第85話 色々ありすぎる日

 ワン・フォー・オールとの接触と言う何とも言えない依頼は無事終了。金銭的な報酬はそこそこに。

 私としては憧れのヒーローに会って、話が出来たというだけでも十分すぎる。

 そう言えば、色々情報が多すぎて、ヒーロー名を聞き忘れたのは惜しいことをした。

 もっとも、情報は消されてるみたいだし、知っても知らなくても関係ないか。むしろ本名を知る事が出来たのだから、そっちの方がレアと言う気分になって嬉しい。

 

 そして引き取った電子……アレが私の一部だったのか、ワン・フォー・オールの起源(オリジン)なのかは正直、分らない。確定の答えを得るには判断材料も知識も足らないし。

 

 大きい変化としては、じわじわと距離を伸ばしていた知覚範囲が、ワン・フォー・オールとの接続が最後の一押しになって、念願の1km前後に到達した。

 もっとも出力とか精度については劇的な変化は感じられない。機械的な測定では変動はほぼないし。正直、拍子抜けした感はある。

 

 いや、実はちょっと期待したよ?緑谷君みたいなすごいパワーとか、電気を蓄えるようになるとか。入学前にやってた電気の訓練を思い出して、試してみたけど電気系のナニカが身につく気配は感じられない。

 電子を動かすのは以前よりいくらか楽かな?と言う程度。蓄えたりとかは無理で、その辺は変わらずバッテリーを含めた装備依存。

 結局、私は私、電子操作は電子操作のままってことらしい。

 

 なら今までとやることは変わらない。しっかりやれることを増やしていこう。

 個性の成長のための栄養剤だと言うなら、鍛えていく中で見えてくるものもあるだろうし。

 

 

 先輩方との早朝自主練。年内ラスト、明日からは全員インターンと言うこともあってか、参加者は少ないのだけど、やはり使命感の類なのか、接触以降は緑谷君は連日参加していると聞いた。私は何だかんだと、少し頻度を落としてるし。

 今は一緒に寮に戻りながらクールダウンの軽いラン。

 

「緑谷君は帰省だったね。親孝行してきてね」

「ありがとう。上鳴さんは?」

「私は寮で年越しの予定」

「あれ?でも上鳴君は両親が出てくるから今日は外泊、って言ってた気が?」

 

 冬休みも前半はインターンに向けての自主訓練で費やされた。それだけじゃ流石にってことで、近場に実家がある者については、大晦日から元旦にかけての帰宅が許可された。

 地方出身者については、家族が雄英に出向いてくるなら外泊許可が下りる。両親は年末年始の休暇を使って、愛息の顔を見に来るらしい。

 

「私が会っても、お互い嫌な思いするだけだし」

「……そうなんだ……難しいね」

「正解はない問題だから、気にしないでいいよ。ヒーローだからって何でもできる訳じゃないし」

 

 親子関係としては間違っていると言いたいのだろうけど、親の求めるまま、都合のいい存在でいたら、今の私はいないんで。

 

「緑谷君が今やるべきことは、成果をしっかり見せてお母さんを安心させること、だと思うよ」

「うん、ありがとう」

「壊理ちゃん頑張ったからねー、ひらがなのお勉強とお絵かき」

 

 壊理ちゃんが書き上げた感謝のお手紙は、通形先輩と緑谷君にとても喜ばれた。

 死穢八斎會での活躍やその後の治安維持。すでにプロ級の活躍をしている。林間合宿以降は大きな怪我もない。喜んでくれるんじゃないかな?

 

 

 何だかんだと、クラスメイトはほぼ全員、実家か家族と1泊してからインターン先に向かうことになっていた。

 そんなわけで今日、寮に残っている女子は私だけとなっている。

 いつもは賑やかな1階ロビーがガランとしている。たまの事と思えば面白くもあるが、少々寂しさもある。だったら自室にいればよいのだけど、なんとなくそれはそれで空しいものが。

 勉強をする気分でもなかったので、年末恒例歌番組などボケッと見ていたら、障子君と轟君に声をかけられた。

 っていうか、何で轟君が寮にいるんだろう?

 

「上鳴さん。外泊じゃなかったのか」

「うん。障子君も?」

「……あぁ、大晦日は静かに過ごしたかった」

 

 障子君も遠いからね。

 それにあの話じゃ、実家に戻る必要もないよね。お互いのためには離れているのが一番だ。

 

「轟君は?エンデヴァーは確かに明日会うけど、戻らないでよかったの?お姉さんとか、怒ってない?」

「あぁ、それは大丈夫……一応、期間中に顔を出す約束はした。行けるかはわかんねぇけど」

 

 家庭問題に口を出しても仕方ないのだけど、年末年始ぐらいは、って普通の人なら当然の感覚だと思うだろうしね。

 わざわざ残るなんて物好きな。今日は仕出しもお休みだから自炊必須なんだけど。何か特別な用事でもあったかな?

 

「ふぅん……あ、食事はすませた?乾麺でいいならお蕎麦を茹でるつもりだけど、食べる?」

「食う」

「頂こう」

 

 一応は大晦日だしね。年越し蕎麦ぐらいは食べたい。さすがに海老天とかはないけど。

 そば粉100%の乾麺だからまだマシと思ってください。安いのは5%とか利用率非公開とかフツーにあるしね。アレはアレで不味くはないけど。

 かけそばのつもりだったけど、轟君がいるし、もりそばにするか。どうせめんつゆは濃縮還元のお手軽仕様だし。

 みんなで蕎麦を食べて、後はなんとなく年末歌番組をぼーっと見てた。今日は日が変わるまでは起きていたい。外に出る前に温かい飲み物欲しいし、コーヒーでも飲もう。

 

「もう遅いけど、コーヒー、飲む?」

「頂こう。八百万は紅茶党だからな。コーヒーは久しぶりだ」

「あれ程の品質はないけどね。轟君も飲む?」

「あぁ、頼む」

 

 手回しのミルで豆を挽いて、コーヒーを淹れる。立ち上る薫りが心地よい。

 

「好きなのか?コーヒー」

「淹れるのは下手の横好きだけどね」

 

 基本の淹れ方は押さえているけど、素人にしては上出来程度のクオリティでしかない。百ちゃんほどの拘りも質もない。

 電気以外に飲ませるのは初めてだけど、私は美味しく飲めるので問題ないということで。

 

「はい。ミルクと砂糖はお好みでどうぞ」

「サンキュ」

「頂こう」

 

 淹れたてのコーヒーを皆で味わう。紅茶もそうだけど、最初の一口で薫りが良いと嬉しくなるね。

 普段ならもう寝てるのだけど、大晦日だし。ちょうど下の町からかすかに聞こえてくる除夜の鐘。今から出ればちょうどいい時間だろう。

 

「そろそろいいかな。ちょっと初詣に行ってくるけど、2人も行く?」

「初詣?外出許可取っていたのか?」

 

 近くにある神社へ行くのも一つだけど、今日はちょっと違う。

 

「ううん、校内にあるの。あ、一応は秘密施設なんで、みんなには内緒ね。それで、行く?」

「行く」

「……遠慮しておこう」

 

 2人を誘ってみたが、障子君は行かないという。なんか変に気を使われている気がするけど、まぁいいか。

 制服に着替えて、寮からグラウンドΩの方向に向かう。途中から道を外れて森に入る。

 これに関しては、雄英全体を見渡しても、生徒で知っているものは限られるだろう。

 私が知ったのは偶然。自主トレで森の中を適当に走り回っていた時に。知覚圏内に雄英の敷地らしからぬものがあると気が付いて立ち寄ったのが始まり。グラウンドに使われていない森の奥。巧妙に隠されたところにソレはある。

 

「少し進むと多分明かりがあるけど、ライト類は一応、控えたほうが良いんで、手、いいかな?」

「あぁ、いいのか?」

「連れてきたの私だしね。足元、気を付けて」

 

 少なくとも、通常の街路から見えなくなるぐらいまでは明かりは厳禁、と言うか控えるべきらしい。そこまでして隠すものでもないとも思うけど、これも一つの伝統だろう。

 

「……体育祭の時と逆だな」

「ん?あぁ、そんなことあったね。よく覚えてるね」

 

 自分から繋いどいてなんだけど、心臓が跳ねた。天然なんだからあまり意識するな。

 普段は先生方の誰かの個性で隠されているのか、巧妙に隠された参道を進むと、かがり火が焚かれ、明るく開けた場所に出る。

 

「後は大丈夫だね」

「……あぁ」

 

 その間は何かな?名残惜しいと思ったことは務めて気にしないようにして進むと、見知った姿があった。

 

「お前ら……まぁ、いい。失礼の無いようにな」

「Yo、お二人さん。しっかり挨拶してやってくれや」

「はい。イレイザーヘッド、プレゼントマイク」

 

 相澤先生、いや、イレイザーヘッドとプレゼントマイク。この場ではお二人ともヒーロー名でお呼びするべきだろう。

 

「上鳴、ここは?」

 

「雄英神社。訓練中の事故や、インターン、卒業後にヒーローとして戦って、亡くなられた先輩や先生方、それに被害者やヴィランも含めた慰霊と鎮魂の場」

 

「そんな場所が……」

 

 ヒーロー科の戦闘訓練は過度の怪我をしないように互いに配慮はするものの、当たり所が悪ければ骨折程度は当たり前だ。長い歴史の中では死亡事故の一つや二つ、当然起きる。

 そして実戦でヴィランと戦うということは、死のリスクは常に付きまとう。

 ヒーロー側は捕縛する必要があるから手加減必須なのに、ヴィラン側はそうした一切の遠慮も容赦もない。危険度は訓練の比ではない。

 当然、殉職される方も出てくる。

 秘されているのは、過度に英雄視されたくないため。命を賭すことを是としたくない先生方の想いの表れ。普通の神社と違っているのは、神主の衣装に身を包んで祝詞を奉げているのが校長先生というぐらいか。

 その後ろに巫女装束で控えているのはミッドナイト先生と13号先生か。何というか、カオスな光景。ミッドナイト先生はまだお色気仕様とは言え、普通に巫女だけど、13号先生はあのコスチュームの上に羽織っているって……中の人は美人なのに勿体ない。

 

 微妙に間違っているというか神仏混合というか、カオスなのが狛犬代わりにオールマイトの仁王像が据えられている。

 しかも本人寄贈で本人による刻印が施された代物。コレ、緑谷君に教えたらどんなリアクションするだろう?

 

 基本的には普通の神社と参拝の作法は変わらない。街中にある神社とはちょっと違うから、おみくじとか屋台とかはないので、縁日的な楽しみはないのだけど。

 それでも、詣でることに意味はあると思いたい。

 

 参拝を終えて寮にもどる途中、寮に残っていた先輩方ともすれ違った。言いふらしはしないだろうけど、改めて釘は刺しておこう。

 

「さっきも言ったけど、一応は、秘密の場所だから黙っておいてね」

「あぁ、特に緑谷には言えねーな」

「ぷっ、やっぱりそう思う?」

 

 私の場合は、見つけた時点で相澤先生に事情を聞いた。

 毎年数名は気が付くらしい。参道は頻繁に偽装が更新されるから、1度偶然たどり着いても、再訪が難しいので七不思議系の話でたまに上がるらしいけど。

 私の場合、個性による知覚範囲が広がりすぎて、そういう偽装が無意味だからこそ、こうして参拝が出来ている。

 

「俺を連れて行って、よかったのか?その、処分とか」

 

「大丈夫。単に『死んで雄英で会おう』とか格好つけて無茶されないように黙ってる、ってだけだし。ダメだったら、あの場で相澤先生に追い返されてる」

 

「そうか」

 

 轟君や障子君に、そういう心配はないだろう。だから誘ったし、相澤先生も何も言わなかった。これが緑谷君や爆豪君なら、帰れ、となっていたかもしれない。

 いや、今の緑谷君なら大丈夫かな?爆豪君は……まだちょっと不安だけど。

 

「さて、寒いし戻って早く寝ようか」

「……ぁ、あぁ」

 

 そういえば、肝心なことを忘れていた。

 

「あ、忘れるところだった。あけましておめでとう。今年もよろしく、轟君」

「あぁ、あけましておめでとう」

 

 何とも締まらないがこんな年越しもたまにはいいだろう。

 ところで、微妙に何か言いたげな様子だったけど……うん、ヘタレ。いや、それは私もか。はぁ……向こうから何て甘えだよねぇ

 少なくとも悪く思われていないとは思うし、それ以上を感じなくもないけど……うん。Ms.(ミス)ジョークじゃないけど、待っているだけじゃダメ、なんだろうな。

 障子君と言い、寮の状況と言い、少なからずお膳立てされてるんだろうし、素直に乗るのも癪ではあるけど……このままモヤってるのもなぁ……気持ちに蓋をしてもいいことない、ってお茶子ちゃんに偉そうに言っておいて、コレはダメだよね。

 うぅ、怖い。でも、ダメならダメで、わんわん泣いて諦めればいい。

 

 

「あのさ、轟君……これから言うのは、ただの独り言で、寝て起きたら忘れてほしいんだけど……」

 

「……なんだ?」

 

「私も自分で、どこにどう、ってのが困るけど……私はね、轟君のことが……すき、です……」

 

 うあぁぁぁぁ、言ってしまったぁ

 正直、エンデヴァーでもないのに顔から火が出てる気がするぅ

 

「あ、俺、は……」

 

「あぁ、いいの、返事は。独り言だし。うん。最初は、才能あるのに勿体ないとか、体育祭で轟君も親に苦労してるんだなぁとか嫉妬とか同情でグチャグチャで、異性として特別な感情とか、なかった、と思うんだけど……その、煽ったりして色々あって、気になって……みんな、娯楽に飢えてるから煽るし……で、気になってのループで、さ」

 

 あぁ、なんかブルーアンバーを名乗る前の私が戻ってきたみたいだ。すぐに内に籠ってグチグチと。本質は何も変わってない、ってことかもしれないけど。

 

「妙なところで抜けてたり、なんか、可愛いところもあるなぁとか思い始めたら……うん、だから、この先も同じ気持ちでいるかわからないけど、いまは、轟君のことが一番、好き。気になる……うん、それだけ。あはは、ごめんね。新年早々、寒い中で変なこと言って。じゃ、じゃあ、おやすみ」

 

「上鳴」

 

 いやほんと、羞恥心で燃え尽きそうなんで、さっさと逃げさせてくれませんかね。何でそんな時ばかり俊敏なの。

 

「いや、だから、わす……れ、んっ」

 

 すいません。言葉がでません。ええと、近くに人はいないからセーフ。

 

「上鳴……俺も、お前のことが、好き、だぞ。愛してる。俺の彼女に、なってくれ」

「……なら、せめて、名前で、呼んでよ……焦凍、くん」

「……茉芭(まつは)、好きだ」

 

 うぅ、距離が近い。嬉しいけれど、自分で踏み込んでおいて悪い冗談じゃないかとも思ってしまう。

 

「言っとくけど……わたし、たぶん、結構、面倒くさいよ?嫉妬するし、甘えたがりだし、そのくせ見栄っぱりだし……割とオタだし……」

 

「そうか。それでも、俺はお前が、茉芭が欲しいと思った。このぬくもりが欲しかった。声を聞きたい、いろんな表情を見たい。もっと俺を見てほしい、触れたい、触れてほしいと思った……」

 

 あぁ、うん。両想いだったのは素直に嬉しい。こうして抱きしめられると安心もするしドキドキもする。もっとその先に、とかも思うけど、それはまだちょっと早いし怖いかな。

 

「その、轟君の気持ちは、凄い、嬉しい……ン……」

「あぁ、俺も、だ……それと、名前でよんでほしい、茉芭?」

「……みんなの前では、今まで通りで……どうせすぐばれる気はするけど」

「……わかった。じゃあ、おやすみ、茉芭」

「ん……おやすみ、焦凍くん」

「できれば、呼び捨てで」

「うぅ、注文がこまかい……しょ、焦凍」

「あぁ、茉芭」

 

 あぁぁぁ、ほんっと、誰もいない時でよかった。いや、障子君いるけど。うん、すいませんね。多分聞かれてると思うけど。本当に勢い任せで突っ張るもんじゃないと思いました。離れるのが名残惜しくて正直、速攻、溺れそうでヤバイ。正直、この後どうやって部屋に戻って寝たのか、覚えてないんです。いやマジで。

 

 

 眠れそうもなかったけど、無理やり眠て、起きたら起きたで昨日の勢い任せの告白に一通り悶絶して、羞恥心で死ねたら即死しそうな元旦の朝!……シャワーして頭冷やそう。

 

 一応は寝て、冷静な思考力は戻って来た。

 時刻的に初日の出は見逃したけど、それはいいや。

 流石に自分でおせち料理を用意なんてしていないが、通販で小さいのを用意しておいたので、3人で食べることにした。

 

「おぉ、まさか寮で正月料理が食べられるなんて」

「生憎と通販の冷凍品だけどね。気分だけでもと思って。食べきりサイズなんで足らない分はお餅を焼くよ。1個は手抜きのお雑煮にするけど何個欲しい?」

 

 轟君が2個、障子君が3個欲しいらしい。それくらいなら用意も楽だ。クラスの皆がいないのは寂しいが、こんな年があってもいいか。

 

「障子君、轟君。あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」

「あぁ、あけましておめでとう。こちらこそよろしく頼む」

「あけましておめでとう」

 

 とりあえず轟君の様子も普段と変わらない。

 初夢って2日に見る夢のはずなんだけどなー、と。

 正月早々から非常食のブロックをかじっている姿を見るよりマシだろう。今日から寮が無人になるので、食材は残してないので、手抜きになるのは許してほしい。

 

 響香とギャングオルカの下に向かう障子君とは校門で別れ、二人になった。

 

「行こう、茉芭」

「はいはい。何というか、いきなり吹っ切れすぎじゃない?轟君」

「2人の時は名前でいいんだろ?」

 

 しっかり手をつなごうとするあたり、スキンシップは嬉しいけれど、いきなりデレすぎだ。嫌じゃないのがまた困る。きっぱり照れ隠しが見抜かれているけど、それなら、女に告白させないで欲しかったよ。

 

「いいけど……合流したらちゃんと切り替えてよね?……焦凍」

「あぁ」

 

 焦凍と電車とバスを乗り継ぎ、エンデヴァーとの待ち合わせ場所に向かう。正直、ただの移動がこれほど心臓に悪い時間になると思わなかった。

 

 

―――Side:障子目蔵

 雄英内部に神社があるというのは興味があったのだが、それはいい。自分で探せばいいだろう。

 年末歌番組のせいであの場を離れるタイミングが難しかった。あまり早いと、轟も寝るだろうし……上鳴さんが出かけてくれて助かった。

 

 やはり2人にしたら状況は動く。的確な予測は流石だが、ここまでするか?

 男女の機微は正直判らないが、皆が推すのだし、お互いが互いを気遣っていたことぐらいは俺にもわかる。きっと、お似合いの二人なのだろう。

 上鳴さんが万が一にも個性を使ってきてもバレない様にと、細心の注意を払っていたが、どうやら気付かれずに済んだようだ。

 携帯電話のロックを解き、指定された秘密ルームにアクセスをする。

 気分はスパイだな。

 

『成立した』

『おー、よかったー、ひやひやしたよー』

『確かに、轟が帰ろうとしたときには焦ったな』

『茉芭さんが残ることは伝えてあったのですけど……』

『けどさ、フツーは帰省するよ。障子が残っていてくれて助かった』

 

 もしかして、俺が残っているから、何か煽って轟をとどまらせたのか。

 

『まて。俺は監視の他にもしかして当て馬か?』

『……言い得て妙かも』

『いえ、さすがにそんな真似は。後でしこりが残りますもの』

 

 これについては、真偽はわからないな。八百万のことだ、嘘ではないだろうが。

 

『でも新年早々、なっかなかいいタイミング!ね、どっちから?』

『ワクワク』

『皆さん、流石にそれは悪趣味なのでは……』

『つ 鏡』

『お膳立てした張本人の癖に―』

『にー』

『いやあの、確かにそうなんですけれど、それも三奈さんが』

『ぶー、だってさー、じれったかったし』

『クリスマスは何かスルーされたよね。せっかく瀬呂が頑張ったのに』

『アレはいい仕事したぜ。壊理ちゃんのアレは勘弁な』

『あれは喜んでたし結果オーライ!』

『お世話する子がいたから、茉芭ちゃんはそっち優先したのだと思うわ。昔から電気ちゃんのお世話もしてたみたいだし』

『梅雨ちゃんが辛辣で辛い。でも、そんなことは……あったな』

『あるんかーい』

『話がそれた。で、どっち?』

 

 まだ不慣れなので、もう少しチャットの速度は加減してほしい。

 

『そこは流石に黙秘する。そこまでは報告の義務はないし、馬に蹴られたくはない』

『むぅ、じゃあ、インターン後の楽しみにしよう』

『そうそう!んじゃ、次は緑茶、いや!デク茶だー!!』

『オー』

 

 デク茶?あぁ、なるほど。何とも気の毒な気もするが、それで本人たちが最終的に幸せなら、きっとこれもヒーローらしいお節介……なのだろうか?




A:そんなわきゃないw

結局どうしようかなー、と思いながらもくっつけました。
轟&八百万推しの方には本作は鬼門ですね。

このタイミングにしたのは、これ以降だとストーリー進めるほうを優先して、微妙な距離感のまま終わるので。それはそれでアリですが、最終地点が同じなら、書きたいように書こうかな、と。

なお、雄英神社は捏造です。スピンオフ系でもしあったら……別に困らないか。
原作で、もしなかったら、すべて終わったら作中で建立してしてほしい。
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