雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

9 / 115
俺TUEE(対格下)入りまーす。



第9話 USJ襲撃事件(2)

 黒い霧に呑まれたと思った次の瞬間、周りは土だらけの場所だった。

 多分、山岳ゾーンだろう。

 

「死ねやガキぃ!っらぁぁぁ!」

 

 待ち受けしていたのだろう、間髪入れず襲い掛かってくるヴィランにとっさに対応できたのは上出来だと思う。大振りのパンチをかわして、ボディに一撃。

 

「ぐはっ!」

「もう一発っ!」

 

 ナックルガード付きグローブは思い切り殴っても拳が痛くならないからいいね。

 顎を粉砕しただろう不快な感触は慣れたくないなぁ、とは思ってしまうが。

 

「八百万さん!響香!!」

茉芭(まつは)さん!武器は要りますか!?」

 

 見ると八百万さんは長めの鉄パイプ、響香には簡素な造りだが片手剣を手渡しているところだった。

 

「とりあえず、格闘主体で行けるから」

 

 簡潔に応えて、周りを取り囲むヴィランを見渡す。

 皆一様に殺意をたぎらせているが、中にはどう考えてもゲスな笑みを浮かべている者もいる。

 

「へへへ、なんなら死ぬ前に天国に連れて行ってやるぜぇ」

 

 なんて腰を前後に振りながらゲスな笑いを上げる。

 バッテリーは消費していないから、打撃に電撃を乗せていけばもう少し楽に倒していけるはず。

 とりあえずアイツは男としてツブれてもらおう、と思ったところで上から1人、ヴィランが落ちてきた。

 

「よぅ、上にも1人いたから潰しといたぜ。八百万さんに耳郎さんも無事か。あとマッハ」

 

 手のひらに帯電させてヴィランを昏倒させたらしい、電気の姿だった。

 状況を見て飛び降りるのをやめたあたり、私がこの次に何をしたいか分かっているらしい。さすがにこういう時は頼りになる。

 

「オマケ扱いって酷っ!って、まぁいいや、電気、まだいける?」

「おう!まーかせろ!」

 

 合流するまでのわずかな間にどの程度使ったかわからないが、頼もしい答えに口元が弧を描く。

 

「なら、やろうか」

「おう!」

「出力全開!!「サンダァァァァ!ブレイカァァァァッ!!」」

 

 電気が全力で放出した電気を、私の個性で操って狙った場所に落とす。

 私一人ではそもそもの出力が足らず、電気一人では放出した電気の流れる先を制御できない。

 2人揃ったからこそできる、私たちの必殺技だ。

 

「す、すごい……ですわね」

「すっげ……はぁ、でも助かった~、強いね、二人とも」

「そーでもない。八百万さん。拘束できるもの作ってもらっていい?」

 

 とりあえずの窮地は脱したから、合流か脱出を図らないと。

 

「電気、バッテリー要る?」

「わりぃ、くれ。そろそろヤベぇ」

 

 腰の電池をベルトごと渡しておく。

 

「腰はサイズが合わないから肩に巻いて。ベルトのスイッチで放電はじめるから」

「おう。借りとく」

「次までに指向性と継戦能力は改善しときなよ?」

「だなー、考えるわ」

「このジャケットも静電気を貯める特殊素材仕込んであるから。肩から掛けて、ちょっとでも充電して」

 

 上着を脱ぐと、多少頑丈な厚めのレオタードなんだよね、このコスチューム。ノースリーブにはまだちょっと涼しいけどここは我慢。

 腕に巻いた帯電素材は自分の生命線にもなるからこれ以上は渡せないけど、ちょっとでも回復してもらおう。

 さっきの送信と大技の制御。初の実戦で限度を見誤ったか、少し頭痛がする。

 ともあれ、今は無理をしないといけない。

 

「八百万さん、この後はどうする?」

「……そうですわね。脱出を試みるなら、避難口。合流を優先なら広場に向かうのが一番でしょう」

「ちょっと待って、自分達だけ逃げるっての?」

 

 慌てた様子の響香だけど、こいつら基準で物を考えても。

 

「さっきのワープ個性の男と動きを見せなかった数人は明らかに格上。

 ここにいる連中って、高く見積もってもチンピラかちょっとマシくらいだと思う。

 オールマイトを殺そうって思って思うだけならだれでもできる。

 けど、雄英のセキュリティをかいくぐって実行に移せる連中が、入学したての学生に叩きのめされるほど弱いと思う?」

 

 身の安全を図るなら脱出一択。

 ただそれは他に飛ばされたクラスメイトも見捨てる選択になる。

 

「って、その前にっ!」

「へびゅっ!」

 

 さっきの大技を個性を使って地中に逃れたらしいヴィランが奇襲を仕掛けてきた。

 幸い、地面から即出れるほど便利ではないようだったので、上半身が出てきたところで鉄板入りブーツをお見舞いして寝てもらった。

 

「ふん。八百万さんのスカートを覗こうとは。峰田の親戚かな?」

「いや、違うから」

 

 響香、突っ込みのキレがいいなぁ

 そして考えがまとまったのか、頬をたたいて気合を入れる小気味いい音。

 

「合流しましょう。脱出するのはクラスメイトの安否を確認してからです。(わたくし)には、クラス委員長としての責任がありますわ!」

 

了解しました、委員長(イエス、マイ・ロード)

 

 そう来なくては。

 手早くヴィランの拘束を終えて、中央広場に急いで向かった。

 

 

 途中、幸いにもヴィランとは遭遇することもなかった。クラスメイトとも合流はできなかったが。

 そして広場についたとき、状況はおそらく最悪に近かった。

 黒く脳がむき出しのように見えるヴィランにイレイザーヘッドは取り押さえられている。

 

「八百万さん、引く?」

 

 状況は最悪に近い。

 ただ、コレから逃げるにしても分が悪いのは事実。

 

「いえ、まだ無事を確認できない方がおります。動かず状況を見守ります」

 

 そう言いながら、使えそうなアイテムはないか、コスチュームにつけている本をめくっている。

 

「……大容量コンデンサとできればフラッシュグレネードがあれば助かる」

「判りました。耳郎さん、状況が知りたいです。音声をこれに」

「オッケー」

 

 ポータブルオーディオ機器と無線イヤホンが人数分。

 響香の個性で広場の会話を拾うのに苦労はなくなった。

 

「電気はコンデンサに充電お願い」

「任せろ」

 

 

 響香の個性「イヤホンジャック」があれば、辛うじて目視で表情がわかるぐらいの距離でも会話の聞き取りができる。

 八百万さんとの組み合わせがチートスペックすぎて嫉妬する気も起きないよ。

 

 

 相澤先生をいたぶるのに飽きたのか、目的のオールマイトがいないので潮時と思ったか。

 帰ろうか、などと言い出す”手の男”。

 

「あぁ、そうだ。帰る前に平和の象徴の矜持を……おや?」

 

 何かをやろうとした矢先、USJの入り口が轟音を立てて吹き飛んだ。

 

「もう大丈夫」

 

 静かだがよく通る太い声。

 それだけで皆に希望の灯がともるのがわかる。

 

「私が来た!」

 

 スーツ姿であっても、その姿は間違いなくこの場のだれもが待ち望んだモノ。

 そう、ヴィランもまた、オールマイトを待ち望んでいた。

 強引な通信以外にも誰かが脱出に成功し、外部との連絡が取れたのだろう。もうひと踏ん張りで更に増援は来る、はずだ。

 

「あぁ、コンティニューだ。待ったよ、ヒーロー。社会のゴミめ」

 

 オールマイトを見上げ、歓喜の声を上げる”手の男”。

 どうやらまだ戦うつもりらしい。

 

「あれがオールマイト……」

「本物を見るのは初めてだ」

 

 ヴィラン達の声には恐怖と羨望がいくらか混ざっている。

 

「ひるむな!俺たちでアイツを倒し――――」

 

 周りの士気を上げようと試みたヴィランがいたが、文字通り目に留まらぬほどの速度でオールマイトに瞬く間に倒される。

 そして相澤先生を押さえつけていた黒いヴィランを投げ飛ばすと、次の瞬間には水難エリアから様子をうかがっていたらしい梅雨ちゃん、緑谷君、峰田を回収していた。

 凄い。これがナンバーワンヒーローの実力。

 

 状況が落ち着いた間に、電気からジャケットとベルトを回収する。

 ベルトのほうは充電が空だけど、仕方ない。

 

 オールマイトは梅雨ちゃんたちに、イレイザーヘッドを連れて退避するように告げている。

 緑谷君は何か懸念があるようだけど……あの2人、師弟関係のようなものでもあるのだろうか。

 

 

「脳無」

 

 ”手の男”に脳無と呼ばれた大男のヴィランが叫ぶと、オールマイトに殴りかかる。

 

「カロライナ・スマーーシュッ!」

 

 攻撃が直撃しても構わず殴り返す、脳無。

 

「効いてないとか、自信無くすねぇ!」

 

 顔面狙い、体格の違いでアッパー気味のパンチが顔面に入る。ガードや避ける様子もなく受けて、効いた様子すらない。

 

「脳無はショック吸収があるんだ。ダメージを与えたかったらゆっくり丁寧に肉をえぐらないと駄目だぜ、ヒーロー?それをさせてくれるかどうかは別だが」

 

「わざわざサンキュー!なら、やりやすい!」

 

 打撃が効かないとわかって、渾身のバックドロップで脳無は文字通り地面に埋まる。

 埋まった、はずだった。

 

「そ、そういう仕組みか……」

「コンクリートに深く突き立てて動きを封じるつもりだったか?それじゃ封じれないぜ」

 

 愉悦とともにワープゲートから上半身を出した脳無の指がオールマイトの脇をえぐる姿が露になる。オールマイトが両手で脳無の腕を押すが、体勢の悪さも手伝ってか脳無の指はびくともしない。

 

「黒霧」

 

「血や臓物が私の中にぶちまけられるので嫌なのですが、あなたほどの者なら喜んで受け入れる。目に留まらぬ速さで動くあなたを拘束するのが脳無の役目。そしてあなたの体が半端に埋まったところでゲートを閉じ、引きちぎるのが私の役目」

 

 状況が悪すぎる。

 響香と電気も顔が青い。八百万さんも動揺が隠せていない。

 かと言ってこの状況、距離を詰めている間に状況が終わってしまう。

 どうすればいいか、半ば無意識に拳を握りしめていたけれど、思わぬところから救いが訪れた。

 

「オールマイトーーー!!」

 

 緑谷君がオールマイトを救おうと突進し、それを防いだ黒霧と呼ばれた男に爆豪君が攻撃を加えた。

 

「邪魔だどけぇ!デク!」

 

 一瞬で黒霧を抑えることに成功する。そして次の瞬間、氷漬けになる脳無。

 

「テメエらがオールマイト殺しの実行役とだけ聞いた」

 

 緑谷君と爆豪君が動いた結果、ワープゲートから体が出たオールマイトは、氷漬けになった脳無から脱出できた。

 一息つけたけど、なにか状況に違和感がある。

 安心して余裕ができたおかげで、やっと違和感に気づけたと言ったほうがいい。

 観察しているようで何も見ていないほどに、私は追い詰められていたらしい。

 

 オールマイトが脱出し、そちらに気がとられた瞬間に襲い掛かる切島君。

 しかし”手の男”は余裕の態度でかわして距離をとった。

 

「クソっ!いいとこでぇ!」

 

 近接戦闘に強い緑谷君、切島君。

 オールラウンドに戦える爆豪君と轟君。

 それに負傷していてもオールマイト。

 並のヴィランならこの状況、逃げの一手。なのに、あの脳無、全く動かない。

 役割がオールマイトの拘束なら、氷漬けでも何かしらの動きを見せる筈なのに何の動きも見せない。

 あの”手の男”から命令がないと動かない?いや、動けない?人間なら自己の判断で動けるはずなのに、薬や洗脳で意思を消している、あるいは”手の男”の個性が精神干渉系ならそんな事が出来るかもしれない。

 ならば、そこにチャンスがある。

 集中しろ。気づかれていない、気付かれていたとしても脅威と見られていない私たちだからできる奇襲のチャンスを逃すな。

 

 無言で手を伸ばすと、電気がチャージをした大容量コンデンサを渡してくれた。今は放電させないように抑え込んで、好機を待つ。

 

 

「攻略された挙句、全員ほぼ無傷。凄いなぁ、最近の子供は。恥ずかしくなってくるぜ、ヴィラン連合」

 

 手の男が氷漬けの脳無に向く。

 あぁ、見るんじゃなかった。あの脳無とか言うヴィラン、緑谷君とは比較にならないレベルでキモチワルイ、子供のいたずら書きのような出鱈目な電子の動き。アレは多分、もう、ほとんどニンゲンジャ、ナイ。

 思わず吐きそうになるが、今はこらえろ、今が最大のチャンス!

 大容量コンデンサと残ったバッテリーから引き出したありったけの電子すべてを、”手の男”にたたきつけた。

 

「……ぁ?」

「死柄木弔!」

 

 死ぬほどでは無いにしても確実に意識を奪える電流を受け、前のめりに倒れこむ。

 それを見て黒霧と呼ばれた男は自らをワープゲートに沈めて死柄木弔と呼ばれた男の傍に転移する。

 

「死柄木弔!……あぁ、残念です。やはり今回はゲームオーバーのようだ。オールマイト。あなたの命、しばらく預けておきます」 

 

 捨て台詞とともに、黒霧と死柄木弔の姿は消えた。

 それと入れ違いで、先生方が駆けつけてくれた。

 

「……助かった」

 

 今度こそ終わった、と思った私は地面に座り込んで大きなため息をついた。

 





前回にやった無線が雑に届いた結果、オールマイトが若干早めに登場。
先生方も同じですが、ヴィラン連合の撤退も早まったため、死柄木弔とはエンカウントしていません。

改変のデメリットはありまして、特に緑谷の戦闘経験値減少。出力調整にはもう暫く苦労するでしょうが大きな変更はしません。
あとは轟、爆豪が現時点でのオールマイトの全力戦闘を見逃すぐらいですね。

メリットとしては、まず緑谷君、腕と足が無事でよかったね、と。原作沿いの部分で指は砕いてますけど。
次に死柄木弔の経験点が減少ですね。
あとオールマイトが無理をする時間が減ったので活動許容時間に余裕が出来ました。
なお、不意打ちされたと怒りが、雄英1ーA所属の電気系個性使いに向いてます。脳無置き去りは若干ご都合入ってますが、死柄木の身の安全を最優先した結果となります。


上鳴兄妹の合体技、サンダーブレイカー
名称の元ネタはもちろんグレートマジンガーw
攻撃範囲は茉芭の制御能力に依存。威力は上鳴電気に依存。
当人たちは「便利すぎてこれに頼ると成長しない」と思っているので出来るだけ使わない方針(つもり)だったりします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。