雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第87話 冬のインターン(2)

 ヒーローの活動は大きく、避難・救助・撃退という3要素で成立する。

 避難は主にヴィラン犯罪が発生した際の、市民の避難誘導で新人サイドキックなどが担当することがもっぱらだ。

 救助は、例えば山岳救助が得意なプッシーキャッツや大規模災害で活躍するウワバミ、消防に強いバックドラフトなどを上げればいいだろう。

 撃退、どちらかと言えば捕縛と言うべきだろうが、対ヴィラン戦闘や護衛はこの要素に含まれる。

 

「通常は救助か撃退。どちらかに基本方針を置くが、俺は3つ全てをこなす方針だ。管轄の街を知り尽くし、僅かな異音も逃さない。事件事故が起きれば誰よりも早く現場に駆け付ける。野次馬が居れば熱で遠ざける。すべてを並列に迅速に動く。それを常態化させるのが基礎だ」

 

 そして学校では積めない経験を山のごとく積み上げろ、と言うのがエンデヴァーの言葉。

 

「貴様らの課題は経験で克服できる。この冬、1回でも俺より速くヴィランを退治して見せろ」

 

 証明できなくていいなら簡単なんですけどね。最大距離で機能休眠(スリープ)してしまえばいいので。今なら多分、操作可能な最長距離も伸びていそうだし。

 限度はこれから探らないといけないけど。

 と思った瞬間、インカムに電子音が鳴った。同時にエンデヴァーが足から炎を出して飛び出した。

 

「待てや!」

「対応が速い!」

 

 このメンバーだと、移動速度が多少早くなったところで自分が一番遅い。あっという間においていかれる。

 

「乗れ!ブルー!」

「いいから速度上げて!回り込む!」

 

 気遣いはありがたいけど、お荷物になるのは御免被る。

 ショートの申し出は断って、ブーツから引き出した電子を増やし、ビルの壁を蹴って飛びあがる。

 

「接触予想修正、っと」

 

 動きが乱暴なバイクが1台。大通りに向かったほうが速度は出せるけど、警察も動きやすくなる。小回りの利くバイクなら裏通りだろう。

 

『当て逃げ犯は交差点を曲がって東に逃走』

『わかった』

「よし、ビンゴ!」

 

 建物などを足場に使うわけでなく、空中で姿勢を変えると瞬時に方向転換してる。慣性度外視でかなりきつそうだけど、それを可能にするタフネスがあるらしい。

 爆豪君なら同じ事が出来るけど、見てからだからワンテンポ遅れた。デクはそこからさらにツーテンポ。周辺に被害を出さない出力に落としてから、蹴る。やはり学校の訓練では遠慮なくやれる部分で後れを生んでいる。

 ショートは私よりは早いが、移動手段の都合上さらに遅れる。

 

「と言っても、ショートカットしてなお遅いって情けない!」

 

 軽く100mぐらいは稼いだのだけど、通りに出たときには既に当て逃げ犯は取り押さえられていた。

 そしてサイドキックの到着を待ってすぐに飛び出す。

 

「いいよ、行って」

「あの人がショート君以外に教えるなんて、レアなんだ。ここは任せて」

「ありがとうございます!」

 

 お言葉に甘えて、この場は任せて4人で追いかけることに。

 

 エンデヴァーの移動方法を見て思うところがあったのか、ショートは氷での移動に炎の噴射を推力にして速度を乗せようとしてスピンしていた。

 でも、方向性としては悪くないか。高速移動を本気でやるなら……ん~、発目さんと相談かな。

 私自身は一つ思いついた方法がある。ちょっとリスクはあるけど、ハイリスクと言うほどでは無いし、成功すれば速度は一気に上がる。

 試しに最小出力で一回試す……いけそう。思わず笑みが浮かんだ。

 

「……よし、行けそう」

「ブルー?」

「さっきはありがと、ショート。大丈夫、次は真っ直ぐ追い抜く」

「お、おぅ」

 

 移動中、エンデヴァーは爆豪君へのお説教。足での爆破もできるようになって、速度自体はエンデヴァーに劣らないが、まだ温まり切ってないのか、スタミナ配分を考えての事か追い抜く速度は出せてない。

 活性化(アクティベート)かけてあげてもいいけど、今は文句言われそう。

 

 エンデヴァーの飛ぶ先には暴走トラック。多分故障なのだろう。交差点に差し掛かるのに減速する気配がない。運転手が泣きそうな顔をしているのが見えた。

 

「フルフォルム!90%!!」

「即興新技、リニアカタパルトっ!」

 

 元々はイオノクラフト効果での浮遊効果のためにブーツに仕込んだ圧電素子とコンデンサ。そこから得られる電子と、ジャケットに貯めた静電気。バッテリーからの電子。

 超電磁砲(レールガン)と同じように周囲に配置して、自分を撃ち出して速度を得る。止まることを考えると後が怖いけど。ブレーキも同じ仕組みでかければ、何とかなる。

 

 デクと私が瞬間的にエンデヴァーを追い越す。デクはそのまま真っ直ぐにトラックに向かう。私はトラック手前で減速をかける。足元から電子が火花となって飛び散っている。

 交差点で転んでいた通行人を2人。包帯で引っ張るのと同時にバッテリーから引き出した電子で浮遊効果をかけて万が一の衝突を回避する。

 そのままだと着地で怪我をさせてしまうので、徐々に効果を緩めながら地上に下ろす。上手く行ったけど、コレは少し踏み出しすぎか。

 チクリと頭痛がしたから、今日は同じ手段はもうやめておこう。

 

「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとう、ヒーロー」

 

 トラックの方は無事にデクが止めていた。ちょっと力が入りすぎたか、手形がしっかりフロントパネルにのこっている。いっそ、そこにサインでも……いや相撲取りじゃないんだからダメか。

 

「……2人とも上出来だ。さて、ショート、爆豪。遅れたお前たち2人は同じ課題を与えよう。”貯めて放つ”、力の凝縮だ。最大出力を瞬時に引き出すこと。力を点で放出すること。まずはどちらかを無意識で行えるくらい、反復しろ」

 

「かっちゃん!APショット(徹甲弾)と同じ要領だ!」

「何で要領を知ってるんだ!テメェ!本当に距離を取れ!!」

 

 あぁ、大丈夫。ただのオタ気質の表れだから。別にそういう趣味じゃ、ないと思う……よ?でもデクの分析ノート、どこまで書いてあるんだろう。ちょっと気になってきた。

 

「焦凍はどちらも途上。氷の形状はある程度コントロールできていたな。同じことを炎でやってみろ」

 

 

 その後も比較的平穏にパトロールは続いたが、お昼は適当なビルの屋上でパンを齧るというなんとも微妙な物。そりゃまぁ、ヒーローコスチュームでファストフード店とかファミレスは無理だけど。これ、不法侵入にならないのだろうか?

 

「お疲れ、ショート、デク、爆豪君。マッサージ要る?」

「頼む、ブルー」

「お願いします」

「頼まぁ……特に足」

 

 午前中の消耗もあるので無理に遠隔では行わず、接触で。

 ショートは肉体的にはさほど疲労がない。左右の状態もさほど差がない。デク、爆豪君は足の疲労が確かに大きい。しっかり解して午後も動けるようにしておいた。

 当然、そんなことをしていれば、エンデヴァーの目に留まる。

 

「まて、何をしている?」

 

「私の個性を使って、神経に干渉、疲労抜きのマッサージですね。もちろん、回復による筋力増加を妨げるようなことはないです。学校では日常的に行ってます」

 

「あぁ、回復が早くなるんで助かってる」

「……なるほど。すまんが俺も頼めるか?」

「はい。もちろんです」

 

 これに関しては、職場体験の頃から好評だったからね。私としても訓練になるので断る理由はどこにもない。

 

「……むぅ、これは、よいな」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

 

 やっぱり親子だけあってショートと受ける印象は近い。まぁいくらか、加齢もあるだろうけど、疲労が蓄積している印象は受けるので少し念入りに。個性の特質上、冷え性と縁がないのは羨ましいと、場違いなことを考えてしまうぐらいには健康体だけどね。

 全員のマッサージが終わり、ビルの屋上でのお昼ご飯も終わった。

 もう少し休憩なのか、午前中の統括と言った感じでエンデヴァーが午前中の評価をしてくれた。

 

「デクとブルーアンバーはさっきの事故ではよくやった。課題は実戦経験と言うのは間違いないようだ。デクの身体能力面については、トレーニングを怠るなとしか言えんしな」

「はい!」

 

「全力が出ないという点と出力の調整はいったん忘れて、常時フルフォルムと言うのを維持できるぐらいになれ。集中しないとできないことを寝ながらでもできるようにしろ!それが出来たら同時に処理できることを増やしていけばいい」

 

 初期の緑谷君は出力調整で苦労したから、そこを後回しにするというのは目から鱗だろうなぁ

 具体的な例として、街を走る車の運転をあげている。何だかんだと説明が上手い。

 もしかして、教師としてはそれこそオールマイト先生より上なのでは?

 

「ブルーアンバーは個性の常時使用は問題がないようだし、そもそも属性が特殊すぎるので言いようがない。見る限り、自分の育て方はすでに確立しているのだろう?」

 

「そうですね。事故の時に2人を浮かせたのは少しキャパ超えかけたので、もう少し習熟が必要そうです。個性そのものについては、知覚領域内の人物把握による負荷で十分伸ばせます。先に事件を、と言うのについても、ヒーローらしく戦うことを無視すれば、操作可能範囲の限界地点にエンデヴァーがたどりつくより早く無力化も可能です。現代ヒーローの報酬システムを考えるとやれませんけど」

 

 ヴィランを倒す、捕らえるにしてもある程度の人の目が必要と言うか、証拠がないと後日の審査で報酬が支払われないなんてことになりかねない。

 ヒーローとして働く上でほとんど無意味だから、知覚範囲を伸ばしても干渉は見通し距離でいい、となってたんだよね。

 それでも伸ばす手は長いほうが良い。見えていて何もできないのが一番悔しいことだし。

 

「それは確かにそうだ。だが、本当に人命が危ないときには躊躇うなよ」

「はい」

 

 さすがにそれは寝覚めが悪い。食事休憩も終わりのようなので、午後もしっかり追いかけるとしよう。

 そのあとのエンデヴァーは、一言で言えば無双状態。

 事件解決数トップを誇る理由を見せつける圧倒的な活躍だった。私のように広域の知覚能力でもあるんじゃないかと言うくらい、動き出しが速い。

 

 夜、疲労で動けなくなることがないようにこまめにマッサージはしているが、そろそろ体力の底も見えてきたあたりで、街に響く悲鳴。

 

「強盗だ!誰かヒーローを!」

 

 動き出しは私たちのほうがわずかに早かった。それぞれが最大の速度で駆け出すが、エンデヴァーにすぐに追い越されそうなので、先に仕掛けてみた。

 

全機能休眠(オールスリープ)!」

 

「やると決めたときには!すでに行動し終わっていろ!……む?」

 

 ひったくり犯は急に強い眠気に襲われたか、少しフラフラとして倒れこむ。

 先にエンデヴァーがワンパンでKOして終わるかと思ったが、その拳を直前で止めた。炎で炙られる分、殴られるよりきつい気もする。火傷する前に火は消してくれたけど。

 

「貴様か。ブルーアンバー」

「はい。眠らせて無力化しました」

 

「こっちが先に気付いたのに」

「遠距離攻撃が的確にできるのは、凄い……」

「またかよ、クソが」

 

 3人には申し訳ないけど。そこはエンデヴァーの速さに文句を言って欲しい。ひょっとしてホークス並みに早いんじゃないだろうか、この人。

 そんなことを考えていたら、今度はひき逃げ事件の一報。

 

「貴様の手柄だ。後始末も任せる。3人はついてこい!」

 

 とりあえず合格、と言う事らしい。ヴィランは包帯で拘束して、奪われたカバンを取り返す。

 

「どうぞ。一応、警察が来るまでお待ちください」

「あ、あぁ、うん。ありがとう。ええと……」

「エンデヴァー事務所の仮免ヒーロー、ブルーアンバーです」

「ブルー……アンバー?新人さんなんだ。すごいね」

「ありがとうございます」

 

 到着した警察にヴィランを任せ、被害者の方はその場の簡単な聴取で終了。

 無線でおおよその方向を教えてもらって追いかけようとしたところ、すでに事態は解決済みだった。

 

「みんな、お疲れ様」

「あぁ、おつかれ」

 

 とりあえずマッサージを施しておく。轟君もそうだけど、爆豪君と緑谷君は昼以上に足に負担が来てるなぁ

 二人ともパワーがある分、継戦というか長時間運用にやや難ありか。学校じゃここまで長時間、個性を使うことないしね。ペース配分が難しい。

 

「合流したか。すまんが俺と、戻ったらサイドキッカーズにも処置を頼む」

「わかりました」

「うむ……礼を言う」

 

 エンデヴァーの神経網、年齢以上に反応が良く肉体的な疲労も私たちより少ない。本当に、タフネスの桁が違う。

 

「明日のシフトは別途指示を出す。明朝まで非番。非常呼集も対象外とするのでしっかり休め。ウォームアップを終えて8時までに訓練場に集合しろ」

 

「「「「はい」」」」

 

 そしてまた飛んで行ったエンデヴァー。何というか、心底タフな人だなぁ

 エンデヴァー事務所は建物内にサイドキックの宿舎が設けられている。割り当てられた部屋はゲスト用の部屋で、寝具とユニットバス、小さな机とテレビに小型冷蔵庫がある、ビジネスホテルのような部屋。洗濯は区画ごとに共用の洗濯場があった。

 食事はどうせ事務所の食堂と言うことで、4人で一緒に。爆豪君は渋ったけど、どっちにしても空いてる席の都合で相席になる。外に食べに行くにしても、面倒だしね。

 お風呂、それに洗濯を終えて、職場体験の時と同じく、クラスのみんなで立ち上げたチャットルームを見ると、初日の感想がずらずらと。

 

『職場体験の時と違ってきっちー!』

 

『お、そうか?フォースカインドさんも結構厳しかったけどな。この後は新年会兼リアルスティールの歓迎会だから、また後でな!』

 

『経験者の余裕かよぉ!あの女、変わったと思ったらぜんっぜん、変わってねぇ!』

『初日終了。リューキュウが新年会開いてくれたワ』

『こっちも終わった。エンデヴァー、やっぱり凄いね。すべてがワンテンポ速い』

 

 なにやら、私が書き込んだらルームの空気が固まったような。はて、何かしたっけ?

 

『そうですの。皆さん、どんな感じですか?』

『一所懸命、追いかけてる。速すぎると言ってたツクヨミの気持ちがちょっとわかった』

『そーいえば、ホークス、こっちに来てたな』

『こっちも来てた。爆豪君曰く、ヘラ鳥だって』

『草』

『我が師ではあるが、同意する。ホークスは速さはあっても威厳が足らぬ。もっともそれが師の味ではあるのだが』

 

 

 どうもラーカーズのところにもホークスは現れたらしい。本当に全国飛び回って布教してるのか。狙いは何だろうね?

 常闇君の印象は確かにその通りって感じだね。重苦しいホークスってなんからしくない感じだし。

 やり取りをたどると、どうも他のみんなもそれぞれ課題を与えられ、実戦の中でそれを掴めと言われているらしい。

 

 本来任意のインターンが課題扱いで全員強制というだけでも異常なのに、どうも士傑や勇学園、他の補講者とか仮免取得者は全員、インターンに出ている。

 学生をここまで急ピッチで鍛えないといけない事態が起きているか、これから起きる?

 これ、もしかしなくてもヴィラン連合とか関わってくるかな。ワン・フォー・オール初代はオール・フォー・ワンと死柄木弔がもうすぐ動くと言っていたし。

 

 

 思考が物騒な方向に飛びかけたけど、ドアホンの音。ドアホンのモニターには轟君……焦凍が映っていた。

 

「焦凍、どうしたの?」

『茉芭、ちょっと、話、いいか?』

「いいけど……ちょっと散らかってるから、談話室に行こうか」

 

 部屋に入りたいようだけど、流石に干したままの下着とかを見られるわけにいかないし。

 宿泊施設や食事場所のほか、福利厚生の一環か夜にはバーとなる談話室まである。バーテンダーまでは常駐していないので、飲み物はセルフだけど。

 食堂は夜勤シフトの人で混みあっていたので、バーの一角を使わせてもらう。未成年なのでジュースをもらい、目立たぬよう隅のあたりに陣取った。

 

「寝ないと明日に響くよ?」

「わかってる……けど、ちょっとぐらいはいいだろ」

 

 少し拗ねたように言う。うん、気持ちはわかるからそれ以上は言えないけど。

 

「うん。今の生活だと中々、デートとかもできないしね」

「そうだな」

「とりあえず、初日お疲れ様、焦凍」

「あぁ、今日は茉芭と緑谷にしてやられた。明日こそは俺も追いつく」

 

 お互いのグラスを軽く合わせる。状況も相まって、何というか一気に大人のデート気分だ。お互い、雄英のジャージ姿なのが台無しだけど。

 

「ふふっ」

「どうした?」

「いや、状況がデートっぽいのに服がね」

「そう言えば、私服は寮の部屋着かiアイランドでのドレスぐらいか。あれはまた見たい」

「百ちゃんの借り物で、あの騒ぎで痛んでもうないよ。1点ものみたいだし」

 

 そのうち警戒態勢が解除されれば、普通の学生らしいデートの一つも出来るだろう。ヒーロー科に入った時点で望み薄かもしれないけど。

 その後はすこし、クラスのメッセンジャーの話をしていた。一応、焦凍のアカウントもあるのだけど、見てなかったらしい。

 

「こんなのやってたんだな」

「うん、たしか焦凍にも招待飛んでたはずだけど、あぁ、それ」

 

 メッセージを確認してルームに入るとスマホを弄ってメッセージを書き込んでいた。

 

『ショートだ。今日はデクとブルーアンバーにおいていかれた。明日は追いつく』

『!!!!』

『ちょ、え?ホントにショート!?』

 

 おぉ、通知がすごいことに。ともあれ、付き合ってたらキリがないか。ちょっと横に移動して、焦凍のスマホ画面を写るようにして自撮り。一緒に映ってる写真を張り付けて送る。

 

『見ての通り本人だよ。今日はもう寝るね。みんなも夜更かししないでねー』

 

 あれ、無反応。あ……ヤバイ。やらかした。

 

『そうですわね。今日はそろそろお開きにしましょう』

『おう、おやすみー』

『また明日―』

 

 うん、みんなからの返信はとりあえず無難なものだからよしとしておこう。失敗した。焦凍の写真だけ撮ればよかったんじゃ……あー、でも2人でいたと思われるし、それはそもそも事実だから、結果は変わらない……うん、気にしないでおこう。

 状況に酔って調子に乗ったなぁ、あー、恥ずかしい。

 

「茉芭?どうした?」

「あ、うん、いやちょっと、今の写真でバレたかなーとか、隠し事って向かないなぁ、って」

「……別にいいだろ。悪いことしてるわけじゃないし」

「うん……でも、公私の区別はお互い、ちゃんと付けよう。朝とか少し危なかったよ?」

「あぁ、悪い。そうだな。制服の時は上鳴と轟、コスチュームを着てる間は、ブルーアンバーとショートか……名前で呼べる時間がすくねぇ」

 

 その通りなんだけどね、この場合、焦凍のヒーロー名がずる過ぎる。

 

「ショートって呼べる分、私は少し得した気分だけど」

「……改名しないか?マッハに。速くなったし」

「流石にそれは嫌」

 

 何と身勝手な。そう思って軽く睨むと焦凍の眼が弧を描いてる。うん、体よくからかわれたか。

 

「むぅ……さ、もう寝よう。流石に寝不足になるし」

「あ、その前にさっきの写真くれ」

「……ルームから保存して。じゃ、お休み、焦凍……ちょ……ん」

「ん……おやすみ、茉芭」

 

 あぁぁ、弄られるのがイヤで、暫くはナイショにするつもりだったのにぃ

 これって絶対学校に戻ったら弄られる。学校に戻るまでに、いっそオープンにするぐらいに腹くくらないと。

 

 

―――Side:上鳴電気

 クラスのチャットルームでやらかしたから、秘密ルームを見に来たらやっぱりお祭り騒ぎになっていた。

 

『ふぉぉぉぉぉっ!』

『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』

『普段は考えすぎるぐらい慎重派なのに、マッハにしちゃ珍しい』

『?』

『あぁ、だって、みんなの前では隠そうって思ってるだろうし』

『確かにそんな発言はあった。流石に仲が良いな』

『サンキュ』

 

 ほんとなー、女子のみんな、特に耳郎には感謝だよ。小中の頃はほとんど友達いなかったからな、マッハ。あんまり偉そうに兄貴風吹かすのもなんだから言えねーけど。

 

『少しぐらいは浮かれるでしょう。あぁ、直に見られないのが惜しいですわ』

『ねー!絶対今頃、気付いて悶絶してるよ、茉芭ちゃん』

『そういうものなのか?』

『そういうもの!あー、このキュンキュン成分はB組にもおすそ分けしたい―!』

『今はそっと見守るべきよ。三奈チャン』

『だね』

 

 ヤオモモがこういうのを楽しむ上に、マッハを応援するのは意外だけどなー

 てっきりヤオモモも轟狙いかと思ってた。仲良さげだし。俺、人を見る目ねぇなぁ

 

『そもコレ、轟が本物って証明したいだけじゃね?写真にスマホの画面入れてるし』

『だと思うぜ。で、つい油断するまでがマッハクオリティ』

 

 多分、折角だから傍に座りたいとか思ってたんじゃねーかな。正面から撮っても多分、映り込みを解析されるだろうけど。

 

『ぶー、瀬呂ぉ、上鳴ぃ、こういう時は冷静な突っ込みよそうよー』

『ワリィ、でもいい顔してるなー』

『ねー』

『でもさみしいだろ、お兄ちゃん?wさ、次のやらかし期待して、寝よ』

『るっせ。おやすみーノシ』

 

 うん、確かにいい顔して笑ってら。

 これのためならあの親父とわざわざ会ったのも報われるわ。寮を出来るだけ空にしようって話で仕方なく連絡入れたけど。正直、一度離れると、相手すんのがしんどかった。

 久しぶりに会った親父は相変わらずで、母さんは少し白髪が増えていた。

 

 どうもマッハ絡みでだいぶ針の筵らしい。自業自得だけど。

 仮免事件の時の轟と映ったインタビューだって、どれだけ言っても本人の実力だって信じやしねぇ

 確かに1年前とじゃ個性の使い方が全然違うけどさ。だからって別人扱いはねーだろ。現実を見やがれ、クソ親父。

 けどま、一家団欒しようなんて言わなかったおかげで、この笑顔があるんだから、そこだけは感謝してもいいか。

 

「轟ぃ、頼む。マッハを幸せにしてやってくれよー」

 

 気が早いとは思うけどさ。思うだけなら自由だろ。さー、明日も忙しくなりそうだし、寝るか!

 いよいよ本格的にラーカーズに稽古つけてもらえるんだ。

 ガッツリ強くなって、マッハを驚かせてやるぜ!

 

「そんでもって、俺も彼女ほしー」




まぁ、一応、くっつけちゃった以上は多少はねぇ
写真はきっと満面の笑み。


そして、当初全く予定がなかったタイトル回収。本作強化デクよりも遅いですが、並みのヒーローよりはきっと速い。
ホークス?あれは並じゃないです。

次回は冬のインターン編、メインイベントですw
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