雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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本日2話目。
短いです。エンデヴァーがポエムっているだけです。
なお、読まなくてもストーリーに影響ありませんw


第89.5話 閑話・エンデヴァー

―――Side:エンデヴァー

 夢を見ていた。

 妻と子らが楽しそうに食卓を囲んでいる。他愛ない会話で笑い合う、そんな小さな幸せを噛み締めるような温かい夢。だが、その食卓にいつも俺はいない。

 

 オールマイトが力を使い果たし、見るも無残な姿となってから見るようになった夢だ。

 徐々に色褪せ、風化して崩れ落ちる。

 

 風化し、すべてが崩れ落ちた。俺はその灰を無駄と知りながら集め、冷を、冬美を、夏雄そして焦凍の姿を取り戻そうとするが、やがてその灰すら崩れ去る。

 耳に残るのは、本物の憎悪に塗れた声。

 

「俺に、火をつけておいて……なかったことにするなよ!ちゃんと俺を見ろよ!!」

 

「お前のせいだ……お前が、お母さんを!」

 

 あぁ、燈矢、焦凍。その通りだ。俺が冷を追い詰めた。俺がお前を殺した。お前の火傷は、俺が負わせた。

 

 

「子供が親の所有物ぅ?ないわー。自分(テメエ)野望(ケツ)自分(テメエ)果たせ(拭け)よ、ドクズ親父(エンデヴァー)

 

 

 正しすぎて怒る気にもなれなかった。小娘の挑発など聞き流して終わりのはずだった。

 しかしあれ程までに求め焦がれたナンバーワンの座が転がり込んできたとき、個性婚を意図して持参金とナンバーツーヒーローの名声を盾に、氷叢(ひむら)の家から冷を娶った……いや、買ったこと、その後、冷を追い詰め、壊してしまった俺の狂気、執念、妄執。すべてが自分だけでなく、家族までも更なる地獄に引きずり込もうとしていることを感じた。

 俺だけならまだいい。地獄の閻魔とて、燃やし尽くしてくれる。だが、焦凍や冬美、夏雄、そして冷にまで累が及ぶとなれば話は別だ。

 

 

 俺の罪は裁かれなければならない。

 しかし法の及ぶ話ではない。禁忌であっても、違法性がない。ならばどうするか。俺ただ一人が外道であって、家族はすべて犠牲者であると、知らしめるのが一番だった。

 そう思い、冬美を説得し、冷に手紙を書き、冬美たちの逃げ場所を確保し、あの日を迎えた。

 

 

 夢を見ていた。

 後に引けなくなっていた自分。そしてそれは冷も同じだった。

 会見後に面談が叶った冷。微かに震え、触れれば消えてしまうように儚さの奥に、僅かに感じる強さ。夢の中で冷が、冬美が、夏雄があの日、俺に言った言葉が繰り返し聞こえてくる。

 

「エスカレートしていくアナタが悍ましくて、子供たちにまであなたの影を見るようになっていた」

 

「壊れているのを知りながら、怖くて踏み込めなかった。上っ面を繕う事しかできなかった。だから、現実を突き付けてきたあの子が怖かった」

 

「全部、アンタが始めたことで、アンタが原因だ。でも、焦凍が言ったように、ぶん殴ってでも止めていれば、燈矢兄だって、今も生きていたかもしれない」

 

 あぁ、すべては俺がなした(つみ)。だが、その俺を止められなかった(つみ)をお前たちは背負うというのか。そんな想いに、俺は甘えていいのだろうか。

 

「私たちよりよっぽど辛いハズの焦凍が 恨んで当然の私を再びお母さんと呼んでくれた。雄英高校に入って、お友達を作って、人を愛することを知って……焦凍がウチのヒーローになってくれたのよ」

 

 

 インターンとして、焦凍、上鳴、爆豪、緑谷を受け入れることになった。焦凍の頼みでもあるし、公安からの要請……いや、強制もあったので渋々と受け入れたが……ホークスのもたらした情報を考えれば納得だ。

 素質素養は十分だろうが、俺に彼らを育てることができるだろうか。

 

 緑谷は体育祭で初戦敗退。さほど見るところはないと思ったが、それ以降に急速に頭角を現したのだとか。HNで閲覧できる事件の詳細を見れば、凶悪な指名手配犯マスキュラーを単独撃破できている。

 焦凍から聞いた話だとオールマイトの弟子だとか。サー・ナイトアイの下でインターンを行ったこともある。さらなる実戦経験か。まぁいい、奴の弟子がどれほどのものか、見極めるのも一興だ。

 

 爆豪は……こいつは、ある意味で息子たちの誰よりも俺に似ているな。脳無とはまた違う、ただ可能性と未来を信じ、自信に満ち溢れ強烈な上昇志向が全てだった時代の俺。挫折も知って、なおも進むというのなら、更に俺に近い。俺と同じ過ちに陥る可能性が最も高い少年だろう。

 俺がコイツを導けるとは思わん。だが、挫折をも糧に進んだ背中を見せてやるぐらいはできるだろう。後は……コイツ次第だ。

 

 そして……今回の件まで、存在から目を背けていた少女。上鳴茉芭(まつは)

 経緯までは知らぬが、焦凍が懸想している相手と冬美が言っていた。

 しかし互いの様子を見る限り、焦凍が気にかけているのは事実だが、まだそういう段階ではないのか、折り合わなかったのかもしれぬ……何か、父らしいことの一つもできるとよいのだが、色事に私が口を出すわけにもいかん。どうしたらいいだろう。

 

 実戦経験が、と言うのはまだわかるが、個性への干渉!?大した事でないように言うが、体育祭の時とは能力の傾向がまるで違っている。ただの個性伸ばしと言う言葉では説明がつかない能力開発。この短期間でどれだけの鍛錬を積めばそれを成せる!?

 さらに申告の通りなら、その長大な探知範囲は既にサイドキックとして引く手数多などと言うレベルではない。

 おまけに包帯捕縛術、だと?一部の医療ヒーローが使う特殊戦闘術まで使いこなすなど、俺にも想像がつかんぐらいの狂気じみた密度の鍛錬を積んで、練度を上げたのだと容易にわかる。イレイザーヘッドめ、随分と入れ込んだモノだ。

 まぁ、いい。実戦投入に支障はないなら十分だ。焦凍のサイドキックと想定し、ペアで動かしておこう。後は焦凍次第でいいだろう。

 

 は?

 待て、冷。何を言っている?

 認めた!?あぁ、いや、その、なんだ、昼とはまるで別人ではないか。こうしてみると、年相応の少女にしか見えん。ま、まぁ、お互いが合意なら、構わん。私もなんだかんだと歳だし世間では孫がいてもおかしくない。

 むしろ、冬美からはそんな話が……いや、それは俺のせいだな。

 俺が、冬美を家に縛り付けた。あの子が焦がれる普通の家族、それを外に求めればいいものを……これも俺の甘えだろう。

 後悔はいつでもできる。いまは焦凍の成長を祝福し、見守らねば……しかし、いささか執着が強すぎる気が……すまぬな、上鳴。青春の思い出ぐらいのつもりだったかもしれぬが、多分逃げられぬぞ。

 あぁ、しかし、彼女はどうしようもなく淀み狂っていた家に風穴を開けてくれた。その恩にはできる限り報いよう。無論、焦凍の望みが最優先だがな!

 

 

 

 夢を見る。

 妻と子らが楽しそうに食卓を囲んでいる。他愛ない会話で笑い合う、そんな小さな幸せを噛み締めるような温かい夢。子らの傍らにはそれぞれの伴侶らしい影が見える。1人を除いて顔すらわからないが、皆、幸せそうだ。

 俺の傍らには、今よりも皴が増えた冷。その膝にはまだ幼い赤子の影。

 まだ見ぬその子に手を伸ばす。小さい指が俺の指を掴む。視界が滲む。それを見て、皆が笑う。

 

 何と幸せで贅沢な夢だろう。

 

 涙がでそうなほどに幸せなその光景……いつか見たいと願い、そのためにできる事を考えながら、俺は眠りにつく。




以上、エンデヴァーの捏造脳内ポエムでしたw
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