全てを知っているスズカの元『同期』のウマ娘 作:一般通過どうした急に
暗い暗い底なし沼、そんなところに落ちていく感覚。まあやったことがヤッたことだからしょうがない。
『派手にヤッたねぇ』
『そうだね』
自分のウマソウルと会話する、此処におちてから不思議と話せるようになっている。恐らくまあ、私があっち側に行こうとしているからだろうか
『でも。しょうがない、だってそういう風にするしかなかったんだ』
『それもそっかぁ』
体の五感が失われていく感覚がある。触覚も、聴覚も、視覚も。ゆっくりゆっくりと崩れ落ちていくような感覚
『やり残したことはないの?』
『無い、とは言い切れないかなぁ……スズカの方は私からもうどうこうするわけにはいかないんだけれども』
最後に見た後輩の泣き顔。あれは駄目だったよねぇ、失策失策。もっとちゃんと突っぱねられたら良かったんだろうけど。そうはならなかったんだ
『そ、じゃあ』
ゆっくりと上に引っ張られる感覚を覚える、先程まで下に落ちていく感覚しかなかったのに。そんなことを思っていると
『まだ、キミは此方側に来るべきじゃないね』
そんな言葉を聞いた直後、私の意識は消えていっった。
「んん………??」
ゆっくり、ゆっくりと瞼を開ける。長らく動いてなかったようで、動かすたびに節々から音が聞こえてきそうなぐらいには寝ていたようだ。
「……生きてたんだ、私」
ため息混じりにそんなことを漏らしてしまう。未練は無いわけじゃないが。それはそれこれはこれ、あの時素直に逝っておくべきだった、と思わなくもなかったりする
「まあ、病院だよね」
ぶっ倒れたんだから病院に入ってるのは当然だろうな、とは思う。そんなことを思いつつ、周りを確認する
「だーれもいない」
そりゃそうだ、なんて軽く自嘲してしまう。スペが例外なだけで周りにつっけんどんで傷つけるような対応しかしてないんだから誰も居るわけがないんだよね。
「さて、どうしよっか」
軽く独白してから今後のことを考えてみる、レースにはもう出れないだろうから。トレセンにはもう居られないだろう、家に帰るしか無いんだろうなぁって思う。なんて言われるかなぁ……褒められはしないだろうし。まあいっか、やってしまったことなんだから
そんなことを思いながらナースコールを押す、押さないでうろつこうものなら大騒ぎになるはずだ。
それからお医者さんも来て色々と話してくれた
まず私は仮死状態まで生命力が落ちていたこと、これはもうしょうがない。私達の源であるウマソウルをオーバーフロー限界まで使い切ったんだから。むしろ死なないほうが奇跡なのだ
次に体の外傷はなかったこと。これは心底驚いたあんだけの衝撃を受けて外傷がなかったのは不可思議だったけど、ウマソウルのほうが負担してくれたのではないかということ。
そして最後に言われたのは
「やっぱり、そうだよねぇ」
著しく身体能力が低下したこと。お医者さんはダメージによるものじゃないか、なんて言ってたんだけど。そうじゃない筈だ。それを証明するものが有る
「
私の髪の色のことだ。色素が全部抜けたかのように白毛になっている、本来の髪の色とは真逆になっちゃったなぁって思う。
そんでもって、表情も大分変わった。こんな風に苦笑するような顔じゃなかったし、笑うような顔でもない。あと声も大分変わった。そんなことを思いつつこれからどうするか、という話に戻る。
私には現状三つの道があるそうだ
1つ目は、走れはしないがトレセンに残ること。仮にも2冠だ、ノウハウを教えるということで手を打てる可能性があるということ。
2つ目はトレセンから去ること、これが一番穏便といえば穏便なのは語るまでもないだろうよ。
そして3つ目が
「
これはURAからの極秘の選択肢らしい。お医者さん曰く、スキルを失わせるには勿体ないし。かといってそのまま戻すのも問題が多すぎる、だからいっそのことそういう風にしてみるということはどうか?と
勿論、セルメントであることは隠すし。セルメントは海外の病院で療養するということにしておくとのこと。
そのうちで私が選んだ道というのが……
「……いいのかい?それで」
お医者さんの言葉が耳朶を打つ、まあ私にはこれがちょうど良さそうな気がするんだよね。どうなるかはわからないけれど
──それから数週間後、私はトレセン学園に舞い戻った
新しい制服…新しいのかはよくわからないけど。それに腕を通して学校へと向かう。
「よし、行こっか」
校門までの道を歩けば、なんだかとても懐かしい気分に襲われる。まあ一ヶ月以上居なかったわけだから仕方ない
そんでもって、職員室に赴くと担任の先生の元へ向かう
「失礼します」
「ああ、いらっしゃい。初めまして。短い期間になるかもしれないが、学園生活を楽しんでいって貰って欲しい」
「ありがとうございます」
「では、宜しくね
ディサグリーメント、それが今日からの私の名前だ。
そしてホームルーム、そこで編入生として私は元いた教室へと案内される
「入ってちょうだい」
聞き慣れた担任の先生の声で入る、こそこそとする必要がないのが唯一の救いだろうか?なんてことをお思いながら教室へ
「ディサグリーメントです、よろしくお願いします」
ペコって頭を下げると、やっぱりというべきか視線が集まる。多分髪色のことなんだろう、芦毛は割といるけど白毛はほんとに珍しいと言うかほとんど居ないのが現状だ。
セルメントとは似ても似つかない雰囲気だから絶対にバレない自信がある、フフン。私とまともに会話したことが有るやつなんてクラスメイトだとスズカぐらいだからね
「はいよろしく、彼女は生まれつきウマソウルが安定してないみたいなの。だからトレセン学園で刺激を受ければ良くなるのではないか、ということで編入生として此処に来たから。困っていたら助けてあげてちょうだいね?」
URAの設定は先生が言ったとおりだ。白毛なんて珍しいものの特性なんて皆が知ってるわけもないのででっち上げるなんて簡単なことである。
ふと、空白になってる2つの席を見る。一方は私、セルメントの席だ。まだ片付けられてなかったんだなって思う。いや片付けて私が今日からまた彼処に座るんだろうか?
もう片方はというと……
(やっぱり、復学出来てないのかスズカは)
スズカについてはあまり詳しく教えてもらってないし、調べても居ない。彼女とは必要最低限の関わり合いで済ませようかなと思う。
そんなことを思いつつ授業を受ける、編入生ということもあって。周りはそこはかとなく距離を置かれていたが、すぐに打ち解けられた。そりゃそうだ、こいつらのことを知ってるんだから当たり前である
楽しい一日が終わった。ほんとだったら寮じゃなくてアパートから通うつもりだったんだけど。何が有るか分からないというURAからのお達しで寮に住めと言われた。まあそれもそうかも知れない、あくまでも偽名使えるの此処だけだろうし
というわけで寮に到着
前と同じ寮だから大丈夫そうかな。フジ寮長にはどこか出会ったこと無いか?と聞かれたけど。フジ寮長みたいな人を知ってたら態度に出ますよ、なんていうと納得してくれたようだった。
問題は同室の相手である、編入生だから一人部屋って言うことはありえない。そこは贅沢言えないのである。空き問題っていうのがね………
意を決して部屋に入る
「失礼しまーす……?」
コンコンとノックしても、返事がない。なので恐る恐る入ってみる。
「誰も居ない……?」
そんなことを思いつつ、謎の既視感に襲われながら荷物を置く。新しく支給されたものだから。ウマホから何から何まで此処専用になっている、それは仕方ないな、なんて思いながら部屋を片付けていると
『───!!』
廊下の方から何やら争うような声が聞こえてくる。私が居ない間に治安でも悪化したのか?なんてことを思うが変に関わる必要もないだろうね
「同室の子、誰なんだろうなぁ」
着替えてベッドに寝転びつつ、今後のことを本気でどうするか考える。個人的には、スズカとスペが持ち直してくれれば、割とすぐにでも此処から出ていくつもりだ。長居するものじゃない、バレるバレない云々関係なく
多分きっと、走れなくなったことに対して未練が生まれてしまうだろうから
「あー、やだやだ」
ゴロゴロ〜ってベッドの上でのたうち回る、自分でヤッたことだからしょうがないじゃんよ〜なんて言い訳してると。部屋のドアが開く、同室さんとのご対面だ
…なーんてのんきなことを思ってたけれど。現実はそう甘くはなかったし、優しくもなかった
「……どうも」
同室相手は、自分が傷つけてしまった後輩だったのだから
ギャグを更新したからジャブにすらならないのは勿論耐えられるでしょ?