全てを知っているスズカの元『同期』のウマ娘 作:一般通過どうした急に
単なる導入なのでダメージは発生しないです
「なんでセルメントさんの容態を教えてくれないんですか!?」
私の声が生徒会室に静かに響く。そこには生徒会長、生徒会副会長。そして彼女に関わり合いを持っていた人たちが詰めかけていた。皆不満があったのだろう、貴女はおそらく自分のことをあまり快く思っていない。或いは思われていないと考えていると思いますが。実際はそうじゃないんです、そうじゃなかったんですよ
同期の方々だけではなく、それ以外にも。たくさんの人が貴女の帰りを待っているんです
「……情報の開示は、残念ながら私の一存ではできない」
重苦しい声でルドルフ会長が口を開く、それだけでも萎縮してしまいそうになるが。そんな事を言っている場合ではない。
「上の指示、というわけですか?」
セルメントさんの同期の一人である、フクキタルさんが口を開く。普段の明るい表情とは打って変わっている。ちょっと怖いぐらいだ
「そうだ」
ルドルフ会長は短く答える
「……生徒会が駄目なら、うちの家にお願いして探るしか」
ブツブツと同期の一人であるメジロドーベルさんが言葉を漏らす。私はよくわからないけれど、メジロ家というのはかなり権力があるらしい。
「……それもやめておいたほうがいい」
ルドルフ会長が短い言葉をかけつつ一枚の紙を渡してくる、おそらくURAからの指示書だろうか?
『生徒名セルメント。本生徒は海外療養を希望し、此方もそれを受諾した、なお
思わず紙を破り捨てたくなる衝動を必死に抑える。どうして急な判断を下すのか、本当に本人の意志なのか?そんなことも知らされないままなのだから。
「…ちょっと早急過ぎないかしら?まるで事実隠蔽してるように見えるわよ?」
いつも陽気なシーキングザパールさんも普段の鳴りを潜めて神妙な声を出す。それを聞いてルドルフ会長がしばらくして重い口を開く
「…それも含めてURAは不介入を此方に要求してきている。あちら側が詮索するな、と言っている以上此方からの介入は悪手だ。最悪、対立する可能性もある」
「対立が怖くて、動かないんですか…それでも…それでも上に立つ人間ですか!」
ドーベルさんが吠える、普段のおとなしい彼女からは想像もつかないような大声だ。他の人達も似たような表情を浮かべている、シーキングザパールさんだけは神妙な顔を崩さないでいるが
……しばらくの時間がたった
「………私とて」
誰かがしびれを切らして詰め寄る前にルドルフ会長が口を開く
「私とて口惜しいさ……!」
その一言を皮切りに今まで押さえつけていたものを吐き出してしまうように言葉を続ける
「一人の生徒の行く先も調べることもままならずに、ただ時を無為に過ごすことは私とて口惜しい!たった一人の行く末すらまともに手助けもできずに!見送ることすら叶わずに居ることが!」
ルドルフ会長はなおも顔を上げないまま言葉を続けた
「あの秋天での出来事は間違いなくマスコミの格好の餌になることは承知している、しているとも。だが私ならばそれをねじ伏せることも容易なはずだ。だがURAはそれを否とした、当然問い詰めた。URAは不承不承ながらも、返答をしたよ」
──これは我々の意向だけではない、彼女自身の意向だ。
──故に我々も下手に動くことはできない、我々が介入できないことに君が介入することはできない
──なぜならば
「
ルドルフ会長の絞り出すような声が静かに、虚しく響いた。
「……なら、私達が「皆さん」……タイキ」
ドーベル先輩が何かを言う前にタイキシャトル先輩が遮るように声を出しつつ、首をふる。此方が介入すればどうしようもなく面倒なことになると、下手をするとメシロ家とシンボリ家とURAに軋轢が生まれるというように。
そうして仕方がなく部屋をあとにする。
─────────
彼女達が帰ったドアをしばらく見つつ、ただ漠然としている私がいる。ああ言うしかない私の不甲斐なさとやるせなさが込み上げてくるが溜め息を出す程度に留めるしかない。
「………いいのか、会長」
壁に寄りかかって一言も言葉を発せずにいたブライアンが声をかけてくる、此方が返答できるまでどうやら気を利かせてくれていたらしい。彼女らしからぬ気遣いではある。
「……良いも悪いない。一木難支、私一人ではどうしようもない状況だ」
「……惜しい相手を、失いましたね」
「セルメントと接点が…?」
「…他人、と呼ぶには不義理な程度には」
そう言葉を発するブライアンに思わず目を丸くしてしまう、あまり人と関わりを持とうとしていなかったセルメントが意外なところで交友関係を…そういえば、彼女をサイレンススズカと引き離すことに賛成したのはブライアンだったか
「アイツは…セルメントは優秀でしたよ。あの中に秘めていたレースへの賭ける思いは、あの中では…いえ、歴代でも相当なものでした。多少と言うにはそれ以上に並走もやりましたから」
サイレンススズカと引き離すことに賛成したのもライバル同士でぶつかり合いたい、という思いも理解できなくはない。というふうに理解を示したのだろう
「……今思えば、あの頃からアイツは全部、知っていたのかもしれませんね」
そんなことをブライアンは言いつつ、瞑目する。セルメントはブライアンとエアグルーヴの助力を受けていたのだ。ブライアンは良き好敵手を求めて、エアグルーヴは先人として
もう一人の副会長というと……
「……エアグルーヴの容態は?」
「……芳しくはない。肉体的な負荷はほぼない、だが精神負荷は察するに余りある」
「……そうか、エアグルーヴが一番……辛いだろうからな」
ブライアンはやるせなさを隠さず──空白になっているもう一人の副会長の席──エアグルーヴの席をじっと眺めていた
───とある病棟にて
魘される
魘される
魘される
ただひたすらに魘される、何もできなかった後悔と。あの日あの時、助力をしようと思った日の浅はかさと。あの日あの時助力したからこそ最悪の事態を避けられたのだという現実と
──あの日あの時、もう少し。ほんの少しでもいいから。歩み寄れていたならと
──例え、あの出来事そのものは変えられなかったとしても。ほんの少しだけいい方向に舵を取ることができたかも知れないと
──あの子だけに、背負わせることは無かったのだろうと
どうしようもなく、ただ魘される
次はエアグルーヴ視点とブライアン視点のお話です。
この二人がもう少しあれこれしないとセルメントが助かるルートすら発生しません。
端的に言いますと、この状態でデビューした時点で詰みです
例えこの後にスペシャルウィークや同期組、生徒会、その他大勢がセルメントともっと深く関わっても『必ず』このルートに突っ込みます。どうやってもね
ちなみにルドルフの曇らせの需要……ある?この二人よりキツくなりそうだから想定してない
──追記──
これをアドマイヤベガとかに見せたらどうなるの?とかいう畜生的発想を知り合いにぶつけられましたが流石にそこは書かないよ