極限まで働きたくないから頑張って最難関のウマ娘トレーナーになったで   作:圧倒的雑魚臭

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パラパラヒント出すから考察したい人はするんやで


プロローグ

「トレーナーさん、失礼いたします~」

 

 ノックの後に扉を開ける音がすると同時に鈴の音のような声が耳に入った。

 

「……トレーナーさん何してらっしゃるんですか?」

 

「俺は新しい寝相を研究しているのだ。人生において恐らく一番長い時間をともにするであろうこのソファーに対して一体どうやって報いてやれるか。それを考えた瞬間、俺は閃いた。最善の安らぎ姿勢を見つけて寝てやるのがこのソファーにとっての最高の褒美ではないか。と」

 

「……はあ……?」

 

 眉をひそめて恵まれない子供を見るような目で俺を見下ろす栗毛のウマ娘。エアコンの風で長く伸ばした長髪がサラサラ流れ、前髪の流星がぎこちなく動いた。

 

「あの、トレーナー室でお休みになるのは構いませんけど、もう少し然るべき姿勢があるのではないでしょうか?私じゃなかったらどうしたのかと大騒ぎになってますよ?」

 

 そう言って困り顔で右手を顔に当てる俺の担当バ。

 そんなに変かと怪しみながら、俺は動かぬ首の代わりに目線だけを下げて今の状況を確認する。

 

 ヨレヨレのTシャツにくたびれたズボン。黒い靴下の先端に穴が開いているのが見てとれた。ズボンからはみ出した白いTシャツの間にはチラリとセクシーなおへそが覗いている。重力に逆らって天井に上がった左足はソファーの柔らかな背もたれの先に優しく受け止められていた。右肩を下にして腰も若干ひねるように背もたれに預けられ、上が足先、下が頭という絶妙な恰好をしていた。地面に対して体全体が180度の姿勢が宙吊りだとするなら、この状態はだいたい七分の四ほど宙吊りだろう。

 

「んお!これは酷い!」

 

 改めて自分の姿が客観視されると思わず声が出る。小一時間ほどこのソファーの上で最適の寝相を探していたため、他人から見て自分がどのような恰好をしているのか全く気にしていなかった。

 

「まあ、いいか」

 

 だが俺は他人の目など最初から気にしなかった。

 

「よくありません。こんなところ他の人にでも見られでもしたら何て言われるか……。お休みになる時は普通(・・)の格好でお願い致します」

 

 右手を頬に添え、目を閉じて溜め息をもらすウマ娘。お節介だなと思いつつ見上げていると耳が若干絞られているのが分かった。こりゃあいかん。

 

「分かった分かった。普通に寝るよ。これで文句ないだろ?」

 

 そう言って足を下して仰向けの姿勢になった。息苦しさを覚えていたところに気道が確保されて新鮮な空気が肺に広がる。同時に担当バがいつも着けてるの匂いが鼻をくすぐるのが分かった。

 

「やっぱこの姿勢が一番楽だな。じゃあそういうわけで俺はもうちょっと寝るからトレーニングの時間になったら起こしてくれ」

 

 そう言いながら瞼を閉じるが、いつもなら相槌の一つも入れてくれる担当バが無言で俺のそばを離れないのが気配で分かった。

 変だなと思いながらゆっくりと右目だけを開ける。そこには笑顔を張り付けながら完全に耳を絞り切って溢れ出る武士のオーラを隠そうともしない栗毛のウマ娘が佇んでいた。

 

「……トレーナーさん?今何時だと思ってますか?」

 

 俺はゆっくりと左の壁に掛けてある時計に目をやる。ほとんど真下から見上げる形ではっきり分からなかったが、一番太い短針が4の数字を超えたあたりなのが確認できた。

 

「……えと、トレーニングメニューは俺の机のどこかにあるから……」

 

 そう言って俺は書類の山で埋もれそうな事務用の机を指さした。

 

 彼女のこめかみからブチッ!!という何かが切れる音が木霊した。

 

「さあトレーナーさん!楽しい楽しいトレーニングですよ~!」

 

「いやだあ!このくそ暑いのに炎天下の中放り出されるなんて地獄だあああ!!」

 

 俺の抵抗もむなしく、俺の担当バ――グラスワンダーはシャツの首根っこを掴んで(地獄の門)の方へと引きずって行った。

 

 ただ楽して生きていたかっただけなのになんでこんなことになったのか……。俺はみっともなく泣き叫びながらこのトレセン学園に来たことを後悔した。

 

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