極限まで働きたくないから頑張って最難関のウマ娘トレーナーになったで   作:圧倒的雑魚臭

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EP3

 

「お疲れ~。ちょっと休憩して次は坂路ね。あ、あとね、走る時のストライドもう六分の一歩分広くしてみてよ。多分それでフォームはもっと良くなると思うよ」

 

「ありがとうございます~。今度は意識して走ってみますね」

 

 タオルで汗を拭きながら笑顔を浮かべるグラスワンダー。あまり長い時間走らせたつもりはないのだが、その汗の量が今日の気温の高さを物語っていた。

 

「……それにしても、セイちゃん来ませんね~。やっぱり教室で捕まえてくればよかったです」

 

 思わず校舎のある土手の方に目をやるグラス。チームごとに走りあっている他のところと比べれば併走相手がいないのは物足りないのかもしれない。

 

「いつもなら流石に来ててもいい時間だけどな。暑いからかな~?スカイももうすぐメイクデビューなのにもうちょっと気合入れてくれないと……」

 

 まあ、毎回放置する俺が悪いんだけどな。

 もう一人の担当バ、セイウンスカイは基本的に自由人だ。練習時間になればトレーナーを引きずってでも連行してくる真面目なグラスワンダーとは対照的に、時間になっても現れないのは当たり前。グラスと同じ教室なのに、真面目ちゃんに連行されるのが嫌なのか授業が終わるころには雲隠れしていることもザラにあるらしい。潜在能力自体はありそうなんだけどなー。

 

 そんな自由気ままな猫みたいなウマ娘を担当することになったのは、一言でいうなら、俺が『いい加減そう』だったかららしい。

 

 

 

 

 

『グラスワンダー!差し切ってゴーール!!他を寄せ付けない圧倒的な走りで第二回選抜レースを勝ち切りました!』

 

 な、なんじゃあの走りは……。圧倒的じゃないか。我が愛バは。(まだなってない)

 ていうかマジなんなん?しょっぱなの選抜レース負けてんだよね?負ける要素どこ?ここ?逆にどうやって負けたし。

 

『最終コーナーまで先頭を走っていたセイウンスカイ。最後の最後でバ群に沈んでしまいました』

 

 仮契約を結んでいたグラスワンダーの走りを初めて眺め、圧倒されていた俺の視界に、ふと葦毛の小柄なウマ娘が目に入った。グラスワンダーはともかく、他にも多くのウマ娘がいたのにその葦毛のウマ娘に視線がいったのはその姿があまりに不自然(・・・)だったからだ。

 

「いやあ、まーた負けちゃったー。セイちゃんまだまだ担当トレーナー付かなさそうで残念ですにゃ~」

 

 負けたと言うわりに悔しそうなそぶりも見せず息も乱れていない。そのまま呑気に引き上げようとしているセイウンスカイだったが、ここで担当トレーナーを見つけられなければ、六月の後半から始まるメイクデビューの出走は厳しい。

 

 なんか、おかしいな?

 

 そう思いながら見ていると、見覚えのある栗毛のウマ娘が彼女の進行方向を塞いだ。

 

「何故、全力を出さないのですか?私たちを侮辱するつもりですか?」

 

 あるえ~?あの子あんな怖い子だったっけー?

 

 自分の担当バ(になるかもしれない)ウマ娘の迫力に圧倒されながらことの成り行きを傍観するしかなかった。下手に首突っ込むのやだし。

 

「やだなあ。何をそんな怖い顔してるのさ。グラスちゃん優勝したんだよ?もっと嬉しそうな顔しなよ~」

 

「ならば貴女はもっと悔しそうにするべきです。前回もそうでしたでしょう?急に失速してバ群に飲まれる展開は。一回目は気のせいかとも思いましたが、一緒に走っていて確信しました。貴女からは勝つ気が感じられません」

 

 周りのウマ娘が何事かと遠巻きに見つめる中、彼女ら二人の間には緊迫した静寂が包んでいた。押し黙ったままのセイウンスカイはその暗く濁った蒼い瞳でグラスワンダーのことを睨んでいたが、急に表情を緩めると先ほどの飄々とした調子で口を開いた。

 

「……セイちゃんもうちょっとトレーナー無しで自由に学園生活したいんだよね。あんまり順位いいとさ、みんな期待しちゃうじゃん?勧誘してくるトレーナーさんを一々お断りするのも悪いし、今はこれぐらいが丁度いいんだよね~。そういうことで、シャワー浴びてきます!汗かいてベタベタになっちゃったよー」

 

 先ほどのことなど無かったかのようにシャワー室に向かって歩き出す葦毛のウマ娘。グラスワンダーは追いかけることもせず、俯きがちに地面を睨んでいたかと思うと、急にこちらに顔を向けて歩いてきた。

 

「トレーナーさん?」

 

 前に見た柔らかい笑顔が顔に乗っていたが、その表情を素直に受け取れないまま俺は顔を引きつらせて彼女の申し出に身構えるしかなかった。

 




スカイ編、もうちょっとだけ続くんじゃ
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