食料(古代人)を手に入れて何とか森を抜けたカニバルは森の反対側に辿り着いた。
そこには見渡す限り謎の建物が建っていた。
恐らく古代人が住んでいた所であろう。
戦争の爪痕が多く残っており、無事な建物は無い。
とりあえず建物に入ってみるかと、カニバルは口に干し肉(手指の部分)を入れ噛みながら進む。
指の部分は骨が大きいので食いでは無いが、噛みごたえがあり、彼女のお気に入りだ。
肉をあらかた食べた彼女はぺっと口から骨を吐き出した。
食べ物は粗末にしない主義の彼女だが、流石に骨までは食べない。
誰もいない建物を彼女は回った。それは沢山回った。
「何もないじゃないか!戦場は何処だあ!」
そしてブチ切れた。
食べ物も無ければ、景色も変わらない。
歴史学者からすれば垂涎物の環境であったが、彼女のお眼鏡には適わなかった様だ。
◆
古代人の住処に来てから暫くしてカニバルは尾行されている事に気付いた。
食べ物!と彼女は歓喜したが、尾行してきた者は残念なことに人間では無くモンスターだった。
後ろに人型と付くが……。
「ギョギョギョー!」
「うわあ!何だあ!」(棒)
モンスターは急にカニバルを襲ったが、気付いていた彼女は少し大袈裟に驚いた。
ギョギョギョと鳴くこのモンスターは人食いサハギン。
古代人に遺伝子改造された魚の化け物だ。
水陸で活動可能で、好きな食べ物は肉。
その腕力はドワーフより強く、泳ぎはバショウカジキよりも早い。
正にフィジカルモンスターと言えよう。
人喰いサハギンと相対するは人食いカニバル。
彼女も暇さえあれば鍛えていただけあって強い。
獲物の出刃包丁は1万人もの人間の血を吸ったと言われる呪いの包丁だ。
当たり前だが数はかなり盛ってるし、数なんて適当だ。
多い方が強そうだからそう言っているだけ。
人食い同士の戦い。
それはそれは凄まじい戦いになるかと思われたが、結果は一方的だった。
"武器持ってる方が強いんだよ"と言わんばかりに包丁でサハギンを滅多切りにするカニバル。
哀れサハギンは絶命し、彼女の口に入ることになった。
サハギン(多分魚肉)を前に彼女は悩む。
「生でいくか、それとも焼くか。」
サハギンを見るのも捌くのも初めてな彼女は調理方法で悩む。
人間と違って肉が白い。サハギンの肉は白身魚だった。
結局彼女は生と煮込みで食べることにする。
まずは生。淡白ながら甘味とコクのある味。
カニバル好みの良い肉だった。
続いて煮込み。味付けは海の水のみ。具材はモツと白身。
サハギンの潮汁だ。
これもカニバル好み。
それから彼女はサハギンを徹底的に探した。
見つけてはぶち殺し、見つけてはぶち殺し……。
数週間後には古代人の住居に住むサハギン達は全滅した。
きっと人食い族みたいに偶々生き残った始祖が復讐してくれるだろう。
……多分。
◆
飽きる程サハギンを食べたカニバルは当初の目的を思い出した。
人間達の食べ物を粗末にする行為(戦争)を咎めに行くことを。
しかし、今の彼女は戦場の場所は愚か、今いる場所すら分からない。
結局、大量のサハギン干し肉を手に入れただけの彼女は来た道を戻ることにした。
道中はモンスターや動物に襲われたものの、彼女基準で特に何もなく無事に塒に帰り着いた。
そして塒で一泊してから、今度は最初に行った方向と逆に進む事に彼女はした。
森の浅い方向に進む事になるため、道中食料(人類)の群れに会うこと数回。
そしてそれらを同じ回数腹に入れ、彼女は無事に街道に出ることが出来た。
飯のことしか考えて無さそうな彼女であるが、流石に目立つところでの殺人は控えている。
襲われた場合は別であるが。
「へへへ、綺麗な姉ちゃん、金出しな。」
「ぐふふ、可愛がってやるよ。」
街道に出たカニバルは早速強盗に絡まれていた。
戦乱の世の中、少人数で街道を進むのは自殺行為だ。
野盗に強盗、盗賊、山賊、賊と名の付く者が舌なめずりして待っているからだ。
ましてや身奇麗な少女の独り歩きなど襲って下さいと言わんばかりである。
それを寄越しなとカニバルの持っている袋を奪った強盗は中を見て驚愕する。
入ってるのは人の指、指、指。
思わず悲鳴をあげて強盗は中身をぶちまけてしまう。
転がる指、怒れるカニバル。
「おまえ!食べ物を粗末にするな!」
食べ物を粗末にされ心頭のカニバルは何処から取り出したのか包丁を手に、
袋を落とした男の手を切断した。
手を切られた男は地面を転げまわり、他の強盗達も突然の出来事に固まっている。
その隙を狙われ、ある者は足、ある者は手、ある者は両方を切られ、カニバルに袋詰にされた。
人食いモンスターのカニバルだが、食べ物にはうるさい。
襲ってきた食料(強盗)達の食べきれない分は生かさず殺さずだ。
街道から少し外れれば森があるので隠すには困らない。
こうして当座の食料を手に入れたカニバルは戦場までお腹を空かせる心配は無くなった。