FGO第一部RTA:DLC実績《禍福は糾える縄の如し》取得   作:禍禍冴月

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無言の初投稿です。





オケアノス編 その2

 

 

 

「全員揃ったわね? ではこれより第三特異点攻略前のミーティングを始めます」

 

 

 現所長オルガマリーの仕切りにより、カルデアの定期ミーティングが行われる。

 新たに観測され、レイシフトを行うにあたり安定した数値を取る事のできた、特異点オケアノス。

 西暦にして1573年、カリブ海に位置した座標にある特異点へ突入する直前の、立案された作戦や方針の最終確認を兼ねたものである。

 

 

「と、その前に立香ちゃん、マシュ。体調は大丈夫かな。何かあったらすぐに言ってくれ」

 

 

 まずは本作戦の懸念点を、と続けようとしたオルガマリーの言葉を遮り、真剣な面持ちのロマニが2人の体調を伺う。

 ミーティング前も診断によって問題は特に見られなかったが、こうして直接相手の顔を見て伺う事の重要性を理解しているロマニは、些細な違和感も見逃さないようにと視線を離さず、静かに見つめている。

 

 

「はいっ、マシュ・キリエライト、体調は万全です。先輩はいかがですか?」

 

「うん、私も大丈夫っ。問題ないよドクター!」

 

 

「……よしよし、どうやら嘘は吐いてないみたいだね。無事に呪いも除去できて一安心だよ! うん、観測班のスタッフも機材も問題なし、サポート体制もしっかり整ってるぞぅ!」

 

 

 立香とマシュの顔からその言葉が嘘ではないと確認すると、張り詰めていた顔を一気に破顔させ、ロマニはひとしきり喜んだ。

 

 何故ここまで体調などを気に掛けているかというと、前回の特異点解決直後、レイシフトから帰還した立香とマシュは身体を呪いや瘴気に侵され、命の危険に晒されていた事と、観測機器などの機材が膨大な負荷に耐え切れず一部システムがダウンした事に起因する。

 人類最後のマスターとそのサーヴァントの回復、システムの速やかな復旧、修繕。人員の少ない現カルデアはその2つのトラブルを乗り越える為に修羅場を超えた鉄火場と化した。

 

 

 人類史を取り戻す旅を道半ばで途絶えさせる訳にはいかない。

 そして何より、突然人類史の未来というあまりにも大きすぎる重荷を背負わせてしまった少女を、無為に死なせてしまう訳にはいかない。

 

 その決意と信念の元、カルデア医療班とサーヴァントによる迅速で適切な処置を施され、2人の身体の呪いと瘴気は後遺症もなく取り除かれ、その他のスタッフ達の懸命な復旧作業を経て、施設は問題なく回復したのだった。

 

 

 

「……そろそろ良いですか、ロマニ・アーキマン」

 

「あぁっ、すみません……急にかしこまって呼ぶの、ちょっと怖いからやめてほし……あ、はいごめんなさい、一旦黙ります」

 

「……そこまで怯えなくて結構です。実際、特異点内部で行動する人員の精神と肉体の状態は万全でなくてはならないし……」

 

 

 わざわざ遮った事に文句はあれど、確認した内容が内容だけに強くは言うまい……とは思ったが、ロマニの過剰に怯えるような仕草を見せられ、湧き上がってきた感情を溜息に変え、オルガマリーは努めて抑え込む。

 

 咳払いを軽くした後、改めて議題を移した。

 

 

「さて……これまでの特異点攻略にあたって、黒の巫女は我々の前に現れ、作戦行動に何らかの形での妨害を行ってきました。今回もこの特異点に現れる可能性が非常に高いと思われます」

 

 

 黒の巫女。

 その言葉が話題に挙がると、その場にいる全員の表情が否応にも強張った。

 

 

 特異点F、オルレアンに続き、セプテムにおいてもカルデアの前に姿を現し、その驚異を知らしめた黒の巫女。

 

 自らの力を皇帝カリギュラに宿して暴走させ、女神の棲う島を襲い、自らが従える『黒の下僕』をカルデアに差し向けた。

 

 そして、神祖ロムルスによって喚び出された、白き滅び──文明を喰らい、蒐集し、破壊する、かつて彼方の宙より飛来した遊星セファール。数多居た神の尽くを鏖殺したその破壊の化身を、たった二撃でもって粉砕し、消滅させた。

 

 

 圧倒的な蹂躙と破壊を、更なる破壊によって塗り潰した、呪いの化身。

 瘴気と災いを振り撒き、世界を恐怖に陥れ、湧き出た負の感情を貪る『魔神』の姿を示したのだった。

 

 

「……セファールの崩壊直前に観測出来た黒の巫女の姿には、頭髪は白く、半身に呪印が刻まれていたのを確認できた……間違いなく、最も強大な災厄として神話に記されていた通りの姿だ」

 

 

 無垢のように白く染まった頭髪に、この世の何よりも禍々しく醜悪な呪印を半身に表出させた黒の巫女。

 人類史の様々な記録に残される黒の巫女の姿の中で、登場した数は比率として少ないものの、その姿で現れたが最後、全てを滅ぼし尽くす呪いと瘴気でもって生きとし生けるものの命を啜り尽くすとされている。

 凡人、才人、英傑英雄に関わりは無く、奪う命に限りは無く。立ち向かう者へ底知れない絶望を与えながら殺していく。

 数々の輝かしい功績を残し、困難極まる無窮の冒険を経た英雄の最期を無惨なものと変える、伝説における不変の悪として描かれる、究極の姿。

 

 

 ある時を境に、黒の巫女はその姿を取る事は無くなっていたのだが……現在、こうしてカルデアの前に現したその姿が決して虚勢や偽りではないと、セファールを屠った力と共に知ら示した。

 

 

 なお、その姿を観測してしまった映像は厳重な処置を施された後削除、破棄され、既にカルデアの手元には残っていない。

 膨大な呪いと瘴気をその身に宿した黒の巫女を直接映した記録映像は、見た者の精神状態を強烈に掻き乱し発狂寸前まで陥らせる呪いの動画と化しているため、そんな危険物は早々に処理されたのだった。

 

 

 

 

「あの……ドクター。あの後、ローマの地は無事に元に戻ったのでしょうか……」

 

 

 重い空気の中、マシュが気になっていた事を質問する。

 黒の巫女によって齎された瘴気と魔力。セファールとの戦いとは呼べない一方的な蹂躙の際に、多大な量がローマの地に溢れ返り、大気を汚染し、草花をたちどころに枯れ萎れさせていた。それは自身の身体も蝕み、かつ観測していたカルデア側へも少なからずダメージを与えるほどであった。

 もしそれが残留していれば、この地球に何らかの影響を及ぼすのではないかとマシュは危惧していた。

 

 

「あぁ、それなら問題無いさ。特異点は無事解消され、黒の巫女の魔力や瘴気は感知されなかった……基本的に特異点が元通りになれば、その中で起きた変化も消えて無くなるからね。……まぁ、あのまま時間が経っていればローマに禁足地が増える所だったけど……」

 

「そうでしたか……」

 

 

 その答えを聞き、張っていた力が幾分か抜けたように胸を撫で下ろすマシュを横に、聞きなれない単語を前に疑問が未だ解けない立香が元気の良さをアピールしつつその手を挙げた。

 

 

「ドクター、禁足地って?」

 

「あぁ、凡そ文字通りだけど……魔術世界では、専ら黒の巫女の魔力や瘴気などで汚染された区域の事を指しているんだ。地球上で、厳重な立ち入り禁止区域に指定された場所なんかがそうされてる」

 

「先輩の故郷でもその禁足地は存在しています。立ち入り禁止区域ですと『獄の孔』、といった場所が有名所では無いでしょうか」

 

 

 最近、立香の出身国である日本についての資料を読み漁っていたマシュがその名称を上げると、立香はなるほどああいうやつね、とピンと来た様子で手を叩いた。

 

 

 獄の孔。

 日本の某N県に存在する、日中も光が通らず、道標も無く、入っただけで呪われるとされている山際近くの森。中に入った者は決して帰らないとされていることが名前の由来とされている。

 確か、有名インフルエンサーが究極の肝試し、と題してそこへ赴いたのを最後に連絡が途絶え、その後結成された捜索隊も尽くが失踪、ついには厳重封鎖という形となった事件があった。

 それにまつわる都市伝説も、その地域に黒の巫女関連の昔話があったな、という記憶を立香は呼び起こしていた。

 

 

「神話とか伝承において、黒の巫女がその力を一際強く振り撒いた地域や場所なんかが現在の禁足地になっててね……英雄の中にはその禁足地を浄化したのもいるから、そういう伝承やスキルを保有したサーヴァントを召喚できたら心強いだろうね」

 

 

 続けてロマニが言うには、魔術の総本山である時計塔では、禁足地の除去を専門とした魔術師の集まりもあったが……リスクとリターンが見合わないことや、コスト……主に時間が掛かりすぎる、といった理由があり、地球上全ての禁足地は除去されずにそのまま各所へ残り続けているという。

 

 

「あの濃度の呪いと瘴気を祓うには何代も魔術刻印を受け継いだ魔術師が相当な鍛錬を行ってからじゃないといけないし、禁足地に行くには最低5名必要だしで……その実力の魔術師が居るならば他に研究やら有意義な事ができるだろうって、ロンドン近くの禁足地以外は放っておかれてるんだよねぇ……全く」

 

 

 話題に乗っかったダヴィンチが肩を竦めながらそう言い放つ。

 どうにもその事例以外に時計塔に対する色々な不満やらが読み取れるその声色にカルデアの一部職員は気不味そうに目線を逸らしたりと微妙な空気が流れ出すが、それを強引に振り払うようにオルガマリーが一際大きく咳払いを起こし、注目を集める。

 

 

「……レオナルド、意地悪が過ぎるよ」

 

「ごめんごめん。失礼したね、所長。続きをどうぞ?」

 

「……はぁ、もう。……話を戻しましょう。それで、黒の巫女のこれまでの動きを見るに恐らく……我々カルデアを積極的に害するつもりも無いと思われます。……そのつもりなら、何時だって出来た筈ですから」

 

「何故か、と言われれば……黒の巫女の狙いはやはり、自身の力を高める事。生物から得られる負の感情という餌を確保するために、人を襲い、恐怖を煽り、災厄を振り撒く。けれど他の要因に人を滅ぼされると自らの都合に悪い、だからその邪魔になるものは尽く排除する……黒の巫女の動きとしてはこんなものでしょうね」

 

 

 セファールを倒したのもそういう理由でしょう、と締めるオルガマリーの表情は仄かに確信めいたものだった。

 これまでの黒の巫女の動向の点と点を結び、その動機を紐付けるならば、導き出した答えこそが当てはまるだろうと言外に主張していた。

 

 

 

「だから、方針としては黒の巫女に手出しするのは極力避ける……とはいえ、何時気まぐれを起こしてあの力を向けられるか予測できない。いざとなれば、あの大きな厄災に立ち向かわなくっちゃならない……けど、決して手は無いってことはない。だろ、レオナルド?」

 

 

 議題が戻り、ロマニがダウィンチへ視線を投げかければ、声色は打って変わって明るく弾んだものとなった。

 

 

「そうとも、私達もただ無策でいる訳じゃない。しっかり対策は施しているとも。立香ちゃん達が命がけで持ち帰ってくれた貴重な実戦データを大いに活用させてもらったさ!」

 

 

 その成果を早速礼装に機能を追加した、とダヴィンチは立香の着用するカルデア制服──魔術の素人である立香でもワンアクションで簡易な魔術を発動できる魔術礼装──を指差す。

 

 

「その礼装には『マリスビリーの遺産』……黒の巫女に対抗する為に作られた魔術を色々と組み込んである。理論は揃っていたけどどうしても必要なデータが足りなくて未完成のまま放置されていたものが一部あったけれど、この度ようやく完成した。今まで埃を被っていたものが陽の目を浴びる日が来たってやつさ!」

 

 

『マリスビリーの遺産』。

 カルデアの前所長、オルガマリーの父親であるマリスビリー・アニムスフィアが完成半ばまで組み上げた魔術礼装及び技術形態の数々。

 

 グランドオーダーの実行において、かねてより懸念されていた黒の巫女の存在。それに対抗する為に考案、構築されたものであるが、先のセプテムで使用された『呪避けの巻物』のように完成したものはあれど、その他の多くが未完成のままカルデアに遺されていた。

 

 

 だが、グランドオーダーの実行により各特異点で遭遇した黒の巫女の真新しい魔力や戦闘データにより、構築にあたって欠けていたピースを埋める事が可能となった。

 そうして完成した黒の巫女に対抗する魔術を礼装に取り込んだ事により、これから黒の巫女に相対したとしても生存率を格段に向上させる事ができる、とダヴィンチは語る。

 

 

「けれど、これはあくまで黒の巫女の脅威から出来うる限り自分の身を護る事に寄っている。黒の巫女に無理に立ち向かう事は決してしてはいけない。大事なのは生き残る事さ」

 

 

 現時点のカルデアの目的は、人類史を乱す特異点から聖杯を回収し、人理を修復する事。決して黒の巫女を討伐する事ではない。

 だから生き残る事を優先しておくれ、と優しく諭すダヴィンチの言葉に、立香は力強く頷いた。

 

 

 

「さて……次に、レフ・ライノールの事だけど……」

 

 

 

 議題が次に移る。

 苦い顔をしながらその議題を挙げたロマ二と共に、立香達の脳裏へ、あの時の光景がはっきりと思い起こされる。

 

 

 

 

 

 

 黒の巫女の手により、セファールが葬り去られたその後。

 

 ただただ圧倒的な力を示した黒の巫女はカルデアには一瞥もくれず、空間に孔を開けてはその中に身を潜らせ、魔力反応もろとも何処かへと掻き消えた。

 そしてそれと入れ替わるように、レフ・ライノールは現れた。

 

 

 

「見ただろう、愚かな人類共よ」

 

 

「あの存在こそ、貴様ら人類史の過ちの象徴」

 

 

「貴様らが目を背け、唾棄し、驕り高ぶり続けた事へのツケだ」

 

 

 仰々しい言動はすれど、人を嘲り切った微笑みを機嫌良く浮かべている訳でもなく。

 ただ忌々しげに、心底に不愉快さを滲ませた侮蔑の視線を、シルクハット越しからカルデアの面々に投げ付けつつ言葉を発する。

 

 長きに渡り、醜くおぞましく歴史を刻んだ愚かな人類共の誤り。

 その具現があの黒の巫女である、と嘯きながら。

 

 

 

《この……わざわざ差し向けてきた黒の巫女を引かせてまで、僕達を煽りに来たのか!?》

 

 

 ロマ二の口から悔し紛れといった具合に、反射的に飛び出した言葉。

 それを耳に拾ったレフがピタリ、硬直するといった表現が丁度はまり込むように、その動きを止める。

 

 

「差し向けた、だと?」

 

 

 レフの表情が完全に消える。

 浮かべていた侮蔑の色は失せ、サーヴァント達を見据えている瞳からは一切の感情が漂白されていた。

 

 

「私が彼奴を駒のように扱ったと、そう言いたいのか?」

 

 

 だったらどうした、とロマニの喉元まで込み上げた言葉は声にならず。

 通信モニター越しでさえ、レフから溢れ出る異様な雰囲気に呑まれ、声を発せずに居た。

 

 

「……いや、何。無知蒙昧極まれり、とは思っていたが……こうも愚かだと怒りより憐れみが強いな、全く」

 

 

 芝居掛かった仕草をするでもなく、軽薄な微笑みを浮かべる事もなく、ただ淡々と静かに呟く。

 怒りが極点に達した者のように、通り過ぎた激情に思考をすり潰されながら、ひたすら冷淡に告げる。

 

 

「ただ……どうしようもなく不愉快だ、今ここで潰してやろう」

 

 

 その言葉と共に、レフの纏う魔力が変質する。

 渦巻き、膨張し……レフが人の形を失いながら、肉の擦れ合う、不快な粘質を伴った水音を鳴らしながら、なおも膨れ上がっていく。

 

 

 渦巻き、捻れ荒れるは魔力のみに留まらず、多大なる威圧感と殺意が一塊となり、途方も知れぬ存在に押し上げられていく。

 

 現れ出たのは見るも悍ましい巨大に聳え立つ肉塊の柱。

 幾重にも連なった無数の瞳を醜く輝かせ、地に居る全てを見下ろし嘲り笑う。

 

 

 

「黙して死せよ、カルデアよ、サーヴァントよ、人類史よ!」

 

 

「我が名はフラウロス! 魔神柱フラウロスである!」

 

 

 

 魔術王ソロモン72柱の魔神、その名を叫びながら膨大な魔力を噴き出し、呪いに溢れた大気を掻き乱す。

 人の姿を捨て、魔神柱と化したレフはその瞳の群れを蠢かせ、目に映る全てを焼き払わんと襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「───セプテムに現れたレフ・ライノールは、フラウロスと名乗っていた。フラウロスといえば魔術王ソロモンが従えていた七十二柱の魔神のその一柱、とされているんだけど……」

 

 

 レフの名乗っていた魔神、そしてその魔神を使い魔として従えていたとされる、古代イスラエルの王にして魔術世界における最大にして最高の召喚術士、魔術王ソロモン。

 それについて語ろうとするロマニの顔は、どうにも釈然とはせず、納得がいかないとばかりの表情を浮かべていた。

 

 

「……ドクター? どうかしたのですか?」

 

「いや……そもそも最新の見解では、ソロモン王の七十二柱の悪魔なんて存在しないのさ。あれらはただ七十二の用途に分かれた使い魔に過ぎないってね。……それに、本当にソロモン王が生み出したのなら造形はもっとシンプルである筈さ。あんなに悪魔悪魔らしい醜悪な見た目じゃないよ」

 

「ふーむ? でも実際立香ちゃん達は戦ったんだし、ああ名乗った以上、何らかの関係があると見る方が妥当だろう?」

 

 

 

「……アレの真偽がどうであれ、我々に対して敵対的であるのは間違いありません。立ちはだかるのなら、その障害を取り除くまで。……そもそも、この結論は最終ミーティングの前から決まっていたでしょうに、今更口出ししないで」

 

 

 良いわね? と念押しされて尚、ロマニは未だに納得がいかないと後ろ髪を掻くも、余計に鋭く冷たくなるオルガマリーの視線に口を噤んだ。これ以上機嫌を損ねると後で宥めるのが大変だと経験していたためである。

 

 

「……では、懸念事項についての議題はここまで。特異点の話に戻ります。今回私達カルデアが介入する特異点は海賊の黄金期とされている1573年のカリブ海、呼称は特異点オケアノスとします」

 

 

 モニターに今回調査する特異点の座標が示される。

 海を中心に特異点化したそこは地形を歪ませ、小さな島々を各所に寄り集めたような大海原となっていた。

 

 

 

 

「……と、所長、ちょっといいかな。……立香ちゃん、何か気になる事があったら言っておいた方が良いよ? 報告と連絡、相談による情報共有は速さが命だからね」

 

 

 ダヴィンチは会議途中から何か考え込むような難しい顔をしていた立香へパチンとウインクを飛ばす。

 注目を浴びた事で少し遠慮がちに断ろうとする立香だが、オルガマリーからの鋭い視線に根負けするように「ちょっと気になったんだけど」と頭に付けてから話し出す。

 

 

「えっと……黒の巫女が言ってた、『受け入れられるため』、って言葉は何だったんだろうって」

 

 

 そうして立香が首を傾げながら零した疑問にロマニが拾い上げる。

 

 

「うーん、そうだね……立香ちゃんが思い切って聞き出してくれたけど……やっぱり、その言葉を額面通りに受け取るって訳にはいかないだろう。受け入れる、って定義や解釈も当然僕たち人間とは異なるだろうし……最悪、全人類をカリギュラみたいな状態にして、これで自分を受け入れてもらったー! みたいな事かもしれないし」

 

 

 立香が一歩踏み出し、黒の巫女に問い掛け、得られた言葉は『受け入れられるため』、といった一言のみ。

 その方法、それを成すための具体的な言葉はそれ以上に得られることはなく……これまで人類史に記されてきた、黒の巫女が齎した凄惨な行為、カルデアが実際に観測してきた黒の巫女の動きから、その言葉に含まれる目的は決して我々人類に友好的ではないと見なされた。

 

 

(……本当に、そうなのかな)

 

 

 それでも立香は、疑問を捨てきれない。

 

 あの時に見えた黒の巫女の表情が、とても悲しそうで、諦観に溢れた、寂しいものだったから。

 

 どうにも、あの顔が頭の中から離れてくれなかった。

 

 

 その様子を見ながらロマニは頭を掻き、ここに居ない何かに向けて溜め息を零しながら言葉を吐き捨てた。

 

 

 

「黒の巫女っていう存在は、僕らにとって生まれる前から居て、その存在とその残穢があることをこの世界を生きるにあたって当たり前に『受け入れている』。……それ以上に受け入れるっていうなら、何をすればいいんだろうね?」

 

 

 

 

 

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

 

 

 蒼い海を駆け回るRTA、はぁじまぁるよぉ〜! 

 

 前回は……ヒロインXが襲い掛かってきた所で終わってましたね。

 助けてーッ!! 単体ストーカーに襲われてまーすッ!!! 

(急に来るのは)ずるいよなぁ? 

 ですよねぇ!! (ギガ同意)

 

 

 

「前の私と侮るなよ黒ずくめ! 比較的お腹は空いてませんし新たな技も習得済み! 真のセイバー3日会わざれば刮目せよとか言いますしね! という訳でなまず切りにされて魔力リソース置いてけーッ!!」

 

 

 

 という事でランダムイベント『謎の聖剣襲来!』より謎のヒロインX(二戦目)です。当然一戦目よりステータスが全体的に強化されてます。それだけでなくモーションやスキルも……

 

 

「おらーっ!!」

 

 

 お、片手だけ振り上げてくるこのモーションは……

 

 

「───馬鹿め、そっちもセイバーだ!」

 

 >……!! 

 >少女が残像を残しながら背後に現れる……!! 

 

 

 オラッ『障禍呪烙印』!! 

 

 

「ぐあぁっ!? デバフとは卑劣なっ!」

 

 

 あっぶぇ!! バクスタやられる所さんでした。

 今みたいに高速で背後を取って聖剣でぶっ刺してくるアナルアサシン……!? なモーションも追加されてますし新スキルも持ってきてます。お姉さんやめちくり^〜。

 

 そんで『障禍呪烙印』で毒とデバフ入れつつ怯ませたらすかさず『葬攻襲鬼斬』からの次元斬でぶった斬り。

 

 

「ぅぐぅっ!? 相変わらず痛いですね!?」

 

 

 うーん、相変わらず硬いですね。やっぱユニヴァースサーヴァントの耐久力おかしいよ……(戦慄)

 

 このヒロインXの場合、『主人公(セイバー)補正!』に『DLC(番外編)エピソード:パートII』っていうステータスを増強する白枠のパッシブスキルが入ってるので大分硬くなってんぜ? 状態です。クソッ! (シンプル悪態土方)

 

 相手が復帰したらそのまま高速で動き回るのであっちから仕掛けてくるまでひたすら待ちの姿勢に。

 

 

 ヒロインXは前回同様ユニヴァース系サーヴァント特有のギャグ補正的耐久力もしっかりありますし、何よりすばしっこいので攻撃がすこぶる当て難いです。短いチャンスタイムでどれだけ攻撃できるかが鍵です。

 

 しかもこのゲームの敵全般に言えることですが……複雑な乱数によって行動が形成されてるので、パターン化する事が難しくって……とにかく攻撃を当てれる時に当てるしかありません。DLC配信初期の初期はコンボでハメれたりしましたがさっさとアプデされてそれもできなくなりましたし。

 もう許せるぞオイ!! (憤怒)

 RTAを何だと思ってやがる! これは許せないと思いますコレェ! 

 

 

 じゃあなんでアプデ前の状態でやらんのかって? 

 妥協したらしたで視聴者兄貴姉貴に「アプデ前にして逃げてる♡よわよわ走者♡ざっこ♡負け犬根性♡」とか言われそうだったからです(視聴者に責任転嫁する走者の屑)

 

 

「セイバー……ホームラン!」

 

 

 おっ、チャンスタイム! 大振りで振りかぶってきたんでそれに合わせて『障禍呪烙印』、『葬攻襲鬼斬』からの『ディメンションスフィアα』連打連打。

 

 

「ぬぐぅぅッ!?」

 

 

 Foo↑毒と防御デバフが立て続けに入ったおかげでHPが良い感じに削れて気持ちぃ〜↑

 

 デバフがきっちり累積されるゲーム、走者大好き。

 

 

 まぁ散々愚痴りましたけど、ヒロインXは強敵である分経験値もうまあじなので……倒せば今後の狩りの手間が省けるんで、こういうサーヴァントと戦うだけのランダムイベントも本当は悪くないんですよね。

 ……ヒロインXも武蔵ちゃん*1と比べればまぁ戦闘時間は短く戦いやすい部類ですしあんまり悪く言っても可哀想で───

 

 

「こうなれば……セイバー忍法、発動!」

 

 

 >少女が何処からか取り出した四角い箱を掲げる……! 

 >……中身は弁当だ! 

 

 

「ネームレス・レッド直伝『無敵ランチ!』うーん美味しい!」

 

 

 >高速で中身を掻き込んだ少女の魔力が漲り出した……

 >弱体化が解除された。

 

 

 オ゛ォ゛イ゛ッ゛!!!? (バチギレ)

 無敵スキルはやめろっつってんだルルルォ!? 

 

 やっぱり無敵スキル持ってるような相手はダメッスね。忌憚のない意見ってやつッス。

 しかもせっかく入れたデバフと毒ももれなく剥がしやがって……どうしてくれるん? 

 

 

「くたばれセイバーッ!」

 

 

 >雄叫びを上げながら両手の剣を振りかざしてくる……! 

 

 

 こうなったら一定時間無敵になってるのでどうしようもないです。ジャスガやら回避でしのぎましょう。私の場合は『夢想避天』で回避してますが、無闇に乱発すると相手が回避直後に攻撃を合わせてきたりするのできっちり攻撃を見てから避け切りましょう。

 

 

「あぁっもう! すばしっこいですね!」

 

 

 特にヒロインXは聖剣二刀流なせいでダメージがでら痛い! (悲痛)

 そんで下手に当たるとそっから高速連撃で切り刻まれてダメージを更に稼がれるのでちゃんと避けて、生きようね! (注意喚起土方)

 

 

 そんで無敵が切れるまでは回避するだけなんで……今のヒロインXが戦闘中に使うスキルの構成について、お話します(紹介糞土方)

 

 

 はいどん。

 ・支援砲撃:EX

 ・直感:C

 ・無敵ランチ

 ・デスサミング

 ・タタミウォール

 

 

 支援砲撃はただのスタン付与なので問題なし、クリティカル誘発の直感は当たらなければどうということはなし、必殺技封印してくるデスサミングも避ければまぁいい。ダメージカットするタタミウォールもさしたる問題はなし。

 ただし無敵ランチ、テメーはダメだ。ぶっ頃してやるよ……(静かな殺意)

 何がイカレてるって、しばらく無敵はまだしもDLC強化の影響でデバフ全解除が追加されてたりおかわりして無敵時間を引き伸ばしてくることなんだよなぁ! 

 動物裁判だ……!! (怒りの緊急開廷)

 

 なので無敵が切れても油断なりません。理想はスキルを使わせる暇もなく攻撃をし続ける事なのですが、変態機動でフィールドを駆け回りまくるのでそれもままなりません。

 救いは無いんですか!? (レ♂)

 そこになかったらないです(無慈悲)

 

 

「こらー! 大人しく斬られなさい! ガン逃げするとか卑劣では!!」

 

 

 とか言ってる間に無敵が切れました。……再付与も無さそうですね。

 

 じゃ送ってやるよ地獄に!! (一転攻勢)

 

 

 聖剣でブーストしながらの斬りかかりに合わせて『障禍呪烙印』! 

 デバフ乗せてから『ディメンションスフィア‪』を撃つべし! 撃つべし! 

 

 

「痛ぁーっ!? このっ……セイバー忍法、二の型! 『デスサミング』!!」

 

 >……! 

 >2本の剣が投擲され、圧倒的速度で迫り来る……!! 

 

 

 あっぶぇ!! (ジャスト回避)

 

 地味に危ない所でした。『デスサミング』はモーションが早く速度もあるので接近戦中に出されると当たりがちです。(回避)しっかり頼むぜ〜。

 

 ちなみに当たると目元に聖剣ぶっ刺されて目潰しされた影響で必殺技をしばらく出せなくなります。

 ガードやカウンターしてもその上からヒロインXが目潰しをしてくるので当たらないように、生きようね! 

 

 だが当たらなければどうということはない。

 そんなんじゃ虫も殺せねぇぞ(即煽りする屑の鑑)

 

 

 そしてこ↑こ↓でのヒロインXはHPが15%を切ると宝具を使用してきます。

 

 なので攻撃に合わせて撃った『障禍呪烙印』のデバフを重ねつつ、無敵ランチ食われないことを全力で祈りつつ15%手前までギリギリ削り切りまして……

 

 

「セイバーストラッーシュ!!」

 

 

 !!!! (隙の糸)

 横薙ぎの攻撃をしっかり避けて……オラッ避け際に『葬攻襲鬼斬』!! スタン取った!! 

 

 からの『ディストーション・ノヴァ』!! 

 

 

 

「次元の顎に引き裂かれよ!!」

 

 >周囲の空間が捻れ狂う……!! 

 

 

「っしま……うぁぁぁぁぁぁっ!?!?」

 

 

 

 やったったぜ。(勝利のガッツポーズを掲げる淫夢くんBB)

 工事完了です……(激闘制覇)

 

 アプリ版FGOでオナじみ、宝具撃た(やら)れる前に()る戦法はこのゲームでも有効です。

 

 

 >少女は吹き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。

 >……ようやく大人しくなったらしい。

 

 

 

「────あーくっっそー!! またやられましたー!!」

 

 

 >……大人しくなってない。まだ立ち上がって動けるくらいには元気らしい。

 

 

「何なんですかもう、主人公を叩きのめすとか空気の読めない奴ですね! 理不尽な裏ボスでも今の戦いより少しは活路が見い出せるものだというのに!」

 

 

 >そう言いながら少女は乗ってきたロケットに再び乗り込んでいく。

 

 

「しかし三度目の正直という言葉が示す通り、敗北を知るのもまた強さの秘訣なればこそ! ここではあえて引いてあげましょう!」

 

 

「え、二度あることは三度ある? そんな言葉ドゥン・スタリオンIIの翻訳辞書にも入ってませんね、スラングか何かで?」

 

 

「ではさらば、黒ずくめ女! 精々首とか顔とか洗って待っているがいい!」

 

 

 >……そして遙か宇宙へと飛び去って行ってしまった。

 >……この分だとまた出会ってしまう気がしてきた。

 >また会うのかと思うと、少し気が滅入るな……。

 

 俺もソーナノ……(同調)

 

 

 おほ^〜(恍惚)流石ヒロインX、経験値がメタルなキングくらいガッポガッポ貰えて口角の上がりが半端ありません。口角が上がり過ぎて月まで届きそうです。

 

 この経験値で当分の狩りも必要無くなりましたし、何より延々と狩りの映像を流し続けるよりかはメリハリのある画が取れたと思えば……まぁいいや! (楽観視)

 

 狩りを端折れた分タイムも縮むんじゃ? ……ヨグワガンニャイネ。

 

 いやぁ、その、ね。

 2連続でヒロインXが来るとまた次の特異点でも来る気がしてたまりません。

 何しろ連続で戦う系のランダムイベントは当然戦う度に強くなりますし対処も面倒になって……下手打つとグダってタイムをいたずらに貪られる可能性が無きにしも非ず。

 それにヒロインXのランダムイベントは他のユニヴァースサーヴァントのイベントの引き金にもなってるので……そこから余計にタイムをかさ増しされたりしなかったりで今から大変不安です。助けて!! お願いします!!! (悲痛な願い)

 

 

 まぁ、ヒロインXからごっそり経験値貰えたのは何にせよこの時点ではプラスです。

 本来ならこの特異点でヒロインXみたいになんかすばしっこくて硬いヤツ……オケアノスにPOPしてるアキレウスを探してぶちのめすチャートだったのですが、その手間も省けました。

 

 あの面倒くさい奴の相手をしなくていいという事を喜びます。別にアキレウス倒す事で開放できる必殺技とか無いですしねガハハ! 

 

 

 

 じゃあ今から禍たんは惰眠を貪ります。

 今回の特異点では敵味方共に海を渡っての移動中心になる都合上、どうしても展開を進めるのに時間が掛かります。

 なので時間はさっさと進めるに限ります。

 

 一旦異次元に帰って長めの『休憩』を6回ほど挟みまして……あ、6回目の『休憩』の際に前回入手した魔除けのお茶っ葉を使用しましょう。

 

 

 

 

 >……手に入れたお茶を淹れて、ゆっくりと休むことにした。

 >……良い味と香りが気分を癒してくれる……

 >……少し元気が出てきたかな。

 

 

 ヨシ! (使用確認)

 数秒ですが美味しいお茶を飲んでほっこりする禍たんが見れます。可゛愛゛い゛な゛ぁ゛禍゛た゛ん゛は゛……

 

 

 >……瘴気が抑えられた。

 

 

 はい、このメッセージを確認したらさっさと特異点に戻りましょうね〜。

 

 

 入る入る入る……(now loading……)

 

 

 

 そんで戻ったらまず何をするかというと、カルデア勢力の確認ですね。

 マシュ以外に同行サーヴァントが居るかどうかでアルゴー船にいるヘラクレスへの対応を変えざるを得ないので……

 

 オケアノスに出てきたヘラクレスは、本来の流れならダビデの宝具であるアークを使って消滅させる手筈ですが、それより純粋な戦闘で倒した方が経験値が入るんですよね。

 カルデアに経験値入れた方が楽々RTA待った無しなのでそうしたい所さんなのですがそうはいかないのがこのゲーム。

 

 DLC強化のせいでただでさえ厄介なヘラクレスは更に厄介になっており、ヘラクレスをカルデアに任せっきりにすると壊滅したりしなかったりで安定しません。もうクソがでるッ!! (ヤケクソ)

 

 なのでこっちが上手いことやってヘラクレスのHPやらを調整する必要があったんですね。

 

 

 >……空間の裂け目を抜けると、一面の花畑が広がっていた。

 >……安らぎを覚える香りが漂っている。

 

 

 

ん?? 

 

 

 

 >……以前にも見た事のある景色だ。

 >……背後から、覚えのある気配が近付いてきている……。

 

 

 あっ(察し)

 これは……マーリンですね。

 

 

 

「やぁ、こんにちわ。元気にしていたかい? それとも何時もみたいに鬱屈とした顔で過ごしていたかな?」

 

 

 >振り向けば、薄く微笑みを浮かべた、花の青年が……この空間を作り出した張本人が、姿を現していた。

 >くすり、小さく喉を鳴らしながら、携えた杖を落ち着かせ、穏やかな声をかけてきた。

 

 

「まぁせっかく出会ったんだ。ゆっくりとお話でもしていこうじゃないか」

 

 

 

 どうして……

 

 どうしてランダムイベントが立て続けに来るんですか???? 

 

 

 

 

 

 といった所で今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

*1
ランダムイベント『剣豪抜刀』で出現。強い相手と闘いてェ〜な思いが太スギルッピ! なため、禍霊夢と出会うと無茶苦茶剣術チャンバラで問答無用で斬り結んでくる。

 その上クッソしぶとく負けず嫌いなので出てきたが最後、RTAのタイムをゴミにする女。






花粉が荒れ狂い出したので失踪します。

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