これは証明だ。僕にも魔法少女をやれるってね 作:書簡でいいか?
■これまでのあらすじ
「ボクと契約して、魔法少女になってよ」
時計塔の幸薄そうな自称平凡魔術師カドックは、偶然出会ったロマノフ王朝の精霊"ヴィイ"に
ヴィイ(ぬいぐるみ)を手放せなくなってしまった上に30センチ以上も身長が縮んだ、なんなら男の象徴は縮んだどころか無くなってしまったカドックは男に戻る一縷の望みを賭けて、白銀の髪をした魔法少女──具体的には小学生くらいの身長になったアナスタシアの姿でクラスカード回収に同行することとなったのだ。
アナスタシアとしても女の子としても初心者、つまりアナスタシアリリィになったカドックだが、まあ別に学校に行くわけでもないしと妥協しつつ空港から出て、冬木市に到着した。
「で、なんで到着早々に仲間割れしてるんだよ……」
川の上空、
それなりに袖が余っているせいで、この精霊を持つのにも抱きかかえなきゃいけない。男としてのプライドから今までの服を着ているが、もしかして新しく買う必要があるか……?
そう思いながら魔法少女二人を眺めていると、戦闘が止まった。片手には、クラスカード!?
「……落ちた?」
獣耳に赤や青のヒラヒラした服のいたたまれない姿が解け、宙に浮いていた二人が落ちる。下は川だが、落ちて無事で済むかは別だ。まあ、時計塔の時期主席候補様たちだ、どうにかするだろう。……するよな?
「ステッキを追うべきか」
空を飛ぶステッキを追って走り出すが、とにかく動きにくい。ズボンの丈はかなり詰めたから動くのに支障は出ないが、長い袖に腕の動きが制限されることや歩幅の違いが大きく影響している。対獣魔術──野外での実践にも用いるそれのために鍛えていた体との差異に感覚が追い付いていないのも原因だろう。
空港での会話を聞く限り、赤い方はなにかやらかす気配がする。面白いからやってみようを地で行くというか。
実際、なにやら一軒家から光が立ち昇っている。まさか、契約したのか? 誰と?
家系の魔術を学ぶ上でサバイバル技術を身に着けているのもあって、土地勘がなくとも飛び去るものを追うことはできている。とはいえ人通りがどれくらいか分からない以上、魔術による身体強化は使えない。
先に行くわと駆けて行った遠坂の方向からは、何かが叩きつけられた音がする。
「なんだ! 何が──」
急いでそこへと駆けつけると、誰かの家の庭だろうそこには遠坂と幼い少女がいた。少女の方は魔術礼装のステッキを握っており、転身していると分かる。その周囲にはガンドが着弾した跡。遠坂の方は髪が乱れていることから、まさか戦闘があったのか?
年増ツインテールと連呼するステッキに宝石から閃光を放った遠坂。とっさに視力を強化して光に慣れると、至近距離でガンドを撃つ遠坂。気絶させることであの少女を無力化したんだろう。
「カドックじゃない。追いついたのね」
「あ、ああ……」
声の位置が移動していることからして、倒れているだろう少女を壁際に運んでいるらしい。らしいというのも、僕はそっちに背を向けているからだ。僕だって一応は男だぞ。無頓着というか、いや、今の僕は同じくらいの子供の姿だが……
それに、時計塔のエリート様からすれば二百年しか魔術の歴史がない家系の出なんざ覚えてないか。
簡単な事情の説明が終わり、その少女──イリヤの部屋に場所を映して話すことになった。
「私は遠坂凛。魔術師よ」
「カドック・ゼムルプス。同じく魔術師だ」
遠坂に続いて名乗る。とはいえ同じ魔術師でも実力にはかなり差があるけどな。
……ダメだ。どうにも卑屈な考えが抜けない。そう思っているうちにクラスカードについての簡単な説明も終わっていて、浮遊しているカレイドルビーを握っていた。
「もしかしてそのぬいぐるみも……?」
イリヤは僕が抱えているぬいぐるみにも目線を遣っている。遠坂にわしづかみにされているステッキと見比べるような視線移動から意図は察せられた。
「そうだな。といっても僕のこれは喋ったりしない」
抱えている腕を緩めれば、ヴィイはひとりでに浮かんで僕の周りを旋回する。
「ヴィイ。僕と契約している精霊だよ」
ロシア系の少女の姿になるというデメリットはあったが、この精霊が魔力の大半を賄っているおかげで僕も今回のカード回収に同行できるくらいの力を示せるようになった。……複雑な気分ではあるけどな。
「じゃあ、カドックさんも魔法少女に」
「……僕ができるのはせいぜいサポートくらいだ」
正面から戦えるほどの力はない。ヴィイ由来の魔眼や氷や冷気を操ることこそできるが、どうしても決定打に欠ける。僕ができるのは対獣魔術であってサーヴァント戦で使えるとは言い難い。
「そういうこと。だからせめて、このステッキの説得が済むまでの間はカード回収を手伝ってもらうことになるから、覚悟しておくように」
驚愕の声で、その日の説明は幕を閉じた。
その帰り道。遠坂はこの冬木市に家があるが、僕はそこに泊まるわけにもいかない。といっても途中までの道は同じだからか、ある程度の会話をすることになった。……こんな体になった僕への同情かもしれないが。
「カドックは、降霊科からの紹介で参加してるのよね」
「精霊との一体化に近い契約ってのは、よっぽど珍しかったんだろうな。それに、カード回収の前任が前任だ」
降霊科の秀才、"現代の戦乙女"。宝石の魔眼を持つ彼女の後任として推薦された。ヴィイ関連で世話になっているだけの僕が引き受けるというのは運がいいのか悪いのか……
「政治的なことはわからないが、戦力としては大差すぎて困惑してるよ」
自信を持てと背中を叩かれてバランスを崩す。たたらを踏んで、前傾の体を起こした。
差し込んでいた月光は雲に陰り、星は一つも見えなかった。
冬木市内のホテル。ここのセカンドオーナーである遠坂と違って、僕とエーデルフェルトには拠点がない。かといって遠坂の家──他人の魔術工房に泊まるわけにもいかず、一旦はホテルを使うことにした。エーデルフェルトは家を建てるだとか言っていたが……あながち冗談にも聞こえない。
にしても……服を脱ぐのにも苦労するとは思わなかった。袖が半端にしか通っていないせいで脱ぎやすい上着はともかく、その下は胸が少し引っかかる。それに、服を脱ぎ終わると目に入るのは下着だ。ブラジャーは動きやすいスポーツ用のものを着けているが、下を向くといつもと違う体が目に映るのにはどうしても慣れなかった。一度着けずに過ごしてみたが、胸が擦れて痛かったから、そうしないわけにもいかないのが困る。
胸の間が蒸れて違和感があるのでシャワーを浴びるためにブラジャーを外そうとするが、やっぱり背中のホックを外すのに苦戦した。それに、外したあとや下の方も……
「さっさと浴びて服着るか」
なんか、罪悪感すら湧いてくる。いつものように頭痛薬を探すが、この体になってからは一錠飲むだけで眠くなってしまう。そのせいで薬は飲めなくなってしまっている。
その翌朝。エーデルフェルトに呼び出された先で言われたのは──
「ステッキを小学生に任せるのは不安です。ちょうどよかったので、貴方の分も転校手続きは進めていますわ」
対獣魔術の実践中に、大型の熊と遭遇したのと同じくらいの予感。まず間違いなく悪いことが起きるという直感が駆けた。聞きたくないが、聞かないといけない。無言で続きを促す。
「カドック、小学生になりなさい」
──無言で頭痛薬を噛み砕いた。
所感でいいか? 設定を投げ捨てている。これ以上ない欠陥だろう。読者にとっても、Type-Moonの緻密な設定を気にする者にも。
だが、TS好きであれば感想と評価をしておけ。そういう人間だろう、TSクラスタは。