ダンジョンに マインクラフト 持ち込んだ   作:魚介(改)貧弱卿

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どやろか

 

「それでは私は約束通り、行かせてもらいます」

「うむ、ファミリアという形ではなくとも、お前は既に我が群衆、すなわちガネーシャだ

ガネーシャの心を忘れるなよ」

 

「……承りました」

 

 そしてその言葉を最後に珍妙な建物を離れるスティーブ、彼の行き先はオラリオの外、そして東Eastである

その方角に彼が最初に作った拠点があるからだ。

 

「一応座標の固定をしておくか」

 

 ベッドで眠ったことで、おそらくリスポーン地点はこのガネーシャ・ファミリアのホームになっているだろう

壁や松明以外に安全を保証する要素のない野戦拠点よりははるかに安全だが、どうせ向こうも資材やベッドを回収しに行くだけであるからして気にするようなことでもないだろう。

 

「よし」

 

 再び市壁を抜けて外へ出る

ジャンプダッシュで野原を駆け抜け、東側に存在した街道を突き進んでいく

オラリオの南側には敵国があるらしく、おそらくあえて整備していなかったのだろう、道なき道であった南側よりもはるかに快適な旅だ。

 

「……こっちでいいんだよなぁ……」

 

 大体の方角はわかるが、ネザー経由の曲がりくねった移動のせいで距離感が掴めない、いつのまにか通り過ぎてしまったという可能性もあるだろう

いつものワールドであれば座標確認で割り出すことができるのだが、この世界では座標表示が役に立たないようで、正確な位置確認はできなかった。

 

「お……この辺の地形、見覚えが……」

 

 街道を外れて草叢の中を多少歩き、今度は荒れた土の地帯へ、そこをさらに抜けて進むと

ようやく最初に建てた拠点が見えてきた。

 

「よしよし、取り敢えず資源みんなまとめて持って帰ろう、道は覚えているし今度はマーキングもしてきたから大丈夫ッ!」

 

 ワープブックやリコールストーンのような強力な転移アイテムはないが、それらを抜きにしても純粋に機動力の高いクラフターである1010は大移動も得意なのだ

必要なものだけをさっさと持って移動することなどやり慣れている

手堅く素材類の大半をリュックサックに納め、残る雑多なアイテムは皆EMCに転換して片付ける

作業台とかまどと最低限の燃料、それに幾らかの木材と金属は置いていく

もしも何らかの事情でこの拠点に緊急避難をするという時にこれらの資源は非常に役立つ、場合によってはパンひとつ、刀一本が逆転の一手となることさえあるのだから。

 

「よし……一旦寝るか……?」

 

 時間はすでに夕暮れ、琥珀色の太陽が黄金色の残光を散らして空を赤と藍のグラデーションに染め上げている。

 

 ひとまずそのまま一眠りすることにした1010はベッドに転がってすぐに意識を落とし、そして朝まで眠り続ける。

 

「……あぁ……朝か」

 

 目を覚ました1010はその流れでベッドをEMC転換し、もう一度取り出して設置し、更にもう一台増やす

もう1人のクラフターと共に避難することを考えてだ。

 

「……よし」

 

 取り替えたばかりのベットに倒れ込みそうになりながら荷物を確認し、そして水瓶を飲んで空にしつつ1010は歩き出した、2日ほどかかる長い道を。

 

 


 

 

「ダイヤダイヤダイヤ〜ダイヤ〜をなめーるとー

かたい」

 

 ひとしきり噛んだダイヤを、12本の花で囲まれた真四角な水溜まりに投げ落とす7878

 

「ダイヤモンドを生贄に捧げる

現れよ、開け黄昏の扉、森の鍵は我が手に」

 

 どこからともなく水たまりに雷が直撃し、その雷光が水を紫に染める

波紋のパーティクルが無数に浮かび上がったその水面はもはや水ではなく異世界へと誘う扉へと変わっていた。

 

「いくぜとうっ!」

 7878は躊躇なく紫色のパーティクルへと飛び込み

この世界から姿を消した。

 

「アグレシオンみっけ!見敵必殺!銃忘れたナリ!

今から作るから待ってアッ!待って痛い!待ってって言ってんだろオラァッ!」

 

 ダークマター防具の超性能によって射撃を耐えながら錬金テーブルから取り出したアサルトライフルでアグレシオンを射殺する7878。

 

「敵も死ねば資源!味方も死ねば資源!そこになんの違いもありゃあせんだろうが!」

 

(tigaunoda!)

 

 両腕にバレルを備えた緑の巨機が赤く染まって倒れる最中、そんな声が聞こえた気がした。

 

「なんか言ってる気がするけどヨシ!レプレキューブゲットだぜ!」

 

 巨大人型敵(アグレシオン)やそれらの上位敵機しか落とさない希少素材(レプレキューブ)をこの世界で初めて手にした7878はテンションをブチ上げながら見覚えの溢れるポーズを取り、その直後に誰にも見られていないことを確認して黙り込んだ。

 

「……し」

 

 永遠に黄昏の続く、時間の止まった木々達の世界黄昏の森(twilight Forest)における拠点の構築が始まった

……そして丸2日ほどが経ち、1010は7878の拠点へと辿り着いて、そこで目にした(もぬけ)の殻と化した拠点に瞑目する。

 

「死んだか……残念だ」

 

 この世界ではクラフターにマインクラフト同様のマイクラ力学が働いている、故に1メートル四方のキューブとして土を掘抜き、水を無限資源にし、木すらも四角くなる、しかしリスポーンだけはわからない

純正のマインクラフトでさえリスポーン不可能のモード『ハードコア』が存在したのであるし、何か理解不能な現象の末に別の世界に転移していると思しい状況で、死者の蘇生(リスポーン)が可能とは思い難い。

 

「俺は……どうすれば良い……?」

 

 地面に視線を落としながら拠点内を散策する1010

やかましい音を立てていた火力発電機も、圧縮機ももはや沈黙し、動くことはない

7878の象徴であった機械類がそうである以上、たとえ生きていたとしても7878もまともな状況ではあるまい。

 

「……いや、これは……?」

 

 申し訳程度の地上建築が施された拠点、その一角

自然など徹底的に排除されたその研磨石の拠点の中で、不自然に花に囲まれたその場所は

紫にゆらめく波紋を映し出す異世界への扉

形成す黄昏への招待状だ。

 

「ここにいるのか……」

 

 向こうの世界はこちらに比べて難易度が高い

現在の武器では怪しいと考えた1010はその場に残された錬金テーブルを用いてEMCを引き出し、高度な錬金術を執行する。

 

「レッドマター剣、妥協だがこれで良いか……」

 

 ダイヤモンドを芯材に、ダークマターを刃に使うダークマター剣をさらにレッドマターに包んだその剣は、一見鈍に見えて凄まじい切れ味を有する超高威力武装、レッドマター剣だ。

 

「……行くぞッ!」

 

 覚悟を決めて異世界へと飛び込む1010

紅色の大剣を肩に掛け、漆黒の鎧を全身に纏った彼の姿はまさしく古代の英雄だった。

 


 

「うぉっ……?来たな」

 

 ポータルを誰かが潜った、その気配(ラグ)を感じた瞬間、挨拶がわりに1マガジンほどぶっ放す

放たれた火線は狙い過たずポータルの真上に立った彼に吸い込まれ

そのまま消滅した

彼の持つ剣によって薙ぎ払われたのだ。

 

「ご挨拶なことだな、7878!」

「アヒャ、アヒャアヒャ!」

 

 漆黒の鎧に全身を包んだ姿の1010に銃をぶっ放した7878が笑いかける。

 

「ダークマター相手にまともな攻撃なんて効かないだろ?アヒャヒャヒャ!」

 

「試金石に銃弾とは……俺が鎧を着ていなければどうするつもりだったんだ」

「お前なら死にゃしねえよ!」

 

 

 無茶を言う女の姿を見上げて、1010は笑う。

 

「確かにな」

 

 全身に纏う鎧がなければ刀を握り、刀が無ければ護符でも装い、護符もなければ外套に身を包む、常に死に備えるのが、1010のスタイルであった。

 

 

「まぁ飯食えよ、ここは冥府境界(between)じゃない、腐りはしないぜ」

 

「あっちはポーションまで腐る、それに全体的にキモい、やっていられん」

 

 まぁ、黄昏もキモい虫型敵がいる以上、あまり好き好んで行きたい場所ではないが。

 

「……そういえばこっちの世界、魔法の森はないか?」

「……ねぇんじゃねえの?知らんけど」

 

「知らんのか」

 

 1010は持ちっぱなしにしていた杖、エレクトロブロブズウィザードリィMODのマジックワンドを剣に代わって握り、試すように振る

いまだ機能を持たない簡易な杖であるそれはギシギシと軋みながらも持ち主の要望に応えようとするようだ。

 

「……行けそうだな、俺はちょっとそれっぽい場所を探してくる」

 

 1010の手に握られた杖とその視界に映る黄色の印、黄昏時の石造拠点に付けられたマーキングの道標だ。

 

「有力なアイテムかバイオームを見つけたらお前にも共有する、目立った敵は?」

「この辺だと雑魚フレーム、ちょっと行くとチェーンソー、あと戦車型も

空飛ぶなら気ぃ付けろよ」

「了解した」

 

 流石にTMタンク、タクティカルフレーム最強クラスの敵が出ると言うのなら手加減はできない

1010は装備に銃を加えることを検討し始めた。

 


 

「レプレキューブ(橙)とプレートでタクティカルアーマーⅡ……Ⅲはリギドいるからまだかな」

 

 橙色の立方体に全体的に水色をしたプレートを貼り合わせ、オレンジの装備へと変えた7878

しかし希少資源であり、まだ手に入れていないリギドプレートを確保しに上級敵に立ち向かうのが面倒になったのか、その場で倒れ込んでしまった。

 

「あーだりぃぃいいい肩いてぇぇ腰いてぇぇ〜〜」

 

心臓の性能不足か、それとも単に運動不足か、全身の血流が圧倒的に悪い7878の苦痛の声が虚しくブロック壁に反響した。

 

 7878はそれ以降黙りこんでぐだぐだと床を這いずり回ることに専念し始める。

 

「だりぃ〜めんどくせ〜……うごごご肩いてぇ〜」

 

 幾らかの銃やグレネードをインベントリに抱えたままで床を転がるのははたして安全かはわからないが、現状爆発していないからOKの理論で7878は寝転がり続けるのだった。

 


 

 

「まずは……適当に歩き回るのが一番か……」

 杖はエンプティ状態、内在する|魔法エネルギーはゼロ

この状態では流石に魔法もクソもないため、役に立つ事はない

そのため彼は杖をインベントリに収めて金に縁取られた紫色の六角ガラス板を握っていた。

 

「……」

 

 あらゆるものをガラス越しに確認し、少しずつ進んでいく1010

そのガラスの中には神秘的な(エレメント)が映し出されている。

 

 土、丸石、材木、焼き石 水、サトウキビ、竈、滑らかな砂岩などが単純な相を持つ代表的な素材であるが、それらを除いた複雑な相をもつ物質は、この金縁ガラス板、『ソーモメーター』の初期状態では見ることができない

そのためほとんどのアイテム類は何の相を含んでいるか理解できず、表示されないのだが、

研究によって複雑な相の由来を明らかにすることができればそれらを理解できるようになるため、素材に含まれる相が表示されるようになる

(Aqua)(Air)(Ignis)(Tera)の自然4属性と秩序(Ordo)/無秩序(Perditio)の概念2属性、この六つの相こそ世界を構成する最小単位、根源相(プリミティブ・エレメント)であり、それらを深く理解し、混ぜ合わせ、操る術こそマインクラフトの魔法系MODの中でも有名な大型MOD、魔術研究MOD(Thaumcraft)の魔術である。

 

「そのなかでも救い難い邪悪な魔道に足を踏み入れる者は多いんだが……な」

 

 禁忌の知識、邪悪な智慧

ソームクラフトを進める中でかならず出くわす闇だ

それは利便性でいえば普通の魔術を上回り、磨き上げるものであり

強力な魔法や有利な性能を会得できる

しかしそれらは根本的な現実性にダメージを与え、『歪み』をもたらすものでもある

歪みは危険だ、軽微な影響ならともかく重度に歪めば現実から排斥され、狂気に身を堕とす事になるだろう。

 

 

「……」

 

 小一時間ほど歩き回り、危険な結界群にも足を踏み入れてそこらを見て回ったが、残念ながらソームクラフトの基礎アイテムたるvis結晶やエレクトロブロブズウィザードリィの基礎アイテムであるマジッククリスタルはほとんど見つからない

まぁ湖と山と崖とモンスター、その程度のものしかない世界で縁遠い魔法の結晶を見つけ出すのは流石に困難という事だろう

ため息をついたその直後、1010の聴覚は軋む金属音を捉えた。

 

「……!」

 

 キュィィィと鳴りながら空中を飛んでくる剣、それはTFにも希少な人形マシン、チェーンソーガールの武装、ソードビットだ。

 

「気づいている、来るか」

 

 TF(タクティカルフレーム)の雑魚敵を始めとして、二手二足単頭程度の大まかな人型を取る敵は少なくはない

だが目鼻髪すら模倣するチェーンソーガールほどに精巧な『人間型』を取る者は限りなく少ないと言っていいだろう

そんな人間の姿にこだわるあまりにか、チェーンソーガールはその名の由来ともなった背部の翼状チェーンソー以外に目立った武装は無く

代わりに召喚する刀剣型自律機動兵器ソードビットが遠距離攻撃を担うのだ。

 

 血の色の無い機械的な紫の瞳がこちらを捉え、ソードビットを飛来させる

それより先に、1010は刀を抜きさいて先制攻撃を仕掛ける

はるかに遠い間合いから、通常の攻撃のとどかぬ場所から

空間をも切り裂く一撃がチェーンソーガールへと命中する

 

   SA-次元斬-

 

「オラァッ!」

 

 抑えられた叫びとともに、大太刀「無銘」が振り抜かれ、そしてそのまま抜刀・二の太刀・切り払いで納刀する

敵の目の前で連撃を敢えて断ち、型を見せる事で余裕をアピールしているのだ。

 

 さらにもう一度型を披露し、敵を煽ると、明確に剣戟の威力が向上した

世界にそのスタイリッシュさが認められたことで攻撃ランクが上昇し、ランクBまでの威力リミットが解除される。

 

「本気で行かせてもらおう」

 

 だが火力を考慮して抜刀剣から持ち替えた武装は赤い剣、レッドマター剣、尋常ならざる威力の剣がソードビットを両断し、そのままチェーンソーガールへと向かう

抜刀剣の挑発行動の影響で発狂し、突撃以外に能のない狂躁状態に陥っているチェーンソーガールは自ら突撃してくるが、1010はその勢いに任せて一撃を見舞い、ノックバックすると同時に自分も後ろへ跳び、距離を離して素早く持ち替えた弓を引く

通常の弓の火力はダメージにして10に及ばない程度だが、死に損ないのチェーンソーガールなどそれで十分。

 

 顔面に食い込んだ一撃がチェーンソーガールを貫き、そのまま消滅させるドロップは銑鉄、残念ながらハズレだ。

 

「…….」

 

 どちらかというとソードビットを無限生成する能力を活かしたどこでもTT(トラップタワー)が本領呼ばわりされる彼女だが、そんなに弱いわけでは無い

本来なら銃や爆弾で戦うのがスジな敵である

ただプロジェクトEの装備がずば抜けているというだけなのだ。

 

「すまんな」

 

 明確に人、いや少女を模した形を持つチェーンソーガールの顔面に矢を撃ち込んでそのまま破壊するというやりくちに罪悪感を持つ1010、しかし確かに敵である以上、壊す他にないのも事実だ。

 

「はぁ……」

 

 一つ息をついて、再びバイオーム探しを再開する。

 


 

「アヒャ……アヒャア(疲労)」

 

 焼き締めた石を更に切り、互い敷にして組み合わせた石レンガ

それを無数に用意するところから始まり、エンチャントしたダイヤのシャベルとピッケル(ピノキア)で地面をけずり、平らに均して石レンガを敷き詰め

64平方メートル(4×4チャンク)を石敷きにして磨かれた安山岩で道を造り、道の両側には階段を利用した排水溝を付ける

現代都市風の平坦な道路と石レンガの壁による無機質な高層建築物(ビルディング)、そして木組みの平屋民家の群れ。

 

 街の中央には無限に水の湧き出る噴水が据えられ、金色に発光する鉱石が水の中で煌めいている

噴水から流れた水が各所の溝を通って街を網羅するように流れ、最終的に郊外の川へと排出されるように水路が整えられているのだ。

 

「……アー……ダリィ……」

 

 街の周囲にはところどころに苔の張った壁が張り巡らされ、周囲のモンスターが侵入してこないように各方面に計4つの木組みの見張り台が建てられている

木と石のメイン素材が調和せず、西洋風な石組み建築を主体とする中でそれら木造建築は孤立しているようだが、逆にそうでもしなければ周囲の監視や防護が満足にできない危機意識を見受けることができる。

 

 だがこの拠点、地上構造物は大したものではない

最大の見せ場はこの拠点からつながる地下構造物

岩盤寸前の地下まで掘り抜かれた巨大空洞を埋めてブロックごとに分割し、6ブロック分の高さによって区分された6つの階層とそれらを6分割した36の小区画を作っている

それぞれ下から

ソームクラフト・ボタニア・エレクトロブロブズウィザードリィの魔術関連スペースを擁する第一層、

飼育場・植林場・釣り堀・水場の汎用スペースの第二層、

1010と7878の生活スペースを確保するための第三層第四層

インダストリアルクラフトが3区画をブチ抜きエンダーIOの各機械装置、そしてタクティカルフレームやティンカーズコンストラクトの装置群が立ち並ぶ第五層

最上層にはエンチャントテーブルや経験値タンクが鎮座するという大掛かりな作りとなっている複合超巨大施設である。

 

 斯くなる地下巨大構造を梁も無しに掘り抜いて作り切った蛮勇には神すらも驚愕するであろう、その冠する名は『黄昏拠点1』

あまりにも無骨かつ適当、創造主から本当にどうでも良い扱いを受けていることを思わせるネーミングである。

 

「……お、帰ってきたな」

 

 彼女は1010の帰還を気配(ラグ)で感じ取ると、銃を手にして迎えに出る。

 

「ただいま」

「おう」

 

 帰ってきた彼に銃を突きつけながは笑顔を向けると、疲れたような表情を返したため、じゃれつきは断念して水を与えることにした。

 

「水場も用意してるから体洗っとけ、湯はねーけどな」

「……あぁ」

 

 ため息と共に姿を消す1010、やはり相当疲れていると見える

モンスターの群れにでも出会したか、などと考えながら

とりあえず食事を用意する7878であった。

 


 

「7878、お前も冒険者にならないか?」

「めんどい」

 

 しばらく後、夕食を摂る2人の開口一番の言葉である。

 

「ここはともかく、オーバーワールドは到底マインクラフトのゲームワールドではない

下手にマイクラ力学が働いている分気づくのが遅れたが、

ログアウトも出来なければコマンドも効かない

オーバーワールドには人間もいた」

 

 水瓶を飲みきりながら、1010は言葉を重ねる。

 

「村人ではない人間、それすなわちプレイヤー

しかしそうとも思えない、謎の言語やアイテムを用いていた

なにより我々が追加していない要素も確認できた」

 

「ヒエログリフ、俺の知るそれはエジプト圏における古代文字だが、彼は英語に対してそう答えたおかしいだろう?」

 

「確かに」

 

「この世界では座標確認が役に立たない、

テレポートコマンドも使えない、

この世界はマイクラのそれではないんだ」

 

「……ほ〜〜〜ん?」

「信じてないんだな」

「いや?信じてるで(震え声)」

 

「……それでいい」

 

諦めた1010は取り敢えずオラリオや神といったこの世界での基礎知識について説明をするが、すでに眠いのか7878には華麗に聞き流されてしまう。

 

「理解しないなら構わないが……明日、俺はオラリオに向かう

お前もついてこい、それでダンジョンに向かおう」

「戦うんやろ?めんどいからやりたくないんだが」

 

「面倒なのはわかるが、おそらくこの世界最大の異常であろうダンジョンをどうこうしない限りマイクラ世界にはもどれない、かもしれん

俺たちがこの世界に迷い込んだ事に対しての最大の心当たりだ」

 

「おん、透明マント作るから待てや、丁度ウィザー戦準備出来たからそれでビーコン作るわ」

「おけ」

 

 翌朝、そこには銃で瞬殺されるウィザーさんの姿が!

 

 ライフ半減時に発動する射撃に対する無敵耐性も儚く散り、抜刀剣で射撃を無効化されて何もできずにネザースターを残して消失する魔竜(ウィザー)を見送る2人の言葉は軽い。

 

「あ、刀落ちた」

「くれ、お前使わんだろ」

「使わん」

 

譲り受けた刀は閻魔刀(ヤマト)、SAは急襲幻影剣衰破

射撃型のSAの中でも特に射程の長い技で、普通に射撃攻撃するのにも使える上に敵に突き刺した幻影剣と自分の位置を交換してテレポートまで可能だ。

 

「……メイン武器更新かな」

 

 年相応の青年のような声を僅かに覗かせた1010は、再び老練の戦士の仮面を被って7878へと向き直る。

 

「よし、ビーコンは俺が設置するからそっちはお化けインクとか揃えてくれ、ガイアパイロンはあるよな?」

「その辺は準備してる、けどルーンめんどいからやってない、装備と醸造は?」

「いらない、ボタニア装備より緑晶弓(エメラルドボウ)と広範囲攻撃できる魔法の方が有効だ、あとウィザー状態の対策をしないといけないな」

 

「……専用の防具があればいいんだけど、あれば確か」

次元及び敵追加MOD(ディバインRPG)だろ?入ってないから無いよ」

 

「じゃー牛乳か、地面にタンク埋めてタンクから汲めるようにする?」

「キュアエフェクトがまだ無いからな……」

 

 衰弱状態付与のエリア攻撃に対して地面から牛乳を汲んで状態解除と衰弱状態発症を繰り返す、なかなか猟奇的な発想だが、現状では永久的な効果のある対策は見込めない

ある程度許容する必要があるだろう。

 

「じゃあ最低限のエレメンチウム装備作るから待ってろよ〜」

「見てろよ見てろよ?」

「ちげえよ、汚いなぁ」

 

 ボタニアは工業系MODと定義されてはいるが、かなり魔法チックな要素の多いMODだ

例えば花の粉末を用いる加工工程だったり魔力(マナ)というエネルギー単位だったりとそのファンタジックなギミックは細部各所に渡っている

そのためいちいちエフェクト待ちの時間がかかったりする事も多く、ボタニアを進めるのは時間がかかる

今回はプロジェクトEの力も借りて一気に程路を省略しながら急ぐが、それでも丸一日を費やすくらいに長い道のりなのだ。

 

「おっす(水)冷えてるか〜?」

「(フラワーペデスタル)バッチェ冷えてますよー」

 

 季節の存在しない黄昏の森に於いても冷たいものは冷たいというのは事実、だが水に満たされた摺鉢状のそれ、フラワーペデスタル(花の加工器)に花片やら粉末やらを漬け込まないことには始まらない

そのため1010は赤切れを心配しながらも炎をマナに変換する花(エンドフレイム)の量産を行うのだった。

 

 

「……もーいい?」

 

 連続で粉や花びらや種をペデスタルに投げ込み続ける苦行を課されていた7878の目線はそろそろ辞めたいと訴えている。

 

「マナプール8個目、エンドフレイム64個目だ、これでユニット運用すればいいだろう、ブレイズロッドはあるよな?」

「えぇ……残り10本くらい?」

 

 マナを各マナ貯蔵槽で蓄積するだけでなくネットワーク化し、その容量を共有する事で必要な場所に必要な量のマナを注ぐ

そのために必要な強化部品である『スパーク』

それを作るためには地獄世界産のブレイズパウダーが必要だ

 

「10だと怪しいな……集めてくるからお前はこれに燃料を詰め込んでくれ

ついでに抜刀剣と杖を育ててやる」

 

 盛炎(ブレイズ)の名の通り全身が炎で包まれているブレイズは本来火属性の遠距離攻撃を連発してくるという憎い敵なのだが、高位のMOD装備を着込んだ戦闘職を相手取ってまで戦えるほどのスペックはない

抜刀剣の焦げになるのがオチだった。

 

 

「……ただいま、帰ってきたぞ」

 

「おー……」

 

 完全に目が死んでいる7878だが、本番はここからだ

テラスチールを作るためのマナプールを作り、マナプールを使ってテラスチールの材料であるマナスチールとマナダイヤモンドとマナパールを作成して|大地性集結プレートに捧げ、さらにマナプール1/2のマナを捧げてようやくテラスチールは完成するのだが

ガイアの儀式はこれをチケットとして消費するため、同じアイテムを少なくとも十個くらいは作らなくてはならない

マナプールを弄り回している段階でギブアップ寸前ではこの段階には着いていけないだろうことは明らかだ。

 

「もう休むか?」

「いや、戦うところまで行く」

 

 ここからさらに面倒な作業がある事を教えるべきか迷いながらテラスチールを生産するための素材のマナダイヤモンドを生産するための素材であるダイヤモンドを生産するための素材であるカーボン板を生産するための素材である石炭をまとめて圧縮機にぶち込む1010であった。

 


 

 そしてこの世界での時間での3日(外の世界の一時間)が経過し、ついに1010と7878は対ガイアガーディアン用戦術を完成させた

作戦自体は完璧とは言えないが、強力な銃器と装甲によるゴリ押しを可能とする今の彼らならば余裕で遂行できる程度の難度である。

 

「みんな、銃器(まるた)は持ったな、行くぞ!」

「応ッ!!」

 

 ふざけ倒しながらガイアパイロンを設置したビーコンに対してテラスチールを投げ込み、大地との交信回路を開くことでビーコンへとエネルギーが集積し、大地の精髄の化身たるガイアガーディアンが出現したそのタイミングを狙ってフルバレットファイア

魔法耐性のエンチャントの付与されたエレメンチウムの鎧で攻撃を耐えながらひたすら撃つ

向こうもエンダーマンの如くテレポートを繰り返して攻撃を回避しているが、本家のエンダーマンと違って遠距離攻撃ダメージは有効なのだ。

 

 ギュゥギュゥギュゥギュゥという効果音と共に浮かび上がったガイアガーディアンの雑魚召喚により、ガイコツや魔女と言ったモンスターが無数に召喚されるが、事前に仕込んだ雷魔法や炎魔法の起爆によって一掃する

○○ボム系の魔法はかなり火力が出るため、密集している敵群を薙ぎ払うのには効果的だ。

 

「ウィザーッ!」

「カバー入るっ!」

 

 降りてきたガイアガーディアンの攻撃付随効果(エクストラエフェクト)ウィザー化による衰弱状態を受けた7878に対し、1010が前に出てアサルトライフルを連射して気を引き、反対に下がった7878は回復のポーション効果で素早く回復、ウィザー状態の継続ダメージは普通に耐える。

 

「そっちも回復しろ!」

「ok!」

 

1010も杖へと武器を持ち替えて、回復魔法(ヒール)を連発、彼自身の体力も一気に回復しつつ壁としてウィザー状態の解除まで耐える構えを取る。

 

「「あ」」

 

 二人とも体力を回復したタイミングで一斉射撃を仕掛けると、思っていたよりもよほど大きなダメージが入り、そのままガイアガーディアンが爆散消滅する。

 

「……二戦目行く?」

「いや〜キツイでしょ」

 

 綿密に作戦を練って武器を強化し、協力して挑んだボス敵を盛り上がりに欠ける速攻で普通に倒してしまったせいか、奇妙な空気が流れる中、2人はガイアの魂を手中に収めるのだった

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