ダンジョンに マインクラフト 持ち込んだ   作:魚介(改)貧弱卿

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進展あり

地形生成者(グランドマスター)のアストロラーベ、これめっちゃ便利だな、壁とか足場作成とかめっちゃ使えそう」

「……ゲリラ相手に黒曜石の壁を建てるのには?」

 

「いやゲリコマ入れてねぇし」

 

 銃・兵器・兵士追加(ゲリラvsコマンダー)MODは導入したら最後、拠点は地下もしくは天宮構造体か耐爆強化黒曜石コンテナの2択になるという永遠の問題を抱えているMODである

その反面銃器追加によって即死リスクが高まるため、緊張感を伴うゲリラ軍兵士との戦闘は歯応えがあり、使用できる銃器や兵器も幅広い

Flan's(兵器追加)MOD同様ミリタリー系統のMODに興味があるなら導入を検討してほしいMODである。

 

「土とか並べて設置できるから地面の延長とか咄嗟に遮蔽壁建てるくらいには使えるらしい」

「俺はいいや、フリューゲルのティアラも使わんし」

 

 ボタニアで追加される最終盤アイテム、着用者に翼を与えてわずかな時間ながら飛翔を可能とするガイアの恩恵『フリューゲルのティアラ』しかし結局のところprojectEの中盤で作れる『風統べる狼王の指輪』があれば飛翔は可能であるため、双方が共存している状況だと持続時間の差から使い道がないことがほとんどである。

 

「普段結局建築とかしないしなぁ……」

 

 アストロラーベもまた、実況で鳴らすようなバニラ建築やPVP勢とは違うMOD戦闘勢である彼らにとってはあまり目立つ使い所のないアイテムであることは変わらなかった。

 

「よし、透明マント作ったで」

「なら行くぞ、オラリオへ」

 

「えぇ〜……せっかく黄昏定住準備しとるのに?黄昏ではYが高いと敵沸かんから安全なのに?」

「ええい良いから行くぞ、お前の方がタクティ装備とかの関係で戦闘力高いんだからお前のが向いてるんだし!」

 

 1010は頑として譲らない7878を引きずりながらマーキングを済ませた拠点を離れて、移動する

黄昏ゲートから現世地下拠点へ、地下拠点から地上へ、地上からオラリオへ

一番距離のある最後の部分も移動時間は半日程度といったところ、クラフター代表であるスティーブのフィジカルなら10代前半の少女のスキンを使っている彼女を輸送(キャリー)しながらでも楽勝だ。

 

「イクゾー!」

「デッデッデデデデカキィィィン!ゲームセット!」

 

「カーンがない、ってか誰がメテオしろと言った!?」

「そういえばさ、なんでスティーブはスマブラにいるのに霊夢はいないん?」

 

 黙らせようとした1010を完全に封殺する形で質問する7878、その質問の意味を考えるために一瞬思考をそちらに割いた代償はすぐに足元に訪れた

ステップや草原によく見られる天然の渓谷が開いていたのだ、だが。

 

「よっ……と!危ね……」

 

 すぐさま停まれないと判断した1010はギリジャンで渓谷を飛び越えて多少のダメージを受けながらも最下層への落下を免れ、上層部の段差に着地、7878を抱える姿勢から肩に掛け直して背中に載せるとそのまま渓谷を飛び降り、空中で抜刀するや否や独特なリズムで刀を振り、滞空と微上昇を繰り返し続けることで渓谷を抜け出し、そのまま何事も無かったように走り出した。

 

「で、多分ゲームコンテンツとしての知名度とかじゃね?東方って二次創作のオリ転主幻想入りとかでよく見るけどゲーム実況とかだとあんまりじゃん?まぁ弾幕系シューティングは実況で見映えるようなもんじゃねーけどさ」

 

「せやな、自分も初めて知ったのたしかアレや……アレ、忘れたなんだっけ?まぁいいや」

 

 その後、思考を放棄した7878をバックパックのように背中に着けたまま、彼はオラリオへと再入国するのだった。

 

「あ!お前この間の!」

「どーも、また来たよ、今度も通商目的でガネーシャファミリアに用があってね」

 

 以前来た時に止められた衛兵がまた居たので前と同じように煙に巻く構えをとるが、残念ながら後ろの7878(コミュ障)が邪魔をする。

 

「その子供はなんだ!」

「この子は俺と同じ一族の子でね、user7878でナナハ・ヴェールヌイって名前、ほら自己紹介しろよ」

「ん!」

 

 頑として譲らない姿勢を取る中身大人のガキに辟易しながらも1010は内心ガッツポーズを取っていた

なにせ一番問題になりやすい点はこいつが通過できるかどうか、少なくとも奴隷や娼婦のような『商品』ではないことを証明する必要があるが

今回のこれは明らかに人見知りを起こして親類にくっつく引っ込み思案な幼児のムーブ、同じ一族という説明に信憑性を持たせつつ本人は無駄に喋らず、出まかせの邪魔をしない構えだ、パーフェクトと言って良い。

 

「すまん、ダメそうだ」

「……そんなに強面なつもりは無いんだがな……まぁ良い、通れ」

 

 我々の勝利である(大本営発表)

 


 

「さて、来たは良いが俺達はまだここの流儀を知らない新参者、とりあえず拠点を移すためにはまずどこぞの家なり施設なりを借りるか買うかをしなきゃならない」

「村人なら殺せば良くね?」

「お前はすぐにそうバイオレンスな話にする、ってか村人じゃなくて人間なんだからそう簡単に殺すなよ」

 

 元が艦これのヴェールヌイ由来である7878の笑顔はとても綺麗だが、そんなことでは誤魔化されない

ただでさえ宗教・派閥入り混じる場であり、紛糾は常の都市であっても人殺しは大問題を起こし得る……というより何が原因であっても即、大問題になってしまうから紛糾が常となるのである。

 

「簡単には殺さないよ、こう……まほいくだよ!」

「愉悦マンになるんじゃねぇよ、まずじっくり苦しめてから最高潮で殺すのは確かに売れるかも知れないがそうじゃねぇだろ!」

 

 彼女はどうもリアルアカウントやテラフォーマーズ式のあっさりした死に方は受け入れ難いようで、逆にまどか☆マギカや魔法少女育成計画などのメンタルを甚振る作品が大好物なのだ。

 

「じゃなくて、まずマイクラ式村人扱いはよせ、彼らは常に平和的で攻撃手段を放棄している日本人(事なかれ/無抵抗主義)だがこっちの人間はそうじゃ無い、家に押し入るわけには行かないぞ」

 

「そっかぁ(・ω・`)」

 

 しょぼんとした表情になった彼女を背に着けたままバベルへ到着した1010はまたも鉱石類(今度は硫黄や珪素、銅など)を売却して20万ヴァリスほどを手にし、しばらくの宿を取るべく行動を開始する。

 

「近場で宿屋マークとかあるところを探そう、待ってろ」

「おう」

 

 木刀(無銘刀『木偶』)を手元(ホットバー)から消し、代わりに木製の杖と紫色の籠手を着けた1010が背中の7878を降ろし、そこで待っているように伝えると、座り込んだ7878は完全防御形態に入る。

 

「全く……さて、恃もう!」

 

 ソームクラフトで追加される魔導士装備の紫の衣は高級感と同時にいかにもな魔法使い感を漂わせるデザインを持ち、紫の籠手と握った杖の先にかしめられた宝石もその一助を担う

結果として一端の魔法使い(ぼうけんしゃ)のように見える立ち姿の彼を無視する事は出来ないのか、宿屋の従業員と思しい女が応対する。

 

「いらっしゃい、ようこそガーナの宿へ、おひとり様かしら?」

「いや、娘と共に来た、1部屋でいい、空いているだろうか?」

 

「ええ、1部屋と言わずとも空いています

ご希望ならお食事も出ますよ」

「食事は要らない、素泊まりで構わん、一日当たりでいくらだ?」

 

 わずかに思案した彼女は1000ヴァリスと答える

日本円と換算すればずいぶん安く感じるが、もとより食事一回50ヴァリス掛ければ十分に腹を満たせるくらいには物価の安い世界であると考えると、案外妥当なのかも知れない。

 

「了解した、では1万ヴァリス支払おう、10日間の素泊まりだ」

「承ります、こちらへどうぞ、お部屋の鍵をお渡しします」

 

「うむ」

 

 実力主義者が多く割と治安の良く無いこの都市で、お上りさんと舐められない為に威厳ある所作を心掛けている1010、高級そうに見える装備と金払いの良さから何処かの貴族のように思われているが、実際の彼は日本の一般庶民(クラフター)である。

 

「それではお客様、お名前をご記入下さい」

「ああ」

 

 サラッと古代ギリシャ語(コイネー)で書けと要求されているわけだが、当然古代ギリシャ語の技能なんて習得しているわけがない

そのため微妙にピンチなのだが、この男普段から見て習うタイプであり、ガネーシャファミリアにいる時に流石にお品書きすら怪しいというのは困ると考え、サポーターを気絶させてしまって暇な時間にその道の書からいくらかを読み取っていた、そのため書きに関しても自分の名前程度ならギリ書けなくもないくらいには習得している。

 

「これでいいだろうか」

 

 多分日本語に変換して見れば蚯蚓ののたくったようと評するような字であろうが、その辺りは今は構うことでは無い、とりあえず読めればいいのだ。

 

「はい、ス……スティーブ様」

「あぁ、合っている、すまんな、遠方の出であるゆえ、こちらの言語はあまり得手でないのだ」

 

「いえ、よくある事でございます、お客様の部屋は階段を上がってすぐでございます」

 

 一応の釈明(いいわけ)を挟みつつ部屋の鍵を受け取って、階段を上がる1010

部屋の中を見れば、やはり現代日本のビジネスホテルほど整った様子では無いが、最低限支障ない程度の空間はある

窓はあるがいかにもな外開き、天井高さ2.3m、広さは畳換算で6畳と言ったところか

あまり長くいる訳ではないので十分だろう。

 

「よし」

 

 外に置いてきた7878を拾うべく宿を出る1010の耳に飛び込んできたのは突然の悲鳴。

 

「キャァァァッ!」

「ん?」

 

 野次馬根性に身を任せてとりあえず駆け出した1010はほど近い場所で倒れている冒険者らしき少女(パルウムかも知れないが)が悲鳴の出所と推測し、彼女に駆け寄る。

 

「どうした、何があった」

「……」

 

 返事はない、ただの屍のようだ

というわけではなく、まだ昏睡しているだけなようだ。

 

「あいつか?」

 

 異様な速度で離れていく外套を被った後ろ姿をターゲットし、1010は抜刀剣を抜く。

 

「無銘刀『木偶』抜刀!」

 

 抜刀剣を構えてシフトすることで居合の構えを取り、そのままジャンプして抜刀することで発生するロックオンテレポート、追尾式超速スライドによる抜刀攻撃で斬り掛かる。

 

「オラァッ!確保ォッ!」

 

 流石に木刀の一撃で死ぬほど弱くはないだろうと踏んだ1010の判断は正しく、本人の体感すら置き去りにする速度での一撃はギリギリで身を翻した女に躱されてしまう。

 

「邪魔ッ!」「うぉっ!」

 

 低い声と同時に女の手元からバネのように飛び出してきた片手斧が振り切られるが、鎧良ければ裏欠かずと言ったところか、魔導士のローブの構成材たるマジックシルクには斧刃が食い込んだが、それだけで済む。

 

「むぅん!」

 

 抜刀剣の乱撃が本気の秒間14連打まで引き上げられるが、彼女はそれを全て捌いてさらに1010を蹴り飛ばす。

 

「邪魔をするな!」

「この……大人しく捕まれッ!」

「捕まえるのはこっちの方だよ!」

 

 彼女が手元を回した途端、刃がぐるりと反転して伸長、両手用へと変形した斧が逆袈裟の軌道で迫る

遠心力とパワーが増したため、先程の片手斧とは勢いが違う。

 

「あの子の魔剣は返してもらう!」「いや何言ってんだお前」

 

 片刃大斧(ランバー)と化した斧の一撃を抜刀剣で押し返しきれずに後退しながら着地する1010は、視界の端に猛ダッシュで去っていく別の男を捕らえた。

 

「……じゃあ、盗ったのはあっちか?」

 

 辻褄合わせの推測ではあるが、先ほどの気絶していた少女とこの女が友人や協力関係であったとしたら

武器(?)を奪われた少女の代わりに奪われた武器を取り返しに行ったら後ろから伏兵による足止めを受けたことになる

この物言いも納得できよう。

 

「すまん人違いかもしれん!……確保ォッ!」

 

 ギリギリで射程に捉えたその男へと超加速、半回転スライドして回り込むと足元に土煙を立てながら急停止したその男は確かに派手な色合いの剣を三振り抱えていた

三振りも剣を持つ必要があるのは海賊狩りか千刀流の使い手くらいだ、それにその場合でも鞘に納めるくらいはするだろう。

 

「お前か、さっき女の子を気絶させたのは」

「チッ……死ねぇっ!」

 

「アヒャヒャヒャヒャヒャッ!」

 

 

 哄笑は高らかに、狂気に濁り切った泥のような空色の瞳が男を捕らえ、エレクトロブロブズウィザードリィの魔法、初心者(ノービス)階級(クラス)、スモークボムが炸裂する。

濛々と立ち込める煙の中に閃光と銃声が鳴り、無慈悲な鉄の一突きが男の心臓を貫いた。

 

「やっちゃったZE☆!」

「やっちゃったぜじゃないですよ!」

 

 叫びと同時に死体は消滅し、幾らかのアイテムが残る

そう、マイクラ的には生物の死骸というものは持続的に存在する事はなく、死んだ直後に一瞬のエフェクトと共に消滅し、そしてドロップアイテムが出現する。

 

「シケテーラ」

「黙れ」

 

 颯爽登場!の直後に最大規模の問題を巻き起こしてくれやがった少女をボテくりまわしながらスティーブは嘆く。

 

「……いや、行けるか?」

 

 冷静になって考えれば煙はまだ晴れていない

死んだのでなく、武器やアイテムをばら撒いて姿を消したということにすればなんとか誤魔化せはしないだろうか?

 

「……神にさえ黙ればなんとかなる……いや……!」

 

 落ちたカラフルな剣複数本を回収して拾い、その名や見た目を吟味するスティーブ

マイクラ的には『魔剣 スペシウム』『魔剣 エメリウム』『魔剣 メタリウム』としてそれぞれ扱われているようだ。

 

「……光線出そうだな」

 

 ぼやきと共に残りのドロップを回収し、そして再び捨てる

チェーンのチェストプレートとアイアンダガー以外にめぼしいものは特になく、それらも盗品な可能性があるため収得するのは避けておく。

 

「で、どうするかね……」

 

 頭を掻きながらSIZ9とSTR18の対抗ロールを成功させて、猫のように小柄な少女の襟足を掴み上げる1010。

 

「あ居た!」

 

「……ん、さっきはすまない

取られたのはこれか?」

 

「返して!」

 

 ひったくるように取られた三本の魔剣、別に構うようなものもないだろうと適当に流して(ナナハ)を翳す。

 

「うにゃーん」

「……じゃあ、俺はこれで

さっきの子は大丈夫か?怪我がないと良いが」

 

「もうポーション使ったから大丈夫よ」

 

 特殊形状の斧を使っていた彼女はそのまま離れるかと思いきや

スティーブへとガラス瓶を押し付けてくる。

 

「その……なんて言うべきか分からないのだけれど、代金よ

魔剣を取り返してくれてありがとう」

「あ……あぁ、こちらこそ相手を間違ってすまない」

 

 スティーブの手に収まった事でマイクラ的なアイテム扱いを受けることになったのか、アイテム名が視界に表示される

『回復のポーション』だ

プレイヤーや魔女の作るマイクラ的通常品はピンク色なのだが、こちらでは薄青色らしい。

 

「こいつうまそうだな」

「そんなタイトルの童話あったなぁ」

 

「グロウストーンパウダー入れようぜ、ハイポになるんじゃね?」

「……試してみるか」

 

 哀れなポーション君は金色の粉漬けにされる未来が確定するのだった。

 


 

 その後宿に向かった7878と1010は、全く遠慮なく宿の床に作業台竈変換テーブルと醸造台を設置し、そのまま稼働させ始める。

 

 直前にもらった回復ポーションにグロウストーンの粉末を混入し、沸き立つそれを撹拌して徐々に溶け込ませていく、黄金の輝きを放つ粉はやがて完全に姿を消し、濃度を上げた回復ポーションは新たなアイテム名が定義される

回復のポーションⅡへと変質したのだ。

 

「おお!うまくいったぞ!この世界の回復ポーションもグロウストーン使える!」

「……ウィッチェリーの土瓶ポーションとかあればもっと便利なんだがなぁ……」

 

 残念ながら魔女学(ウィッチェリー)というMODはもっと古いバージョンに置き去りにされてしまっているため、現バージョンには存在しないが、薬や箒、天候・時間操作の儀式などあれば便利なMODでもあった。

 

「まぁ無いものねだりだろ、それよりさぁ……これ、もっとイケない?」

 

「グロウストーン二回入れても効果ないだろ?」

「現実はもっと入れれるかも知れないじゃん、実験だよ実験、まさか旧弊とした常識に囚われて未知の事象を確認しないなんて愚かなマネはしないだろう?」

 

「……頭タキオンかよ」

 

 某ベンゼン環のごとき屁理屈を並べ始めた7878の勢いに押された1010は新たなポーションを7878に渡すと、彼女は躊躇なくそれに再びグロウストーンパウダーを注ぎ込む。

 

「そんな効果量で回復薬を名乗るなんて各方面に失礼だよね、オラッ投入!光石追加!まんじりとももせず受け入れろ……ッ!」

 

 ブレイズパウダーの熱で煮立てられたポーションに再びグロウストーンパウダーが投入されるが、やはり溶解量には限界があるのだろう、やがて溶かしきれずに析出した粉が瓶底に溜まり始める。

 

「熱がたんないのか?」

「……お前、温度を上げて無理矢理溶かしたところで冷めたら再結晶するだけだろ、諦めとけよ」

 

「じゃあ水割りにするか、分割して濃度を下げればその分また入れられるだろ?

無限に分割しても効果量を維持できるなら実質無限ポーションじゃん」

 

 確かに効果量の観点からすれば理屈はあっているかも知れないが、回復能力をもたらす素材の成分が分割される分、いずれはグロウストーンパウダーを水に溶かしただけのものに成り下がることは確定している

馬鹿な試みは諦められるべきだろう。

 

「ちょっとだけ、ちょっとだけ!」

「お前前それで何やらかしたよ」

「なんにも!」

 

「……馬鹿もいい加減にしろ」

 

 実に簡単かつ明快な結果(しっぱい)が分かり切っているというのに興味に衝き動かされるバカはとまらない、人間という種族の愚かさである。

 

「火事起こすわけにもいかないんだから、早く諦めろよ全く」

 

 コーヒー(マイクランド産タクティカ種使用)を啜りながら7878に諦めさせようとする1010はいつのまにか白衣(徳のマント)を着込んだ7878の背後に立つと、その背を軽く蹴り付ける

もちろんフレンドリファイアが存在しない以上ダメージもない、その程度のことで7878は止まらない

そう、こいつは文字通り死ぬまで猛進し続ける愚者なのだ。

 

「理解・分解・再構築だよモルモットくん!これさ!これこそ古代錬金術より受け継がれし科学の礎!人類の切り開いてきた歴史という名の航路の証さ!」

「お前はリコチャンなのかタキオンなのかはっきりしろ」

 

 身長はエドのくせに、とは言わないでやる心は1010の中にあった。

 

「さて、とりあえず今日はここで過ごすとして、明日はどうする?」

「オラリオはよくわからんから1010に任す、明日もこれの研究だ、この世界とマイクラのアイテムの相互影響に関する研究だよ」

 

「じゃあ因子レポート書け」

「面倒なことはしないと言ったはずだろ?」

 

 1010は引きこもり余裕と言わんばかりの7878をいかにオラリオ散策と神探しに連れ出すかの策を練り始めた。

 

 翌朝、宿を離れた1010は7878の興味を引くようなネタを探すべく街を彷徨い歩いていた

ダイダロス通りという複雑に入り組んだ街並みは旅人を迷わせるのには十分だったが、残念ながらクラフターをも迷わせるというほどではなく、多少の時間はかかれど普通に突破され

1010はバベル近くの繁華街へと足を伸ばしていく。

 

「花屋、研師……麺屋?なんでそんな専門的な店が……?」

 

 とりあえず入ってみるか、地雷を警戒するべきか迷う1010だったが、店の前で突っ立っているのも迷惑がかかるので諦めて暖簾をくぐると、海苔と出汁の芳香が漂ってくる

見回せば店は座敷席とカウンター席に分かれており、日本……いや『極東地方』的な作りと品揃えになっているようだ。

 

「いらっしゃい!」

「あぁ、献立の表を見せてもらえるか?」

「そこの札がそれでさぁ、ご自由に見てってくださいや」

 

「ではザルソバを一杯もらおう」

「あいよぉ!」

 

 笊蕎麦を出汁に漬けて海苔を載せて口へ

どうやらそれらしい見た目の偽物というわけではなくちゃんとした蕎麦であるようで、程よい歯応えと鰹と思しい出汁の深い味わいが染み渡る。

 

 アルゲードそばに対して『これは断じてラーメンではない』とはヒースクリフの言であるが

これを自分が放つようなことにならなくて良かったと安堵しつつ

併せて出された麦茶を飲む。

 

 そう言えばマイクラ的に麺は貴重なアイテムであることを思い出し、テイクアウトできないかと考える1010。

 

「うむ、旨い」

 

「そりゃあよかった」

「ご馳走様でした、会計はいくらだ?」

 

「100ヴァリスでさぁ、どうも最近粉が高くていけねぇ、ウチは安く早くで売ってきたってのに」

「おや……それは何か、明確な原因がわかっているのか?例えば……そうだな、原料の不足や質の低下、あるいは輸送費の高騰か?」

 

 せっかくの味良い蕎麦屋が値上げばかりというのも困るので、その愚痴を拾い上げる1010。

 

「いやぁなんでもモンスターが東の通商路を辿って蕎麦粉の産地の方に行っちまってるみてぇで

オラリオの冒険者じゃあダメなんですや

なぁんでダメなんだかは心底わかんねぇがそういう規則があんですとよ」

 

「……なるほど、では私が行こう

私はオラリオに属するわけではないが、これでも冒険の経験はそれなりにあるつもりだ」

 

「冒険者依頼、という形で良ければ、だがな」

「そりゃあもちろんおねげぇしますよ!

いやぁ助かります!」

 

 凄まじい勢いで食いついてきた店主に掴まれた手を見据えて返す。

 

「こちらも、味良い店が嘆いているのは困る、これからもこの店で蕎麦を食わせてもらっていくつもりだからな」

 

「へへっ、どうぞご愛顧くだせえ」

 

「うむ、追って詳細を教えてもらおう、明日の朝また来るから、その時までに状況と依頼内容をまとめてくれ

今日のところは準備に使わせてもらい、明日出立する」

 

 店を離れたスティーブはそのまま宿へは戻らずに今度はバベルへと向かいへ、ファイストス・ファミリアの商店へと訪れる。

 

「ふむ……」

 

 そこに置かれているのはマイクラ的に見れば「鉄の剣」など下級の装備ばかりだが

ものによっては「刀」や「小太刀」などの扱いを受けるだろう湾刀や大槍などの特殊な武器もある。

 

「珍しいが、それだけか?」

 

 概ねの性能は確かにマイクラのその辺りのレベルを上回っているが、残念なことにめぼしい特殊な機能やエンチャント・素材を使った武器はこのレベルにはないようだ。

 

「もっと上を見てみるか……」

 

 その気になればオラリオ経済を崩壊に導く無限金濫造ができてしまうスティーブだが、そんなことをしようとするはずはなく

真面目に金を稼ぐつもりである

そのためにはひとまず手頃な武器を手に入れるべきと考えていたのだが、残念ながらこの水準では自作した方が高度なレベルの武器を作れるといったところであるため、諦めてより高価格帯の装備を見に移ることにした。

 

「ん?」

 

 上に続く階段のすぐ前、店の片隅に放置された『コヨリ・ヒゴロモ作』と刻まれた一振りの鉄斧

その奇特なフォルムに既視感を覚えた彼は

それが突っ込まれた古い樽から斧を引き抜き、詳しく確認してみる

見た目はマイクラ的には『鉄の斧』となるはずのアイテムだが

やはりそれには特殊な機能が隠されていたのか、視界には『エクセレント21』と表示される。

 

「うぉっ」

 

 ひねった柄裏から吐き出されたチェーン、長く放置されていたのか錆びかけたそれは柄自体を錘とした鎖鎌のようにシルエットを伸長させる。

 

「やはりトリックウエポンか……あの女が使っていた斧に似ていると思うわけだ」

 

 古く錆びかけたそれは実用は難しいだろうが面白い機能を持っている

散漫な7878といえどこれほど奇特な形態を持つ武器なら興味を惹かれるだろう。

 

「よし、エサは決まりだな、これを買おう」

 

「最後の一手にドクペが欲しいが……まぁないよな」

 

最後のピースは諦めたが、十分な餌は確保できた

中世西洋風な世界で東洋系のソバという貴重な要素を確保し、興味を引くために珍しい武器を入手した

これで釣れなければ釣竿で釣る他ないだろう。

 

「マイクラの世界でもソバってなかったよなぁ……」

 

 和風系のMODにうどんが存在したことは覚えているが、蕎麦は記憶にない、もしかしたらこちらの世界に来たからこその出会いであると言えるかもしれない

異世界に出会いを求めるのは間違っているだろうか?

 

「ただいま」

「んぉ、おんぬ」

 

「喋れ」

 

 口にパンを突っ込んだまま『もごもご』している7878を嘲り笑いながら蹴り付けてやると、それで喉のつかえが取れたのか

咳き込むと同時に言葉が出てくる。

 

「明日、少しオラリオを離れる

用ができたんだ

蕎麦が食える店を見つけた」

 

「ん、蕎麦?別に作れるぞんなもん」

「……作れるかどうかじゃなく、食えるが重要なんだよ

蕎麦粉手元にないだろ?

それに未加工の材料と加工済みの食品じゃあ利便性が違う」

 

「確かに」

 

 部屋の隅にいかにもインテリアと言わんばかりに置かれた変換テーブルを漁り始める7878だが

面倒になったのだろう、途中でやめる。

 

「あぁー左手いてぇ〜」

 

「……お前の体はどうなっているんだ?血行が悪いのか筋肉が悪いのかそれとも生物としての作りが悪いのか?」

 

「お?急にディスるやん」

 

「それより、こいつを見ろ」

 

 がしゃり、と床に置かれたそれは先ほど購入されたトリックウエポン固有名『エクセレント21』だ。

 

「ん?鉄の斧?」

「違う、こうして……こうすると」

 

 ガシャリと外れた斧の柄頭が鎖の括られた錘へと変わる。

 

「鎖鎌みたいに伸びるんだと」

 

「へぇ……お前、面白い武器出すね」

 

 急にウサギっぽくなった7878の頭を撫でるべきかどうか逡巡しながら柄の鎖を目の前に垂らしてやると

それを目で追い始める7878。

 

「ふっ!」「ほっ!」

 

「くっ!」「あらよっ」

 

「待てこら」「あっ」

 

 先端部分ではなく鎖の部分を掴まれたことであっさり奪われてしまった仕掛け斧を見送ると、

7878はそれを持って行って変換テーブルに入れられるかどうか試してみるようだ。

 

「猫じゃなくてアライグマかよ……」

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