チート勇士、貞操逆転世界にてダンジョンに挑む 作:ナイスウッホ
「今日が待ちに待ったステータス更新の日だね!」
「そうだね。朝ごはん食べ終わったら一緒に行こうか」
朝食で出されたシチューをスプーンで掬い、口に運びながら俺は返事をした。
今日は1ヶ月に1度のステータス更新の日だ。全国民が女神からジョブを授かり、そのジョブに従って俺たちの社会的身分が決まる。たとえば「農夫」だったり、「村人」だったり、「冒険家」や「剣士」なんてものもある。そしてそれぞれのジョブは、レア度と呼ばれる☆1〜☆10までの数値で表されるのだ。
当然ほとんどの人が持つのは「低レア」だが、その後に経験値を積めば女神から認められて、上位ジョブに変化することもある。ジョブによって元々決まっている「固定スキル」なんてものもあるため、みんながみんな上位ジョブになることを夢見ている。
「『ステータス』」
独り言を言うような声量で呟く。
すると、自分の目の前に文字の書かれた透明な板が浮かび上がってくる。
名前/タイガ・タカハシ
レベル/25
ジョブ/ ☆7 ID:男子高校
スキル/ SS 異世界の勇士 S 瞬閃剣 C 危機脱出
SS異世界の勇士/(持続効果)戦闘開始時、『無効』*1と『不死』*2を10獲得します。
S 瞬閃剣/(持続効果)敵を攻撃する時に敵の防御を無視したダメージを与えます。そして敵を攻撃するたびに『回避』*3と『集中』*4を4獲得します。
C 危機脱出/(持続効果)ダンジョンに入場する時、『罠回避』*5を2獲得します。
罠によるダメージが30%減少します。
親の顔より見たステータス画面だ。嘘、転移前の記憶はもう残ってないから、両親についても覚えていない、なんて。
今のレベルは26。今日の更新で上がってるといいな。
教会に行って聖職者のジョブを持つ人にステータス更新をやってもらうことによって、俺が今見ているこの画面も変化するってわけだ。
正直ツッコミ所はたくさんある。
まずジョブ名の男子高校って何だ?あるとしても男子高校生だと思うんだけど。しかもそれがジョブ名っていう。
俺も剣士とか魔導士とかの分かりやすいジョブが良かったなと思う一方で、このジョブで良かったとも思っている。というのも、ジョブと固有スキルのレア度が高く、効果も有用なものだからだ。やっぱチートまではいかなくても俺tueeeeしたいしね。
女神に感謝。会ったことないけど。
目の前で机を挟んでもくもくとパンを口に運ぶ女──俺はジナと呼んでいる、のステータスを見せてもらったことがある。
以前教えてもらった時は、レベルは19、ジョブは☆2魔導士、スキルは「魔法の矢」と「冷気の矢」、確かランクはそれぞれCとBだった覚えがある。
つまり、俺はこんなよく分からんジョブとスキルでも、恵まれてるってことだな。
特にスキル・「異世界の勇士」の『不死』10の獲得効果が傑出して優れているそうだ。
前に更新をやってくれた聖職者のお姉さんが言うには、敵のデバフが無ければ10回も復活できるということらしい。ゾンビかな?
まあこの復活を妨害するデバフを、敵がばら撒いてくるっていうのがキモなんだけどね。もう一個のスキルの方も───おっとジナも食べ終わったようだ。
「じゃあ行こっか」
「うん」
彼女がツインテールを揺らしながらテーブルから立ち上がったのを見て、俺もお盆を手にとって片付けに行く。
彼女、ジナ・フィオサージュとは、俺がこの世界に転移してからこの街のギルドにお世話になって以来、そこからずっと続く仲だ。
気が付いたら神殿みたいな場所にいた俺は、息をつく間もなくその場にいた聖職者さんに紙と身銭を渡された後、グイグイと押されてギルドにまで来た。そこで紹介されたのがこのジナ・フィオサージュという金髪ツインテールの魔導士だったという訳だ。それと本当はもう1人いるんだけど、ここでは割愛する。
この世界に来て初めに感じたこと───それは、とても目のやり場に困るということだ。
見渡す限りに女、女、女。
女しかいない。しかも美人ばかり。
ちなみにこの世界に来て3週間ほど経ったが、男はまだ両手で数えられるほどしか見ていない。
男が少ないだけならまだいいかもしれない。しかし、女性はみんな巨乳だし、全員際どい衣装をしてるのだ。これが非常に困った。
顔を見て話すには顔面偏差値が高いから照れるし…………かと言って視線を下に逸らすと、激しく存在感を放っている乳が、しかも谷間なんて見せびらかすのがデフォルトだと言うかのように飛び込んでくるのだ。
そっからさらに視線を下げても、Iラインモロだしの激しい角度のハイレグか、絶対領域なんて言葉が存在しないであろうクッッソ短いスカートが目に入るのだ。
『覚悟』、決まってますね?
そしてその例に漏れず、杖を腕に抱いてこちらをチラチラ見てくるジナも、むっちりとした太ももが丸見えなローブを着ているわけだ。君さぁ、そんなとんがり帽子を被る前に、もっと隠すべきところがあるんじゃあないか???
……じゃなくて。ジナがジーッと熱視線を送ってきている。流石に気になる。
「あのさ、そんな見られると困るんだけど……」
「え!?あ、ごめん」
別に怒ってる訳じゃないけど、ジナと会ってから2週間経った今も時々こんなことが起こる。
可愛い女の子に見つめられるのは嬉しいんだけどね、と誰にも聞こえないような声で呟く。
とはいえ街のどこに行ってもこっちを舐め回すような視線ばかりで、最初は辟易していた。ギルドの建物に入る瞬間なんて、毎回部屋の全員の目がこっちを向くから普通にびっくりする。もうだいぶ慣れつつあるが。
でもそれもしょうがないと言えばしょうがない。
さっき言ったようにこの世界は女ばっかりで男が少ないからだ。それが何対何なのかは知らないけれど。この世界にも戸籍制度はあるから、きっと国の役人なら知ってるのかもしれない。
そしてただでさえ男が珍しいこの世界において、さらに俺みたいなダンジョン攻略者になる男は滅多に見ないそうだ。
なんて言ったってダンジョンは危険だ。どの部屋も魔王が仕掛けた罠で溢れているし、戦闘部屋に入ってしまった時はもっと悲惨だ。凍傷死、感電死、火傷死、さらには”死体爆発死”なんてモノも存在するが、単純にモンスター共によって殺されたり捕食されたりすることもあるのだ。
俺が攻略者やってる理由?そりゃあ勿論ありますとも。そのうち語らせてもらおうかな。
という訳で、ダンジョンで死んだほとんどの場合において、その人の死体は帰ってこない。なんならモンスター共にネクロマンサーがいた場合、次のダンジョン侵攻の際に顔を合わせるなんて最悪の事態もある。
しかし、人類はダンジョンを攻略しなくてはならない。なぜなら人類が攻めていないと、魔王が人類の街に攻めてくるからだ。そうしていくつもの街や都市が滅びた。かつて興隆を誇っていた国の首都も、あっけなく魔王によって攻め落とされた。
攻略に成功せずとしても、魔王に街を攻めさせないように、定期的に魔王軍の戦力を削っておく必要がある。
だから人類は魔物共を駆逐するために、ダンジョンを攻め続けるのだ。例え何百、何千もの市民の命が無駄に消費されようとも。
とはいえそんな魔物との戦いで切羽詰まった世界でも、街は賑わうし、活気で溢れている。特に俺らが生活の拠点にしている都市であるリンツ市は、魔物との前線が遠いことや魔法大学などの学術拠点となっていることもあって、常に多くの人で溢れている。
「ねぇジナ、今日の更新でさ、もしジョブが進化してたら美味しいもの食べに行かない?」
「……いいわね!今度こそ私は精鋭魔導士になっているに違いないわ!」
任せてちょうだい!と言うかのようにジナが豊かな胸をゆっさりと揺らしながら胸を張った。自慢げなドヤ顔が可愛いんだなこれが。
様々な格好の人々が行き交う活気あふれる通りを歩きながら、俺たちは丘の上にある神殿に向かった。
続きます