待ってた。待ってたよ!
ところで……刺青ノ聲のリメイクは……。はい、気長に待ちます。
帝都大学、この国の最高学府に所属している私は、些か疑問を持ちかけられる事の多い授業を担当していた。
民俗学である。
民俗学とは、民間伝承を集め調べることによって、庶民層における伝統的な生活様式や社会形態を明らかにしようとする学問である。
難しく説明するとこうだが、簡単に言うと自分たちの日常生活や文化、つまり「あたりまえのこと」を様々な側面から研究する学問のことである。
題材は多岐に渡り、生活用品から伝承、伝説まで及ぶ。
屋内で論文や文献を読み漁るだけでなく、実際に現地に赴いて情報を集めるフィールドワークを取り入れて研究することが醍醐味であり、私はその学問の一派に所属する人間であった。
しかし、別にオカルトがメインの学問ではないことをここに強く明言しておきたい。
幽霊や妖怪、その他諸々の奇々怪々な出来事にしょっちゅう出くわしていて、陰陽師の家系に属している……そう思われることも多い。本当に多い。
特に新入生には妖怪ハンターになれる、といったような大きな誤解を持たれている。そういう学問である。大丈夫か最高学府。
実際に学会に行くとオカルト絡みの怪文書を配るマニアの方もいるため、なんとも言えない学問であることは否定できない。
また、文化人類学と混同されがちだ。主に冠婚葬祭のルーツや類型といった人の習俗を研究する分野だ。ある意味、腹違いの兄弟のような近似を持っている学問と言えるだろう。
「では、来週から授業を始めていきます。興味を持ってもらえたなら受講登録を。別に良いやと思ったら、引き止めません。別の授業を登録してください。ちなみに来週は、
手に持っていた本は『
麻生邦彦は江戸末期から明治初期に活動していた科学者である。魂や霊魂と言われる「目には見えないが実在する可能性のある存在」や「異界」の研究を進めていた末に「ありえないもの」を写す
無論、科学者としては異端も異端。エセ科学とまで
そんな人物が、私のご先祖様に当たるそうだ。なぜ曖昧なのかというと、詳しく探ろうにも墓の場所すら判明していないため、紙の上でしか確認することしか出来ないためである。
今日はオリエンテーションだけであったため、早々に授業を切り上げて研究棟の自室に戻ることにした。
ちなみにこの民俗学概論、楽に単位を取れる授業ではないのだが、人気の授業でもあった。その理由が、この部屋である。
麻生邦彦が開発した射影機、霊石ラジオを始め、
ちなみにこの研究部、部室棟の部屋もあるのだが、そちらは部誌を製作するための専用部屋のような扱いになっている。ちなみに寝泊まり可能らしい。研究部の人数は現在五名。学生たちが入るとこの部屋は窮屈になってしまう。
教員の立場である自分から言わせてもらうと、部室棟に戻ってもらいたい、それが一番強かった。
「はいはい、鍵開けるから……」
そして今日も、部員たちが部屋の入口で待っていた。
「黒澤先生に、皆でお土産を買ってきました!」
そう、今は新入生もいる春の季節。学生たちも休暇の間は地元に戻っていたようで、渡された大きな紙袋には五人分のお土産が入っていた。地元の銘菓だったり、お茶っ葉や……いや、お茶請けばかりである。
「……皆で頂こうか。湯を沸かすから、皿の用意をしてくれ」
カステラや、小さい団子を頂きながら、部長の
「新入生、来てくれるかなぁ」
間違いなく新入部員は来るとは思うが、しかし……新入生が入部希望をしたところで、この部屋には流石に入り切らない。早々に本来の部室での活動に戻さないことには無理が生じるだろう。
「……僕の部屋で今後も活動をしていくのかい?」
「そりゃそうですよ、先生」
確定事項なのね……。
「本来はノンフィクションの類で活動している先生が、いきなりオカルトの話を始めたときには驚きました。リアリストの先生がまさか、あんな出来事を経験してるなんて……こんな面白い先生だからこそ集まってるんです!」
「あぁ、そう……嬉しいのやら……」
黒澤家には、天倉螢という父の友人がよく出入りをしていた。彼もノンフィクション作家で、主にこの二人の影響によってこのような人間になってしまったのだろうと推測できる。特に眠りの家や朧月島、
麻生邦彦の子孫、というただそれだけの理由で異界研究の一端にいるに過ぎない。
当時はそう考えていたのだった。
まだホラー要素は出しません。
大学の雰囲気を楽しんだら、ホラー展開を出していきます。