龍驤がヤサグレるワンピース   作:HIRANOKORO

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メダカの分散和音

 マクシムは高度を落としている。上層遺跡を越えた段階で、ゾロが砲撃を始めている。

 砲撃というか、斬撃だが、なんでかうちのクルーが乗ってたところに、エネルが来たっぽいので、援護だ。とりあえず、切り刻んでみる。

 ゾロも混乱している。なんで、あの三人は空を飛んでいるのか。落としたら、そのクルーが危ないが、必死だ。

 ゾロの頭の中のロギアは、エースかクロコダイルなので。

 斬り刻まれて飛んでいるのは、なんとか妖精さんがマクシムを維持しているからだ。妖精さん自身、なにをしているのかわからない。

 ただ、ワチャワチャしていて面白い。艦娘以外とも遊びたいのだ。異世界へ来てよかった。

 こんなにもたくさん、妖精さんと遊んでくれる人たちがいる。

「ゾ〜ロ〜!!」

 そんな折に、船長が通りかかった。

「なに遊んでんだ!?」

 龍驤に爆撃されて、今は雷がひっきりなしで、船が空を飛んでいる状況で、我らが船長は。

「うおおっッ!?」

 ゾロの隣に着弾した。突き刺さった。

「アヒャヒャヒャヒャ」

「真面目にしろ!! 鐘はどうなったんだよ!?」

 そもそも、鐘がなんなのかわからないが、麦わらは自由だ。みんな好き勝手している。

「祭りだぞ? ゾロも楽しめよ」

「なんだ、祭りって?」

「知らね。でも、神がいるなら、祭りがなきゃな」

 どうせまた、あのチンチクリンになにか吹き込まれたのだろう。ゾロはちょっと不満そうに口を歪め、黄金船を指差した。

「いいのかよ? 抜かれてるぜ」

「そうだな。これからが本番だ」

 そのとき、森の中から、ワイパーが飛び出してきた。勢いの限界に到達すると、ケツからジェットを噴き出して、上空へ一直線で向かった。

「やべ。仮面のやつも本気だな」

「なんだありゃ?」

 マジで意味不明。不格好。

「ウソップだ。なんか、手、貸してた」

「ああ、そう」

 なんて言ったらいいかわからない。

「それより、ナミとロビンがあの船に乗ってる」

「コックもだろ? アフロにされてたな」

「じゃ、大丈夫だろ」

 根拠が知りたい。船長は気楽だ。

「なんだってんだ?」

「龍驤が考えてるさ」

「そうか?」

 決して安心材料ではないが、ルフィは違う。仲間を信頼している。

 言っている間に、船からペガサスが飛び立つ。背中に女性陣もいる。ゾロはわずかに、息を吐いた。

「その龍驤はどうした?」

「楽しんでんだろ?」

 ルフィはニヤッと笑って、身体を捻り上げた。そして、飛んでいく。

「俺も負けねえ!!」

「おう、勝ってこいよ」

 ゾロは座り込んだ。やる気が失せた。

 どこからか、太鼓の音が聞こえる。本当に、祭りでもやっているのかも知れない。

 巨大な森と、突き立つジャイアントジャック。どこまでも続く雲海に雷の降り注ぐ、壮大な光景。

「酒がねえや」

 ドンドッドット、ドンドッドット。

 さあ、伝えてくれ。解放の音色を。

 

 

「もうちょっと、なんとかならなかったのか?」

 即席のバリスタで打ち上げられた親友の、あまりに痛ましい姿を見送って、シャンディアの戦士たちは呟いた。

「推進に使う靴が、一個しかなかったからな。人体の構造的に、尾てい骨へ設置するのは、やむを得ない措置だった」

 バックパックタイプだと、空中で回転するからとかいう、ロマンを無視したアレ。リアリティなんか死ね。

 助けてくれたのだから、文句は言いたくない。言いたくないが、あれはあんまりだ。

 姿勢制御のために両足を開いてバランスを取り、なのに空気抵抗を減らすため、両手を重ねている。

 牛丼が好きそうな飛び方だ。

 せめて、二つあれば、鉄人になれたものを。

 悲願ではあるものの、そこまでしなければならないのだろうか。疑問は尽きない。

 ワイパーは、シャンディアの灯をともしに行った。

「空の上じゃ、もう任せるしかないな」

「そんなこともねえ。そのバリスタ、解体して担いで行こう。少なくとも、神のやつに好き勝手させることもねえ」

 頼りになるな、この長っ鼻。

 最初に、この空をめちゃめちゃにしたのは龍驤なのだが、実害のなかったシャンディアは忘れていた。

「あたしは、アイサたちが心配だから戻るよ」

「怪我人がいるかも知れないしな!!」

 そのぬいぐるみはなんだ。なんで抱いてんだ。かわいいな。

 わかっているけど、わからない。

 男たちは、疑問を言葉にすることも出来ない。

 そんなわけで、シャンディアは三々五々、散らばった。

 

 

 迷いの森では、シャンディアとスカイピアの住民が鉢合わせした。神隊の半分が戻り、感動的な再会が繰り広げられた。

 その裏で酋長と、神隊で偉かった人が睨み合い、ホワイトベレーが仲裁するという、カオスを展開していた。

 神の不在。大変だ。

 アイサはコニスの膝に抱かれて、空島の出来事へ、耳を澄ませていた。

「どうですか?」

「神以外に、残ってるのはいないよ。もう、終わりだね」

 後ろでは、喧々諤々である。六年、強制収容されて、解放されたら、アッパーヤードの居住権を、シャンディアに奪われていたのだ。突然、そう言われた。

 色々とおかしい。聞きたいことがあり過ぎる。

 神隊は神に囚われ、この国に来た海賊のことも知らない。

 知らないが、エンジェル島は焼け落ちた。今、弱った身で、シャンディアと争えるわけでもない。向こうもこっちも、避難して来た一般人ばかりだし。

 だからといって、認められない。

「ガン・フォールとの取り決めだ」

「しかし、ここは我らの聖地だ!!」

「もう違う。貴様らは、エネルに奪われた。そして、我々が奪い返した」

 その通り、なのかどうか。神隊の時間は、六年前で止まっている。エンジェル島の住民は、立ち入りを禁止された。その上、そもそも、シャンディアから奪った所有権だ。

 状況を整理出来ない。

「だが!! エネルはあの通り、まだ飛んでいる!!」

「では、今からこの戦争に参加するかね? 我々は止めない。好きにするといい」

 コニスとアイサは、つまらなそうに空を見上げている。

「空が狭いよ」

「ここは、窪地ですしね」

 それだけでなく、厚い雲がある。そして、巨大な船が飛んでいる。

 雷もうるさいし、大人は荒々しいし、実に気分がよくない。

 なんで、こんなわかりきったことで、争わなければならないのだろう。

 コニスとアイサは、もううんざりだ。

「神隊の皆さんがいなくなったあと、戦うことをやめた我々が、あの海賊の方々やシャンディアの方々と戦うのですか? エネルの味方をして? 今度は、なんの罪に落とすんですか?」

 思わずと言ったボヤキだった。誰に聞かせるものでもないが、みんな聞いた。

 落とせなかったけど、そのつもりだった。何度もしてきた。罪悪感は、拭いきれず、存在する。

 海賊だから、わざわざ落とす必要もないのだが、海賊がよくわかんないので。

 隔絶されたこの空では、海賊という言葉すらない。青海という、地上の様子を示す言葉はあるのに。

 昔はいなかったのかよ、海賊。

 神隊の人間が、スカイピアの住民を振り返る。住民は目を逸らし、顔を上げない。

 人々が落ち込む割に、なんとも空気が浮つく。なにもわからないからだ。

「共存は、ガン・フォールさまの願いです。それに従うのは、そんなに嫌ですか? この土地を、独り占めにしなければいけない理由が、なにかありますか?」

「もう、あたしらの住処も、なくなっちゃったからね」

 それだけですんだのだ。すませてくれた。神も恐ろしいが、海賊も化け物たちだ。

 天罰は避けられても、こっちは祟りである。落とし前ってやつが、青海じゃ戦争を引き起こそうとしている。

 ケンカを売ってしまった以上、買うか買わないかの主導権を握られて、スカイピアにもシャンディアにも、出来ることはなにもない。

 麦わらの財布を握っているのは、異世界の艦娘なんだから。

 水平線の向こうから、一味と関係なく、好き勝手に出来る。

 麦わらの一味は、小遣い制。そして、自由である。

 安いもんだ。島一つの命運なんぞ。

「結論は、成り行きを、少し見てからでよいのではないか?」

 酋長の言葉に、エンジェル島を背負ったつもりの神隊が黙り込む。成り行きもなにも、なにが起こっているかもわからない。スカイピアの住民は、不満を口にするぐらいしか出来ない。

 神が、ここにいないのだ。

 雷が降る。ときたま、この窪地にも落ちてくる。なによりも、ここに爆弾が落ちていたことは、あちこちに残る跡でわかっている。

 出来た広場で、シャンディアがなんかしている。

「祈りましょう。エネルがいなくなれば、それでみんな、都合がよいはずです」

 それはそうなんだけど、あまりにも他人事過ぎる。当事者なのに、介入の余地がない。

 神罰がずっと下らない。なのに、先ほどから雷は降やまない。この空島で、雷とはエネルの意志だ。

 つまり、なんか害意を向けられてるっぽいのだけは、わかる。神の御心に、誰も心当たりがない。

 神隊は、苦虫を噛み潰したような顔をした。彼らはそこにいるだけだった。反論も出来なかった。住民たちは戸惑うばかりだ。

 酋長はニヤニヤと声をかけた。

「では、我々は用があるのでね。宴の準備をしてくれと、頼まれたのだ」

「誰に?」

 それを聞いたコニスとアイサは顔を突き合わせ、クスクスと笑った。

 

 

 女神がいたらな。

 ただ、そう思っただけだった。

 龍驤は森を彷徨っている。ひっきりなしの雷が、昼寝をさせてくれない。空を飛べない龍驤は、あてもなく身体を引きずって行く。

 すぐに乗り捨てる船だ。乗り換えの段取りまでしていた。

 それなのに、そう思ったのだ。

 メリーを死なせたくなかった。そこに、つけ込まれた。

 任務を、与えられてしまった。

 エネルが来た時点でエラー猫を吐いてたから、ちょっと疑惑だが、そういうことだ。ゲームの参加者には、妖精さんも名を連ねている。

 当然、無視する。編成任務は、艦娘を呼び寄せるものだ。懐かしい顔が勢ぞろいである。この世界に、帝国海軍が出現する。

 出撃、遠征任務は、明らかに制圧作戦だ。支部とか言って、地上基地しか作れないこの世界に、艦娘たちが跋扈する。

 この世界に対応出来るかはさて置き、海賊の自由にはさせない自信はある。

 法を行使し、執政権を得れば、領有権は転げ落ちる。

 艦娘が世界を支配する。妖精さんの、遊び場になってしまうだろう。彼女らは侵略者だ。

 この領有権問題は、異世界も抱える紛争の原因だ。これがはっきりしていないと、争いは起こってしまう。

 この空では、エネルでさえこの領有権を持っていない。

 なぜなら、森が文明を飲み込んでいる。放置されて、ジャングルになった。育ち過ぎている。

 その割に石材建築だったりなのが意味不明だが、簡単な植民地の定義だ。

 農業したら、自分の土地。

 荒れ地のまま放置して、四百年。誰もアッパーヤードを実効支配出来ないままとか、どれだけ争ったのか。イギリスとフランスだって、百年だ。

 教育でも生活でも環境でもなく、何世代にも渡って、人々の人生が争いの中にあったと推測される。衣食住の、土地がないのだ。どうにもなるまい。

 ガン・フォールさんが、どうやって話し合いの場を作れたか、検討もつかない。空に生きる全員の人生を否定してんだぞ。

 そこに妖精さんを突っ込んでしまった。遊びで国家機能を停止させ、世界大戦を引き起こす邪悪だ。

 龍驤は悪くない。

 領有権は厄介だが、きちんとしていれば争いは起こらないとも言える。なのに、妖精さんはそもそも、所有権を理解しない。

 つまり、勝利条件がわからない。終わらない。

 それだけでも争いに参加させてはならないが、もう一つ懸念がある。

 この世界の船に、艦娘の修復剤など使ったらどうなるか。普通はバケツ被って船は直らないのだから、物理法則が乱れる。

 波は情報を記録し、時間を遡る。つまり、魂はある。量子物理が、それを証明し始めている。

 意思や記憶が、なんらかの波形として残留したりなんなりするとわかったのだ。

 この世界は、それがさらにわかりやすく、悪魔の実や覇気といった謎の波形によって、物理的な現象を起こす。

 メリーは艦娘と化すだろう。おそらくは、龍驤たちとは違う姿で。最初から、命あるものとして。

 船体に付随した、なんらかの人格として現れるのではないか。

 戦うためではなく、運ぶための形態を選ぶんじゃないかと。

 つまり、どっちかって言うと、妖精さんっぽくなる。

 現地妖精、または新種の妖精さんだ。とんでもない。

 どうしたもんかと。

 空でなければまだよかったものを、妖精さんが遊び場に設定したのは、よりにもよって、アッパーヤードである。

 どうしたらクリアだ、このゲーム。突破不可能ですよ、こんな海域。

 400年だ。誰を吹っ飛ばしたら、このケンカは終わる。皆殺しにでもするのか。

 そんな龍驤を救ったのは、ルフィである。我らが船長の目的は、徹頭徹尾、鐘を鳴らすことだ。

 妖精さんは、それは理解した。

 勝ち負けはともかく、鳴らせばいいんだ。よかった。

 試練に繋がるミルキーロードが、なんか見慣れた海域マップになってた。あの、謎に深海棲艦の居場所がわかるやつ。

 羅針盤回すの、嫌過ぎる。全部、男どもに押しつけた。異世界は最高だ。艦娘が主力ではない。

 まさか、いちいち受領しなければ果たせない任務の煩わしさを、感謝する日が来るとは。

 大淀は、こんな事態を想定していたんだね。異世界転生。

 怖い。

 怖いついでに、核の脅威について、根本的なところから説明しよう。

 龍驤の世界で、妖精さんが日本を滅ぼしかけたイタズラ。様々な文書の紛失。

 これが、核の目指すところだ。指揮系統、能力、設備、事務に至るまでを、根こそぎ吹き飛ばす。

 そう、核の脅威とは、民間人が百万人単位で死ぬことでも、放射能でもない。国家機能の停止。それこそが、核の脅威である。

 おかげで、それまで戦争の終結を意味する、野戦軍の撃破が戦術にまで貶められた。国家の滅亡が、戦略となった。

 限定戦争が、本気でなくなった。

 よく戦争で、政治家は戦場に出ないからとか、そんな可愛らしい主張をする人間がいるが、目を覚まして欲しい。

 核のある世界で、安全な場所などない。

 政治家なんか、兵士よりもよっぽど狙いやすい弱者だ。

 そして弱点を狙うのは、単なる常識である。

 冷戦は、本当に怖い時代です。

 しかし、核というのはなかなか使えない。自分の身はかわいいし、技術もいる。濃縮とか大変だ。消費期限もある。汚い。威力がデカ過ぎる。

 龍驤の世界は、使える核を研究してきた。覇権を握るために。

 その覇権が、なぜか確立されている。

 まず、この世界は海軍と海賊が領有権争いをしている状況だ。貿易もグダグダで、政治も統治も上手くいっていない。アラバスタすら、海賊には無防備なのだから。

 実は、これらの情勢に不参加な世界政府が、覇権を握っている。とても、不思議な状況だ。

 海で分断されろよ。大人しく。

 まあ、核があるんだろうと予測したわけだが、核そのものである必要はない。

 勇者で魔王城。これも、核と同じ脅威である。国家機能が喪失するから。

 要は、斬首作戦が出来ればいい。この世界の政治状況だと、そうなる。レヴェリーがある以上、みんな中央集権国家だからだ。

 これは核よりも簡単だし、核以上に難しい。イギリスとアメリカなど、限られた国家にしか出来ない。

 つまり、核の脅威とは、爆弾の威力ではなく、正確で確実な運搬手段こそが、その本質となる。ロケットとかね。

 考えてみよう。

 空軍はないから、空からでは無理となると、潜水艦だ。

 でも、この世界の海って風や波より、意味不明な海流の方が怖いんだよね。島が飛ぶし。

 そんな海に沈んで逝くんだ。なるほど。

 また、船よりもより正確な海図が必要だ。まあ、クロコダイルの隠れ家みたいなガラスがあるなら、海中での有視界航行も可能なのかも知れないが、星や太陽など、空を見るのも大事な航海術だ。

 舵が屋根の下にあるのは、龍驤の世界と同程度の航海技術があったことを示している。あらゆる場所を、自由に航海出来る実力がなければ、舵を屋根の下に置くことはない。

 が、この島である。

 全然、辿り着けてないじゃん。

 航法がなければ、なにをしても迷子だ。空も海も、運搬手段になり得ない。ゾロみたいに、適当にフラついていたら、その分野のトップになれるわけもない。

 だから、悪魔の実しか思いつかない。手漕ぎ、つーか、根性論で解決だ。

 ところが、空気が泥だった。五種しかない、という飛行種に陰謀論を感じていたのだが、それどころではない。

 歩いては行けないにしろ、走って行けるとなれば、どう考えてよいものか。そこまで根性論か。いっそ、泳いで行け。

 いや、船で行けないなら、走っても泳いでも無駄か。

 とにかく、航法だ。それがなければ、運搬手段をどれだけ用意しても、実現性を担保出来ない。

 だが世界政府は、ミサイルや爆撃機以外で、国家の中枢を壊滅可能な戦力の、運搬手段を持っている。

 政治家、権力者、官僚、そして、彼らの扱う書類とか諸々。それらを、核みたいに吹き飛ばすか、もっとスマートに始末する手段がある。

 世界政府が世界政府として、この海に君臨している理由はそれだけだ。海軍の上に立てる理屈がこれ以外にない。

 だが、どれだけ推測しても、手段を思いつけない。

 だったら、知らない手段だろう。あらゆる可能性を消去して、最後に残ったものこそ、真実だ。

 龍驤は結論する。

 ワープだ。

 龍驤はヤサグレ過ぎて、自暴自棄になっている。兵站を知る軍事関係者なら、必ず夢見る場所へ逃げている。

 結論を急いでいる。

 エネルの船は、それが出来るのか。

 量子の知恵は、ワープも可能にする。悪魔の実なのか、それとも技術なのか。龍驤も使えるのか。

 ロビンが握る、古代兵器の情報が対抗手段になるのかどうかとか、期待は大きかった。

 無理そうだ。あの黄金船は、空は飛べても、ワープは出来ない。なにより、遅い。

 空でも走れる世界で、走るよりもだ。

 龍驤は使えない。

 残念だ。つまり、ポーネグリフにおける古代兵器の記述は、囮である。運搬手段がなければ、核でさえ、戦力は戦術の域を出ないのだ。

 多分、それを使っても負けたんだから、実は政府にとって脅威でもないだろう。絶対にナメてると思う。バカだから。

 ポーネグリフの意味は、記述されている情報ではなく、存在する場所や、全体の構成といったところにあるのかも知れない。

 一種の、暗号表みたいな。

 ラフテルや歴史への謎は深まるが、やはり現代の世界政府を説明するキーとなるのは悪魔の実だ。属人的な能力で、八百年。それを大した努力もせずに維持出来たとなると、なんか嫌な予感がする。

 暫定的に、マリージョアの立地を理由としたい。アラバスタのように、その土地に根付いた悪魔の実もあるようだし。

 また、世界の混乱を考えると、そう気軽な手段でもないらしい。準備が、ゲート的なものが必要なのかも。そう考えると、シャンドラの黄金の意味も見えてくる。

 あれ、ワープを防いでくれるんじゃ。

 無意味な装飾でないのなら、そういうことだろう。そういうことにする。

 龍驤は首を傾げる。

 どうも、機械文明が勝ったのだと思えない。これだけ、技術の痕跡があっちこっちにあるのに。

 バイオ文明だとしたら、世界政府って、ちゃんと秘密を守れる組織と言うことになる。バカじゃないのだ。

 凄い想定外である。

 ならば、技術の普及度合いを見るに、少なくとも、八百年前までは、機械文明を支えられるだけのエネルギーがあったはずだ。エネルギーがあるのに、その代替でしかないバイオ文明が勝つことがあるのか。

 バイオ技術が、核を上回るとか。

 それ、もしかしてゴジラ。

 龍驤はヤサグレる。

 ゴジラは死なないし、食わない。食事の必要がない。生産力のまったくないマリージョアで、超然と過ごすにはもってこいだ。

 普遍的な技術ではなく、属人的な悪魔の実に頼っても納得は出来る。

 なんか状況に当てはまる気がする。

 頼むからワープだけでいて欲しいと思う。

 ワープも出来るゴジラかも知れないが。

 まあ、とりあえず、核だの戦略だのというのは、龍驤の世界における、とってもすっごい知恵と力の塊なのだ。

 ゴジラ並みの。

 妖精さんは、遊びやイタズラで実現するけどね。 

 これからは、龍驤が任務娘を兼務します。助けて。

 つらつらと現実逃避したが、はっきりしよう。もはや、なにを言いたいのかもわからなくなってきた。

 アホみたいだが、つまり龍驤はこの空で、頑張って核レベルの脅威から世界を救った。頑張った。

 妖精さんから、ゲームを設計する権限を奪った。

 ぜひ、それは認めて欲しい。

 世界を守ったのだ。

 ところであのコック、なにをしやがった。

 電子は電子殻を作り、原子核が互いに安全な距離を保てるよう、宇宙を保護している。電子殻の電荷が、相手を引きつけたり、反発したりして、物理現象は起こる。

 キックが当たる。

 プラズマは、その電子殻が剥がれた状態を言う。

 そして、原子核が直接触れ合う現象を、核反応という。

 核の脅威について、また説明しようか。

「覇気よ。どうか世界をお守り下さい」

 龍驤は祈らずにいられなかった。敬虔なフリをして、空を見上げた。

 あそこで、仲間が戦っている。

 懸命に。

 命を懸けて。

 信念と愛を掲げて。

 仲間のために。

 やめろ、今すぐ。

 龍驤はヤサグレている。

 

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