朝早く、ウォーターセブンの駅は異様な雰囲気に包まれていた。海軍が武装して、勢揃いしている。
中心には、仮面をつけたスーツの一団がいる。CPだと、誰にも理解出来た。縁の深い街なのだ。しかし、いくら諜報機関だって、こんなときに顔を隠すなど尋常ではない。
噂が噂を呼んで、駅の周辺は人混みでごった返した。
そこへ、ガレーラが来た。人々は驚いた。アイスバーグさんを真ん中に、職人たちが何重にも囲む。
「どけッ!! 道を開けろ!!」
「聞こえなかったのか!? どけっつってんだろが!?」
なにが始まるのか。いよいよ、島が丸ごと注目した。何人かは、ガレーラの面子が少ないことに気がついた。
「職長たちが軒並み」
「いや、一番ドックのルッチとカクがいない」
「カリファさんは? 今日こそ、蹴りを正面から見たい」
変態は帰って、どうぞ。
帰ってくるんでした。
世界政府とウォーターセブンは、駅のロビーで対峙した。見慣れたセーラーと、謎めいたスーツ姿の体制側。
職人の雑然とした機能美と個性が光る装い。率いるアイスバーグさんの貫禄と気品。
地元紙がここぞと食いつく絵だった。
集団の中心にいたそれぞれの首魁は、自然と向き合うこととなる。だが、言葉は交わさない。視線すら、交わっているのか。
民衆が息を呑む雰囲気だけは、醸成された。
「ルフィたちはいないわね」
「あんまり、協力したらアカンのやない? 海賊やし」
そこに紛れて、ロビンと龍驤もいた。大きなローブで隠されているが、ロビンは雰囲気だけでも美人だ。しかし、龍驤は本当に、いるのかいないのかわからない感じで、なおかつ不気味だった。ちんちくりんの弊害である。
「まあ、来るよ。ウチの思惑には乗らん」
だからではないが、龍驤は切なそうに言った。厄介ではあるが、ロビンのためでもある。
表面上、大丈夫だが、ずっと様子がおかしい。なんか幼くなっている。
不安なのだろう。ルフィたちを信じてはいるが、色々とあるのだ。
その信頼が自分にも向けられているのは面映ゆいが、責任重大でもある。今、側にいるのは龍驤だけだ。ルフィとかゾロとか、麦わらみんなの代わりを、一人で務めなくては。
ちょっと荷が重い気がする。来て欲しくないが、早く来い。
「あんまり、明るくは出来んよ」
「いいえ、楽しいわ」
こうやって、フォローもされる。なんとか、この信頼を裏切らないようにしないと。妖精さんなしで。
いたら面倒だが、頼れないと不便なんだ、まったく。
二人を除いて、静かに時が流れた。ただ無言で向き合う陣営に、民衆も息を呑んだ。
「オイ。仮面を外せよ」
だから、その声はよく響いた。アイスバーグさんの隣にいるパウリーが、仮面に話しかけた。
「聞こえてんだろ? 正体を表せ!!」
CPたちは無視した。パウリーは激昂し、止められた。だが、タイルストンでさえ止めきれない。
「仲間だと思っていたッ!! 仲間だと思ってたんだ!!」
「お前だけだ」
プッと吹き出す音がした。当事者以外、みんなの視線が、不審な、なんというか、布団でも被ったようなチビに向けられた。
お祭衣装なので、痛い子供用と、不格好な大人用の二択だった。ロビンがしょぼんとしたけど、譲れなかった。
「ごめん、つい」
ルッチの背景を推測している龍驤からすると、この状況で思わず否定してしまう心情に、我慢が出来なかった。
なにもかもが憎いよね。こんな理不尽に晒されたら。
龍驤にしてみれば、どちらも世界政府の被害者である。友達を失ったパウリーはかわいそうだが、人生を丸ごと犠牲にされそうだったルッチの前では、という感じだ。
むしろ、本当に友達なら色々飲み込んで、成功だけは祝福したっていい。ルッチは人生を取り戻せる。どうでもいい、古代兵器の設計図一つで。
つまり世界政府は、所属する人間ですら使い潰す組織で、そこになんの呵責もないということだ。
じゃあ、なんで海軍は市民を守ろうとしているのか。
かと思えば、なぜ青キジはバスターコールをちらつかせたのか。市民を犠牲にするリスクを最大限に高めてまで、ロビンへ謀略を仕掛けたのか。
まあ、よくわからないが、確かなことがある。
この世界は、本当にクソである。クソの固まりだ。
龍驤の世界でも、クソの上を歩いている気分になることはある。だが、それ以上だ。最悪だ。
なぜなら、人力で物が動くからである。
アホのレベルが違う。
この世界は少なくとも一度、完全に滅びている。
エネルギーが枯渇した。文明が消えた。じゃあ、どうしたか。
人間を燃料にしたのだ。
薪を火にくべて消費するように、人間を使い潰したのだ。人間を資源とした。
天竜人のクソども。人間で文明を維持してやがる。
そりゃ出来るよな。空気が特殊と言えど、この世界の人間は空を駆けるほどの身体能力がある。エンジンやタービンの代わりにだってなれる。悪魔の実を使えば、ジェットエンジンだって実現出来る。
かつて石炭は石ころで、石油はそこらに湧いていた。そんな感覚で、人間を採取していたわけか。バスターコールでも使って。
世界は滅びたが、各国は800年かけて、それぞれが中世から近代へと発展した。世界政府は放置するばかりか、天上金まで課した。
知らなかっただろう。世界は島の内陸だけ。せいぜいがレヴェリーの枠内だ。
その外側でなにが起こっていたのかなんて、誰にも知る術はない。
しかし、加盟国が発展し、文明を取り戻すにつれて、海沿いの人々が抑圧された環境から逃げ出した。
非加盟国地域へ移住した。冒険によって、新天地を見つけた。そして、国を興した。自由を手に入れたと思ったら、そこは採掘場だった。
世界政府が襲った。
一度は逃げ出せた人々だ。必死で逃げただろう。戦った。
そして、海賊が生まれた。もしくは、増えた。陸地に基盤を持てない流浪の民だ。
海軍も大きくなる。資源を逃がさないために。
バスターコールは、その名残りだ。だって、作戦として超不合理だもん。だけど、急激に海軍を大きくし過ぎた。ガープみたいなのを、採用してしまった。
もともとは、人民を物理的にかつ人権から解放するための軍隊だったのが、国民軍になった。本当は、CPみたいなのしかいなかった。
軍隊に入るやつなんて、社会階層は低い。
海軍は同胞を、市民を守ろうとする組織へ姿を変えた。海賊が潜在的に仲間になってしまった。
人間を燃料にする世界だから、とても龍驤の常識では測れないが、それでもそうしようとした。
世界政府は気にしない。取り過ぎて減った資源を、回復させる期間ぐらいにしか思っていない。
金属文明による砂漠化を、人間でやっているからだ。
なぜ、人身売買が禁止されているか。
加盟国の間でそれやったら、天上金が減っちゃうもの。それ以外については、もはや奴隷ですらないから関係ないわけだ。
でもちょっと今、環境保護活動が盛んだから、勝手に伐採しないで取引しようねって、その程度だ。
とてつもない嫌悪感である。
龍驤は確かめなければならない。
海軍は本当に独立しようとしているのか。それとも、世界政府の協力者に過ぎないのか。
青キジの真意はどこにあるのか。
「しかしまあ、違和感よなあ」
世界政府、またはレヴェリーの外に世界がある。それを知らしめたのは、本当にロジャーだろうか。
黙ってりゃいいじゃん。世界の果てなんて、誰にもわからない。
それを追いかけたガープが、英雄だと。
辺境も辺境で、好き勝手してただけじゃん。
どうして、お前ら世界の中心にいる。
とっくに知られていたからだろう。みんなの興味が、世界の外へ向けられていた。
そんな中、白ひげは勢力を築く。白ひげは身内にしか興味がない。なさ過ぎて、世界の外を目指していたはずの大海賊時代が、ナワバリ争いに変わっちゃった。
どいつもこいつも、他人を引きずり込むぐらい、自分の世界を持っているやつらだ。世界を手に入れようなんて思わないはずだが、どうしたわけか。
なるほど、新世界ね。吐き気がする。
だったら、ロジャーもガープも白ひげも、巻き込まれただけだ。
誰かが始めた戦いなんだ。
アホほど有害で、実は無害なこいつらが背負わなければ、世界が安定しなくなったのは、なぜなんだろう。
十五世紀の大航海時代から、大英帝国の成立が十七世紀。そこから、日露戦争をきっかけに、第二次大戦までが五百年。
植民地時代は長い。
その間、黙って支配されていたわけではない。だが、文明の差は絶望的だ。どうにもならない。
どうにもならないものが、どうにかなっている。
ならば、同じようなことが起こったのだろう。この世界なりに。
龍驤はヤサグレている。
日本とかいう非常識が、アメリカって甘ちゃんにつけ込んで、百年かけて富国強兵して切り開いたものを、覇気とかいう身体能力、つまりフィジカルでどうにかしたバカ、絶対いなきゃおかしいでしょ。だって、ないもんね、文明。兵器が古代だし。
この世界、そこまで人力か。
「古代兵器でマジになんの、アホやわ」
「人生を否定されるのって、楽しいわね」
んなわけあるか。嬉しそうに言うな。お労しい。
しかし、なんかね。すごい綺麗に陣営で別れてカッコよく、シリアスにやっているけど、これは喜劇だ。
全員、バカしかやってない。
海列車が来た。
これからが本番だ。
姿を見せた主役は、変態である。
フランキーはウキウキ、ワクワクしていたが、ウォーターセブンへ近づくにつれ、機嫌は悪くなっていった。
夢だった素材を手に入れた。しかし、自分では使えない。もう、船は造らないと決めたのだ。
それに、これは依頼で買った品物である。手放すことになる。仮面を被っていることも、ローブを着なきゃいけないことも、全部苛立つ。
口数も少なくなった。周りを見なかった。
乗客たちがざわめくだけで、乗り降りがなかったのに、一人だけノコノコ出て行った。
で、びっくりした。
「なんだ、コリャ?」
ガレーラと海軍がケンカしている。特に、ガレーラの一人が怒鳴りつけている。アイスバーグさんもいた。
邪魔だった。
「おう、ごめんよ。通してくれ」
「ああ、すまん」
モズとキウイを引き連れて、そそくさと帰ろうとした。龍驤は呆れた。ブルーノのスネを蹴った。
「バカなんか、キミら?」
「なんだ?」
「アレ!! アレっ!!」
気づけよ。なんでだよ。どんだけ、認証に手間のかかる世界なんだ。
こちとら、歩き方一つから個人特定出来るところまで、技術を高めているのに。
「囲め!!」
やっと号令が出た。
「いや、住民を避難させて、列車の前後から乗客を降ろして、搭乗も中止して、ほら車体も退避させんと」
なんで龍驤が指揮してんだか。
「別に必要なかろう」
「アイスバーグに任せる。周囲を警戒させろ」
それもありだが、麦わらが来るんだよ。どっかからか。
「いや、間に合わんか」
フランキーが両陣営に囲まれて、取り合いになっている。流石に一般の海兵では職長たちに敵わないのか、身柄をウォーターセブンに取られそうだ。
ルッチがそちらに行ったが、政府と市長で権限の奪い合いになった。政治なので、実に面倒臭い。
ただ、龍驤は唖然とし、ロビンは顔を逸らし、ルッチはめまいを起こした。
「そいつがカティ・フラムであることは、すでに確認している」
「フランキーに、海列車が造れると?」
「こんな変態が伝説のトムズワーカーズなわけあるか!!」
「ウォーターセブンの誇りを舐めんな!!」
「なんか腹立つぞ、テメェら!!」
仮面もローブも剥がれたフランキーが抗議する。意味もわからないまま、職長たちにボコされた。引き離されたモズとキウイに、気が逸れた。露出してなかったから、ダメだった。
海パンのおっさんが、衆目に晒された。
「フランキーが、トムズワーカーズ?」
この世界における認証とは、なんだったか。
旗などのシンボルだ。顔や姿とは限らず、つまり記憶ですらない。
そして、歴史は消されている。肝心のアイスバーグさんは否定した。
そりゃ、誰も信用しない。海列車とは奇跡である。滅びゆく島を救っただけではない。誰にとってもそれは、実現出来るはずのなかった代物なのだ。今もそうだ。
海列車を造れる職人は、もはや存在しない。
あれは三人だから、トムズワーカーズだから出来たのだ。それを受け継ぐつもりの職長たちは、腕を競うライバルである以上に、仲間である意識が強い。彼らはチームでなければならない。
その、全ウォーターセブン憧れの職人が、海パン野郎。裏町の顔、フランキー。アイスバーグさんのチームメイト。相棒。
誰も認めない。誰も。誰もだ。ウォーターセブンの誰一人、絶対に認めない。
まあ、だからこそ、龍驤はフランキーが怪しいって気づけたんだけどね。野暮だから口にしないが。
「正直に言ってみろ!! お前らだってそうだろう!?」
「なんのことかわからんな」
「誤魔化すな!! もうわかってんだ!!」
かわいそう。本当に、ルッチさんかわいそう。捧げた五年の人生は、アイスバーグさんに並ぶためだった。それが、命令だからだ。
必要だから、パウリーたちと仲良くなったのだ。それが自分の人生を食い潰すとわかっていても。
どれだけ理不尽でも、その命令に従いながら、せめて出来ることとして、日々を設計図の捜索に費やして、運命から逃れようと頑張っていた。
パウリーの態度は、任務が成功していた証である。ルッチはその成功を否定しなければならない。
そして、ルッチは認めなければならない。反論し、擁護し、証明しなければならない。
あの変態が、アイスバーグさんに並ぶ、類まれなる職人であると。
死人だから見逃していた汚点を肯定し、それを成果として持ち帰らねばならない。
ルッチさんの望みであるとか、能力であるとかと、全部逆。なのに、そっちが正しい。少なくとも、世界政府が定める現実では。
不憫。
「ロビン、合図でしゃがめ。来るぞ」
「もう?」
「堪え性なんかあるか。キミを助けて、ウチを取り戻すのに、躊躇するバカどもやないわ」
「勝手なことはしないで!!」
海賊になにを言ってんだか。場は混乱が深まるばかり。誰もそれを制御しようとしない。
「ええから離れよ。さん、にー、いち」
メリーの基地航空隊は生きている。龍驤は、一味から目を離していない。
遥かウォーターセブンの中心部。最も高い場所に、ルソッチョはいた。
異形の角を生やしたチョッパーが石畳を砕かんばかりに踏みしめ、その角をルフィが掴む。
ルフィの胴を抱いたウソップが狙いを定め、噴水から駅までの一直線を繋ぐ。
仲間たちと、龍驤の目があった。そんな気がした。
「行けッ、ルフィ!!」
「ウオオオ!!」
人力による狙撃である。軌跡はほとんど山なりを描くことなく、まっすぐにロビンと龍驤へ向かった。
「ゼロォ!!」
合図と着弾は、ほぼ同時だ。ロビンと龍驤は伏せた。広げたルフィの腕は、衝撃波を伴って、空振りした。
チュドンってした。島が揺れた。ロビンと龍驤の髪が、いくらか散っていった。
余波で駅舎が砕け、崩壊する。カリファたちは、煙に消えた。住民が悲鳴をあげる。パニックだ。
ルッチは空を見上げた。そこには迫る暗雲があった。
「逃げろ!! 砲撃だ!!」
すぐさま、アイスバーグさんは避難にかかった。職人たちはなんの疑いもなく、それに従った。街の人々もだ。
あまりにも鮮やかだった。ルッチの判断は正しかったのだ。ウォーターセブンにおける、アイスバーグさんの存在は格別だ。
あっという間に、事態は収拾した。いや、駅の外は大混乱だけど。
それを見届けたアイスバーグさんは、フランキーへ向き直った。フランキーは拘束が外れて、どうしようか迷っていた。
二人の視線が交わる。
「テメェはいつも、俺の言うことを聞かねえ」
「うるせぇ。放っておけよ、俺のことなんか」
思わず一歩踏み出した。だが、止めた。
「ああ、そうしてやる。バカってやつは始末におえねえ。だから、待ってる」
「ハァ!?」
「あの場所で。必ず、戻って来い」
フランキーはなにもわからない。一体全体、なにが起こっているのか。
いや、まあ、しかし、いよいよか。アイスバーグさんがあんな態度で、海軍だの政府だのが首を突っ込んで来たのだ。
察することは出来た。来たるべきときが来たのだ。
覚悟はしていた。言っている意味はわからないが、アイスバーグさんが遠ざかっていくのに、ほっと安堵が漏れる。
今度は自分の行いに、責任を取れた気がする。少なくとも、大事な誰かは、安全な場所へ向けて歩いている。政府のバカどもも追わない。
巻き込まずにすんだ。迷惑をかけずに。
フランキーは満足だ。
その隣に、パウリーが立った。
「やめときな、にぃちゃん。手を出すんじゃねえよ」
「そういうわけにはいかねえ」
「いいか? これはな、俺たちの問題なんだ。俺たち、トムズワーカーズの」
「知ったこっちゃねえ!!」
パウリーは否定した。そんな過去など、本当に知らない。
歴史なんか残ってない。思い出しかない。老人は語らない。
あの日、あのとき、波を越えて進む海列車に乗った興奮と感動以外、過去なんてどこにもないのだ。
「これは俺たちの問題だ!! なあ? カク、ルッチ、カリファ、ブルーノ!!」
「えーッ!?」
フランキーがびっくりした。だって、呼ばれたやつらが、背を向けていたからだ。
「すまんの、パウリー。今、忙しい」
「下がってろ」
麦わらが着弾した土煙を、CP9は警戒していた。まだ出て来ていないことが、疑問だった。ただ単に、威力がデカ過ぎた。
咳が聞こえた。
「いや~、ヒドい目にあった。なんで避けんだよ?」
「その惨状を見よ。殺す気か」
「大丈夫だろ。ゴムだから」
「ロビンは人間ですよ?」
そこで首を傾げるな。どこに疑問があるんだ。
いやまあ、ちゃんと守るつもりだったと言いたいのだろう。基準をじいちゃんか、兄弟にしている以外は、おおよそ妥当と言える。
つまり、全部おかしい。
「大丈夫だよな?」
「いいえ、血煙になるわ」
ロビンが真顔で答えた。麦わらの一味による、三位一体の攻撃とか。
たぶん、軍艦の一隻や二隻、蒸発する。
「だから、言っただろうが。やり過ぎなんだよ」
「いいんじゃねえか? お転婆どもにはいい薬だ」
どこからか、ゾロとサンジも来た。ずっと後方にもナミがいて、一応、クリマタクトを構えてなんか言ってる。
遠い。
しかし、本当に作戦が意味ないな。なんだ、このグダグダは。
びっくりなだけで、奇襲にもなっていない。
時間をかけたおかげか。周辺に、駅員さえいなくなった。海賊に慣れた街でもあるので、保身は上手い。ルッチは投げやりに、仮面を取った。
「なんの用だ?」
「仲間を奪いに」
ルフィがニシシと笑う。ルッチは、どこか場違いにも見えるパウリーへ視線を向けた。
「ケジメをつけに」
ロープを握る。ルッチに合わせて、他の面子も仮面を捨てた。
「バカバカしい」
「お前らにとってはな!!」
「おうおう、それぞれ主張もあろうが、ここに至っちゃ問答無用。譲れねえもんがあるなら、これで決めようぜ」
ゾロが刀を抜く。実に楽しそう。舌なめずりまでしている。
ここには、強者しかいない。
そこで龍驤が手をあげた。海楼石の枷がついたままなので控えめだが、ぴょんぴょんしていた。
無視しにくかった。フランキーが聞いた。やめとけと、みんな思った。パウリー以外。
「なんだ?」
龍驤はルッチへ尋ねた。
「約定って生きとる?」
「約定?」
あったな、そんなの。
CP9が、それぞれ遠くを見つめた。
今さらながら、龍驤の狙いに気づいた。
「協力したら、麦わらは見逃してくれるんやろ?」
「一応聞くが、なにをするつもりだ?」
サンジの疑問は、全員の気持ちだった。
龍驤はウィンクした。
「家出」